ここが変わった、もの補助10次!新設された3つの枠でチャンスが拡大?
※2022年3月23日更新
令和元年に1次公募が開始された「ものづくり補助金」、10次公募となる今回からは、大幅な制度変更が適応されました。特に大きな変更点は、
①従業員数に応じて補助金額の上限が変更されたこと
②3つの枠が新設されたこと
です。
それぞれどのような枠なのか、ポイントを絞ってご紹介します。
①従業員数に応じた補助金額の上限変更
前回、9次締切までは、一般型の補助上限額は一律1,000万円でした。
今回からは、従業員が21名以上の酒蔵には、最大1,250万円が補助されます。
【従業員規模に応じた補助上限額の設定】
1,000万円から1,250万円の上限変更により、補助額が+250万円になると、いつか入れようと先延ばしにしていたリンサーやフィルターなども一緒に申請できるようになりますし、余裕があれば実施したいと思っていたDXへの取り組みも、今回、温度調整機能付きタンクに品温管理システムをつけることで、着手することも可能となるでしょう。
②新設された3枠
<回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設>
1つ目が「回復型賃上げ・雇用拡大枠」です。
一言でまとめると、「従業員の賃金アップを確約した企業が申請できる補助金」です。
・補助率:2/3
・補助金額:
100万~750万円(従業員数5人以下)
100万~1,000万円(従業員数6~20人)
100万~1,250万円(従業員数21人以上)
・要件:
①賃上げ目標を達成しなければ補助金全額返還
②応募締め切り時点の前年度の事業年度の課税所得がゼロであり、常時使用する従業員がいる事業者に限定
③補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること
③の賃上げ期間ですが、もともと事業計画期間中で達成すればよかったのですが、こちらの枠では「補助事業完了年度の翌年、3月末時点」で目標を達成する必要があり、より長い期間において賃上げへの確約をする必要があります。
補助率が2/3であることは大きなポイントですが、通常枠も小規模事業者であれば2/3が適用されること(地酒造りを行う酒蔵の多くが従業員数20名以下の小規模事業者)、また、酒造業界・酒販業界は業界全体としてコロナ禍の影響が大きいため、①の賃上げが未達の場合に補助金が返還となってしまうデメリットを考えると、あえてこの枠を使うリスクの方が大きい恐れがあります。
<デジタル枠の新設>
2つ目は「デジタル枠」です。
一言でまとめると、「デジタル化に着手しており、DXへ発展させたい企業が申請できる補助金」です。
・補助率:2/3
・補助金額:
100万~750万円(従業員数5人以下)
100万~1,000万円(従業員数6~20人)
100万~1,250万円(従業員数21人以上)
・要件:
①デジタルトランスフォーメーションに資する革新的な製品・サービス開発、またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法に取り組む事業者
②DX推進指標を活用しての自己診断を実施し、その結果を独立行政法人情報処理推進機構に提出する
③ 独立行政法人情報処理推進機構 が実施する「SECURIT YACTION」の「一つ星」または「二つ星」の宣言を行っている
補助率は2/3で、回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設と同様に、中小企業の場合は通常枠と変わりません。ただし、デジタル枠で不採択になっても改めて通常枠で審査されるというメリットがあります。
しかし申請必須要件である②DX推進指標を活用した自己診断、および、③「SECURITY ACTION」の宣言を提出する作業が非常に煩雑です。
IT専任担当者のいるような蔵元様であれば、難なく提出が可能と思いますが、製造現場や通常の経理総務業務では使用しないようなIT用語が羅列されているため、そのような担当が不在の場合は、用語理解から始め、自社全体及びスタッフ個々のITリテラシーの現状把握も実施する必要性があるため、それなりに時間を要するでしょう。
デジタル枠で不採択の際に、通常枠で審査されるメリットと天秤にかけた場合、作業負担というデメリットの方が際立ちます。
まず、必須要件の書類の内容を把握し、申請スケジュールも含め、自社にとって提出が現実的か否かを判断したうえで、デジタル枠での申請を進めていくのが賢明でしょう。
<グリーン枠の新設>
3つ目は「グリーン枠」です。
一言でまとめると、「環境に配慮する予定の企業が申請できる補助金」です。
・補助率:2/3
・補助金額:
1,000万円以内(従業員数5人以下)
1,500万円以内(従業員数6~20人)
2,000万円以内(従業員数21人以上)
・要件:
①温室効果ガスの排出削減や炭素生産性向上など実現すること
②3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること
③これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組があれば具体的な取組内容を示すこと
今回新設された3つの枠の中では、酒造業において最も申請しやすいでしょう。
