期限付酒類小売業免許とは?申請と届出の違い、要件や必要書類もわかりやすく解説

新型コロナも5類に移行し、「インバウンド」も復活の兆しを見せ、日本酒を含めた日本産酒類の海外輸出が好調の中、今や世界でも注目を集めている日本酒の展示会やイベント(以下、「イベント等」と呼称)も各地で活況を帯びています。

酒類事業者であれば、イベント等に出展して、自社や商品を広告宣伝して、認知度アップや新たな販路の開拓、顧客の獲得を図っていきたいと考えるでしょう。

イベント等に参加して、お酒を販売するためには、既に保有している酒類業免許では足りず、「期限付酒類小売業免許」を別途取得する必要があることをご存じでしょうか。

今回は、イベント等への参加を考えている酒類事業者さまに向けて、期限付酒類小売業免許に関する申請と届出の違い、要件や必要書類、免許を活用した販売例や免許に関する注意点・ポイントなどをわかりやすく解説します。

期限付酒類小売業免許とは

「期限付酒類小売業免許」とは、既に酒造免許や酒販免許を取得している酒類事業者の方が、期間限定の単発イベント等に参加する場合等、免許を付与された酒類販売場以外の場所で酒類を小売しようとするケースで必要になる免許です。

「期限付酒類小売業免許」を取得できるのは、原則として、免許のある酒類製造者または酒類販売業者であり、酒類業免許を付与されていない事業者は、申請しても、「期限付酒類小売業免許」の付与を受けることができません(※)。

※ただし、一部例外的に、酒類業免許を付与されていない事業者でも、「期限付酒類小売業免許」の付与を受けられることもあります(国税庁法令解釈通達第9条第2項関係1(1)注)。

ただし、この場合には、届出手続きの対象にはならず、原則どおり申請手続きで行うことになるので注意しましょう。

具体的には、「野球場等の競技場、遊園地、キャンプ場、スキー場、海水浴場等季節的又は臨時に人の集まる場所、ダム工事現場等又は季節的な遊覧旅行を目的とする臨時列車内若しくは遊覧船内等の場所において、現に固定した店舗を設け、清涼飲料又はし好飲料の販売を業として行っている者が申請者の場合で、販売場廃止後の酒類の引渡先(当該免許申請に係る酒類の品目について製造免許又は販売業免許を受けている製造者又は酒類販売業者をいう。)及び引渡期日があらかじめ定められており、かつ、当該引渡先が確実に引き取る旨の確約書を提出しているときは、上記イの規定にかかわらず、期限付酒類小売業免許を付与することができる。」とされています。

酒類事業者向けイベントや展示会出展についてくわしく知りたい方はこちら⇒売上アップにつなげる!酒類事業者向けイベントや展示会出展のコツとは

期限付酒類小売業免許の申請と届出の違い

イベント等で未開栓の酒類を販売するときは、「期限付酒類小売業免許」が必要です。

「期限付酒類小売業免許」を受ける手続きとして、原則、販売場開設日の2週間前までに販売場開設場所管の税務署に申請が必要となりますが、一定要件を満たせば、販売場開設日の 10 日前までの届出で足ります。

「申請」と「届出」の違いは、「申請」は書類を提出してから内容について審査があり、許可されれば、免許を取得でき、不許可ならば免許がもらえないのに対して、「届出」は、書類を提出して、不備などなければ、免許を取得できるという点です。

「期限付酒類小売業免許」の申請か届出かに関しては、以下の判定表で判断しましょう。

【期限付酒類小売業免許判定表】

イベント等での未開栓の酒類の販売か?
↓はい  ↓いいえ

イベント等での開栓した酒類の販売は、食品衛生法に基づく「営業許可」

既に酒造免許や酒販免許を取得している酒類事業者による販売か?
↓はい  ↓いいえ

申請・届出ともに不可

酒類の特売・在庫処分等に該当するか?
該当しない↓  ↓該当しない

酒類の販売不可

イベント等の開催期間や期日が決まっているか?
↓はい  ↓いいえ

申請・届出ともに不可

イベント等の管理者との契約で販売場が特定されているか?
↓はい  ↓いいえ

申請・届出ともに不可

届出の要件をすべて満たしているか?
↓はい  ↓いいえ
届出(販売場開設日の 10 日前まで)申請(販売場開設日の 2週間前まで)

