お酒にかかる税金の仕組みと負担率を徹底解説!酒税法改正に合わせた販売戦略も紹介

お酒に関する税金の仕組みに関しては、一般の消費者にはあまり認知されていませんが、2023年10月1日より酒税率の改定が実施され、ビールなどの税率が下がったことから世間でも話題となりました。

今回の酒税率の改定で、お酒代が安くなるかもしれないという期待感を持った消費者も多いことから、今後、酒販事業者として、お酒に関する税金を含めた販売戦略について考えていく必要があるでしょう。

今回は、お酒にかかる税金の仕組みと負担率について解説するとともに、酒税法改正に合わせた酒販事業者の販売戦略まで掘り下げていきます。

お酒にかかる税金の仕組みと負担率

ここでは、まず、お酒にかかる税金の仕組みと負担率について確認していきましょう。

お酒にかかる税金の仕組み

お酒には、酒税と消費税がかかります。

酒税とは、酒税法によって定められている間接税の一種であり、酒類出荷の際に製造者が納税義務者として課税される個別消費税としての位置づけとなっています。

ただし、お酒の販売価格に酒税分を上乗せして販売されるため、担税者は消費者です。

酒販事業者が酒類を販売する際には、商品の販売やサービスの提供に対してかかる消費税のほか、酒税が上乗せされます。

つまり、一般消費者がお酒を購入する際に、酒類小売業者に支払っている酒類の小売価格(税込み)には、商品自体の代金と酒税額や消費税額などの税金が含まれているということです。

種類や度数で細かく設定された酒税について

酒税は、酒類の種類や度数で細かく設定されています。

具体的には、酒税は、以下のとおり、酒税法上で分類された4種17品目の酒類の分類ごとに、1リットルあたりの税率が定められている仕組みです。

【酒類の種類】

  • 発泡性酒類:ビール、発泡酒、その他の発泡酒(シャンパンなど)
  • 醸造酒類:清酒(日本酒)、果実酒(梅酒など)、その他の醸造酒
  • 蒸留酒類:連続式焼酎、単式蒸留焼酎、原料用アルコール、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ
  • 混成酒類:合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒

酒税と消費税を合わせた税負担の割合について

酒税と消費税を合わせた税負担率は、お酒の種類によって異なります。

酒税と消費税を合わせた税負担の割合については、毎年、国税庁から公表される「酒のしおり」の付属資料の中の「付表1 主要酒類の酒税等負担率表」によって大まかな理解が進むはずです。

■参照:国税庁令和5年6月「酒のしおり/付表1 主要酒類の酒税等負担率表(令和4年12月現在)

しかし、直近の国税庁のデータには、2023年(令和5年)10月の酒税法改正は反映されていませんので、筆者が独自に計算した事例を以下に示します。

まず、酒類に消費税率の軽減税率は適用されませんので、消費税率を10%で計算すると、代表的なものの小売価格(税込)÷1.1で消費税額の算出が可能です。

また、酒類の小売価格(税込)には、原価として酒税額が盛り込まれていますので、2023年10月以降の酒税額に基づいて計算します。

2023年10月の酒税法改正で、ビール350㎖につき6.65円減税されたので、仮に、代表的なものの小売価格を、令和4年12月現在の表の数値である230円(税込)から10円値下げした220円(税込)として、計算すると以下の表のとおりです。

品目容量アルコール分代表的なものの
小売価格(税込)①
酒税額②消費税額③酒税等負担率
(②+③)/①
ビール350㎖5.0%220円63.35円20円37.9%

2023年10月の酒税法改正以降、ビール350㎖に関する酒税と消費税を合わせた税負担の割合は、37.9%となりました。

2023年10月改正以前の「主要酒類の酒税等負担率表」のビール350㎖の酒税等負担率も、39.5%となっており、ビール350㎖缶で、小売価格(税込)の約4割弱がお酒に関する税金であるということがわかります。

2023年10月の酒税法改正のポイント

2018年(平成30年)に酒税法が改正され、2020年(令和2年)、2023年(令和5年)、2026年(令和8年)と段階的に各酒類の酒税率が変更されることとなりました。

ここでは、2023年10月の酒税率の変更(酒税法改正)のポイントについて解説します。

2023年の酒税法等の改正についてさらにくわしく知りたい方は、「令和5年酒税法等の改正とは?概要やスケジュール、新制度の内容や手続きについてわかりやすく解説」をご覧ください。

