酒屋を開業するために効果的な資金調達方法とは?必要な免許や注意点も解説
日本には多種多様なお酒があり、その中でも日本酒や焼酎などの伝統的なお酒は外国人からも高い評価を受けています。
日本酒やウィスキーをはじめとした日本の酒類の輸出も堅調で、お酒の市場も日本国内にとどまらず、EC販売を含めて世界へと広がりを見せている状況です。
また、近年はクラフトビールやワインなどの多様なお酒も増えてきている中、お酒に関する知識や品質にこだわった専門店が注目されています。
酒屋を開業したいと思っている人にとっては、必要な免許や資金、手続き等が気になっているのではないでしょうか。
今回は、酒屋を開業したい人に向けて、必要な免許、効果的な資金調達方法、必要な手続きや開業時の注意点などをくわしく解説します。
酒屋を開業するために必要な免許
酒類を販売するための免許(酒類販売業免許)には、「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」があります。
このうち、「酒類小売業免許」は、「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」「特殊酒類小売業免許」という3つに区分されます。
酒屋を開業するためには、以下の免許のうち、いずれかを取得する必要があります。
【酒屋を開業するために必要な免許】
- 一般酒類小売業免許
- 酒類卸売販売免許
- 通信販売酒類小売業免許
それぞれについて順に解説します。
一般酒類小売業免許
一般酒類小売業免許は、店舗でのあらゆる種類の酒類の小売販売が可能な免許です。一般酒類小売業免許を保有しているだけでは、小売販売での営業は可能ですが、卸売や通信販売の営業はできないということに注意しておきましょう。
また、一般酒類小売業免許を受けるための要件は、以下のとおりです。
【一般酒類小売業免許の要件】
人的要件 | 申請者が酒類免許等の取消処分や刑罰、税金の滞納処分などを受けていないこと |
場所的要件 | 販売場が免許を受けている他の酒類の製造場・販売場や酒場、料理店等と同一の場所でないこと、他の販売場との区割りが明確であること |
経営的要件 | 酒類販売事業の継続に必要な資金・設備・経営能力等を有すること |
需給調整要件 | 販売先が構成に特定されていないこと、酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないこと |
上述したような「人的要件」「場所的要件」「経営的要件」「需給調整要件」といったすべての基準を満たしてはじめて一般酒類小売業免許を取得することが可能になります。
酒類卸売業免許
酒類卸売業免許は、酒販店や飲食店などの酒類販売業者や酒類製造者に対し、酒類を継続的に卸売することが可能な免許です。
酒類卸売業免許は、販売する酒類の範囲や販売方法によって、次の8つに区分されます。
【酒類卸売業免許区分】
免許区分 | 卸売できるお酒 |
全酒類卸売業免許 | すべてのお酒 |
ビール卸売業免許 | ビール |
洋酒卸売業免許 | 洋酒 |
輸出入卸売業免許 | 輸出入されるお酒 |
店頭販売酒類卸売業免許 | 店頭での直接取引 |
協同組合間酒類卸売業免許 | 協同組合への卸売 |
自己商標酒類卸売業免許 | 自己開発の商標のお酒 |
特殊酒類卸売業免許 | 特殊な形態で卸売 |
酒類卸売業免許にも、一般酒類小売業免許と同様に、「人的要件」「場所的要件」「経営的要件」「需給調整要件」といった各種要件があり、免許を受けるためにはすべての基準を満たす必要があります。
このうち、「人的要件」「場所的要件」「経営的要件」に関しては、一般酒類小売業免許の要件と内容はほぼ同じです。
しかし、「需給調整要件」だけは内容が異なり、「全酒類卸売業免許」と「ビール卸売業免許」について、都道府県ごとに卸売販売地域を設定し、販売場数と消費数量の各地域的需給調整を行っています。
通信販売酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許は、インターネットやカタログ等での通信販売が可能な免許です。
なお、「通信販売」とは、インターネットやFAX・カタログ等を利用した2都道府県以上の消費者への販売であり、販売場と同一の都道府県内だけで、インターネットやFAX・カタログ等を利用して販売するのであれば、「一般酒類小売業免許」での販売が可能です。
また、「通信販売酒類小売業免許」では、酒類の店頭小売や、1つの都道府県の消費者等のみを対象として小売を行うことはできないことを押さえておきましょう。
酒屋を開業する際に、はじめから店頭販売とEC販売の両方を行うつもりであれば、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の両方を取得しなければなりません。(※注釈1)
通信販売酒類小売業免許も、「人的要件」「場所的要件」「経営的要件」「需給調整要件」などのすべての基準を満たさなければ、免許を受けることができません。「人的要件」「場所的要件」「経営的要件」に関しては、一般酒類小売業免許の要件と内容はほぼ同じです。
しかし、「需給調整要件」だけは内容が異なり、国産酒の通信販売に関して、課税移出数量3,000㎘未満の製造元のお酒しか取り扱えないという販売制限があります。ちなみに、輸入酒に関してはこのような制限はありません。