補助率は中小企業であれば通常枠と変わらない2/3ですが、補助上限がアップします。
申請にあたっては「付加価値額÷エネルギー起源⼆酸化炭素排出量」という計算で炭素生産性を示したり、取り組み資料として「炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況」を提出したりと手間がかかりますが、造りの中で、温めたり冷やしたりする工程の多い酒造業においては、上記、新設枠の2つよりも申請ハードルは低い印象です。
酒造業において、「温室効果ガスの排出削減や炭素生産性向上など実現すること」というのは、冷蔵庫・ボイラーなどを更新したり、ヒートポンプへの熱源切り替えによって、旧設備よりもエネルギー効率の良い新設備を導入し、温室効果ガスの排出削減や炭素生産性向上などが実現できるというロジックが該当するでしょう。
申請を検討される場合は、設備メーカーや用品店と密に連携し、導入予定の設備を申請前に確定させておくことを推奨します。
理由は、エネルギー起源⼆酸化炭素排出量の内容を作成する際には、設備機器メーカーにデータの提出を依頼するのが、正確でスピーディーな申請書類作成への第一歩だからです。
『(様式2)ものづくり補助金グリーン枠「炭素生産性向上の取組及び温室効果ガス排出削減等の取組状況」』の記載内容によると、炭素生産性は、下記の計算式によって算出が可能です。
付加価値額÷CO2排出量(t/CO2)
これを設備導入前と後で比較し、どの程度炭素生産性が向上したかを記載し、公募申請時に提出する必要があります。
留意点としては、各メーカーにより設備の型番のアルファベットが1文字異なるだけで全く異なる設備を示し、CO2排出量が大幅に異なる場合もあるなど、設備を導入する酒蔵サイドからは判断が難しい内容となっています。
細かな仕様変更を実施した結果、削減されるCO2排出量も変更、効果的な数値が得られずに申請書を何度も修正する羽目に陥ったり、最終的に申請を見送ることになった場合には徒労となる可能性もあるでしょう。
また、公募申請時は暫定設備品番で申請、内容が認められて採択になったとしても、採択後に設備を確定し排出量に大きな差が出た場合、また、そのことに気付かずに申請を進めた結果、書類不備や採択取り消しといった最悪の事態も起こり得ます。そのために申請前から、メーカーや用品店と密な連携をとって確定品番の正確なデータを提出し、リスクヘッジをしておきましょう。
酒造業特化のアンカーマンは、蔵元様のものづくり補助金申請をフルサポートします
今回の最大の変更点は上記3つの枠が新設されたことですが、その他にも様々な点が変わりました。まず、低感染リスク型ビジネス枠が廃止されました。これにより、ものづくり補助金の類型は、通常枠、新設された3つの枠、グローバル展開型のいずれかになります。
次に、申請の際、法人概況説明書等の提出が義務付けられました。また、提出書類の「従業員への賃金引上げ計画の表明書」が「賃金引上げ計画の誓約書」に変わり、要件未達の場合の「補助金返還」が明示されています。「表明」よりも「誓約」の方が、「確約」の度合いが増していることは明確で、ものづくり補助金は年々、公募を重ねることに、申請、採択、報告における審査の厳格化が顕著であることが読み取れます。
ものづくり補助金10次公募の申請締切は5月11日
「まだ3月だから、あと2か月ある」と思っていませんか?
直売所経営や酒蔵ツアーなどを実施している蔵元様は、土曜日や日曜日も稼働日というところが少なくないと思いますが、ゴールデンウィークは設備メーカーが長期休暇に入ります。
土日祝日を考慮に入れると、補助金申請に向けての実稼働日は、あなたが想像している以上に少ないのです。
標準的なものづくり補助金への申請スケジュールはこちら。
3月第3週まで(3/18・22〜25)
導入設備選定・見積り依頼
蔵元内経営者会議
アンカーマンとの初回ミーティング
(導入予定設備・申請枠のヒアリング・会社概要と照らし合わせた申請要件の確認)
3月最終週(3/28〜31)
アンカーマンへの申請代行依頼
決算書類をはじめとした必要書類の共有
4月上旬(4/1・4〜8)
GビズID取得
賃上げプランの確定
事業計画書作成のための詳細ヒアリング
4月第3週(4/11〜15)
応募者概要の電子入力・労働者名簿の作成
(要:株主情報、労働者の雇入れ年月日・生年月日))
4月第4週(4/18〜22)
賃上げ誓約書の作成
事業計画書ドラフト内容確認
4月最終週(4/25〜28)
事業計画書修正版内容確認
4/29〜5/7
メーカー各社、ゴールデンウィーク休暇
5月第2週目(5/8〜10)
ものづくり補助金電子申請
特に、申請枠(グリーン枠 or 通常枠 or グローバル推進型)を迷っている、自社では判断がつかない、といった蔵元様は、3月第3週中にアンカーマンにお声掛けください。
日々、アンカーマンでは、日本酒蔵をはじめとし、焼酎蔵、ワイナリー、醸造所、酒販店、用品店、機械メーカーなど、酒造業・酒販業の発展ならびにお酒業界全体の発展、コロナ禍に立ち向かうサポートをしています。
「まだ依頼すると決まったわけではないから...」
「プロにこんな初歩的なこと聞いたら失礼だよね...」
といった遠慮もご不要です。
導入を検討されている設備、事業の内容をヒアリングし、最適な申請枠のコンサルティングからスタートします。
要件確認や申請前相談の段階では、費用はいただいていませんので、ぜひ、お気軽にお声掛けくださいね!