日本酒の造り方を徹底解説!製造工程から原材料まで完全網羅

酒蔵など酒造業への就業を考えている人にとって、日本酒の造り方を学んでおくことは、就業後にキャリアを積む上で非常に重要です。

「米」「米麹(こめこうじ)」「水」などを原料として、発酵させることで日本酒が完成するということはなんとなくは理解していても、具体的にどのような製造工程を経て、日本酒が製品として完成するのかを把握している人は多くはないでしょう。

今回は、酒造業を目指す人に向けて、日本酒の製造工程から原材料まで、日本酒の造り方をくわしく解説します。

日本酒の製造に必要な基礎知識

まずは、日本酒の製造に欠かせない基本的な知識を身につけるところからスタートです。

ここでは、日本酒の製造に必要な基礎知識について解説します。

【日本酒の製造に必要な基礎知識】

  • 伝統的な発酵製法で日本酒が生まれる
  • 酒類製造免許の取得が製造の必須条件になる
  • 基本作業を習得して製造現場で活躍できる

伝統的な発酵製法で日本酒が生まれる

日本酒は、伝統的な発酵製法で生まれます。

日本酒の伝統的な発酵製法には「3段仕込み」「並行複発酵」「低温発酵」などがあるので押さえておきましょう。

3段仕込み酒母(しゅぼ)に麹・蒸米(じょうまい)・水を「添(そえ)」「仲(なか)」「留(とめ)」の3回に分けて仕込む製法酵母(こうぼ)数や酸、アルコールが雑菌に汚染されるのを防ぐために3段階に分けられる
並行複発酵麹菌の酵素によるデンプンの糖化と、酵母による発酵が同時に進行する発酵形式他の酒類では糖化と発酵を別々に行うか、糖化を必要としない発酵形式であるのに対し、日本酒は並行複発酵形式を採用
低温発酵酵母がアルコールを造る最適な温度は25~26℃だが、日本酒造りではここまで温度を上げることはない低温で長期間、発酵を促すことにより、雑味の少ない、きれいな味で膨らみのある酒が生まれる

酒類製造免許の取得が製造の必須条件になる

日本酒を製造するには、「酒類製造免許」の取得が必須であるということを押さえておきましょう。

酒税法により、酒類製造者は、製造する酒類の品目ごと、製造場ごとに酒類製造免許を取得しなければなりません。

つまり、大手日本酒メーカーや酒蔵は、必ず酒類製造免許を保有しています。

酒類製造免許は、税務署への申請が必要であり、現在日本国内では新規取得が難しくなっているため、廃業する酒蔵のM&Aなどにより、免許の引き継ぎ等が行われ、他業種からの新規参入などが行われている状況です。

ちなみに、酒類製造を行うためには、酒税法の「酒類製造免許」のほか、食品衛生法に基づく「酒類製造業許可」の取得(保健所管轄)も必要となることも押さえておきましょう。

基本作業を習得して製造現場で活躍できる

日本酒の製造現場で活躍するためには、酒蔵での酒造技術を学ぶため、基本作業を習得する必要があります。

日本酒造りの基本作業のポイントとして、以下のようなことを押さえておきましょう。

【日本酒造りの基本作業のポイント】

  1. 基礎知識の習得:①<米と水の知識>原料となる米の種類や精米方法、水の質が酒の風味に大きく影響すること②<麹造りの重要性>麹は発酵に欠かせない要素であり、麹菌の管理が重要であること
  2. 基本作業のマスター:<洗米・浸漬(しんせき)>米を洗って浸漬する過程で、正確な時間と吸水量の管理が求められる<蒸米>蒸し具合が酒の出来を左右するため、適切な蒸し時間と温度管理が必要
  3. 発酵管理:<酒母造り>酒母は酒の発酵の基盤となるため、酵母の選定と増殖方法を習得<醪(もろみ)の仕込み>三段仕込みなどの方法を理解し、発酵の進行を管理
  4. 絞りと仕上げ:<醪の絞り>発酵が完了した醪を絞る工程では、適切なタイミングと方法が必要<火入れと瓶詰め>日本酒を長期保存するための技術であり、味の安定を図る
  5. 細部へのこだわり:<清掃と衛生管理>清潔な環境を保つことが、良質な日本酒製造の基本<記録とデータ管理>すべての作業を細かく記録し、データを分析して改善を図る
  6. 継続的な学び:<先輩からの学び>現場で経験豊かな先輩から直接学び取ることが重要<酒蔵の見学>他の酒蔵を訪れ、異なる製法や技術を学ぶことで、自身のスキルを高める
  7. 熱意と意欲:日本酒造りへの情熱と意欲が、長期的な成功につながる

