目指せ「離職率ゼロの酒蔵」! 新人を定着・戦力化させるオンボーディングのススメ

蔵元さんが常に抱えているお悩みには「採用・人材」も大きなウェイトを占めることでしょう。

「後輩育成のための時間がとれていない」
「人材育成を行うノウハウがない」


なかでも、「入社しても定着しない(離職してしまう)」という声も頻繁に聞こえてきます。
そこで今回は、新人が早く現場に定着して辞めにくくなる、「オンボーディング」について解説します。

オンボーディングって何?

オンボーディングとは、新人に対し、先輩や上司が手ほどきを行い、素早く新人を「戦力」にし、退職を防ぐプログラムのことです。プログラムと聞くと大々的な新人研修などをイメージするかもしれませんが、下記のような、日頃から何気なくやっている行動もオンボーディングになります。

・醸造知識を教えたり醸造機械の使い方について教える
・出勤時や退勤時のルールを教える
・懇親会を開いて新人が馴染めるようにする

このようなものもオンボーディングに含まれ、早期離職を防ぐのに役立っています。

オンボーディングとOJTの違い

OJTとは英語「On The Job Training」の略で、実務を通して仕事を教える人材育成の手法をさします。オンボーディングとOJTは混同されがちですが、OJTはオンボーディングプログラムのひとつです。オンボーディングの取り組み範囲は広く、座学を中心としたOFFJTや1on1ミーティング、ランチや歓迎会なども含まれます。

OJTは現場で実際の業務を行いながら進めるため、効率的に育成ができる反面、メンターの力量に左右されることもあります。即戦力が前提の中途採用では特に、新人がなかば放置されてしまい、実質的に機能しないなどのデメリットが生じることもあります。

オンボーディングって、効果あるのかな?

エン・ジャパン株式会社「『中途入社者のオンボーディング』と『入社後活躍』 に関する調査・分析」によると、オンボーディングに「力を入れている企業」と「入れていない企業」において、前社のほうが「定着率・パフォーマンスともに高い」と認識していることが分かりました。
「定着率が高い」と回答した割合は1.8倍、
「パフォーマンスが高い」と回答した割合は1.94倍もの差が出ており、
有効性は実感を伴ったものであるようです。

また、オンボーディング施策は早期離職を防ぐ以外の効果もあるといった声が上がっています。
「オンボーディングに関する取り組むべき課題が明らかになった」 : 52%
「中途入社者が配属された部署のコミュニケーションが活性化された」 : 45%
「中途採用活動上のアピールになった」 : 39%
「中途入社者の所属部門の業績が向上した」 : 29%

効果的なオンボーディングってどうやればいいの?

「オンボーディングをやった方がいいのはわかったけど、何をどうすればいいかわからない」
そんな方のために、オンボーディングに注力している企業の事例をもとに、具体的に何をすればいいかを解説します。

◆目標を明確にする
新人が入社したら、「自分たちは会社として何を目指しているのか」「そのためにどんな戦略が必要か」など、ビジョンや目標を新人にしっかり共有します。また、新人の個人的な目標についても上司と面談で話し合い、何をすればいいかをわかりやすく提示します。

◆新入社員自身で作成する
オンボーディングプラン専用のフォーマットを作成し、新人自らに3か月後の目標などを記入してもらい、全社員が見える場所に掲示します。1か月おきに振り返りを行い、目標に対してどれくらい達成できているか、またはできていないのかを可視化します。

◆社員が学べる環境を整える
新しい職場では誰しも、しばらくの間はわからないことだらけです。新人が自分のタイミングで必要な予習や振り返りができるための措置を取りましょう。例えば、空き時間に書き物をしてもよい共有のデスクを伝えたり、録画教材を渡したりします。例えば、ラベル貼りの達人の作業動画を、社用iPadなどで撮影し、空いた時間に見てもらったり、一度受けたレクチャーの復習として使ってもらうなどすると良いでしょう。

◆相談しやすい仕組みを作る
「社内の備品については、発注担当のAさん」「そもそも、どの質問を誰にしたらいいかわからない場合はBさん」「長期的な視点で、新人がこれからどんな取り組みをしていくべきかを示すのはCさん」など、相談相手を複数用意しましょう。社長が相手だと「頑張ります!」といった前向きな返答しかしにくい場合もありますが、こうした選択肢を与えることで新人が悩みを一人で抱えるリスクを減らせます。

