酒蔵向きはどちら!? マスマーケティング VS 顧客起点マーケティング
※2022年3月9日更新
そもそもマーケティングとは?
「良い物を作れば売れる」
という考え方は、日本人に深く浸透している価値観だと思います。
モノが不足していた時代、つまり「需要>供給」の時代は、商品を作っただけで売れたからです。
しかし今の時代においては、少子高齢化による飲酒人口の減少・イベントの減少による飲酒機会の減少・あえて飲まない派のソバーキュリアスの登場、ビール・ワイン・リキュール・クラフトジン等、他酒類の普及、さまざまな要因によって日本酒市場そのものが収縮し、「需要<供給」が引き起こされています。
「おいしいお酒を造ればいつか売れると信じて、日々、酒質の向上を目指している」
「コンテストで金賞をとれば引き合いがくると思ったが、思ったほど...」
あなたも、こんな風に思ったことはありませんか?
供給過多に陥ってくると、「消費者に届ける活動」や「売れる仕組み」作りが急務となりました。
そこで登場したのが「マーケティング」という手法です。
自社の新商品をヒットさせるために、商品コンセプトはどうするか、ターゲットは誰か、どこに潜在顧客がいるのか、いつ発売するのかなどを考え、立案、策定、実行するのがマーケティングの役割です。
さらには、商品展示やスタッフからの案内、広告宣伝、そして今、話題のクラウドファンディングやSNSプロモーションと、その領域は多岐にわたり、経営者・社員・アルバイトといった立場や、杜氏・詰口担当・経理といった職種の壁を超えて、蔵というチーム全体で取り組まなくてはいけません。
マーケティングを成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
ここでは大きく、2つのマーケティングの考え方と、それぞれのメリット・デメリットについて簡単に解説します。
マスマーケティングとは?
マスマーケティングは、家庭の食卓に並ぶような食料品、化粧品や洗剤などの日用品、耐久消費財(家電や車など)など、大衆向けの商品やサービスを訴求する際に多用されるマーケティング手法です。
大量生産し、たくさん売って収益を上げるという「薄利多売」のビジネスモデルで活用される傾向があります。また万人を対象とする為、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、マスメディアを活用したプロモーションが特徴です。
メリット:
- 大量生産や大量販売に向く商品であれば、大幅なコスト削減が見込め、大きな利益が期待できる
- 年齢や性別にとらわれず、不特定多数の様々な顧客層にアピールできる
デメリット:
- 幅広い顧客に受け入れられる商品やサービスに限定される
- 膨大な広告費用がかかる
- 広告やプロモーションの費用対効果の検証が難しい
マスマーケティングは、多くの消費者に対して自社のブランドをアピールでき、成功すれば大きな利益が期待できる一方で、訴求できる商品が限定されたり、多額の費用がかかることがデメリットとして挙げられます。
顧客起点マーケティングとは?
テレビや新聞の若者離れに加え、インターネットやSNSの普及にともない、人々の消費性向は多様化傾向にあります。そんな中、顧客に寄り添ったマーケティングの手法が求められるようになりました。
前述の、不特定多数の消費者に対して画一的なアプローチをするマスマーケティングに対し、顧客の把握に焦点を当てたマーケティング手法を「顧客起点マーケティング」と呼びます。
企業側が売りたい商品やサービスを市場に当てはめていくのではなく、消費者が何を考えて行動しているのか、何を求めているのかを分析し、そこで得た情報に基づいて商品開発や販促方法を行う、という考え方です。
メリット:
- 消費者の声に耳を傾けることで、受け入れられやすい商品やサービスを提供できる
- 商品開発や販促活動の成功率は高くなり、投資に見合った資金を回収できる
デメリット:
- 客観的な顧客分析ができないと、知らぬ間に企業起点のマーケティングになってしまう
顧客に寄り添ったマーケティングですが、注意しないといけない点があります。
それは「リピーターやロイヤルカスタマーに対する販促を重視してしまう」ことです。
自社のファンを増やす意味では、既存顧客の購買パターンや嗜好に沿った商品開発やブランディングも大切ですが、新規のお客さんや一般顧客の視点をおざなりにしてしまうと、長期的な売り上げアップが難しくなってしまいます。
顧客起点マーケティングの極意は、つまるところ「飲み手とコミュニケーション」をすることです。
様々な層の顧客とのつながりを大切にし、そして各顧客タイプごとに仕掛けるべき施策を準備することがビジネスの成功につながるのかも知れません。
江戸時代、顧客が必要な分だけ売る「切売り」や、雨天時には番傘を無料で貸し出すなど、顧客のニーズに耳を傾け、その名を江戸中に広めた越後屋(現:三越)の取り組みは「顧客起点マーケティングの先駆け」とも言えるでしょう。
まとめ
今回は「マーケティング」をテーマに、大きく2つの手法をご紹介させて頂きました。
テレビやラジオ広告などのマーケティングは知っていたが、顧客起点マーケティングは初めて知った、という方も多いのではないのでしょうか?
現代において、マーケティングを一切行わずに企業活動をしていくことが難しくなっています。
ご紹介した2つのマーケティング手法にはそれぞれメリット、デメリットがあり、業態や達成したい目標、経営課題などを見定めたうえで、自社に適したマーケティング手法を選択することが大切です。
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バックナンバーのご紹介:
「おいしいお酒」をもっと世の中に知ってもらうために! ~ブランディングとマーケティングの違いとは?~」
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