酒匠(さかしょう)とは?必要な知識やスキル、受験資格や試験内容を解説

酒造業・酒販業といった酒類関連事業に関わるなら、「酒匠(さかしょう)」という資格も取得しておいたほうがいいかもしれません。

「酒匠」は、「唎酒師」と似た酒類関連資格で、高いテイスティング能力を生かした日本酒・焼酎のセールスプロモーションを行うプロとしての資格です。

今回は、「酒匠」という資格について、資格の概要や求められる知識やスキル、資格取得の方法やメリット、次に目指すキャリアや資格までくわしく解説します。

■日本酒に関する資格についてくわしく知りたい方は「日本酒の資格の種類とは?取得するメリットや効果的な勉強方法を解説」をご覧ください。

酒匠とは

「酒匠」とは、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)が認定している民間資格です。

「唎酒師」の上位資格として位置づけられており、「上級唎酒師」「上級焼酎唎酒師」となります。

「酒匠」は、高度なテイスティング能力により、日本酒や焼酎のセールスプロモーションを行うことを目的とした資格です。

酒匠に求められる知識やスキル

酒匠になるためには、どのような知識やスキルが必要なのでしょうか。

ここでは、酒匠に求められる知識やスキルについて解説します。

【酒匠に求められる知識やスキル】

  • 日本酒と焼酎の原料や製法に関する深い理解
  • テイスティングでの特性の把握や表現力
  • 料理とのペアリングを提案するスキル

日本酒と焼酎の原料や製法に関する深い理解

酒匠に求められる知識としては、日本酒や焼酎の原料や製法が挙げられます。

酒匠には、「味の要素」の理解が必須です。

「味の要素」を理解するためには、前提として、日本酒や焼酎の原料や製法に関して、深く理解しておくことが必要になります。

また、顧客など第三者に説得力のある説明をするためには、日本酒や焼酎の味わいの違いを表現する上で、味の要素の理解が欠かせません。

テイスティングでの特性の把握や表現力

酒匠は、「テイスティングの専門家」であり、テイスティングでの特性の把握や表現力が必要とされます。

テイスティングでの特性の把握とは、原料別、製法別、タイプ別など専門的なテイスティングの能力を高めること。

また、酒匠の役割は、日本酒や焼酎を、飲食店や酒販店のお客さま(消費者)に「このお酒はこんなお酒」と表現して、正確に特性や魅力を伝えることです。

そのためには、表現力が重要となるのは言うまでもありません。

料理とのペアリングを提案するスキル

酒匠には、料理との効果的なペアリングを提案するスキルも必要です。

飲食店や酒販店のお客さま(消費者)に、食中酒として日本酒や焼酎を選んでもらう際、

料理とのペアリングは不可欠となります。

「今夜食べる料理にはどのようなお酒が合うのか」を「テイスティングの専門家」として提案できてこそ、顧客満足度の向上が図れるとすれば、酒匠として求められるスキルとして、「料理とのペアリングの提案」は重要です。

酒匠になる方法

どのようなステップを踏めば、酒匠になることができるのでしょうか。

ここでは、酒匠になる方法について解説します。

【酒匠になる方法】

  • 酒匠の受験資格
  • 酒匠認定講習会と試験内容
  • 資格取得に必要な費用と期間

酒匠の受験資格

酒匠の受講受験資格として、「唎酒師」および「焼酎唎酒師」の両方の資格保有者(認定者)であることと、FBO認定会員であることの両方が必要です。

ちなみに、国際唎酒師と国際焼酎唎酒師は対象外となります。

仮に、認定者でない場合には、認定を受けていない資格取得のコースに申込済みである場合にのみ受講受験が可能となります。

さらに、以下のいずれかの条件を満たすことも必要です。

  • 酒匠/日本酒学講師講習会受講者限定「VR日本酒製造体験プログラム」への参加
  • 指定するFBO及び提携加盟団体が主催するいずれかのセミナー等への参加
  • 酒蔵で製造現場を見学した証明として「蔵元見学証明書」の提出

酒匠認定講習会と試験内容

酒匠になるためには、SSI指定の講習会を2日間受講した後、別日に指定の試験(第1〜4次)を受け、認定基準に達することが必要になります。

酒匠認定講習会と試験内容については、以下のとおりです。

区分形式内容
認定講習会2日間連続で約18時間

味の要素の理解や香りの表現例の習得などにより高度なテイスティング能力を身につけることが目的
  • 香りのサンプル、水溶液など多数のアイテムを使用
  • 嗅覚、味覚能力の向上を目指す基礎トレーニング
  • 日本酒・焼酎の特性を見極める能力を磨く、酒類の比較テイスティングなど
1次試験【筆記】
選択・記述式
テイスティングの専門知識
2次試験日本酒・焼酎の高度な専門知識
3次試験【テイスティングを伴う筆記】
選択・記述式
  • 日本酒・焼酎の原料・製法による香味特性の識別
  • 劣化した日本酒・焼酎の識別
4次試験
  • 日本酒・焼酎の香味特性の視覚化および数値化
  • 日本酒・焼酎の特性を伝えるべくテイスティングコメント作成

