通信販売酒類小売業免許とは?取得要件や申請方法、ネットショップ販売の注意点を解説
近時、酒販事業を行う上でも、「EC販売(Electronic Commerceの略)=ネットショップ販売」は欠かせないマーケティング戦略の1つとなっています。
EC販売は、地理的なスループットを超えて、世界中の消費者にお酒を提供することができる「グローバル市場へのアクセスの拡大」と、インターネットを通じて常に販売することができる「24時間365日の販売」などの効果があるからです。
直営販売している酒蔵さんや酒販店さんがEC販売を行うためには、「通信販売酒類小売業免許」が必要になってきます。
今回は、「通信販売酒類小売業免許」に関して、取得要件や申請方法、申請書類や費用、事業拡大例やネットショップ販売の注意点などを解説していきましょう。
- 1. 通信販売酒類小売業免許とは
- 2. 通信販売酒類小売業免許を取得するための要件やポイント
- 2.1. 人的要件
- 2.2. 場所的要件
- 2.3. 経営基礎要件
- 2.4. 需給調整要件
- 3. 通信販売酒類小売業免許の申請書類
- 4. 通信販売酒類小売業免許の申請方法
- 5. 通信販売酒類小売業免許を取得するために必要な費用
- 6. 通信販売酒類小売業免許を活用した事業拡大例
- 6.1. 自社ECサイトを構築して海外とも取引
- 6.2. ECモールへ出店して認知度アップ
- 6.3. 実店舗の客足も増加
- 6.4. 地方銘酒の販売
- 6.5. オンラインイベント等の開催
- 6.6. オリジナルブランドの開発
- 6.7. 飲食店とのコラボレーション
- 6.8. ギフトの販売
- 7. 通信販売酒類小売業免許でネットショップ販売をするときの注意点
- 7.1. 20歳未満の者に売らない
- 7.2. 酒造業者・同業者には販売できない
- 7.3. 通信販売酒類小売業免許での小売や仕入の制限
- 7.4. 海外との取引
- 7.5. 酒税法上の義務・手続き
- 7.6. その他の法令遵守
- 8. まとめ
通信販売酒類小売業免許とは
通信販売酒類小売業免許とは、酒類のEC販売(ネット販売)事業に必要な免許です。
【酒類販売業免許の区分・種類】
【通信販売酒類小売業免許の定義】
酒類の販売には酒類販売業免許が必要です。他方、酒類のEC販売(ネット販売)事業も合わせて行うためには、酒類販売業免許に加えて、通信販売酒類小売業免許も必要となります。
販売先・販売方法等により区分された酒類販売業免許の1つの種類が、「通信販売酒類小売業免許」であり、「通信販売」とは、「2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売」と定義されています。
※参照:「国税庁/通信販売酒類小売業免許申請の手引」
通信販売酒類小売業免許を取得するための要件やポイント
通信販売酒類小売業免許を取得するためには、一定の要件を満たす必要があります。
通信販売酒類小売業免許を受けるためには、下記の「人的要件」「場所的要件」「経営基礎要件」「需給調整要件」といったすべての基準を満たすことが必要です。
- 人的要件
- 場所的要件
- 経営基礎要件
- 需要調整要件
ここでは、通信販売酒類小売業免許を取得するための要件やポイントなどを確認していきます。早速、上記それぞれの要件に関して詳しく見ていきましょう。
人的要件
申請者が、酒類免許等の取消処分や刑罰、税金の滞納処分などを受けていないこと(受けたことがあっても一定期間経過していることを含む)などが必要になってきます。
たとえば、処分者等に関して、一定期間経過しているとは、酒類免許等の取消処分後、または一定の法令違反による罰金刑・禁固刑等執行後、3年以上経過していること、申請前2年以内に税金滞納処分を受けていないことなどの要件です。
場所的要件
場所的要件に関しては、販売場が免許を受けている他の酒類の製造場・販売場や酒場、料理店等と同一の場所でないことなどです。
経営基礎要件