ビールは減税&第3のビールは増税

ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンルなど)の税率については、2026年(令和8年)10月に、1㎘当たり155,000円(350㎖換算54.25円)に一本化することを前提として、2020年(令和2年)10月、2023年(令和5年)10月、2026年(令和8年)10月と3段階で酒税率の変更が実施されています。

2023年(令和5年)10月より、ビール(原料である麦芽の使用割合が50%以上で、麦や米、果実、コリアンダーなどの香辛料といった特定の副原料を使用したもの)の税率に関しては、1㎘当たり200,000円(350㎖換算70円)から181,000円(350㎖換算63.35円)に下がりました。

ちなみに、麦芽比率25~50%未満の発泡酒(原料である麦芽の使用割合が50%未満であるか、ビールの製造に認められない副原料を使用したもの)の税率も、1㎘当たり167,125円(350㎖換算58.49円)から155,000円(350㎖換算54.25円)となり、税率ダウン措置です。

ただし、麦芽比率25%未満の発泡酒の税率は据え置きで、1㎘当たり134,250円(350㎖換算46.99円)のまま、新ジャンル(第3のビール、麦芽の代わりに大豆やエンドウ豆、トウモロコシなどを使ったものや、発泡酒に大麦などを発酵させた蒸留酒を加えたもの)にいたっては、麦芽比率25%未満の発泡酒と同水準となり、税率がアップしました。

日本酒は減税&ワインは増税

醸造酒類(清酒、果実酒等)の税率については、2023年(令和5年)10月に、1㎘当たり100,000円に一本化されました。

醸造酒類の税率の一本化措置に際し、清酒の税率は、1㎘当たり110,000円から100,000円に下がったのに対して、ワインなど果実酒の税率は、1㎘当たり90,000円から100,000円に上がったので押さえておきましょう。

酒税法改正の背景

過去、幾度となく改正を繰り返してきた酒税法。酒税法は、どのような目的や背景のもと、改正されてきたのでしょうか。

ここでは、酒税法改正の背景について、酒税法の歴史の振り返りなどと合わせて解説します。

酒税法の制定目的の変遷

酒税には、長い歴史があり、室町時代から現在に至るまで、国の重要な財源の1つです。

昔の酒税法の制定目的は、現在とは少し違っていました。古くは、お酒の飲みすぎによる民衆の堕落を懸念してお酒の販売禁止令を出していたものの、税収を期待して酒税をはじめたという経緯があります。

明治時代になり、酒税徴収の目的が軍事費増強のための原資へと変わり、酒類による税率変動の仕組みへの改正、戦争による酒蔵減少などによる税収減対策としての酒税の税率アップのための改正などと制定目的の変遷をたどりました。

戦後、現在の酒税法が制定され、お酒は国の重要な財源としての位置づけは変わらず、高級品として高い税率が維持されており、近年は、酒類の種類を4種類に絞るなど、酒税法の簡素化を目的とした改正なども行われています。

直近の酒税法改正の背景

直近の酒税法改正の背景には、アルコール飲料が多様化したことに伴って、複雑化している酒税率の分類を簡素化することで、酒税制度の公平性の確保を目指し、市場の健全な競争を回復するといった政府の思惑があります。

たとえば、ビール系飲料を含む酒類の消費数量は1994年(平成6年)をピークに減少傾向にあり、ことビールの課税数量の大幅な減少は、発泡酒や第3のビールの登場により選択肢が増え、消費が移行したことが原因の1つと考えられます。

■参照:国税庁令和5年6月「酒のしおり

直近の酒税法改正の目的を、「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、税収中立の下、実施(参照:国税庁「酒税改正(平成29年度改正)について」)」としていることからも、より明確な酒税税制の確立としていることがわかります。

国の重要な財源の1つである酒税は、酒類間の税負担の公平性を確保することで、商品の選択や市場の健全な競争を促進させることを目途として、「わかりやすく公平な酒税」として、「酒税率の一本化」を進めるといった酒税法改正が行われている状況です。

