酒屋が生き残るためには?顧客や地域コミュニティ、酒蔵との理想的な関係性を解説

酒の流通において、消費者にお酒を届ける重要な役割を担う酒屋の経営が厳しいという声が聞こえてきます。

近年、周囲の競合店舗に押されて、やむなく廃業の道を選択する酒屋も少なくありません。

酒屋が生き残るためにはどのような施策を講じればいいのでしょうか。

今回は、酒屋が生き残るためにはどうしたらいいのか、顧客や地域コミュニティ、酒蔵との理想的な関係性、業務効率化やデータの活用、新たな顧客層の開拓と販路拡大などについて解説します。

目次

酒屋が生き残るためには

国税庁令和5年6月酒のしおり・酒類事業者の概況のうち、「業態別の販売場数」をみてもわかるとおり、一般酒販店の数は近年減少傾向にあります。

加えて、「業態別の販売数量」データからも、一般酒販店の販売数量が減少傾向にあり、一般酒販店を取り巻く経営環境が厳しいことがわかるでしょう。

酒屋の事業環境が厳しくなっている背景には、規制緩和による酒類小売の原則自由化、コンビニやスーパーによる酒類販売への進出による価格競争の激化、ネット通販の台頭などが影響しています。

今後、酒屋が生き残るためには、差別化戦略を考え、生き残るための変化やさまざまな工夫が必要になってくるでしょう。

酒屋が生き残るための価格設定の考え方

酒屋が生き残るためには、しっかりとしたマーケティング戦略を立てることが重要です。マーケティング戦略の中でも、商品の価格設定をどうするかということを考えていく必要があります。

ここでは、酒屋が生き残るための価格設定の考え方について解説します。

【酒屋が生き残るための価格設定の考え方】

  • 価格競争に巻き込まれない独自路線を貫く
  • コモディティ化した商品は扱わず特色ある品揃えに特化する
  • 定価販売を徹底し、酒蔵の想いや価値を守る

価格競争に巻き込まれない独自路線を貫く

酒類小売業界では、かつて1980年代後半から1990年代前半にかけて、酒類量販店や総合スーパーによる値引き合戦がありました。

一般酒販店が、大手酒類小売事業者らとの価格競争に巻き込まれても、太刀打ちできず、ジリ貧になってしまうでしょう。

一般酒販店として重要なのは、価格競争に巻き込まれない独自路線を貫くことです。

独自路線を貫くために、品揃えやプロモーションなどさまざまな点で競合店とは異なるオリジナリティーを追求していくことになります。

コモディティ化した商品は扱わず特色ある品揃えに特化する

酒屋としての独自路線は、商品ラインナップに関しても考えなければなりません。

どこの店にも置いてあるようなコモディティ化(一般化)した商品だけでなく、特色ある品揃えに特化することもコアなファンを呼び込むための戦略の1つです。

たとえば、全国選りすぐりの地酒を揃えてある酒屋、世界のビールが購入できる酒屋など、あのお店に行けば、欲しいお酒が必ず手に入るなどのイメージを消費者に持たせることでリピート客を増やせるでしょう。

独自の戦略を貫いて、地域オンリーワンショップを目指すことも差別化を図る大切なマーケティング戦略になります。

定価販売を徹底し、酒蔵の想いや価値を守る

酒屋の価格設定戦略として、販売したいがために安易に価格競争に走るのではなく、定価販売を徹底することもしっかりと利益を確保する意味では重要です。

定価販売は、酒蔵が銘柄に対して設定した価格(希望小売価格)を尊重し、その価格で販売することを指します。

定価販売を徹底することにより、酒蔵の想いや銘柄の価値が適切に反映され、酒蔵と消費者の間で公正な取引が行われます。

結果として、造り手である酒蔵の想いや銘柄の価値を守ることができるでしょう。

たとえば、「特約店」として酒蔵と直接契約し、酒蔵が指定した希望小売価格(定価)で販売することで、酒蔵が銘柄に込めた想いや価値を消費者に届けることが、酒屋としての価値にもつながります。