これらの基本作業をしっかりと習得し、現場での実践を通じて経験を積んでいくことで、日本酒製造の専門家として活躍することができます。

日本酒の原材料と製造設備の特徴

続いて、日本酒の原材料や製造設備について把握しておきましょう。

ここでは、日本酒の原材料と製造設備の特徴について解説します。

【日本酒の原材料と製造設備の特徴】

  • 酒造好適米で上質な味わいが実現できる
  • 軟水で日本酒独自の醸造が可能になる
  • 麹菌と酵母で複雑な発酵が進められる
  • 専用設備で品質管理が徹底できる

酒造好適米で上質な味わいが実現できる

「酒造好適米」とは、日本の伝統的な酒造りに適した特別な種類の米であり、酒の品質を高めるために特別に選定されたもので、特定の酒造メーカーによって使用されています。

酒造好適の特性から、特定の酒の風味や香りを引き立てることが期待されており、上質な味わいが実現可能です。

酒造好適米には、特有の構造と成分があり、それが酒造りにおいて重要な役割を果たします。

酒造好適米の特性・「大きな心白(しんぱく)」:心白(米の中心部にある白く不透明な部分で、デンプンが多く含まれる)が大きいと、麹菌が浸透しやすく、発酵がスムーズに進行する・「高い吸水性」:吸水性が高いため、米を蒸した際に均一に蒸しあがり、発酵過程での糖化やアルコール発酵が効率的に行われる・「硬質で割れにくい」:精米時に割れにくく、粒が均一なため、精度の高い精米が可能で、均質な発酵が期待できる
主な酒造好適米の品種・「山田錦」:最高級の酒造好適米として知られており、バランスの取れた風味と豊かな香りを持つ酒ができる・「五百万石」:北陸地方でよく使われ、すっきりとした味わいが特徴で、フレッシュな日本酒に適している・「美山錦」:長野県で栽培され、透明感のあるクリアな味わいの酒に仕上がる

酒造好適米を使用することで、豊かな香りや複雑な風味が引き出され、上質な日本酒が造られます。

たとえば、山田錦を使った酒は、華やかな香りと滑らかな口当たりが特徴です。

このように、米の種類が酒の個性を左右するため、酒造りにおいて。米の選定は、非常に重要な要素となっています。

軟水で日本酒独自の醸造が可能になる

軟水を使用することで、日本酒の独特な醸造が可能になります。

日本酒の歴史において、水質は非常に重要な役割を果たしてきました。

特に軟水(カルシウムやマグネシウムの含有量が少ない水)は、日本酒の繊細で滑らかな風味を引き立てるのに適しています。

軟水には、以下のような特徴があるので押さえておきましょう。

【軟水のメリット】

  1. 穏やかな発酵〜軟水は硬水よりも発酵が穏やかに進むため、繊細で上品な味わいの日本酒ができやすくなる
  2. 柔らかい風味〜軟水を使用すると、口当たりが柔らかく、まろやかな味わいの日本酒が仕上がる
  3. 微細な香り〜軟水は香り成分を引き立てるのに適しており、華やかな香りが特徴の日本酒が醸造される

【有名な軟水を使用する地域】

  1. 伏見(京都)~伏見の地酒は「伏見の水」として知られ、滑らかで甘みのある日本酒が多い
  2. 広島~「軟水仕込み」として知られる方法で造られる日本酒があり、フルーティーで軽やかな味わいが特徴