酒の税率変更に合わせて変えるべき酒屋の販売戦略

ここでは、酒の税率変更に合わせて変えるべき酒屋など酒販事業者の販売戦略について考えていきましょう。

【酒の税率変更に合わせて変えるべき酒屋の販売戦略】

  • ビールの減税による価格の値下げ
  • 増税で価格競争力が弱くなった商品の訴求ポイントを考える
  • 味わいや特徴を前面に打ち出し価格以外をアピールする
  • ビール以外の酒税の変化を考える
  • 顧客ニーズや家計への影響を考慮した品揃えにする

ビールの減税による価格の値下げ

「ビール減税」の報道が多かったため、減税による価格の値下げを期待している消費者が多いことが予想されます。

消費者ニーズに応えるという意味では、ビールの価格の値下げを検討するとよいでしょう。

日本酒に関しては、ビールほど減税の報道が多くないため、「日本酒減税」を認知している消費者が多いかどうかはわかりません。

ビールほど値下げの消費者ニーズは高くないかもしれませんが、「日本酒減税」による価格の値下げを実施する場合には、POP等で目立つようにPRすると売上アップが期待できます。

増税で価格競争力が弱くなった商品の訴求ポイントを考える

酒の税率変更に伴い、増税で価格競争力が弱くなったワインや第3のビールなどの商品に関しては、価格以外の訴求ポイントを考える必要があるでしょう。

たとえば、第3のビールに関しては、増税に伴い値上げをしたとしても、ビールと比較した価格の安さをアピールすることで売上を維持することは可能です。

ワインに関しても、元来付加価値の高い商品であることに加えて、POPなどによるストーリー性のある商品説明や料理とのペアリング提案などを丁寧に行うことにより、売上を伸ばすこともできるでしょう。

味わいや特徴を前面に打ち出し価格以外をアピールする

販売戦略として、価格訴求以外にも、「付加価値訴求」をすることも意識しましょう。

「付加価値訴求」とは、味わいや特徴を前面に打ち出したPR方法のことです。「健康価値」や「品質価値」の切り口で訴求する方法も有効でしょう。

たとえば、「健康価値」では、プリン体ゼロや糖質オフ、糖質ゼロなどのビール類の棚割スペースや品揃えの拡充、ノンアルコール商品の展開スペースの確保、低アルコール商品コーナーの設置などが代表例です。

「品質価値」では、流行のクラフト商品の品揃えを強化して、希少価値の高いクラフト商品を商品ラインナップに加えれば、将来の優良顧客の来店につながるかもしれません。

ビール以外の酒税の変化を考える

販売戦略としては、ビール以外の酒税の変化も考えておきましょう。

酒類の分類ごとの酒税率の一本化に向けて、2023年10月の改正では、ビールは増税されましたが、日本酒はビールと同様に減税、他方、ワインや第3のビールは増税となっています。

そのほかの酒類に関しては、据え置き措置となっていますので、すべての酒類に関して、現状及び今後の酒税率の改定を把握しておくことが大切になってきます。

ビール以外の酒税の変化についてさらにくわしく知りたい方は、「令和5年酒税法等の改正とは?概要やスケジュール、新制度の内容や手続きについてわかりやすく解説」をご覧ください。

顧客ニーズや家計への影響を考慮した品揃えにする

今回の一連の改正で、酒類の種類ごとに販売価格が統一されていく方向性の中で、消費者も、「安いお酒を買おう」という志向から、「(価格が同じなら)おいしいお酒・好きなお酒を買おう」という志向に変わっていくかもしれません。

また、顧客ごとに家計への影響を考慮してお酒を選ぶといった傾向が強まる可能性も考えられます。

酒販事業者としては、これまで以上に顧客ニーズや家計への影響を考慮した品揃えをしていく必要があるでしょう。

酒税の仕組みや法改正に合わせた販売戦略のまとめ

ここまで、お酒にかかる税金の仕組みと負担率、2023年10月の酒税法改正のポイント、酒税法改正の背景、酒の税率変更に合わせて変えるべき酒屋の販売戦略などをご紹介させていただきました。

酒販事業者としては、酒税の仕組みや法改正に合わせた販売戦略を考えることはもちろんのこと、酒税改正をはじめ、さまざまな要因で変化していく販売動向には常に注意を払っておくことが何より重要になってくるでしょう。

また、クラフトブームによる少量多品種の品揃えを意識するあまり、値引きロスや廃棄ロスを招かないように、POSデータの取得などにより、こまめな販売動向の確認を行い、商品の改廃チェックをするなどの工夫も必要です。

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