経営基礎要件とは、申請者が、通信販売酒類小売業の継続に必要な資金・設備・経営能力等を有することといった要件です。
たとえば、破産手続開始の決定を受けていない(受けても復権を得ている)、税金を滞納していない、1年以内に銀行取引停止処分を受けていない、貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っていない、前3事業年度において、資本等の額の 20%を超える額の欠損を生じていないなどにより、経営基礎的に、通信販売酒類小売業の継続ができるとの証明が必要となります。
需給調整要件
需給調整要件として、規定された酒類を取り扱っている必要があります。
国産酒類に関しては、販売できる酒類の範囲が以下のとおり限定されています。
- 酒類の品目ごとの課税移出数量が、すべて年間3,000㎘未満である酒類製造者が製造・販売する酒類。
- 地方の特産品等を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類であり、年間の製造委託数量の合計が 3,000㎘未満である酒類。
なお、輸入酒類については、酒類の品目や数量の制限はありません。
通信販売酒類小売業免許の申請書類
通信販売酒類小売業免許の申請書類は、以下のとおりです。
【通信販売酒類小売業免許の申請書類】
- 酒類販売業免許申請書
- 販売場の敷地の状況
- 建物等の配置図(建物の構造を示す図面)
- 事業の概要(販売設備状況書)
- 収支の見込み(兼事業の概要付表)
- 所要資金の額及び調達方法
- 「酒類の販売管理の方法」に関する取組計画書
- 通信販売酒類小売業免許申請書チェック表
- 酒類販売業免許の免許要件誓約書
- 登録免許税の領収証書提出書
- 酒類販売管理者選任届出書
- 通信販売の対象となる酒類である旨の証明書(輸入酒類の場合不要)
通信販売酒類小売業免許の手続きの際に必要な書類は上記のとおりですが、これらの書類以外にも提出を求められる場合があるので、事前に確認することをおすすめします。
通信販売酒類小売業免許の申請方法
ここで、通信販売酒類小売業免許の申請方法を説明しましょう。
「通信販売酒類小売業免許」を取得する基本的な流れとしては、販売場の所在地の所轄税務署長宛てに免許申請書や添付書類を提出してから、標準2ヶ月程度の審査期間を経て、免許付与等の通知を受けることになります。
「通信販売酒類小売業免許」を申請する際に、個別・具体的な相談がある場合には、免許を受けようとする販売場の所轄税務署を担当する酒類指導官まで事前相談するようにしましょう。
なお、免許を取得すると、国税庁のホームページに氏名や販売場の所在地、免許の種類、審査項目などの個人情報が公表されることになります。
通信販売酒類小売業免許を取得するために必要な費用
【通信販売酒類小売業免許を取得するために必要な費用】
申請手続き形態 | 代行費用 | 登録免許税その他 |
自身で申請手続きを行う場合 | × | 3万円/1件+実費 |
行政書士に申請代行を依頼する場合 | ○(10万円~20万円) | 3万円/1件+実費 |
通信販売酒類小売業免許を取得するために必要な費用に関しては、取得免許1件ごとに登録免許税3万円が必要です。
ちなみに、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許を同時に取得する場合の費用は、登録免許税6万円が必要となってきます。
これらの取得費用は、免許申請時に必要になるわけではなく、免許取得時に必要になる費用です。さらに、付随費用として、免許申請時に提出する必要書類の発行手数料も加味しておきましょう。
自身で免許の申請・取得手続きを行う場合には、取得費用として、登録免許税免許1件につき3万円と提出書類の発行手数料がかかります。
他方、行政書士に免許申請手続き代行を依頼する場合には、申請代行費用がかかります。
行政書士によって費用は異なりますが、代行費用の相場としては、登録免許税等の実費のほか、免許1件につき10万円〜20万円(消費税別途)程度のようです。