お酒の価格の決め方についてくわしく知りたい方は「【酒類事業者必見】お酒の価格はどう決める?プライシングの正解とは」をご覧ください。

酒屋が生き残るためには顧客との信頼関係が重要

酒屋が生き残るためには顧客との信頼関係が重要です。顧客との信頼関係を築くためには、どのようにすればいいのでしょうか。

ここでは、酒屋が顧客との信頼関係を構築するための方法について解説します。

【酒屋が生き残るためには顧客との信頼関係が重要】

  • 専門性の高い提案型の販売を行う
  • オリジナリティのある付加価値で差別化する
  • 顧客一人一人に合わせた細かな対応を心がける
  • 店舗で体験価値を提供する

専門性の高い提案型の販売を行う

酒屋は、顧客に専門性の高い提案型の販売を行う必要があります。

日本酒の製造工程や原料、風味の違いなど、商品に関する詳細な情報を学ぶことで、顧客に対する専門性の高い提案型の販売を行うことが可能です。

酒屋は、専門性の高い提案型の販売を行うために、スタッフを教育研修し、商品知識を深めたり、唎酒師などの資格を持つ専門性の高いスタッフを売り場に配置したり、さまざまな工夫を施す必要があるでしょう。

自分の好みのお酒を提案してもらったり、日本酒や銘柄に関連する専門性の高い情報を提供してもらったりすることで、顧客は酒屋を信頼し、顧客満足度が高まり、リピート客になってくれる可能性が高まります。

オリジナリティのある付加価値で差別化する

オリジナリティのある付加価値で差別化することも、顧客との信頼関係を築くために必要なことの1つです。

たとえば、競合チェーン店などと差別化を図るために、顧客ニーズに合ったPOPを活用したり、お客さま何でも相談コーナーや角打ちコーナーを設けたりするほか、頒布会や特色ある品揃えなどオリジナリティのある付加価値を考案しましょう。

顧客一人一人に合わせた細かな対応を心がける

顧客一人一人に合わせた細かな対応を心がけることも、顧客との信頼関係を築くためには必要です。

顧客とのコミュニケーションを通じて、顧客の好みやニーズを理解し、それに基づいた商品を提案したり、顧客の要望や相談に対応したりすることで、顧客の信頼を得ることができるでしょう。

店舗で体験価値を提供する

顧客との信頼関係を築くためには、店舗で体験価値を提供することも効果があるでしょう。

店舗での体験価値を提供することで、顧客は商品に愛着を抱いたり、顧客満足度が高まったりすることが期待できます。

たとえば、試飲会やイベントを開催することで、顧客が日本酒を試飲したり、酒蔵の想いを直接聞くことができる機会を得られます。

また、酒蔵の想いや哲学を顧客に伝えることで、顧客はその酒蔵の日本酒に対する深い理解と共感を持つことができるでしょう。

さらに、地域の特産品や地元の酒蔵の日本酒にフォーカスして、地域の魅力を伝えたり、日本酒と一緒に楽しめるおつまみや料理を提案して、新たな飲食体験を提供したりして、顧客との関係性を構築していくことも可能です。

酒屋が生き残るためには地域コミュニティでの繋がりが重要

酒屋が生き残るためには、地域コミュニティでの繋がりも重要になってきます。しかし、地域コミュニティでの繋がりは、簡単に築けるわけではありません。

ここでは、酒屋が地域コミュニティでの繋がりを築くための方法について解説します。

【酒屋が生き残るためには地域コミュニティでの繋がりが重要】

  • 店舗を「酒屋」から「コミュニティの場」へと変える
  • イベントの開催などで地域の活性化を狙う
  • 地域の課題解決に向けた取り組みに参加する
  • 地元の生産者とのコラボレーションを行う

店舗を「酒屋」から「コミュニティの場」へと変える

酒屋の店舗を、酒の売り場という意味合いだけでなく、人々が空間や時間を共有して交流できる「コミュニティの場」へと変革させることが、酒屋が地域コミュニティでの繋がりを築くためには必要です。

