酒蔵を再生するための方法を徹底解説!廃業が進む日本酒業界の課題とは?
代々家業を継承する「老舗」。他の事業で100年以上続く「老舗」は珍しいが、酒蔵では100年どころか、何百年続く蔵もあるほど。
父祖代々家業を守り継ぐことが当たり前だった酒蔵も、時代の波に抗えず、やむなく廃業の道を選択する蔵もある中、廃業を免れ酒蔵を再生するケースもあります。
酒蔵再生はどのように成し遂げられるのか、酒蔵再生の選択は正しいのか、酒蔵再生を検討している方にとっては興味のあるところではないでしょうか。
今回は、酒蔵再生に関して、なぜ必要か、酒蔵を再生するための方法やポイント、酒蔵を再生した成功事例などを、廃業が進む日本酒業界の課題にも触れながら解説します。
- 1. 酒蔵の再生が必要な理由
- 1.1. 酒蔵廃業の深刻化
- 1.2. 地域経済への影響
- 1.3. 日本酒業界の構造的課題
- 2. 酒蔵を再生するための方法
- 2.1. M&Aによる事業継承
- 2.2. 新たな販路の開拓
- 2.3. 地域との連携
- 2.4. 商品開発と品質向上
- 2.5. 設備投資と生産性向上
- 3. 酒蔵の再生を行うときのポイント
- 3.1. M&Aの適切な活用
- 3.2. 日本酒の魅力の発信
- 3.3. 人材育成と技術継承
- 3.4. 伝統と革新のバランス
- 3.5. 地域社会との共生
- 3.6. 財務基盤の強化
- 3.7. 設備投資資金の調達
- 4. 酒蔵を再生した成功事例
- 4.1. 地域と連携して成功した事例
- 4.2. M&Aで成功した事例
- 5. 酒蔵を再生する方法のまとめ
酒蔵の再生が必要な理由
なぜ、酒蔵の再生が必要なのでしょう。
ここでは、酒蔵の再生が必要な理由や日本酒業界の現状について、解説します。
【酒蔵の再生が必要な理由】
- 酒蔵廃業の深刻化
- 地域経済への影響
- 日本酒業界の構造的課題
酒蔵廃業の深刻化
酒蔵の再生が必要な理由の1つとして、酒蔵廃業の深刻化が挙げられます。
日本酒消費量ピーク時の1970年代には3,000場以上あった日本酒メーカーは、近年右肩下がりに減少して、2021年(令和3年)には半数の1,500場程度です。
■参照:国税庁・令和5年6月「酒のしおり」p.46酒類等製造免許場数の推移
酒蔵の廃業を避けるため、酒蔵の再生を選択するケースも増えています。
地域経済への影響
酒蔵は、地域に根ざした伝統産業であり、地域経済の担い手として影響を与える存在です。
酒米農家、酒類卸・小売事業者、杜氏(農閑期の季節労働者)などの循環型産業の柱であり、酒蔵ツーリズムなどの地域観光の担い手として機能してきました。
酒蔵が廃業すると、地域経済への影響が大きいため、酒蔵を再生し、地域経済の活性化を図る必要性があります。
日本酒業界の構造的課題
酒蔵の廃業が進む背景には、日本酒業界の構造的課題が考えられます。
国税庁公表のデータによれば、国内の日本酒メーカー・酒蔵の99.6%が中小企業および個人事業者です。
■参照:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和3年調査分)」
つまり、日本酒業界の構造として、ほとんどの酒蔵が、規模が小さく、経営基盤が脆弱といった現況にあります。
酒蔵を再生するための方法
酒蔵を再生するためには、以下のような方法があります。
【酒蔵を再生するための方法】
- M&Aによる事業継承
- 新たな販路の開拓
- 地域との連携
- 商品開発と品質向上
- 設備投資と生産性向上
以下、順に解説しましょう。
M&Aによる事業継承
酒蔵の再生を図る上で、「M&Aによる事業承継」といった選択肢もあります。
「M&A(エムアンドエー)」とは、『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略で、「合併(2つ以上の会社が1つになる)」「買収(ある会社が他の会社を購入する)」「提携(組織は再編せず事業協力する)」などのこと。
酒蔵の再生で、M&Aによる事業継承を選択するケースでは、一般的に、売り手は後継者不足や業況悪化で事業継続が困難になり、酒蔵の廃業を避けるため、第三者にM&Aで酒蔵を売却するといった事例がが多いようです。
