「焼酎が売れない」をなんとかしたい!焼酎リバイバルのヒントとは

「今、焼酎が売れない」「特に若い女性に人気がない」といった焼酎の蔵元さんのお声を耳にします。

かつて、「焼酎ブーム」と呼ばれ、焼酎がもてはやされた時代がありました。しかし、一時のブームは去り、ここ数年は出荷量の前年割れが続いてます。

あの、ブームはなんだったのか?焼酎はなぜ注目されたのか?「ブーム」には、必ず人々を熱狂させる理由や背景があるはずです。

そこで今回は、「焼酎リバイバル(復活)」のために日々奮闘している焼酎の蔵元さんや酒販店さんに向けて、焼酎ブームを考察することで、「次世代焼酎」どうしていくのか、焼酎リバイバルのヒントを探っていきます。

焼酎ブームの振り返り

焼酎ブームとは、いつ起こり、どのようなブームだったのでしょうか。

ここでは、かつての「焼酎ブーム」を振り返っていきましょう。

焼酎ブームの振り返りに不可欠な焼酎の製法・分類とは

焼酎には、さまざまな製法があり、製法別の風味や味わい、アルコール度数、カロリー数など特性の違いや、酒税法による分類などを、「焼酎ブーム」を掘り下げる上で把握しておく必要があります。

まず、酒税法による分類としては、「甲類」「乙類(本格焼酎)」と2つの分類があり、特徴は以下のとおりです。

【焼酎の酒税法による分類】

分類蒸留器新旧別アルコール度数特徴
甲類連続式蒸留器新式36%未満
  • ピュアでクセのないすっきりとした味わい
  • 酎ハイやサワー、お湯割り、カクテル、果実酒、薬用酒と楽しみ方もさまざま
乙類単式
蒸留器
旧式45%以下
  • 原料独特の風味や味わい
  • 米、麦をはじめ、さつまいも、そば、黒糖などさまざまな原料を用いる
  • ロックやお湯割りで焼酎本来の味わいを楽しむ愛飲家が多い

「甲類」と「乙類」のいいとこどりの「混合焼酎」もあります。

また、単式蒸留には、「常圧蒸留」「減圧蒸留」の2つの蒸溜方式があり、蒸溜方式によっても以下のように味わいが異なります。

【蒸留方式による味わいの違い】

蒸留方式味わいの違い留方法の違い
常圧蒸留
  • 昔ながらの製法
  • 沸点100℃で蒸留
  • 主原料の香りや味が残り、濃い味わい
  • 効率は劣るが、原料成分が多く抽出
減圧蒸留
  • 1970年代から実用化
  • 沸点を低くして蒸留
  • 原料成分があまり抽出されず、すっきりとした風味で飲みやすい
  • 麦焼酎や米焼酎に多い

