未経験から酒蔵で働く方法と仕事の始め方!採用条件やキャリアパスを解説

令和6年12月に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的にも注目を集めている酒造業界で働きたいと思っている人は多いはず。
特に、新卒や他業種からの転職など、未経験で酒蔵に就職したいと思っている人にとっては、働き方や仕事の始め方について知りたいと思っていることでしょう。
今回は、未経験者が酒蔵で働くことに関して、採用条件やメリット、研修制度やキャリアパスなど、働く方法と仕事の始め方について解説します。
- 1. 未経験者が酒蔵で働くための採用条件
- 1.1. 日本酒への関心と醸造技術習得への意欲が重視される
- 1.2. 協調性と蔵人としてのチームワークが必須となる
- 1.3. 発酵食品を扱うため衛生管理意識が求められる
- 1.4. 重量物の運搬と寒暖差に耐えうる体力が必要となる
- 1.5. できればアピールしたおきたい採用条件
- 2. 未経験から酒蔵で働くメリットや魅力
- 2.1. 伝統技術を継承できる誇りある仕事ができる
- 2.2. 蔵人として専門性の高いキャリアを築くことができる
- 2.3. 酒蔵によっては寮完備で安定した生活基盤を築ける
- 2.4. 地域の食文化を支える重要な役割を担える
- 2.5. 四季に応じた多彩な醸造技術が学べる
- 3. 未経験でも安心の酒蔵での研修制度
- 3.1. 基礎から学べる段階的な技術指導を受けられる
- 3.2. 先輩社員から実践的な製造技術が学べる
- 3.3. 日本醸造協会のWEB講習で基礎知識を習得できる
- 3.4. 酒類総合研究所の講習で専門知識を深められる
- 4. 未経験からの酒蔵でのキャリアパス
- 4.1. 基本的な製造工程から段階的にスキルアップできる
- 4.2. 経験を積んで杜氏資格の取得を目指せる
- 4.3. 将来は製造責任者として活躍できる
- 5. 未経験から酒蔵で働く方法のまとめ
未経験者が酒蔵で働くための採用条件
酒蔵の仕事は、専門的な知識と経験が必要とされ、当然のことながら、採用条件も経験者が優遇されます。
しかし、多くの酒蔵が、未経験者でも採用し、教育研修・育成に注力しているので、未経験だからといって酒蔵への就職をあきらめる必要はありません。
未経験者が酒蔵で働くためには、採用されるための条件やポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、未経験者が酒蔵で働くための採用条件について解説しましょう。
【未経験者が酒蔵で働くための採用条件】
- 日本酒への関心と醸造技術習得への意欲が重視される
- 協調性と蔵人(くらびと=酒造り担当の職人、従業員)としてのチームワークが必須となる
- 発酵食品を扱うため衛生管理意識が求められる
- 重量物の運搬と寒暖差に耐えうる体力が必要となる
- できればアピールしたおきたい採用条件
日本酒への関心と醸造技術習得への意欲が重視される
未経験者が酒蔵に就職するための採用条件の1つとして、日本酒への関心と醸造技術習得への意欲が重視されるといったことがあります。
もちろん、おいしい日本酒を造るためには、専門的な知識や技術が必要であり、採用する酒蔵としても、即戦力となる経験者が採用されやすいことは事実です。
しかし、近年の酒蔵の採用事情として、未経験で酒造りに関する専門的な知識や技術が身についていなかったとしても、日本酒への関心、酒造りに対する情熱や学ぶ意欲ある人であれば、採用されやすいといった傾向があります。
これは、酒造業での人材不足の問題以外にも、多くの酒蔵では、研修プログラムや現場でのトレーニングが用意されていますので、未経験者を育成して、酒造りに必要な知識やスキルを身につけさせることができるといった理由からです。
このように、未経験者が採用されるためのポイントとしては、日本酒への関心、酒造りに対する情熱と学びたいという強い意欲を前面に出して、アピールすることが重要となります。
協調性と蔵人としてのチームワークが必須となる

未経験者が酒蔵に採用されるためには、他のスタッフと円滑にコミュニケーションを取れる能力や協調性を持って働けることなどをアピールすることも求められます。