※参照:国税庁「期限付免許判定フローチャート

「期限付酒類小売業免許」の取得手続きにおける「申請手続き」を簡略化した手続きが「届出手続き」です。

「申請手続き」と「届出手続き」では、審査の有無のほか、要件、期限、必要書類などに違いがあります。

期限付酒類小売業免許の要件

期限付酒類小売業免許の「届出」と「申請」に関しては、それぞれ要件が異なります。

期限付酒類小売業免許の取得手続きに関しては、「届出」手続きの要件にすべて該当すれば「届出」手続きで済みますが、1つでも該当しなければ、原則どおり「申請」手続きが必要です。

ここでは、期限付酒類小売業免許の「届出」と「申請」の各要件について確認していきましょう。

届出による期限付酒類小売業免許の要件

届出による期限付酒類小売業免許を取得するためには、下記全ての要件を満たしている必要があります。

【届出の要件】

  • 届出者が、酒類製造者又は酒類販売業者であること
  • イベント等開催期間のうち、酒類販売期間が10日以内(連続した日でなくてもよい)
  • 同一者による同一場所での届出が開設日前1ヶ月以内にされていない
  • イベント等の開催期間・開催期日が明確
  • イベント等の開催場所以外への酒類の配達をしない(購入者の宅配便等の利用は可)
  • 免許を受けた酒類品目の範囲内での販売であり、特売・在庫処分等ではない
  • イベント等の管理者との契約等で販売場の設置場所が特定

届出によって期限付酒類小売業免許の手続きが行えるのは、既に酒造免許や酒販免許を取得している酒類事業者がイベント等で臨時に販売場を設け酒類の小売を行う場合で、かつ、届出の要件をすべて満たした場合に限られます。

届出手続きは、1ヶ月に1回であり、イベント等開催期間中、酒類販売が通算 10 日以内で、開催期間・期日、販売場の設置場所が決定されていることが必要です。

販売する酒類の範囲が、免許を受けた酒類品目と同一であり、特売や在庫処分をしないこと、外部へ配達しないことなども要件の1つとなります。

申請による期限付酒類小売業免許の要件

申請による期限付酒類小売業免許の要件としては、申請者、申請販売場、申請目的等が下記の事項に該当している必要があります。

【申請の要件】

  • 原則として申請者が酒造免許か酒販免許を既に保有している事業者(一部例外あり)であり、イベント等で臨時に販売場を設けて酒類の小売を行う
  • 同一者による同一場所での届出が開設日前1ヶ月以内にされていない
  • イベント等の開催期間・開催期日が明確(列車や船の運行期間含む)
  • 酒類の小売目的が、特売や在庫処分等ではない
  • イベント等の管理者との契約等で販売場の設置場所が特定

届出の要件に1つでも該当しない場合には、期限付酒類小売業免許の申請手続きが必要となってきます。

なお、申請者に関しては、原則として、酒造免許か酒販免許を既に保有している事業者とされていますが、一部例外規定があり、酒造業・酒販業の免許保持者でない場合でも期限付酒類小売業免許を申請できる場合があります(国税庁法令解釈通達第9条第2項関係1(1)注)。

届出手続きとの要件と近時していますが、1ヶ月に1回であること、イベント等開催期間中、酒類販売が通算 10 日以内であること、外部へ配達しないことなどは要件に含まれていません。

