補助金で「酒屋飲み」はじめませんか?

コロナが5類に移行し、コロナ前のような社会と生活スタイルに戻りつつあります。

しかし、日本酒を取り巻く経営環境はいかがでしょうか。

未曾有の危機を脱出したとはいえ、まだまだ予断を許す状況ではなさそうです。

今回は、酒販事業を取り巻く環境を冷静に分析し、経営課題の解決策を模索する中で、事業の柱を増やすチャレンジの1つとして、酒屋さんや酒蔵さんが、「呑める」スペースを補助金で作ることについて、考察していきましょう。

酒販事業を取り巻く環境

ここ数年、コロナの影響で打撃を受けた外食産業。

酒販事業では、低迷する外食産業によって、料飲店との取引が減り、代わって内食・中食に伴う家飲み需要は増加したものの、外食ニーズを補填するまでには至っていなかったのが現状です。

ポストコロナの今、酒販事業を取り巻く外部環境はどこまで回復しているのか、確認します。

外食売上高好調も飲酒業態の回復鈍く

日本フードサービス協会(JF)のデータによれば、令和4年(2022年)1-12月の外食売上高(全店ベース)は前年比113.3%で、3年ぶりのプラスになり、コロナ前の94%まで回復しているものの、業態別に見てみると、飲酒業態(パブ/居酒屋)はコロナ前の50%程度と回復が鈍く厳しい状況です。

ただし、2022年は3月まで「まん延防止等重点措置による営業制限」がなされていたためえ、飲酒業態(パブ/居酒屋)は、酒類制限で満足に営業できなかった2021年に比べて、4-6月(237.8%)、7-9月(278.5%)と大幅な伸びを示しました。

価格高騰が外食ニーズに冷や水

コロナの5類移行に伴う行動規制の解除によって、ディナー系店飲みニーズも回復を見せる予兆があったものの、冷や水を浴びせたのが食料・エネルギー中心の価格高騰でした。

ビジネスパーソンによる宴会ニーズ、ファミリーによるディナー系店飲みニーズ等に関して、原材料費や光熱費等の価格高騰によるお酒を提供する店側の価格転嫁の影響や、消費者側の財布の紐が硬くなり、店飲みニーズの減退などの影響が考えられるからです。

せっかくコロナが収まり、街に人が戻ってきたのにも関わらず、物価高騰という別の要因により、病み上がりの外食産業は痛手を受ける結果となりました。

日本国内における酒販事業を取り巻く外部環境は、コロナ前の水準に回復するまでには、まだまだ高いハードルがあるようです。

酒販事業の経営課題

日本国内における酒販事業を取り巻く外部環境を含めた、酒販事業における経営課題についても、考えていきましょう。

一升瓶が売れない

「一升(1.8ℓ)瓶が売れない…」

お酒を売る人なら、3本の指に入る悩みの1つではないでしょうか。

業界団体の1.8L壜(びん)再利用事業者協議会の統計によれば、令和3年度(2021年度)の出荷数量は前年度比で16%減少、ここ10年間では50%減、ここ20年間では80%減となっていて、急速な「一升瓶離れ」が加速しています。

コロナ禍での業務用ニーズの落ち込みに加えて…

「ほかにももっとおいしいお酒が…」

「違うお酒を少しずつ楽しみたい」

「一升瓶は飲みきれないし、冷蔵庫に入らないし…」

など嗜好の多様化や生活スタイルの変化によって、一升瓶のニーズは長期的に減少傾向です。

さらに、一升瓶のニーズと家庭向けの日本酒ニーズとが、比例して長期減少傾向にあります。これは、家庭で消費する酒類の多様化や核家族化が進んだこと、保管のしやすさから大容量の紙パックを選ぶ人が増えたことなどの影響です。

また、料飲店でも、コロナ禍での業務用ニーズの落ち込みとは別に、日本酒は一度開栓してしまうと、日ごと風味が落ち、長期売れ残りは、廃棄処分につながるため、四合瓶(720㎖)よりもロス率が高くなることも一升瓶の業務用ニーズの落ち込み一因となっています。

ニーズの高い四号瓶を売れないジレンマ

一升瓶が売れないのであれば、消費者ニーズの高い四号瓶や若年層や日本酒初心者に人気の180㎖の小型瓶(カップ酒や牛乳瓶サイズなど)や100㎖のパウチタイプなど小容量の商品を売ればいいのではとなりそうですが、事はそう簡単にはいきません。