酒蔵のM&Aについてさらにくわしく知りたい方は「酒蔵のM&Aが増えている理由とは?売却と買収によるメリット・デメリットを解説」をご覧ください。
新たな販路の開拓
酒蔵の再生を「新たな販路の開拓」で図っていくという方法もあります。
酒蔵の経営改善を図るために、新たな販路を開拓して売上アップを図り、再生の道筋をつけるという手法です。
新たな販路開拓は簡単ではありません。現状の販路分析を行った上で、どんな販路に勝機を見いだすのか、どのような戦略で販路を拡大していくのかなど、しっかりと考慮する必要があるでしょう。
販路開拓についてさらにくわしく知りたい方は「【酒蔵も酒屋も】販路拡大どうしてますか?販路拡大の方法やポイントを解説」をご覧ください。
地域との連携
「地域との連携強化」による酒蔵再生の方法もあります。
そもそも酒蔵は、地域の原材料を使った地酒など、地域に根ざした産業です。
たとえば、宿泊施設や観光施設、飲食店や旅行会社など地域の他企業との連携を図り、地域一体となった酒蔵ツーリズムや、地域統一ブランドの立ち上げなどで酒蔵の売上アップを図り、再生へ向かうこともできます。
商品開発と品質向上
商品開発や品質向上により酒蔵の業況を改善し、酒蔵の再生を図るといった方法もあるでしょう。
商品開発や品質向上により、酒蔵の再生を図る場合には、現状分析を行った上で、マーケティング戦略を立て、ターゲットとなる消費者層を特定した上で、どのような商品を開発し、あるいは既存の銘柄の品質をどのように向上させるのかを考えていかなければなりません。
商品開発や品質向上による酒蔵再生には、多少時間がかかるかもしれないということを念頭に置いておきましょう。
設備投資と生産性向上
設備投資を行い、生産性を向上させ、酒蔵の再生を図るという方法も選択肢の1つです。
設備投資を行い、生産性を向上させることで、商品開発や品質向上にもつながり、コスト削減や職場環境の改善、従業員のモチベーションアップ、顧客満足度アップなど、酒蔵の経営改善が期待できます。
酒蔵の再生を行うときのポイント
酒蔵の再生を行う際には以下のようなポイントに注意を払いましょう。
【酒蔵の再生を行うときのポイント】
- M&Aの適切な活用
- 日本酒の魅力の発信
- 人材育成と技術継承
- 伝統と革新のバランス
- 地域社会との共生
- 財務基盤の強化
- 設備投資資金の調達
以下、順に解説します。
M&Aの適切な活用
酒蔵の再生で、M&Aによる事業継承の方法を選択する場合には、M&Aの適切な活用を行うことが大切です。
M&Aにより事業継承をする際には、廃業を避けるために売り手となる酒蔵と、M&Aにより酒蔵を購入する企業との間で、条件交渉を行うだけでなく、価値観を共有するなど「酒造りへの想いの承継」などが重要となってきます。
日本酒の魅力の発信
酒蔵を再生するとき、ただ経営改善をしたいと数字だけ追いかけて、売上アップを狙うだけではうまくいきません。
酒造りの根本である「日本酒の魅力」を発信して、蔵や銘柄のファンを増やすことも重要です。
SNSやホームページを活用して、自身の蔵や銘柄だけでなく、「日本酒そのものの魅力」を発信して、日本酒ファンも増やしましょう。
人材育成と技術継承
酒蔵を再生する上で、人材育成や技術継承も重要なピースの1つです。
おいしいお酒を造るためには、どんなに技術が進歩しても、完全に機械化することはできません。人の手によって、微妙な温度管理などをしていくことが必須です。
蔵の将来を担う人材を育成し、酒造りの技術を承継していくことで、蔵の再生も図れるもの。酒造りの担い手の確保がポイントとなってきます。
伝統と革新のバランス
酒蔵の再生を図る上で、伝統と革新のバランスを保つことも重要です。
成功している酒蔵を分析すると、昔ながらの伝統的な手法を活かしつつ、革新的な商品開発や品質向上にチャレンジしている酒蔵も多く見受けられます。
ただただ新しいものを取り入れるばかりではなく、「温故知新」のごとく、伝統と革新のバランスを持って再生をしていくことが成功の秘訣ではないでしょうか。
地域社会との共生
「酒蔵は地域と共にある」とはよく言われること。
地域に根ざした産業であり、地域経済の担い手であることから、地域社会との共生が大切です。
最近流行りの酒蔵ツーリズムなどは、地域社会との共生の最たるものです。地域全体で盛り上げてこそ、外から人が訪れます。