期限付酒類小売業免許の必要書類

期限付酒類小売業免許の「届出」と「申請」に関しては、それぞれ手続きにおける必要書類が異なります。

ここでは、期限付酒類小売業免許の「届出」と「申請」の各々の必要書類について確認していきましょう。

届出による期限付酒類小売業免許の手続きの必要書類

届出による期限付酒類小売業免許の手続きの際に、届出書に添付する必要書類は以下のとおりです。

【届出の必要書類】

  • 期限付酒類小売業免許届出書
  • 販売場の敷地の状況
  • 建物等の配置図
  • 「酒類の販売管理の方法」に関する取組計画書
  • 契約書等の写し
  • 使用(営業)許可証の写し、申請販売場の賃貸借契約書の写しなど、その他土地、建物、設備等が自己の所有に属しない場合で、確実に使用できることが認められる書類(自己の所有に係る土地、建物において臨時販売場を設ける場合には、催物のパンフレットなど、その場所において催物等を開催することが確認できる書類)
  • 販売場を設置しようとする場所、イベント等についての説明書(イベント等の具体的な内容・開催期間・期日・入場料金等についてのパンフレット等)
  • 酒類販売管理者選任(解任)届出書
  • 免許申請書チェック表

届出による期限付酒類小売業免許の手続きの際に必要な書類は上記のとおりですが、これらの書類以外にも提出を求められる場合があるので、事前に確認することをおすすめします。

申請による期限付酒類小売業免許の手続きの必要書類

申請による期限付酒類小売業免許の手続き(期限付酒類卸売・小売業免許の申請)の際に、申請書に添付する必要書類は以下のとおりです。

【申請の必要書類】

  • 酒類販売業免許申請書
  • 販売場の敷地の状況
  • 建物等の配置図
  • 事業の概要
  • 「酒類の販売管理の方法」に関する取組計画書
  • 酒類販売業免許の免許要件誓約書
  • 酒類販売管理者選任届出書
  • (法人の場合)定款の写し
  • 契約書等の写し
  • 土地、建物、設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、建物が未建築の場合は請負契約書等の写し、農地の場合は農地転用許可に係る証明書等の写し、その他土地、建物、設備等が自己の所有に属しない場合で、確実に使用できることが認められる書類
  • 地方税の納税証明書
  • 販売場を設置しようとする場所、イベント等についての説明書
  • 既免許者でない場合には申請販売場における酒類小売業廃止の際の手持酒類の処分方法及びその引渡先の酒類製造業者又は酒類販売業者の引取確約書等
  • 免許申請書チェック表

申請による期限付酒類小売業免許の手続きの際に必要な書類は、届出の際の書類とは若干異なっています。

また、これらの書類以外にも提出を求められる場合があるので、事前に確認しましょう。

期限付酒類小売業免許での販売例

イベント等での酒類の販売・提供に関しては、販売・提供対象のお酒の開栓の有無によって、酒税法に基づく「期限付酒類小売業免許」と、食品衛生法に基づく「営業許可」が関係してきます。

簡単に言えば、未開栓の酒類の販売に関しては「期限付酒類小売業免許」であり、開栓した酒類の販売・提供に関しては、「営業許可」の対象です。

ここでは、販売・提供形態の具体例によって、どのような免許や許可が必要になるのかを見ていきましょう。

未開栓の酒類の販売について

期限付酒類小売業免許を保有していれば、イベント等で未開栓の酒類を販売できます。

ただし、この販売には、特売や在庫処分は含まれず、期限付酒類小売業免許を保有していたとしても、イベント等での未開栓の酒類の特売や在庫処分は認められていません。

また、販売酒類の在庫は、臨時販売場内に持参して置いておく必要があり、販売場以外の場所で保管することも禁止となっています。

開栓した酒類の提供について

イベント等で、開栓したお酒を販売するケースについては、酒類販売免許は必要ありませんが、原則として食品衛生法上の営業許可が必要になります。

イベント等の開催場所、主体、種類、期間等によって、食品衛生法上の営業許可の要否が決まり、営業許可の短期・長期、免許手数料などに違いが出てくるようです。

営業許可は、イベント等の施設および人に対して付与されるので、イベント等参加者が、別の施設や人に対して、既に営業許可を保有していたとしても、イベントごとに営業許可を取得する必要があります。