酒造りは、チームで作業を行うことが多いため、協調性と蔵人としてのチームワークが必須となるからです。
未経験でも、培ってきた経験やスキルなどを生かして、他の蔵人と協力して、貢献したいという意欲をアピールすることが重要です。
発酵食品を扱うため衛生管理意識が求められる
未経験者だといえども、発酵食品を扱うための衛生管理意識が求められることは、酒蔵に採用されるための条件の1つです。
酒蔵では、食材に微生物(細菌や酵母など)を加えて発酵させることで製造される「発酵食品」を扱っているため、高度な衛生管理意識が求められます。
衛生管理意識が低いと、酒質が低下して商品として販売できなくなったり、雑菌が入り、長い時間と手間をかけた酒造りが無駄になってしまったりと、さまざまな問題が発生するリスクがあるので、未経験者であったとしても、採用時点で衛生管理意識があることをしっかりとアピールしておきましょう。
重量物の運搬と寒暖差に耐えうる体力が必要となる
酒蔵で未経験者を採用するポイントとして、根気強さや体力があるかということもチェックされるでしょう。
酒造りは体力を要する作業が多く、発酵や醸造は時間がかかるため、根気強く取り組む姿勢が求められるからです。
特に、重量物の運搬と寒暖差に耐えうる体力が必要となります。
未経験者として酒蔵に採用されたいのであれば、体力に問題がないことをアピールすることも大切です。
できればアピールしたおきたい採用条件

未経験者として、酒蔵に採用されるために、できればアピールしたおきたい採用条件として、以下のようなこともあるので押さえておきましょう。
【できればアピールしたおきたい採用条件】
- 新しい環境や作業に柔軟に適応できること
- 変化に対応しながら学んでいく姿勢があること
- 地元の文化や伝統を理解し、地域社会との交流やイベントに積極的に参加することで、地元に貢献する意欲があること
特に、酒蔵は地域に根ざした企業が多く、地元の伝統や文化に対する理解と敬意を持つことが重要とされていますので、地域社会との関わりへの意欲をアピールすることで大きなアドバンテージとなることも念頭に入れておくとよいでしょう。
未経験から酒蔵で働くメリットや魅力
酒蔵への就職には、未経者にとってもさまざまなメリットや魅力があります。
ここでは、未経験から酒蔵で働くメリットや魅力について解説します。
【未経験から酒蔵で働くメリットや魅力】
- 伝統技術を継承できる誇りある仕事ができる
- 蔵人として専門性の高いキャリアを築くことができる
- 酒蔵によっては寮完備で安定した生活基盤を築ける
- 地域の食文化を支える重要な役割を担える
- 四季に応じた多彩な醸造技術が学べる
伝統技術を継承できる誇りある仕事ができる
未経験者が酒蔵で働く魅力の1つに、伝統技術を継承できる誇りある仕事ができるといったことがあります。
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたように、酒造りには長い歴史があり、その技術や知識を継承することは非常に貴重です。
未経験者でも、世界で注目されている日本古来の伝統技術を学び、継承することで、自分の仕事に誇りを持つことができるでしょう。
蔵人として専門性の高いキャリアを築くことができる
酒造りは専門的な知識や技術を必要とするため、誰にでもできる仕事ではありません。
未経験者が酒蔵に就職することによって得られるメリットの1つに、蔵人として専門性の高いキャリアを築くことができるということがあります。
酒造りは専門性が高いため、一定の経験を積んでキャリアを築くことができれば、知識や技術、経験を生かして酒造業界で長いスパンで活躍することができるでしょう。
専門性の高いキャリアを築くことができるということは、何にも代え難い自身の財産となります。
酒蔵によっては寮完備で安定した生活基盤を築ける
未経験者が酒蔵に就職するメリットとして、安定した生活基盤を築けるといったこともあるでしょう。
最近の酒蔵は、福利厚生に手厚い企業が多く、酒蔵によっては寮完備などというところもあります。
衣食住に不自由せず、安定した生活基盤を築けることは、良質な暮らしを送る上で価値あることです。