酒蔵だけが盛り上がればいいというものではなく、酒蔵を目当てに来た人に地域の良さを伝え、地域に利益を還元し、地域全体でブランド化していくことが長い目で見れば酒蔵の再生につながるでしょう。
財務基盤の強化
酒蔵の再生において、財務基盤の強化は欠かせません。
財務基盤の強化を図る上では、コスト削減や売上拡大、資金調達のほか、補助金の活用や、大手資本との提携、M&Aの適切な活用などいくつかの選択肢があるので、自社に適した方法を選択しましょう。
設備投資資金の調達
設備投資を行い、酒蔵の再生を行うためには、設備投資資金の調達が必要です。
設備投資資金の調達には、補助金の活用をおすすめします。補助金は、融資などと違い返済する必要がありません。
申請手続きに手間や時間がかかりますが、補助申請代行業者を活用すれば、本業には支障なく申請手続きを行うことが可能です。
しかも、アンカーマンでは、成功報酬制を採用しており、採択するまで費用がかからないので、お気軽にご連絡ください。
■補助金サポートに関するご相談はこちらからお願いします。
酒蔵を再生した成功事例
実際に酒蔵を再生して成功した事例にはどのようなものがあるのでしょうか。酒蔵の再生を検討している方にとっては参考にしたいところでしょう。
ここでは、酒蔵再生の成功事例についていくつかご紹介します。
地域と連携して成功した事例
酒蔵の再生に向けて、地域と連携して成功した事例としては、地域全体として酒蔵ツーリズムに取り組んで成功を収めた事例がいくつか見受けられます。
たとえば、「鹿島酒蔵ツーリズム」の事例が有名です。
酒蔵単体ではなし得なかったことが、地域全体を1つのブランドとして捉え、地域の事業者が一体となってツーリズムを盛り上げることで、今では海外からもお客さまが押し寄せるような成功を収めています。
「鹿島酒蔵ツーリズム」の成功事例をさらにくわしく知りたい方は「【当事者語録】酒蔵ツーリズムで得られる一番の成果は地域のイメージ変革」をご覧ください。
M&Aで成功した事例
M&Aで酒蔵再生に成功した事例は数多くあります。
M&Aの場合、売り手の多くは、後継者問題や業況悪化などによる廃業回避のため、第三者に酒蔵ごと売却するケースが多いようです。
酒蔵の買い手は、異業種から参入するケースや、酒造業免許を取得したい酒販事業者のケースなどさまざま。
大手資本が、事業規模拡大のため、中小の酒蔵を傘下に収めるケースも見受けられます。
具体的には、以下のような事例があります。
【M&Aによる事業継承の事例】
- 盛田(食品類・酒類・飲料の製造・販売事業)による銀盤酒造(富山県)、常楽酒造(熊本県)、千代菊(岐阜県)の買収(2017年)
- 友桝ホールディングス(清涼飲料の製造事業)によるハクレイ酒造(京都丹後)の買収(2018年)
- オリエンタルコンサルタンツ(インフラ事業)による瀬戸酒造店(神奈川県)の買収(2017年)
- 磐栄運送(運送事業)による菱友醸造(長野県)の買収(2018年)
- 伊那食品工業(食品製造事業)による米澤酒造(長野県)の買収(2014年)
酒蔵を再生する方法のまとめ
ここまで、酒蔵再生に関して、必要な理由や廃業が進む日本酒業界の課題、酒蔵を再生するための方法やポイント、酒蔵を再生した成功事例などをご紹介させていただきました。
酒蔵の廃業を避け、なんとか酒蔵の再生を成し遂げるためには、自社に適した方法を選択し、酒蔵再生のポイントを押さえて実行することが必要です。
酒蔵を再生するためには、M&Aなど特殊で専門的な手続きも必要になるケースがあるため、酒造業に詳しいパートナーを選びましょう。
アンカーマンなら、酒造業に特化しており、300社以上のサポート実績があり、再生後の事業計画の策定などマーケティングサポートを含めた酒蔵の再生に関するご相談にも対応できます。
「酒蔵を再生させたい!」
「酒蔵のM&Aに関する売りたい・買いたい!」
「再生に際し、設備を導入したい!」
「酒蔵再生に補助金を活用したい!」
など、アンカーマンは縁の下の力持ちとして、「醸のバトン」を引き継ぐお手伝いをいたします。
酒蔵の再生に関するご相談なら、お気軽に酒造業特化のアンカーマンにご連絡ください。
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