軟水を利用した日本酒造りは、地域ごとに異なる特性を持つため、それぞれの土地の風味や伝統が反映された独特な日本酒が楽しめます。

麹菌と酵母で複雑な発酵が進められる

麹菌と酵母、2つの微生物が協力し合って、複雑な発酵が進められ、豊かな風味の日本酒を生み出すことができます。

麹菌の役割は、米のデンプンを糖に分解する酵素を生成することにより、米からの糖が発酵に利用できるようにすることです。また、麹菌が作り出す酵素は、アミノ酸や有機酸なども生成し、日本酒の風味に影響を与えます。

他方、酵母の役割は、糖をアルコールと二酸化炭素に分解し、アルコール発酵を進めることで、日本酒のアルコール分と風味を形成するのです。また、酵母は、発酵過程でエステルやその他の香り成分を生成し、日本酒に独特の香りを与えます。

麹菌と酵母を使って作られるのが、発酵の基盤となる「酒母」です。この段階で麹菌が糖を作り、酵母がその糖をアルコールに変えます。

酒母に米と麹と水を三回に分けて追加し、発酵を段階的に進める「三段仕込み」を行うことにより、複雑な味わいが生まれるのです。

このとき、温度や発酵速度を管理する「発酵管理」が重要で、微生物の活動を最適化することで、高品質な日本酒が生み出されます。

このように、麹菌と酵母の協働によって、日本酒はその独特な風味と香りを持つことができるということを押さえておきましょう。

専用設備で品質管理が徹底できる

専用の設備を利用することで日本酒の品質管理を徹底することができます。

具体的には、以下のような専用設備や技術を使用して品質を維持・向上させるということを押さえておきましょう。

温度管理システム・「冷蔵タンク」:発酵や熟成の過程で温度を一定に保ち、風味や品質を安定させる・「温度センサー」:発酵や仕込み時に利用され、微細な温度変化を監視し、最適な環境を維持する
衛生管理設備・「洗浄装置」:発酵タンクや配管を清潔に保つために使用され、衛生管理を徹底し、品質を守る・「紫外線殺菌装置」:ボトリングラインでの殺菌に使用され、雑菌の混入を防ぐ
発酵管理技術・「発酵モニタリングシステム」:酵母の活動や発酵の進行をリアルタイムで監視し、データに基づいた精密な管理が可能・「自動攪拌装置」:醪の均一な発酵を促進するための装置で、発酵のムラを防ぐ
分析装置・「アルコライザー」:近赤外分光光度法(NIR)を利用してアルコール分を測定する分析装置で、蒸留操作を必要とせず、試料を装置内に流入させて光学測定を行うことで日本酒をはじめとした酒類の成分分析を行い、製品の一貫性を確保する
貯蔵設備・「貯蔵タンク」:熟成用の専用タンクが使用され、温度や湿度が適切に管理された環境で貯蔵することにより、風味の向上と品質の安定が図られる

これらの専用設備を活用することで、日本酒の製造現場では細やかな品質管理が実現され、常に高品質な製品を提供することが可能となります。

日本酒の製造工程の全体像

いよいよ、日本酒の具体的な製造工程について確認しましょう。

ここでは、日本酒の製造工程の全体像について解説します。

【日本酒の製造工程の全体像】

  • 原料の精米からはじまり洗米・浸漬工程へと進む
  • 製麹工程で米からデンプンと酵素が作られる
  • 酒母造りから醪の仕込みまでが完了する
  • 上槽から瓶詰めまでの工程で完成に近づく

原料の精米からはじまり洗米・浸漬工程へと進む

日本酒造りは原料の精米からはじまり、洗米・浸漬工程へと進むプロセスが重要です。これらの工程は、後の発酵や醸造プロセスに大きく影響を与えます。

1. 精米・「玄米の精米」:玄米から不要な外側部分を削り心白中心の白米にする・「精米歩合」:精米歩合は玄米の重さに対する精米後の白米の重さの割合であり、精米歩合60%とは、玄米の40%が削られたことを指す。精米歩合が低いほど、より多くの部分が削られ、高級な日本酒となる
2. 洗米・精米後の米を丁寧に洗い、米の表面の糠(ぬか)や細かい粉を取り除く・使用する水の品質は非常に重要で、柔らかい水が好まれる
3. 浸漬・洗米後、米を一定時間水に浸し、吸水させる・浸漬時間は米の種類や精米歩合によって異なり、均一な吸水を目指す・吸水量が適切であるかを確認し、浸漬時間を調整。吸水が均一でないと、蒸し上がりや発酵に影響が出ることがある