日本酒ファンの拡大に一定の効果があり、消費者ニーズも高く、取り扱いも容易な小容量の商品ですが、酒販店では、思いどおりに売れないというジレンマがあります。

1つは、「最低ロット」の問題。酒造会社にしてみれば、「小容量の商品は、一升瓶よりも製造コストや手間がかかる」ことから、一定量販売できないと、製造することすら難しくなる…

これらの事情から、取引条件として「最低ロット」が設けられることが多いため、酒販店側にある程度の販売力がないと、売れる銘柄だけに絞り込まざるを得なくなり、複数の品揃えの継続が難しくなってしまうという事情が出てくるのです。

もう1つの問題として、小容量商品を販売するとなると、売上が減少してしまうので、薄利多売のマーケティング戦略への変更を余儀なくされ、閉店のリスクまで考えなければならなくなります。

課題解決の1つの選択肢~角打ち・立ち飲み・量り売り

一升瓶が売れなくなり、小容量商品へのマーケティング戦略の変更も考えなければならない。もちろん理想としては、外食や店飲みニーズが増え、料飲店からの注文が復活することが一番でしょう。

しかし、いまだハッキリした兆しが見えない中で、料飲店や消費者のニーズに応えつつ、持続可能な酒販事業をどう確立していくかが酒販業界に問われているのです。

その答えの1つとして、事業の柱を複数持つこと、いわゆる「経営の多角化」という選択肢もあります。

「経営の多角化」といっても、まったく別の新しいことをはじめる必要はありません。

「経営の多角化」、もう1つの柱を作っていくチャレンジとして、「角(かく)打ち」「立ち飲み」「量り売り」をはじめてみるというのはいかがでしょうか。

ここでは、「角打ち・立ち飲み・量り売り」について考察していきます。

角打ち

「角打ち」とは、酒販店さんに設けられた「呑める」スペースでお酒を楽しむこと。「升の角に口を付けて呑む」ことから「角打ち」と呼ばれています。

そもそも、酒屋さんが桶や甕から計量用の升によって客持参の徳利にお酒を注いで、注いだ分だけ売る「量り売り」が当たり前だった昔、お酒好きが家まで待てずに、升のお酒をそのまま酒屋で飲んだことから「角打ち」が誕生したのだそうです。

福岡県北九州市の八幡製鉄所の労働者が、夜勤明けで居酒屋が開いておらず、酒屋の店先で飲んだことから誕生した「角打ち」文化は、やがて全国へと広まり、関西では「立ち呑み」、東北では「もっきり」、山陰では「たちきゅう」などと呼ばれています。

時間を気にすることなく、気軽にお酒が楽しめて、お酒が好きな人との交流もあり、さまざまな日本酒を飲み比べて、気に入れば買うこともできるのが「角打ち」のいいところ。

何より、店先でお酒を選んでいて「今、飲みたい!」と思ったらすぐに飲めるところが一番の醍醐味でしょう。お店の歴史を含めた、その土地ならではの空気感を堪能できるのもメリットです。

酒販事業の課題解決の観点から見ても、収益の幅を広げる意味で、充分にチャンスがあるのではないでしょうか。

立ち飲み

「立ち飲み」は、立ったまま酒を飲むこと、立ち飲みができる店舗のことをいいます。「角打ち」のことをいう「酒屋併設型」や「スタンド居酒屋」とか「立ち飲み屋」と呼ばれる「小規模飲食店」とがあり、その他にも無店舗の「屋台型」、大阪にある半身で立ち飲みする「ダークダックス」などのスタイルがあります。

ちなみに11月11日は「立ち飲みの日」です。

「角打ち」としての立ち飲みスタイルならば、「呑める」スペースも効率的に設置することができ、売上アップで、経営の多角化が実現できるでしょう。

量り売り

一升瓶が売れなくなり、酒屋の経営において、最近注目を集めているのが、お酒の「量り売り」です。

消費者にとっても、お財布にも環境にも優しく、さまざまなお酒を少量ずつ飲み比べすることもでき、保管にも困らず、希少な逸品を手軽に楽しめ、購入前に試飲もできるなどのメリットがあります。

提供する酒販店側にとっても、これまでどおり一升瓶を扱えること、陳列のスペースを取らないこと、瓶のサイズで品揃えを増やさなくてすむこと、店側でおすすめの飲み比べセットも提案できるなどさまざまなマーケティング戦略の工夫も考えられ、メリットも大きいと好評です。

酒販店さんによっては、店舗で扱っているお酒の全種類を「量り売り」できるようにしたり、オリジナルの手書きのラベルを添えてメッセージなどを伝えたりして、お店側の手間がかかるものの、顧客のリピーター化に寄与することが期待できます。