地域の食文化を支える重要な役割を担える

酒蔵は、酒造りという事業だけでなく、地域の歴史や文化を反映し、地域の食文化を支える重要な役割を担っています。
未経験者が酒蔵に就職する魅力の1つとして、地域の食文化を支える重要な役割を担えるといったことも挙げられるでしょう。
酒蔵は地元の農家や関連産業と密接に結びついており、地域経済の活性化に寄与しているだけでなく、観光地としても重要であり、地域の魅力を高める要素となっています。
また、酒蔵は、地域の人々が集まる場所としても機能し、地域コミュニティの結束を強める役割を果たしていることなども押さえておきましょう。
四季に応じた多彩な醸造技術が学べる
未経験者が酒蔵に就職するメリットとして、四季に応じた多彩な醸造技術が学べるといったことも考えられます。
酒造りは、季節ごとに異なる気候や環境条件が醸造に影響を与えるため、それに応じた技術や知識を学ぶことが可能です。
最近では、寒造り(秋から冬の低温期間だけ酒造り手法)だけでなく、四季醸造(通年の酒造り手法)も行う蔵も増えており、多彩な醸造技術を学ぶことができます。
たとえば、夏場は高温多湿の中での発酵管理、冬場は低温での発酵技術など、季節ごとの課題に対応するためのスキルを習得することができるでしょう。
また、四季折々の新鮮な原料を使った醸造も魅力的です。春には新鮮な麦や米を使った醸造、秋には収穫された果物を使った限定酒の製造など、季節ごとの特色を活かした醸造が楽しめるのも酒造りの醍醐味でしょう。
酒蔵での仕事は、単に技術だけでなく、季節感を大切にする心も学ぶことができる素晴らしい環境です。
未経験でも安心の酒蔵での研修制度
未経験者を歓迎している酒蔵も多く、新しい人材を育成するための体制を整えています。
ここでは、未経験でも安心の酒蔵での研修制度について解説しましょう。
【未経験でも安心の酒蔵での研修制度】
- 基礎から学べる段階的な技術指導を受けられる
- 先輩社員から実践的な製造技術が学べる
- 日本醸造協会のWEB講習で基礎知識を習得できる
- 酒類総合研究所の講習で専門知識を深められる
基礎から学べる段階的な技術指導を受けられる

多くの酒蔵では、新入社員向けの研修制度を準備しており、酒造りの基礎から専門的な技術まで学ぶことが可能です。
特に、未経験者に対しては、基礎から学べる段階的な技術指導を受けられる研修内容となっています。
はじめに、日本酒の造り方など日本酒造りに関する専門的な知識の習得、各工程を経験しながら行う段階的な技術指導など、トレーニングや現場での学びを通じてスキルを身に付けることができ、日本酒の製造プロセスを深く理解することができるでしょう。
先輩社員から実践的な製造技術が学べる
未経験でも安心の酒蔵での研修制度として、何より重要なのは、OJT(オージェーティー=職場での通常業務を通して行う研修)です。
酒造りの現場で各工程の補助につきながら、先輩社員から実践的な製造技術が学べるといった「生きた教科書」による研修となります。
先輩蔵人の酒造りの技術を目の当たりにすることで、自身で学習した酒造りに関する専門知識と照らし合わせながら、おいしい酒がどのようにして完成するのかという製造技術を少しずつ身につけることができるのです。
日本醸造協会のWEB講習で基礎知識を習得できる
未経験者でも安心な研修制度として、公益財団法人日本醸造協会が主催する「WEB講習」を受講するのも選択肢の1つです。
酒蔵で働きながら行うOJTとは異なり、Off-JT(オフ・ジェーティー=職場外で行われる研修)となりますが、製造技術や基礎知識など醸造に関するさまざまなテーマのオンライン講座となります。
WEB講習は、テキストを見ながら学習できるので知識を整理しやすいこと、時間や場所の制約を受けずに学習できることなどのメリットがあるため、未経験者でも安心して研修が受けられるでしょう。
酒類総合研究所の講習で専門知識を深められる
未経験者が受講できる外部研修として、独立行政法人酒類総合研究所が主催する「酒類醸造講習」などもおすすめです。
独立行政法人酒類総合研究所は、日本で唯一のお酒に関する国の研究機関であり、各酒類ごとに講習やセミナーも実施しています。