これらの初期工程がしっかりと行われることで、その後の発酵や醸造工程において、安定した品質の日本酒が生産される基盤が作られます。

製麹工程で米からデンプンと酵素が作られる

製麹(せいきく)とは、蒸した米からデンプンを糖に分解するための酵素を生成する作業のことです。

以下のような製麹工程で、米からデンプンと酵素が作られます。

1. 蒸米・浸漬した米を蒸して、適度な硬さと水分量に仕上げ、製麹の基礎となる・蒸し加減は発酵の過程で重要な役割を果たし、均一な蒸し上げが求められる
2.種切り・冷却した蒸米に種麹(たねこうじ、麹菌の一種)を均一に撒布し、麹室(こうじむろ)へ運搬・種麹は麹菌を含んでおり、米に付着して成長=一定の温度と湿度を保った環境(麹室)で麹菌の培養開始
3. 床もみ・もみ上げ・麹菌がふられた蒸米をよく混ぜ込み(床もみ)、麹菌を全体に行き渡らせ、ひとまとめにして積み上げ(もみ上げ)、布を掛けて数時間保温・放置
4. 切り返し・盛り・数時間して固まった蒸米をいったんほぐし、熱を放散させる(切り返し)・数回、切り返しを行い、温度と湿度を均一にする・麹蓋や麹箱などの容器に麹を小分けにして盛る(盛り)
5. 仲仕事・仕舞仕事・米を再度広げて水分を発散させ、麹に酸素を供給(仲仕事)・米をさらに広げて熱を放散(仕舞仕事)
6.出麹・米から栗のような香ばしい香りがして麹の完成を確認できたら、麹室から麹を出し(出麹=でこうじ)低温の場所で冷却し、麹菌の繁殖を止める

製麹工程は通常、2〜3日間かかり、定期的に温度や湿度の管理が行われ、完成した麹は、米の表面に白いカビ状のものがびっしりと生えた状態になり、これが製麹が成功した証であり、次の発酵工程に使用されます。

麹は糖化酵素を持っており、この酵素がもとで米のデンプンがさらに糖に分解され、酵母がアルコール発酵を行うための糖源となるのです。

製麹工程は、日本酒の風味や香りを決定づける非常に重要なステップであり、ここでの細かな管理が日本酒の品質に大きく影響します。

酒母造りから醪の仕込みまでが完了する

酒母造りから醪の仕込みまでの工程を完了することで、日本酒の発酵が順調に進み、おいしい日本酒が完成します。

酒母造りとは、原料となる米、麹、水を混ぜ合わせ、酵母の培養基盤となる液体を作ることです。

まず、酒母の準備として、もと桶と呼ばれるタンクに製麹工程により完成した麹と冷たい水を入れ、そこへ乳酸(人工または天然)と酵母を少量だけ入れ、これに蒸米を加えると酒母造りの仕込みが完成します。

このとき、人工的に作られた乳酸を用いた酒母を「速醸系(そくじょうけい)酒母」といい、酒蔵の中に生息する天然の乳酸菌を取り込むことによって造られる酒母を「生酛系(きもとけい)酒母」というので押さえておきましょう。

酒母造りも温度管理が重要で、暖気樽と呼ばれる道具を使い、少しずつ温度を上げていく「暖気入れ」などを行い、酵母が最適に増殖できる温度(通常15〜20℃)に保ちます。