◆毎日違う社員(=ランチゲスト)と違うお店へ行くランチ
教育担当が日程を調整、管理し、お店はランチゲストがオススメをチョイスします。周辺の情報や一緒に働く人たち自身を知ってもらうことが目的です。ランチゲストの車に同乗してもらい、一緒にお店に向かうなどすると、よりコミュニケーションも深まります。蔵の立地上、飲食店でのランチが難しい場合は、いつもの場所・いつもの食事メニューでなく、出前を取ったり、ランチゲストの隣の席で食べてみるなど、雰囲気を少し変えてみるのも良いでしょう。
全く異なる環境からの転職者にとっては最初のうち「朝が早い」「こんなに体力を使う仕事だとは想定外だった」といった、蔵で長年働いている方にとっては当たり前のことがつらく感じているケースもあるかもしれません。それを、入社年次の近い人と1対1でランチをし、「僕も入ったばかりの頃はそうでした。でも、1.2か月してくると、少しずつ慣れてきたかも」といった言葉が、先輩から聞けたりするだけで、モチベーションの維持にも効果を発揮することでしょう。

◆新人に求める「自分を知ってもらう努力」
入社時の自己紹介だけでなく、社内勉強会やミーティングなど、人前で話す機会を増やしてアピールする場を設け、新入社員自身にも「自分を知ってもらう努力」を促します。

◆先輩たちが当事者意識を持つ
社長をはじめとした経営陣が新人研修を主導するよりも、新人を受け入れる各部門が積極的に育てるよう計らいましょう。直属の上司や先輩にあたる社員が当事者意識を持ち、新しい人材が早く戦力になるよう、教育に対して責任感が生まれます。

◆定期的なアンケート実施によるコンディションの見える化
新人に対し、定期的なアンケートで状態を可視化し、見つかった課題をもとに、仕組みの改善やフォローアップなどを行うことも有効です。無料のサーベイアプリなどを利用すると、簡単に作成・集計ができ、新人個人のスマートフォンから回答することができるので、双方に手間が減るのでオススメです。積極的にコミュニケーションできるかどうかは、新入社員の個性などにもよりますし、バラツキもあるでしょう。アンケートサービスなどを利用してモチベーションの状況を定量的に把握できれば、個別フォローもしやすくなります。

オンボーディングの流れ

では、いつ、どのタイミングでオンボーディングを実施すると効果的か、時間軸で解説します。
通常業務をしながら新人を育てることは簡単ではなく、数か月後には「オンボーディング?何だっけ?」といったことになる可能性も。そうならないために、以下の4つのポイントを抑えてください。

1. 内定後~入社前 【豊富な情報提供】
入社前から新人を気にかけることが大切です。内定直後から定期的なコミュニケーションを心がけましょう。採用担当者や入社後の現場担当者と話せる機会を設けたり、地元出身者の採用の場合は出身校が同じ先輩、共通の知人を見つけておくと、関係性の下地を構築することができ、入社してから気軽に質問してもらえたり、指示が出しやすくなったりします。
また、従業員専用の社内コミュニケーションネットワーク(LINEやSNSも含む)などへ、部分的にでも参加することができると、社内の雰囲気をつかむことができます。また、内定通知を送付する際に、社長直筆の手紙を封入するといった一手間で、入社前のモチベーションも高まることでしょう。
また、先輩となる既存の従業員と話し合いをしておきましょう。新人が離れる原因の一つに、「職場の人間関係が悪かった」というものがあります。こうした理由で退職されないよう、事前に新人を受け入れるにあたってどんな空気を作るか、また、履歴書や面接時の情報をもとに、新人に対してどのくらいのものを求めるかの期待値をそろえ、共通認識を持ちましょう。

2. 入社当日 【万全の準備】
入社当日には、制服や作業着・個人ロッカーなどの支給品は事前に準備し、研修資料なども、本人の目の前で印刷するのではなく、出社した時には机の上に置いてある、ないしはすぐに出せる状態にしておきましょう。すぐに業務習得に向けた準備が整っていることは、新人に対して、高い関心を寄せており、しっかりと当人のために事前準備がなされているという好印象を与えるためです。蔵内や事務所を案内し、先輩スタッフ全員とあいさつを交わし、全社をあげて歓迎の意を示しましょう。

3. 配属後1週間【多彩なコミュニケーション】
配属後の1週間では、チーム内の先輩メンバーや上長から歓迎ランチ会や、座談会などのカジュアルな時間を設けてもらうことで、見えるかたちでの歓迎の意を入社者に示していきましょう。蔵に定期訪問する用品店担当者や、直売所に来られた常連のお客様に紹介し、かわいがっていただくような計らいも大変有効です。

4. 入社後6か月間【丁寧なフォロー】
入社者のモチベーションを保ち続けることを念頭に置き、業務と環境に馴染みやすい土台をしっかり作り上げていきましょう。具体的には、先述した「効果的なオンボーディングってどうやればいいの?」の項目から、自社になじみやすい方法を選んで実施していきましょう。

いかがでしたでしょうか?
一部では、「アンカーマン」=「もの補助」というイメージが強いようですが、人材育成や経営サポートにも、実績と高い評判を得ています!

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