過去3度の焼酎ブーム

「焼酎ブーム」は、過去3回あり、焼酎消費数量の推移と大まかな流れは、以下のとおりです。

【焼酎消費数量の推移】

参照:国税庁統計情報より作成

【焼酎ブームの大まかな流れ】

回数時期主なヒット銘柄概要
第1次ブーム1970年代後半『純』『白波』『雲海』など味にクセがなく、割ればアルコール度数を自由に調節でき、コスパが良く、自分の好みで味を変えられる「ドライで変化を楽しめるお酒」として、ウォッカ、ジン、テキーラなどの無臭で無色透明なお酒(ホワイト・スピリッツ)を若者や女性が楽しむ「白色革命」が世界的ブームに。日本では、テレビCMをきっかけに「焼酎のお湯割り」が流行し、「そば焼酎」も全国区になるなど、焼酎市場は従来の約3倍にまで急成長。
第2次ブーム1980年代前半麦焼酎ブーム『いいちこ』『二階堂』など好景気を背景に若者を中心に「飲みやすくて安い」カジュアルなお酒として焼酎が大ヒット。安価でアレンジしやすいホワイトリカー、酎ハイ、サワー、缶酎ハイ、麦焼酎など甲類焼酎が売上を伸ばす。お酒の流通網の拡大を背景に、地方銘柄が全国に流通してブームが加速。
第3次ブーム2000年代前半芋焼酎ブーム
『黒霧島』が牽引し銘柄問わず急伸
本格焼酎市場に麦焼酎だけでなく、芋焼酎も加わり「味わいながら飲む大人のお酒」として全国区になるなど、焼酎が糖質やプリン体が含まれず血糖値抑制の効果があると健康的なお酒としての評価も加わり一大ブームに。
2003年焼酎全体の出荷量が約50年ぶりに日本酒を上回る。コンビニで24時間本格焼酎が買えるようになり、伝統的な常圧蒸留だけではなく、減圧蒸留の本格焼酎が普及して、クセのないスッキリとした味わい、飲みやすさを実現したことも、ブームに拍車をかけた。

第1次焼酎ブームは、焼酎造りが機械化されたことで品質にばらつきがなくなったこと、麹菌が黒麹から白麹へ変わり、香りがソフトなったことで多くの人に飲まれることが要因です。

第2次焼酎ブームでは、九州のお酒だった焼酎が、関東へ進出し、課税移出量もウイスキーを抜きました。

第3次焼酎ブームは、焼酎の健康志向というメディア戦略に乗り、芋焼酎が爆発的に伸び、PB商品なども出現し、焼酎ニーズが全体的に高まりを見せた本格的ブームと言っていいでしょう。

焼酎リバイバルに向けて焼酎の方向性とは

焼酎ブームを考察することで、「次世代焼酎」をどうしていくのか、焼酎リバイバルに向けた今後の焼酎の方向性にヒントが得られます。

ここでは、焼酎リバイバルに向けて焼酎の方向性を探っていきましょう。

消費者の嗜好を意識

焼酎ブームの原因や社会的背景を紐解いてみれば、消費者の嗜好の変遷もブームに大きく影響していたことがわかります。

最近でも、第3次焼酎ブームの頃から安く手軽に酔える「コスパ・タイパ」がいいお酒として人気を博していたストロング系(アルコール度数8%以上)缶酎ハイも2020年をピークに縮小傾向へと転じ大手メーカーがストロング系缶酎ハイ市場から撤退との報道も。

コロナ禍で日本酒をはじめとしたお酒の宅飲みの機会が増えたこと、健康志向が高まったことなどにより、消費者の嗜好も変わり、若者を中心に、リラックスしてゆっくり楽しめるフルーティな香りのお酒や低アルコール(アルコール度数5〜7%)のお酒など、バラエティーに富んだお酒を愛飲する傾向があるようです。

今後、さらに消費者の嗜好は多様化していくことが考えられ、お酒の『味わい』『香り』などさまざまなお酒の構成要素に関する消費者の嗜好を意識した焼酎づくりも必要になってくるでしょう。

健康志向を意識

第3次焼酎ブームでは、社会全体として「健康志向ニーズ」が高まっていた中で、「糖質・プリン体ゼロ」「血栓症予防効果があるお酒」など、焼酎に対する健康的なイメージがメディアで取り上げられたこともあり、焼酎にポジティブなイメージを持つ人が増えたこともブームに拍車をかけました。

厚生労働省が「飲酒に関するガイドライン」をはじめて策定するなど、健康志向は、今後ますます社会全体で強まっていくと考えられます。

これからの焼酎づくりは、「飲酒ガイドライン」の内容、活用・周知の状況も踏まえつつ、酒類の容器にアルコール量を表示するなどの製造・販売側の義務としてだけでなく、かつての焼酎ブームのときのような「ヘルシーなお酒」をアピールするなどの工夫が必要でしょう。