通信販売酒類小売業免許を活用した事業拡大例
通信販売酒類小売業免許を取得して活用すれば、事業拡大を図ることも期待できます。
ここでは、通信販売酒類小売業免許を取得して活用したとき、事業がどのように拡大できるのか具体例をご紹介していきましょう。
自社ECサイトを構築して海外とも取引
ある酒販店さんでは、店頭販売だけでなく、海外言語対応の自社ECサイトを構築してEC販売を強化したことにより、全国からの注文や問い合わせだけでなく、海外からも注文がくるようになり、売上がアップしました。
酒類免許に関しては、店頭販売のための「一般酒類小売業免許」に加えて、EC販売を強化する前提としての「通信販売酒類小売業免許」と海外との取引をにらんだ「輸出入酒類卸売業免許」とを合わせて取得した次第です。
ECモールへ出店して認知度アップ
直売場を併設しているとある酒蔵さんでは、EC販売を強化して全国の消費者に自分たちが造ったお酒を届けたいと思い、「通信販売酒類小売業免許」を取得して、楽天やAmazonなどのECモールへ出店することにしました。
売上アップの効果もさることながら、全国の消費者に蔵のブランドと商品の認知度がアップしたことが最大の効果でした。
実店舗の客足も増加
ある酒販店さんでは、EC販売により人気アニメとコラボしたお酒を取り扱ったところ、人気アニメのファンが実店舗にも多数押し寄せるようになり、店頭販売の売上もアップしました。
アニメファンによるSNS等での情報拡散により、EC販売で取り扱っていない商品まで店頭販売で売れるようになったのです。
地方銘酒の販売
どこにでもあるような町の酒屋さんでも、EC販売で、取扱商品の拡大、取引先等の仕入れルートの開拓、新規顧客の獲得等が期待できます。
EC販売によって、地方にしかない銘酒を取り扱い、全国に販売することで、地方の酒造業者に販路が広がり、消費者にさらに新たな酒の味わいを提供することができるでしょう。
オンラインイベント等の開催
ある酒蔵さんでは、酒蔵見学ツアーやオンライン飲み会などのオンラインイベント等を開催して、自社の飲み比べセット等をEC販売して、売上アップと認知度アップを図っています。
「酒類製造免許」のほかに「通信販売酒類小売業免許」を取得・活用して事業拡大した一例です。
オリジナルブランドの開発
EC販売によって、顧客層が国内だけでなく海外にも拡大していけば、新たな商品の拡充にもチャレンジできます。
たとえば、町の酒屋さんが、酒蔵にOEM(酒造委託)することで、自分たちのオリジナルの酒ブランドを開発し、販売することで、独自性のある商品を提供し、ブランド価値を高めることも可能です。
飲食店とのコラボレーション
EC販売によって、飲食店とのコラボレーションを行うこともできるでしょう。
有名な飲食店とのコラボレーションを行い、飲食店で提供される専用の酒を販売することで、飲食店との協業効果を高め、両者の知名度を向上させることができます。
ギフトの販売
EC販売によって、企業や団体向けに、オリジナルのラベルやパッケージのビジネスギフトを販売することで、大量の商品を販売することが期待できます。
店頭販売ではなし得なかった取引相手とのパイプもでき、通信販売酒類小売業免許を取得して活用した事業拡大が可能です。
通信販売酒類小売業免許でネットショップ販売をするときの注意点
通信販売酒類小売業免許を持つことで、インターネットなどを通じて酒類を販売することができますが、酒類の販売に関しては、酒税法、酒類業組合法、20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律、容器包装リサイクル法、独占禁止法、不当景品類及び不当表示防止法などさまざまな法律による制約や義務があるので、法令等に違反しないよう十分に注意する必要があります。
ここでは、通信販売酒類小売業免許でネットショップ販売をするときの以下のような注意点について解説していきましょう。
【通信販売酒類小売業免許でネットショップ販売をするときの注意点】