試飲について

イベント等で、未開栓の酒類を販売するために、または、商品のPRを行うために「試飲」を行うケースがあります。

「試飲」に関しては、開栓したお酒を提供するケースに該当するので、酒類販売免許は必要ありません。

しかし、「試飲」が、一時的に行われる場合には、管轄保健所に対して「試飲報告書」の提出が求められ、繰り返し行われる場合には、食品衛生法上の営業許可が必要になる場合もあります。

期限付酒類小売業免許の取得費用

期限付酒類小売業免許の取得費用に関しては、申請と届出どちらも登録免許税は不要です。

したがって、自身で手続きをすべて行えば、原則として取得費用はかかりません。

他方、行政書士に免許申請手続き代行を依頼する場合には、代行費用がかかります。

行政書士の先生によって費用はまちまちですが、代行費用に関しては、「申請人が個人・法人の別」「手続きが申請・届出の別」などによって料金が変わるようで、相場としては、数万円〜10万円程度のようです。

期限付酒類小売業免許の注意点とポイント

最後に、期限付酒類小売業免許の注意点とポイントについて、確認していきましょう。

期限付酒類小売業免許の注意点とポイントについては、以下のとおりです。

【期限付酒類小売業免許の注意点とポイント】

  • 届出による期限付酒類小売業免許にて臨時販売場を設置する場合、販売場以外の場所へ酒類を配達することはできない
  • 酒類販売管理者を選任する必要がある
  • 開設期間終了後、販売数量の報告義務がある

以下、順に説明します。

届出免許の場合の販売場以外への酒類配達禁止

届出手続きにより、期限付酒類小売業免許を取得して、臨時販売場を設置する場合には、販売場以外の場所へ酒類を配達することはできないことを押さえておきましょう。

このケースでは、イベント等の販売場で酒類を販売した場合には、お客さまへの酒類のお渡しは、販売場内で手渡しで行う必要があります。

臨時販売場で申込み手続きだけを行い、「後日、商品は配達します」という方法はとれません。

ただし、購入者が自身で宅配便等を利用することは可能です。

酒類販売管理者の選任

期限付酒類小売業免許の取得手続きにおいては、「届出」でも「申請」でも、酒類販売管理者を選任する必要があります。

酒類販売管理者に選任できる人は、酒類販売業務に従事している従業員であり、かつ、指定の研修を受講した人でなければなりません。

酒類販売管理者は、原則として、販売場ごとに設置する必要があるため、期限付酒類小売業免許の販売所においても新たな酒類販売管理者を選任する必要があります。

しかし、酒類販売管理者を何人も選任できない人的リソースに余裕がない酒類事業者もあるでしょう。そのような事情が考慮され、例外的措置として、本来の販売場の近隣で行われる1週間程度の短期間のイベント等への出店の場合には、酒類販売管理者を重複して選任しても差し支えないとされています。

ただしこの場合でも、本来の販売場には、「酒類販売管理者の代行者としての責任者」を設置する必要があることを押さえておきましょう。

開設期間終了後の販売数量の報告義務

臨時販売場の開設期間が終了したら、期限付酒類小売業免許の申請・届出を行った税務署に対して、販売数量の報告義務があります。

イベント等終了後に酒類の販売数量等報告書や「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」の実施状況報告書等を提出する必要があるので念頭に置いておきましょう。

まとめ

ここまで、イベント等への参加を考えている酒類事業者さまに向けて、期限付酒類小売業免許に関する申請と届出の違い、要件や必要書類、免許を活用した販売例や免許に関する注意点・ポイントなどご紹介させていただきました。

イベント等に参加する場合には、期限付酒類小売業免許を取得する必要があるのか、免許取得する必要がある場合、「届出・申請の別」「要件・必要書類」などを確認して手続きを行いましょう。

期限付酒類小売業免許を含めたイベント等だけでなく、補助金やマーケティングのことに関して、ご興味やお困り事、ご不明点等あれば、お気軽にアンカーマンまでご連絡ください。

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