最近は、お酒の「量り売り」サービスを実施している酒販店さんが増加傾向にあります。「試飲」サービスなどと組み合わせて、酒販店さんのオリジナルで勝負できるので、酒販事業の課題解決にとっては、検討の価値あるマーケティング戦略の1つではないでしょうか。

補助金の活用事例

酒販事業の経営課題の解決策の1つである「角打ち・立ち飲み・量り売り」への事業展開によって、事業再構築補助金で採択になっている事例が、多数見受けられます。

ここでは、補助金の活用事例について見ていくことにしましょう。

事業再構築補助金の第1回〜第8回公募の採択者一覧より、「角打ち」「立ち飲み」「量り売り」のキーワードで検索・集計したリストの中から、一部をご紹介いたします。

【「角打ち・立ち飲み・量り売り」への事業展開による事業再構築補助金の採択事例】

都道府県事業計画名
北海道専門知識を活かした全国の希少酒を揃えた専門酒屋(小売り)出店計画
福島県“角打ち”で地酒を応援!試飲機導入による日本酒の魅力発信事業
福島県酒屋内で角打ちのできる新業態カフェ!日本酒と福島の魅力を再発進
青森県デジタル化・コロナ禍に対応したショールーム角打ち
岩手県豊富な品揃えから選べる角打ちとオンリーワンのギフト販売による新規顧客の開拓
愛知県コロナのニーズに対応した角打ちスタイルのアンテナショップへの挑戦
広島県飲み切り量の量り売りで新しいニーズに対応、日本酒を中心にした酒類小売店を展開
愛媛県地域資源を活用した「角打ち」スペースの新設による飲食業
大分県コロナ禍に対応した「角打ち」「EC事業」の新事業展開
鹿児島県世界のボトルビールを低価格で!角打ちができるビッグベン酒店
熊本県自然派ワインと最高のマリアージュを提案する角打ちバー
熊本県アフターコロナの観光スタイルを考えた酒蔵での角打ち施設の設立
熊本県ソムリエのいる酒屋併設のワイン角打ちとおつまみ販売の新分野展開
兵庫県アフターコロナ時代を見据えた立ち飲み屋を含んだ飲食店の経営
福井県老舗酒屋が地元駅前に三密を避けた立ち飲み日本酒バー併設店舗を新設
大阪府飲んで買って届く-新スタイル角打ちスペース設置による事業変革
大阪府酒屋の一角で新たに「立ち飲み&揚げ物テイクアウト」の店舗増設計画
東京都ウィズコロナ時代に対応した立ち飲みハイテク酒場への新分野展開
東京都毎日をワクワク!酒屋の三代目が手掛ける発酵食材角打ちで地域も再構築
東京都身近で気軽に楽しめる、美酒と美食の「角打ちビストロ」の提供
東京都日本酒文化の情報発信と希少な日本酒提供を行う立ち飲み居酒屋の開設
東京都ウイスキーの量り売りでオシャレな家飲み
長野県量り売りサービス導入による来店相談型酒類小売店への業態転換
千葉県角打ちスタイル出店事業
静岡県ワインに合う地産地消の惣菜開発とワインの量り売りで小売分野に進出
神奈川県お酒の立ち飲みコーナー新設による老舗酒屋の事業再構築
神奈川県新設備導入による省力化とグラウラー(通い瓶)によるビールの量り売りの実施
群馬県角打ち(飲食業)による業態転換で酒屋の復活

ご紹介した表では、事業計画名しか掲載されておらず、事業計画の詳細はご不明かと思いますが、酒屋さんや酒蔵さんが、単に瓶のまま販売するのでなく、酒蔵さんの倉庫を改装して「角打ち」施設を新設したり、酒屋さんの店内で飲めるようにしたり、量り売りをはじめたりと、新規事業展開への意欲が見てとれる事業計画ばかりです。

補助金を活用して、「呑める」スペースを作り、新たなチャレンジをしている酒屋さんや酒蔵さんが全国各地にいることがおわかりいただけると思います。

まとめ

ここまで、酒屋さんや酒蔵さんが、「呑める」スペースを補助金の活用で作ることで、経営課題の解決策の1つたり得ないかという考察をご紹介させていただきました。

ご紹介のとおり、実際に事業再構築補助金を活用して、新たなチャレンジをはじめている酒屋さんや酒蔵さんが多いということは、おわかりいただけたのではないでしょうか。

すべて自己資金ではじめるには、ハードルが高かったとしても、返済する必要のない補助金を活用することで、チャレンジのハードルは下がるはず。

あなたの蔵やお店も、消費者の「今、飲みたい!」というニーズを拾って、事業の柱の1つに変えていくチャレンジをしてみませんか。

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