数日から数週間かけて酵母が増殖し、アルコール発酵の準備が整いますが、その間も発酵の進行状況を監視し、酵母の健康状態を確認することが大切です。

ちなみに、仕込み用の発酵タンクの中で「酒母」「麹」「蒸米」が合わさった状態を「醪」や「仕込み」と呼びます。

酒母が完成すると、いよいよ「醪の仕込み」に移行します。

醪の仕込みには、仕込みの段階により、以下のような分類があるので押さえておきましょう。

一段仕込み酒母に対して新たに蒸米、米麹、水を加えて混ぜ、第一段階でアルコール発酵がはじまる技法
二段仕込み一段仕込みから1〜2日後、さらに蒸米、米麹、水を追加し、発酵が進む過程で、徐々にアルコール濃度が高まる技法
三段仕込み二段仕込みから再び1〜2日後、最後の蒸米、米麹、水を追加し、この段階で、醪の全体量が増え、発酵が最高潮に達する技法

通常、醪の発酵は20〜30日間続き、酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。発酵期間は、発酵タンクの温度と糖度を定期的に測定し、発酵が最適なペースで進行するように調整することが重要であり、発酵が終了するタイミングを見計らい、次の工程(絞り)に進みます。

仕込み工程を通じて、酒母がアルコール発酵を進め、醪が完成します。各段階での細やかな管理が、おいしい日本酒を造るための鍵となるので重要な工程です。

上槽から瓶詰めまでの工程で完成に近づく

上槽(じょうそう)から瓶詰めまでの工程は、日本酒造りの最終段階であり、日本酒が完成品として出荷されるまでの重要なプロセスです。

具体的には以下のような作業の流れとなります。

1. 上槽・発酵が終了した醪を搾り、液体部分(原酒)と固体部分(酒粕)に分類(上槽=搾り)・「槽(ふね)」「自動圧搾機(ヤブタ式)」「袋吊り」「遠心分離」などの種類あり
2. 濾過・搾った酒を数日放置し、澱(おり)を沈殿させ上澄み部分を取り出した(澱引き)後、残った微細な固形物を取り除く(濾過)・あえて無濾過のお酒もある・濾過機などを使い、「炭素濾過」「SFフィルター濾過(精密濾過)」などの種類あり
3. 火入れ・日本酒の品質を保つため、酒を加熱して酵母や菌を殺菌するプロセス・低温で短時間1回の加熱でフレッシュな風味を残す「一回火入れ」と、2回の加熱で安定した品質を確保する「二回火入れ」がある
4. 貯蔵・火入れ後、一定期間貯蔵され、熟成され、味わいや香りを深める・大型のタンクで熟成させる「タンク貯蔵」と瓶内で熟成させる「瓶貯蔵」がある
5. 瓶詰め・熟成が完了した日本酒を瓶に詰めて出荷準備を行う・「自動瓶詰めライン」と「手作業の瓶詰め」がある
6. ラベル貼り・出荷・瓶詰めされた日本酒にラベルを貼り、製品としての最終形を整え、出荷のために箱詰めされ、出荷

これらの工程を経て、日本酒は完成品となり、消費者のもとに届けられます。各工程で細やかな管理が行われることで、おいしい日本酒が完成するのです。

日本酒の製造工程と品質管理

高品質な日本酒を造るためには、どのような製造工程が必要なのでしょうか。

ここでは、日本酒の製造工程と品質管理について解説します。

【日本酒の製造工程と品質管理】

  • 精米工程で特定名称酒の価値が決まる
  • 製麹作業で理想的な温度管理ができる
  • 並行複発酵で日本酒の旨みが引き出せる
  • 貯蔵から瓶詰めまで温度管理で品質が保てる

精米工程で特定名称酒の価値が決まる

精米工程は、特定名称酒の価値を決定する非常に重要な要素です。

「特定名称酒」とは、日本酒の中で特定の基準に基づいて分類された種類の酒で、その品質や風味が評価されています。

精米歩合が価値を左右するので、以下のような特定名称酒の種類と精米歩合の関係を押さえておきましょう。

特定名称酒精米歩合特徴
純米酒60%以下(一般には70%以下)米と水だけで作られ、米の旨味がしっかりと感じられる
純米吟醸酒60%以下フルーティーで華やかな香り、スムーズな味わい
純米大吟醸酒50%以下繊細な香りと上品な味わい
吟醸酒60%以下アルコールを添加して造られることもあり、軽やかで香り高い酒
大吟醸酒50%以下非常に華やかで繊細な香りと味わい