資格取得に必要な費用と期間

酒匠の資格取得に必要な期間としては、認定講習会の受講に2日間、試験に1日の合計で最短3日間で取得可能です。

酒匠の資格取得費用は、講習会の受講費用および試験費用で114,000円(税込)、不合格の場合の再受験料は1回につき1万5,000円(税込)、認定登録料は2万5,000円(税込)となっています。

また、ブラッシュアップコースとして、57,200円(税込)を支払えば再受講することも可能です。

酒匠になるメリット

酒匠の資格を取得することで、酒類関連事業に従事する上でどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、酒匠になるメリットについて解説します。

【酒匠になるメリット】

  • 酒販店での販売促進と顧客へのアドバイスができる
  • 酒類卸でバイヤーができる
  • 酒蔵での商品開発やプロモーション
  • 飲食店での日本酒と焼酎のサービス力が上がる

酒販店での販売促進と顧客へのアドバイスができる

酒匠の資格を取得すれば、酒販店で活躍することが可能です。

日本酒や焼酎のポジショニングMAPを活用して、香味の「視覚化」や「数値化」を行うことで、顧客へわかりやすくアドバイスすることができます。

また、酒販店における商品選定や販売プロモーションなど、販売企画立案力の向上が狙えるでしょう。

酒類卸でバイヤーができる

酒匠の資格を生かして、酒類卸売業のバイヤーとして活躍することができるのも、メリットの1つです。

高度なテイスティング能力により、売れ筋商品やこれから流行るであろう酒類の提案や、酒類小売が求めている商品の提供などができます。

酒蔵での商品開発やプロモーション

酒匠の資格があれば、酒蔵での活躍も期待できます。

酒蔵において、酒匠の高度なテイスティング能力や日本酒や焼酎の原料・製法に関する深い知識を生かして、新商品開発をすることも可能です。

また、酒蔵の商品を販売するためのプロモーションなどの企画・実行に酒匠の資格を生かすこともできるでしょう。

飲食店での日本酒と焼酎のサービス力が上がる

酒匠の資格を飲食店で生かせることも、酒匠資格取得のメリットの1つです。

飲食店の来店客に対して、メニューにある日本酒や焼酎のわかりやすく説得力のある説明や、料理に合わせたお酒の提案など、サービス力の向上に寄与します。

酒匠が次に目指すキャリアや資格

「唎酒師」の上位資格としての位置づけとされている「酒匠」ですが、「酒匠」の資格取得後、どのようなキャリアや資格を目指していくべきでしょうか。

ここでは、酒匠が次に目指すキャリアや資格について解説します。

【酒匠が次に目指すキャリアや資格】

  • SSI研究室専属テイスターを目指す
  • 日本酒学講師などの関連資格を取得する

SSI研究室専属テイスターを目指す

「酒匠」の資格取得後、「SSI研究室専属テイスター」を目指すのもアリでしょう。

「SSI研究室専属テイスター専属テイスター」とは、SSI研究室に所属し、テイスティングに関する業務を行う「日本酒・焼酎のテイスティングの専門家」です。

「SSI研究室専属テイスター」は、SSIが定めるプログラムに参加し、より専門性の高いトレーニングを積み、選考会で認定を受けなければ取得できず、現在100名程度在籍するのみの非常にハードルの高い資格となっています。

日本酒、焼酎を取り扱うビジネス分野における酒類マネジメントのプロフェッショナルとして、キャリアを積むことが可能です。

日本酒学講師などの関連資格を取得する

セールスプロモーションなど酒類提供者向けの資格の最上位の位置づけである「酒匠」を取得できたのであれば、日本酒学講師などの関連資格を取得することも選択肢の1つでしょう。

「日本酒学講師」とは、SSIが認定する講師として「國酒である日本酒と焼酎を正しく伝えることができる資格」です。

「日本酒学講師」には、「日本酒ナビゲーター認定講師」と「焼酎ナビゲーター認定講師」があり、「唎酒師」の資格保有者は「日本酒ナビゲーター」を、「焼酎唎酒師」の資格保有者は「焼酎ナビゲーター」を認定することができます。

酒匠のまとめ

ここまで、「酒匠」という資格について、資格の概要や求められる知識やスキル、資格取得の方法やメリット、次に目指すキャリアや資格などをご紹介させていただきました。

「酒匠」は、酒類提供者向けの資格としては、最上位の資格です。

「酒匠」の資格を取得して、酒販店や酒蔵、飲食店などで活躍するキャリアにつなげていきましょう。

アンカーマンでは、「酒匠」を含めて資格をどのようにマーケティングに活かすかといった酒類事業者向けマーケティングサポートもご用意しています。

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