※注釈1参照:国税庁「免許申請の手引(販売業免許関係)」
酒屋を開業するための免許と飲食店の違い
消費者にお酒を販売するという点では、酒屋も飲食店も同様です。しかし、酒屋を開業するための免許と飲食店を開業するための免許は異なります。
酒屋を開業するには、「酒類販売業免許」が必要ですが、飲食店を開業するには、「飲食店営業許可」が必要です。
「お酒を売るという点では同じなのに、どうして免許が違うんだろう?」
こんな疑問を抱く方もいるかもしれません。
これには、「お酒を開栓せずに商品として売るか、お酒を開栓して、コップなどの容器に移し、アルコール飲料として提供するか」といった違いがあるからです。
酒屋での酒類販売は、「酒税法上の酒類の小売業」となり、「酒類販売業免許」が必要であるのに対して、飲食店でのお酒の提供は、食品衛生法に基づいて行われるため、保健所から「飲食店営業許可」を取得して行わなければなりません。
酒屋を開業するための免許を取得する流れ
ここで、酒屋を開業するためにどのように免許を取得したらよいのか、免許を取得する流れについてご説明しましょう。
「一般酒類小売業免許」および「通信販売酒類小売業免許」を取得する基本的な流れとしては、販売場の所在地の所轄税務署に免許申請書や添付書類を提出してから、標準2ヶ月程度の審査期間を経て、免許付与等の通知を受けることになります。なお、免許交付時には、販売場ごとに3万円の登録免許税が必要です。
「酒類卸売業免許」を取得する場合には、まず、毎年9月1日に公表される各卸売販売地域(都道府県)における免許可能件数を確認してから、9月1日~9月30日までの抽選対象申請期間に免許申請を行い、10月に行われる公開抽選で審査順位が決定します。
その後は、審査順位ごとに審査開始通知書が送付されてくるので、通知日より2週間以内に必要書類を提出し、審査(標準処理期間2ヶ月以内)、免許付与等の通知という流れです。免許交付時には、販売場ごとに9万円(酒類小売業免許を条件緩和(解除)する場合は6万円)の登録免許税が必要となります。
酒屋を開業するための資金とは
まず、酒屋を開業するためには、どのような資金が必要になるのかについて確認することにしましょう。
酒屋を開業するためには、ざっくり、以下のような資金が必要です。
【酒屋の開業に必要な主な資金】
- 店舗を借りるための敷金・保証金
- 店舗の内装工事費用
- レジ・冷蔵庫・商品陳列棚・販売管理システム等の設備・その他備品・営業車両等購入費用
- ホームページ作成費用
- 会社を作る場合の設立費用
- 数ヶ月分の運転資金~商品の仕入れ費用、従業員の人件費、店舗や事務所の家賃、電気ガス代などの光熱費や通信費、広告費用など
酒屋を開業するために必要な資金には、大きく分けて、「設備資金」と「運転資金」の2種類の資金があります。
「設備資金」は、開業当初に一時的に必要な資金、「運転資金」は、売上が上がってくるまで経営を継続するための資金です。
「設備資金」は、自身が描く理想の店舗や事業計画と、実際の調達可能額とを照らし合わせながら決めることになるでしょう。
「運転資金」は、少なくとも3ヶ月分から半年分くらいは準備できるとよいとされています。
酒屋を開業するための資金調達方法
酒屋を開業するためには、開業資金が必要です。
ここでは、酒屋を開業するために必要な資金のことについて深掘りしていきましょう。
酒屋を開業するための資金調達には、次のような方法があります。
【酒屋を開業するための資金調達方法の種類】
- 融資
- 出資
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
以下、順に解説します。
融資
融資とは、金銭消費貸借契約による借入のことで、返済の必要がある資金調達方法の1つです。
親族や知人からの借入、金融機関からの借入、自治体の融資制度を利用した借入、日本政策金融公庫からの借入などがあります。
借入可能金額、利息、返済期間、担保や保証人の有無といった条件や自身の事業計画に基づいた返済計画などを総合的に勘案して、どのような融資を利用するのかを慎重に選ぶことが必要です。
出資
出資とは、事業の成長を見込んだ投資家が、会社の株式等と引き換えに、返済の必要のない資金を提供してくれる資金調達方法の1つです。
投資家は、酒屋の事業で将来利益が出た場合に、利益配当を受けることを期待して出資してくれます。
出資を検討する際の注意点として、資金提供の代わりに会社の株式を渡すということは、会社の経営に関与できるということなので、出資条件等は慎重に検討する必要があるということです。
補助金・助成金
自治体などが行っている創業支援制度として、補助金や助成金などが受けられる場合があります。
また、中小企業庁もさまざまな助成制度を展開しているのでチェックしてみましょう。
補助金や助成金は、融資とは異なり、返済の必要はありませんが、受給するまでに数ヶ月から長いと1年程度かかるケースがあるということ、手間のかかる申請手続きがあるということなどのデメリットも加味して検討するようにしましょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、専用のクラウドファンディングサイトなどで特定のプロジェクトに対して資金の支援を募る制度です。