精米歩合が低いほど、米の外側の部分が多く削られ、雑味が減り、澄んだ味わいが引き出され、さらに、米の中心部分である心白がより多く露出し、発酵時に麹菌の浸透が促進されます。

高精米歩合の酒は、フルーティーで華やかな香りと繊細な味わいが特徴です。

特定名称酒の価値は、精米歩合の他にも醸造方法や熟成期間、使用される水や麹菌など多くの要素によって決まりますが、特に精米工程はその基盤となるため、非常に重要です。

精米工程が特定名称酒の価値を大きく左右し、高精米歩合の酒は特に贅沢な仕上がりとなり、その分手間と時間がかかるため、高い価値を持つのです。

製麹作業で理想的な温度管理ができる

製麹作業における理想的な温度管理は非常に重要であり、適切な温度管理を行うことで、麹菌が健全に発育し、質の高い米麹を作り出すことができます。

製麹作業での温度管理には、以下のようなポイントがあるので、押さえておきましょう。

【製麹作業での温度管理のポイント】

  • 麹菌の発育に適した温度は28〜32℃、湿度は60〜70%が理想的なため、麹室の環境を保持すること。湿度が低すぎると麹菌の発育が遅れ、高すぎると他の微生物が繁殖しやすくなることにも要注意
  • 段階的な温度調整を行い、初期段階(種麹を撒布した直後)は、28℃前後、中期段階(麹菌が増殖)では、30〜32℃、後期段階(麹菌が米全体に広がる)では、再度温度を28℃程度に下げること
  • 数時間ごとに温度と湿度を測定し、必要に応じて調整を行い、記録を詳細に残すこと

製麹作業で適切な温度・湿度管理を行うことで、米のデンプンが効率的に糖に分解され、発酵に必要な酵素が十分に生成されることにより、醪の発酵がスムーズに進み、豊かな風味と香りを持つ日本酒が完成します。

並行複発酵で日本酒の旨みが引き出せる

並行複発酵は、日本酒の旨みを引き出すための重要なプロセスであり、他の発酵酒類(ビールやワイン)とは異なる特有の技術で、日本酒の独特な風味と深い味わいを生み出します。

並行複発酵は、米の糖化(デンプンを糖に変える)とアルコール発酵(糖をアルコールに変える)が同時に進行する発酵プロセスです。

糖化と発酵が同時に進行するため、発酵中にさまざまな化合物が生成され、複雑な風味が生まれることに加えて、他の発酵飲料よりも高いアルコール度数を持つ日本酒を製造することが可能となります。

さらに、糖がすぐにアルコールに変換されるため、発酵の効率が高まり、安定した品質の日本酒が製造できるといったメリットがあるのです。

貯蔵から瓶詰めまで温度管理で品質が保てる

貯蔵から瓶詰めまで適切な温度管理を行うことで、日本酒の風味や香りを最適な状態で保持し、品質の安定を図ることができます。

タンク貯蔵や瓶貯蔵により、5℃から15℃の範囲で低温貯蔵されることで、風味や香りの劣化を防ぎ、安定した品質を保持できるだけでなく、熟成期間中に風味がまろやかになるといったこともメリットの1つです。

他方、火入れ後の日本酒は、瓶詰め前に適切な温度で保管されることにより、酵母や微生物の活動が抑制され、品質が保持されます。

瓶詰め作業もクリーンルーム等清潔な環境で行われ、温度も一定に保つことにより、雑菌の混入や品質の劣化を防止できるでしょう。さらに、日本酒の出荷時にも、適切な温度管理が求められます。

貯蔵から瓶詰めまでの徹底した温度管理によって、日本酒の風味や香りが保持され、最高の状態で消費者の元に届けられるでしょう。

日本酒製造についてのよくある疑問

酒蔵で働く上で、「これはどうなんだろう?」といったさまざまな疑問が生じることでしょう。

ここでは、日本酒製造についてのよくある疑問について回答していきます。

【日本酒製造についてのよくある疑問】

  • 未経験でも日本酒製造の現場で働けますか?
  • 製造現場での1日の仕事の流れはどのようになりますか?
  • 酒造りの繁忙期はいつ頃になりますか?

