“日本酒がEUで「禁輸」危機”の実態を探る!早期対策は?

2022年度の日本酒輸出総額は、474.89億円(対前年比+18.2%)、13年連続で前年を上回り、輸出量も35,895㎘と過去最高を更新して拡大傾向が続いている日本酒の海外展開(「国税庁令和5年6月酒のしおり(以下「酒のしおり」)」から引用)に水を差す報道が飛び込んできました。

「欧州連合(EU)が2030年以降、域内への日本酒輸出を禁止する検討を進めている(2024年3月1日付け日本経済新聞、以下「日経報道」)」とのこと。

日本酒人気は、世界中で高まっており、EU・英国への輸出額も、2022年には25.51億円(対前年比+25.3%、「酒のしおり」から引用)となっている現状からすると、酒類事業者にとっては今後の動向が気になるところです。

今回は、EUにおける日本酒禁輸危機について、規制内容や日本政府の対応などの実態を探るとともに、設備投資や補助金の活用など酒類事業者が今からできる対応策に関して解説します。

EUでの日本酒禁輸危機の実態

日経報道によれば、「欧州連合(EU)が食品包装への新たな規制(以下、「規制」)を検討しており、協議・合意・承認を経て2030年から施行する」というものでした。

元来、EUの「包装および包装廃棄物規則(案)」は、2023年2月27日付けでTBT通報されており、関係各所では、周知されていましたが、今般いよいよ採択予定(2025年)が近づいたということで報道され話題となっているようです。

ここでは、EUでの日本酒禁輸危機の実態について、検討中の食品包装の新規制の内容、規制に関する日本政府の対応、規制実現による日本酒の海外展開への影響などを解説します。

EU検討中の食品包装の新規制の内容とは

EUが検討中の今回の食品包装の新規制である「包装及び包装廃棄物規則(案)※」は、2030年以降、飲料品や食品などを入れる瓶や缶などの容器の再利用やリサイクル材の利用を事業者に義務づけるといったもの。

※規制内容:EU域内で酒を製造・販売する事業者に、2030年以降は製品の10%(2040年以降は25%)で再利用か詰め替えが可能な容器を用いるよう義務付ける。

ウイスキーなどの蒸留酒やワインに関しては、地元メーカーへの打撃を考慮して対象から除外される見通しですが、輸入品の日本酒は規制対象となっています。

■参照:農林水産省「EUの包装および包装廃棄物規制について」

■参照:「包装及び包装廃棄物規則(案)の概要」

規制に関する日本政府の対応と見通し

今回の規制に関する見通しとして、別の報道(2024年2月24日付け読売新聞オンライン、以下「読売報道」)を要約すると、「日本酒輸出に注力する日本政府は、『規制対象からの日本酒除外』の外交攻勢をかけているものの、欧州議会の環境推進派による反対と、EU理事会の不透明な対応により先行き不明」とのこと。

日経報道や読売報道から推察する限り、規制案は2024年3月にも成立する見通しとのことで、日本政府の外交攻勢には期待するものの、酒類事業者としては、備えあれば憂いなしのごとく規制案成立後の対応も考えておくべきでしょう。

規制実現による日本酒の海外展開への影響は?

現状、EU枠内での和食レストランなどで消費される日本酒の瓶(4合瓶や一升瓶など)に関しては、ワインと瓶の形状が異なるため、回収・再利用はコスト等の関係で難しいのが現状。

しかし、今回の規制案が成立すれば、事業者に瓶や缶の再利用・再資源化が義務づけられてしまうため、現地で瓶を回収・洗浄して再利用するのが難しい日本酒は事実上の禁輸対象となり、酒類事業者の海外展開先として、EU域内は対象外となってしまうといった懸念が持たれています。

2022年のEU・英国への日本酒の輸出額は、全体の5%程度ではあるものの、他の輸出各国への影響や海外での日本酒人気を含めた包括的な日本酒人気への影響などを考えると、規制対象から外れることを願うばかりですが、たとえ規制されたとしても対策を講じて対応することは可能です。

EUでの新規制への対応策

もし、不運にも今回の規制案が成立してしまったとしても、EUでの新規制下での輸出対応として、先んずれば人を制すかのごとく、今から準備しておくことも大切です。

ここでは、EUでの新規制への対応策を検討してみることにしましょう。

瓶詰ラインの切り替えも視野に

EUでの新規制は、2030年以降、容器の再利用やリサイクル材の利用を事業者に義務づけるもの。ただし、蒸留酒やワインは対象除外です。

ガラス瓶の再利用がコスパ的に困難であるならば、たとえば「パック酒」のような紙パック包装を利用したり、ワイン瓶に日本酒を詰めて輸出したりするなどの対策が考えられます。

EUへの展開策として、紙パックやワイン瓶への充填を行うためには、対応できる新たな充填機の導入など瓶詰ラインの切り替えなども視野に入れておくべきでしょう。

「もの補助グローバル枠」の活用も

EUでの新規制下での輸出対応策として、瓶詰ラインの切り替えなどの設備投資を行う場合には、補助金も効果的に活用しましょう。

たとえば、ヨーロッパへの輸出対応措置として、ものづくり補助金のグローバル枠で申請できるかもしれません。

また、国税庁補助金(日本産酒類海外展開支援事業費補助金)などの活用も検討できるでしょう。

まとめ

ここまで、EUにおける日本酒禁輸危機について、規制内容や日本政府の対応などの実態を探るとともに、設備投資や補助金の活用など酒類事業者が今からできる対応策に関してご紹介させていただきました。

今般、「ヨーロッパに日本酒が輸出できなくなるかもしれない」との加熱報道がなされ、不安に感じている酒類事業者の方もいらっしゃるかもしれません。

元来EUでは、2050年までの炭素中立を目指す欧州グリーン・ディールの循環型経済行動計画に基づく政策パッケージの一環として、包装廃棄物の削減に向けた規制をしてきたものの、リサイクルや再利用の低調な実施状況を改善するための今回の新規制です。

今後、グローバルに循環型社会を想定した環境変化は起こりえるので、酒類事業者さまとしてもさまざまな転ばぬ先の杖を事業計画に織り込んでおくことをおすすめします。

アンカーマンでは、酒類事業に特化したコンサルティングファームとして、補助金サポート、経営改善サポート、マーケティングサポート、リブランディングなど各種サービスメニューをご用意していますので、海外展開をはじめとした酒類事業に関する課題解決にお役立てください。

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