- 20歳未満の者に売らない
- 酒造業者・同業者には販売できない
- 通信販売酒類小売業免許での小売・仕入の制限
- 海外との取引には別途免許が必要
- 酒税法上の義務・手続き
- その他酒類販売事業者としての各種法令遵守
以下、順に解説します。
20歳未満の者に売らない
20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律(旧未成年者飲酒禁止法)の規定では、20歳未満の者の飲酒禁止やお酒の販売業者の20歳未満の者への販売禁止等が規定されています。
さらに、20歳未満の者の飲酒防止のために年齢確認などの措置を行う必要があることも規定されているので、「通信販売酒類小売業免許」で酒類のEC販売を行う際にも、これらの規定に従って、20歳未満の者にお酒を売らないようにしましょう。
酒造業者・同業者には販売できない
酒類小売業免許とは、酒類を消費者等に継続的に小売できる免許です。つまり、酒類小売業免許では、消費者等以外の酒造業者や同業者には販売できず、酒造業者や同業者等に販売するためには、別途「酒類卸売業免許」が必要となります。
酒類小売業免許に分類される「通信販売酒類小売業免許」でも、酒類製造業者や同業者である酒類小売業者に販売できないということに注意しましょう。
通信販売酒類小売業免許での小売や仕入の制限
「通信販売酒類小売業免許」では、いくつかの小売や仕入の制限があります。
たとえば、「通信販売酒類小売業免許」では、酒類の店頭小売や1つの都道府県の消費者等のみを対象とした小売などを行うことはできないので要注意です。これらのケースでは、「通信販売酒類小売業免許」ではなく、「一般酒類小売業免許」が必要とされます。
また、カタログやチラシ等の備え置きや雑誌新聞への広告掲載、テレビ放送の利用等に関しても、「1つの都道府県の消費者等のみを対象」としているとみなされれば、それに適した免許が必要となってきますので要注意です。
さらに、酒類を仕入れる場合には、原則として、酒卸売業者や酒類製造者から仕入れる必要があります。
海外との取引
EC販売で海外顧客と取引する場合には、取引相手が消費者か事業者か不明の場合もあるので、別途「輸出入酒類卸売業免許」が必要とされています。
酒税法上の義務・手続き
「通信販売酒類小売業免許」保有事業者も、酒類販売業者として、酒税法の規定による記帳義務や申告義務などの各種義務を履行する必要があります。
また、免許取得後も、販売所の移転・廃止・相続・事業譲渡等の事象が生じた場合には、必要な手続きを行うことも必要です。
さらに、酒類業組合法の規定では、酒類販売管理者の選任・届出・研修受講・標識の掲示義務等もあります。
その他の法令遵守
「通信販売酒類小売業免許」保有事業者も、酒類販売業者として、その他の各種法令を順守する義務を負います。
まず、通信販売が特定商取引法の規制対象になっていることから、同法に基づくネットショップに特定の項目を明記することが必要です。
また、国税庁が公表している「酒類に関する公正な取引のための指針」「酒類の公正な取引に関する基準」や公正取引委員会が所管する独占禁止法等の規定に基づき、「酒類の公正な取引」の確保に務めることが求められています。
そのほかにも、容器包装リサイクル法に基づく一定の事業者に課される販売に利用するレジ袋や包装紙などの再商品化義務などにも対応していく必要があるでしょう。
まとめ
ここまで、通信販売酒類小売業免許に関して、取得要件や申請方法、申請書類や費用、事業拡大例やネットショップ販売の注意点などをご紹介させていただきました。
今回の記事を参考に「通信販売酒類小売業免許」を取得して、あなたの蔵や店でもEC販売事業を強化していきましょう。
通信販売酒類小売業免許に関することだけでなく、酒造業、酒販事業など酒類関連事業に関するご相談は、お気軽にアンカーマンまでご連絡ください。
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