未経験でも日本酒製造の現場で働けますか?

未経験でも日本酒製造の現場で働くことは可能です。

実際に多くの酒蔵では、未経験者を歓迎しているところがあり、新しい人材を育成するための体制を整えています。

必要な知識や技術は現場で教えてもらえることが多く、日本酒造りに関する興味と熱意があれば、歓迎してもらえるでしょう。

ただし、未経験者として、以下のような酒造業への就業に関するポイントを把握することが必要です。

【未経験者が酒造業へ就業するためのポイント】

  • 酒造りに対する情熱と学びたいという強い意欲をアピール
  • 新入社員向けの研修制度の活用
  • 酒蔵の仕事がチームワークが重要なので、他のスタッフとの円滑なコミュニケーションを図れることをアピール
  • 体力と根気があることをアピール
  • 地元の伝統や文化に対する理解と敬意をアピール

未経験者が酒造業へ就業するためのポイントを把握しておけば、未経験者でも日本酒製造の現場で働くことが可能になります。

未経験でも、培ってきた経験やスキルなどを生かして貢献したいという意欲をアピールすることが重要です。

製造現場での1日の仕事の流れはどのようになりますか?

酒造現場の1日の仕事の流れは、季節や醸造の進行状況によって異なりますが、一般的には以下のような流れになります。

【酒造現場の1日の仕事の流れ】

  1. 早朝(5:00-7:00)清掃と準備、米の浸漬
  2. 朝(7:00-9:00)蒸米、麹造り
  3. 午前(9:00-12:00)酒母造り、醪の仕込み
  4. 昼休み(12:00-13:00)昼食と休憩
  5. 午後(13:00-17:00)醪の管理、瓶詰め作業
  6. 夕方(17:00-19:00)清掃と片付け、記録作業
  7. 夜(19:00以降)発酵の監視

酒蔵ごとに、季節や醸造の進行状況によって作業内容が変わることがありますが、日本酒造りは繊細な作業の連続で、細かい管理が求められます。

酒造りの繁忙期はいつ頃になりますか?

酒造りの繁忙期は、一般的には11月頃から3月頃、秋から春にかけての期間です。

この時期は、①空気中の雑菌が少なく、仕込みに適していること、②大昔、冷暖房がない時代から行われており、外気の気温が作業に大きく影響すること、③米の収穫時期が秋頃からはじまること、④気温が低く、温度管理がしやすく菌の繁殖がしにくいことなどが理由と言われています。

また、日本酒が最もよく売れる時期が、新酒の季節と年末年始の大切な行事が重なる年末の12月から年始の1月までということも影響があるでしょう。

秋(10月頃)は、新酒の仕込みが始まる時期で、米の収穫が終わり、醸造に使用する米が準備され、冬(12月から2月頃)は、本格的な醸造シーズンであり、酒母や醪の発酵が行われ、酒造りの中心的な作業が行われます。

春(3月から4月頃)は、絞りや貯蔵の時期で、発酵が終わった醪を絞り、清酒を取り出し、一部の酒蔵では新酒の発売開始もあるでしょう。

微生物を扱う酒造りは、常に発酵の進行状況を監視し、冬季は発酵速度が速まるので、長時間管理が必要です。

繁忙期には、1日あたり9.5時間以上、時には12時間以上の長時間労働も珍しくなく、連続勤務が続くこともあります。

また、仕込みが続く期間は、休みも取りづらく、何日も休めないこともあり、月間3〜6日程度の休日が平均で、カレンダーどおりに休めず、シフト制で、連休も取れないこともあるでしょう。

日本酒の造り方のまとめ

ここまで、日本酒の製造工程から原材料まで、日本酒の造り方に関するあれこれをご紹介させていただきました。

酒造業に興味があり、これから酒造業に就業しようと考えているならば、日本酒の造り方や酒蔵での働き方などを把握する必要があるでしょう。

日本酒の造り方や酒蔵での作業の流れを理解することで、自身が酒蔵で自己実現する将来像も描くことができます。

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