幅広い層に受け入れられることを意識

これからの焼酎づくりでは、幅広い層に受け入れられることを意識した多様性のある焼酎づくりも必要ではないでしょうか。

第3次焼酎ブームでも、第1次、第2次ブームとは違った味わいの持つ焼酎やプレミアムからリーズナブルな独自性のあるものまで多様な焼酎を市場投入してブームを巻き起こしたように、現在の愛飲家の層を広げていくことも選択肢の1つです。

たとえば、最近話題の「ボタニカル系焼酎」(ボタニカル=植物由来の素材により柑橘系の香りと山椒のような刺激のある味を実現した麦焼酎)のマーケティング戦略。

「焼酎らしからぬ香りと味で飲みやすい焼酎」として市場投入することで、「焼酎らしさ(麦焼酎や芋焼酎といった焼酎乙類は素材の風味が強く出る魅力)」に苦手意識を持つ人やなじみがなかった人にも受け入れられやすくして、愛飲層の幅を広げる戦略です。

焼酎をどう展開していくかを意識

日本国内だけでなく、海外へ向けたグローバル展開を目指す中で、「焼酎の展開の仕方」について意識していく必要があるのではないでしょうか。

「蒸留酒=食後酒」が世界的に広まっている(世界各地の蒸留酒=ウィスキー、ブランデー、ウォッカなどは「食後酒」)、日本で焼酎は「食中酒(食中の蒸留酒)」として愛飲されています。

焼酎の原酒は、アルコール度数38度〜43度程度であり、食中酒としての流通を想定して、先に和水し20度〜25度に調整して市販されています。

消費者は、購入した焼酎を水割り、ロック、お湯割り等にして、アルコール度数を自分の好みに調整して楽しんでいるのです。

たとえば、焼酎を輸出する際、「原酒」か「食中酒」かという選択があります。「蒸留酒」としての展開、「食中酒」としての展開どちらにするかで、輸出時のアルコール度数が変わってくるからです。

「食中酒」として展開するならば、料理のペアリングなども、焼酎の展開の仕方に関わってくるでしょう。

他方、国内の新たなファン層を開拓したり、海外で高く評価されグローバル展開を目指したりするための「次世代焼酎」として、原料や製法にこだわり、個性的な香りをウリにした「フレーバー系焼酎」なども注目されています。

さらに、消費者へのPR方法として、「1杯目なら」「最後に飲むなら」などの順番の提案や、ソーダ割り、ロックなどの飲み方により味わいが変わる提案などを、試飲体験などとともに丁寧な焼酎の魅力のPRや焼酎づくりのストーリー性を持ったPRなども必要でしょう。

「わかりやすさ」と「多様性の強調」といった2本の柱に、「テロワール(地域性)」「蔵ごとの個性」も加えて、若者や女性など幅広い層をターゲットにした国内外の消費者にアピールしていくことが大切です。

まとめ

ここまで、焼酎ブームを考察して、「次世代焼酎」どうしていくのか、焼酎リバイバルに向けた焼酎の方向性をご紹介させていただきました。

焼酎ブームの変遷を簡単にまとめると、クセがなくすっきりした味わいの「甲類焼酎」がブームとなり、「焼酎=若者が飲む酒」というイメージが定着してから、徐々に消費者の嗜好が成熟し、さまざまな飲み方でさまざまな原料本来の味を楽しむ「本格焼酎」ブームへと移行し、業界をあげて焼酎の存在感を上げてきたと言えるでよう。

お酒は生活必需品ではないからこそ、消費者のニーズは、食文化やライフスタイルの変化、時代背景に大きく影響されます。

どのような時代にあっても、人々の日々の暮らしの中で、楽しい時間を彩ってきた「焼酎文化」を絶やさないためにも、焼酎ブームの科学的考察から得られる「次世代焼酎」や焼酎リバイバルへの羅針盤を意識して、消費者から選ばれるお酒とすることが大切です。

アンカーマンでは、日本で唯一、酒類事業に特化したコンサルティングファームとして、焼酎蔵をはじめ、焼酎取扱事業者のサポートにも数多くの実績があります。

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