開業支援プロジェクトとして、開業資金の支援を募ることも可能であり、返済の必要はなくメリットも大きいのですが、なかなか思ったとおりの資金が集まらないこと、プロジェクトの宣伝や広報活動に手間や時間を取られること、入金までには数ヶ月程度かかることなどデメリットもあります。
酒屋を開業するための資金調達方法の選び方
酒屋を開業するための資金調達の方法には、さまざまありますが、一概にどれがベストだということは言えません。
重要なのは、酒屋を開業するための資金使途や内容、具体的な金額に関して、入念な事業計画とともに明確にした上で、自身にはどのように資金調達が適しているのか慎重に考慮した上で、どのような資金調達方法を選択するのかを決定することです。
最低限、補助金や助成金の情報、創業支援として優遇される制度融資(都道府県などの自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度)の情報、日本政策金融公庫や地域の金融機関等からの融資条件等の情報など事前調査は欠かさないように準備しましょう。
酒屋を開業するために必要な手続きや流れ
酒屋を開業するために必要な免許取得の流れについては前述のとおりですが、ここでは、免許取得だけでなく、資金調達や事業計画の作成、店舗の決定など、酒屋を開業するために必要なその他の手続きについて流れをご説明いたします。
酒屋を開業する場合、下記の手続きが必要です。
【酒屋を開業するために必要な手続きや流れ】
- 事業計画の作成
- 経営形態の決定(会社or個人事業主)
- 販売場の決定・資金調達
- 会社設立手続き・税務署等への事業開始届手続き
- 酒類販売業免許取得手続き
- 店舗内装工事・設備備品の導入
- 商品の仕入れ
- 従業員の雇入れ
- 開業PR
- 開業準備
酒屋を開業すると決定したら、まずは事業計画を作成しましょう。事業計画の作成と同時に、会社を設立して経営するのか、個人事業として経営するのかも決める必要があります。
次に、酒屋をどこで開業するのか販売場の場所を決定する工程と資金調達です。店舗を探して、不動産賃貸借契約等を進めながら、資金調達もはじめましょう。
販売場の場所が決定したら、続いて、会社の設立、税務署等への開業届等の各種手続きです。自身で行うのが大変であれば、士業専門家等を活用するのもよいでしょう。
ここまで準備が進んだら、同時並行で酒屋を開業するために必要な免許取得手続きを行います。
酒屋を開業するための免許が取得できたら、いよいよ具体的な開業準備です。店舗内装工事や設備品の導入からはじまり、商品の仕入れや従業員の雇入れ、開業PR等を行います。
開業準備がきちんと進行しているか心配であれば、酒類販売業に精通したコンサル会社や専門家の支援を受けることも選択肢の1つです。
酒屋を開業するために必要な管理者
酒屋を開業するためには、酒類販売業免許が付与された販売場ごとに「酒類販売管理者」を配置しなくてはなりません。
「酒類販売管理者」とは、販売場ごとに設置して、販売管理やスタッフへの指導などを行う管理者です。
「酒類販売管理者」を設置するには、3年ごとに指定の酒類販売管理研修を受講した者を、酒類販売管理者として選任し、選任後2週間以内に「酒類販売管理者選任届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。
酒屋を開業する際の「酒類販売業免許」申請時には、申請前に管理者候補者に酒類販売管理研修を受講させ、免許申請書に「酒類販売管理者」として記載する必要があります。
なお、酒屋(酒類小売業者)を開業した際には、「酒類販売管理者」の標識を販売場の見やすいところに掲示しなければなりません。
酒屋を開業する時の注意点
最後に、酒屋を開業する際の注意点についても触れておきましょう。
酒屋を開業する上で、もっとも入念に準備すべきは「事業計画の作成」です。
コンビニやスーパー、オンラインショップなど競合他社との差別化をどのように図っていくのか、小売・卸売・通信販売など自身の強みはどこにあるのか、販路や資金をどのように確保するのか、酒屋の経営を安定して継続させていくためにどのようなマーケティング戦略を打っていくのかなど、あらゆる角度からアプローチして事業計画を作成することが重要になってきます。
また、未成年者への酒類の販売に関して、入念な年齢確認の実施など、やるべきことをやっておかないと、最悪のケースとして、免許取り消しなどの事態を招いてしまうため、注意が必要です。
さらに、基本的なことにはなりますが、酒類販売業免許にはいくつかの種類がありますので、自身の事業に適した免許を取得することが必要となってきます。免許を取得する際には、自身の事業計画と照らし合わせて、必要な免許を取得しましょう。
まとめ
ここまで、酒屋を開業する際に、必要な免許、効果的な資金調達方法、必要な手続きや開業時の注意点などをご紹介させていただきました。
酒屋を開業するためには、資金を準備し、必要な手続きを経て、国税庁から必要な免許を取得する必要があります。
開業してスタートラインに立ったあと、お客さまの求めているお酒を提供していくためには、さまざまな売り方の工夫をしていく必要もあるでしょう。
「販路はどうしたらいいんだろう?」
「免許は?資金は?仕入は?」
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