ただし、「酒類醸造講習」は、研修対象者が清酒製造の中〜上級者向けの講習やセミナーであることが多いため、未経験者が酒蔵に就職して一定の経験を積んだ後に受講するほうがよいかもしれません。
未経験からの酒蔵でのキャリアパス
企業などの組織において、キャリアを積むために必要なプロセスや道筋のことを「キャリアパス」といいますが、未経験からの酒蔵でのキャリアパスにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、未経験からの酒蔵でのキャリアパスについて解説します。
【未経験からの酒蔵でのキャリアパス】
- 基本的な製造工程から段階的にスキルアップできる
- 経験を積んで杜氏(とうじ=製造責任者)資格の取得を目指せる
- 将来は製造責任者として活躍できる
基本的な製造工程から段階的にスキルアップできる

未経験者が酒蔵に就職すると、基本的な製造工程から段階的にスキルアップできるといったキャリアパスが一般的です。
酒蔵には製造、商品開発、営業、流通、総務、財務・経理、給与・労務、人事・採用・教育、経営管理などさまざまな部門がありますが、未経験者の場合、教育研修後、事務方採用以外は、酒造工程を把握するため、酒造現場での基本作業からのスタートになるでしょう。
基本的な製造工程とは、洗米・浸漬・蒸米(精米後の米を丁寧に洗い、水に浸し、蒸す)の補助、麹(こうじ)造りの補助(室子=むろこ)や、酒母(しゅぼ)造りの補助(モト手子(てこ)・中モト廻り・下モト廻り=酒母係)のほか、各種作業の補佐や雑用(上人=じょうびと・中人=ちゅうびと)、道具の洗浄(追廻し=おいまわし=整備係)、蔵人の食事準備(下人=したびと、飯屋=めしや)などがあります。
蔵人として、醸造の各工程の基本作業を行いながら、酒造りの現場に慣れ、瓶詰め・包装などの出荷作業まで、各部署の補助をして経験を積みながら、「係員」として、製造工程の一部を任されるように段階的にスキルアップするといった流れです。
経験を積んで杜氏資格の取得を目指せる
酒蔵の職位は、経営責任者で酒造りのプロデュース役の「蔵元(くらもと)」のほか、製造部門の責任者で醸造工程全体の管理者である「杜氏」、杜氏の指揮下で醸造の各工程を担当する職人「蔵人」という構成です。
蔵人にも職位があり、精米担当の「搗屋(つきや)=精米係」、蒸米担当の「釜屋(かまや)=蒸米係」、圧搾担当の船頭(せんどう)など、各工程の責任者である「係員」のほか、担当の蔵人がいます。
杜氏になるために特別な資格は必要ありませんが、経験を積んで段階的にスキルアップして、周囲の蔵人や蔵元から認められる先には、杜氏となる資格の取得も獲得できるでしょう。
将来は製造責任者として活躍できる
未経験者で酒蔵に就職した場合のキャリアパスとして、地道に酒造りの知識を学習し、技術を磨き、経験を積み、実績を重ねていけば、将来は製造責任者として活躍できるキャリアパスも描けるでしょう。
具体的には、「頭(かしら)=杜氏補佐」「麹屋(こうじや)=麹主任」「モト師=酒母主任」といった三役を経験した後、「杜氏」というキャリアパスになります。
未経験から酒蔵で働く方法のまとめ
ここまで、未経験者が酒蔵で働くことに関して、採用条件やメリット、研修制度やキャリアパスなど、働く方法と仕事の始め方についてご紹介させていただきました。
未経験で酒蔵の仕事に興味を持っていても、「未経験者が酒蔵の仕事ができるのか」という不安から、はじめの一歩を踏み出せない方もいらっしゃると思います。
しかし、多くの酒蔵では、未経験者でも歓迎する雰囲気があり、研修制度も整備されていますので、酒造りに対する情熱と学ぶ意欲があれば、酒造りの世界に飛び込むことは可能です。
未経験者でも、自身も適した酒蔵を見つけ、就業後どのように働いたら自身のキャリア形成ができるのかなど丁寧にキャリアコンサルティングを行う酒類事業に特化した人材紹介サポートサービス「酒蔵エージェント」をご用意しています。
「未経験でも自分のお酒を造れるようになりたい!」
「未経験者でも、うちの蔵の造りに共感してくれる造り手を紹介してもらいたい!」
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