たとえば、酒を売るだけでは店のスタッフと顧客が、お酒の内容に関連して一言二言交わすだけだったものが、角打ちスペースを作ることで、店側のスタッフと顧客の交流だけでなく、顧客同士も交流することになり、「コミュニティの場」へと変わります。

酒屋の店舗が、「コミュニティの場」になることで、地域の人々が交流し、地域コミュニティでの繋がりを構築することが可能です。

イベントの開催などで地域の活性化を狙う

試飲会やイベントを開催することで、人々が酒屋に集まり、地域の活性化を狙うことが可能です。

たとえば、酒屋の店舗に蔵元や杜氏を呼び、銘柄の誕生秘話や酒造りに込めた想いなどを語ってもらったり、酒屋が主催して、地域のお祭りなどのイベントと共同して、試飲会を開催したり、酒屋の顧客とともに酒蔵見学ツアーを企画したりとさまざまな工夫でイベントを行う事例も見受けられます。

酒屋が中心となって地域のイベントを行うことで、地域の人々が交流し、地域活性化に寄与することができれば、酒屋の地域コミュニティとの繋がりが、より一層強固なものになるでしょう。

地域の課題解決に向けた取り組みに参加する

酒屋が地域コミュニティでの繋がりを築くためには、地域の課題解決に向けた取り組みに参加することも効果的です。

たとえば、地域に観光客があまり来ないといった課題を解決するために、酒屋が、地域の他団体と共同して、各種イベントを企画して観光客を呼び込むなどの活動も見受けられます。

2024年2月には、東京上野で酒販業界が主催した「酒屋角打ちフェス」なども開催されました。

さらに、地域の福祉の課題に取り組んでいる酒屋さん(岩田屋商店)の事例などもあります。

地元の生産者とのコラボレーションを行う

地元の生産者とのコラボレーションを行い、酒屋が地域コミュニティでの繋がりを築く活動も重要です。

コラボする地元の生産者としては、お酒の原材料や副材料の生産農家などが多く、たとえば、農家と酒蔵と酒屋がコラボした「農家酒屋」の事例や、「木島平のお酒」の事例などもあります。

酒屋が生き残るためには酒蔵との関係性が重要

売り手である酒屋が生き残るためには、当然ながら造り手である酒蔵との関係性が重要です。

ここでは、酒屋が酒蔵と良好な関係性を築くための方法について解説します。

【酒屋が生き残るためには酒蔵との関係性が重要】

  • 酒蔵と対等な立場で向き合う
  • 酒蔵と直接的なコミュニケーションを大切にする

酒蔵と対等な立場で向き合う

酒屋と酒蔵の良好な関係性の構築においては、酒屋が酒蔵と対等な立場で向き合うことが大切です。

酒屋の売り上げを伸ばすには、消費者ニーズに対応した酒類を販売することが必要になってきます。

そのためには、造り手である酒蔵に消費者の声をフィードバックして、消費者ニーズに応えられるお酒造りをしてもらうことも必要です。

また、造り手である酒蔵の銘柄に込めた思いや価値を消費者に伝えることにより、銘柄に愛着を持ってもらい、売れ行きを伸ばすことに寄与します。

酒屋と酒蔵がwin-winの関係になることが、酒類業界の隆盛にとっては重要です。

酒蔵と直接的なコミュニケーションを大切にする

酒屋が、酒蔵との良好な関係性を構築するためには、酒蔵と直接的なコミュニケーションを大切にする必要があります。

酒蔵から信頼を勝ち取り、特約店契約を結んでもらい、「うちの蔵の酒は、あなたの店に任せた」と託してもらえるようになるためには、酒蔵との直接的なコミュニケーションが欠かせません。

酒蔵からの信頼を勝ち取るためには、定価販売(メーカー希望小売価格)を厳守し、酒蔵の銘柄に込めた想いや価値を守るために、酒蔵と直接コミュニケーションをとり、酒造工程やこだわりなどを丁寧にヒアリングして、消費者に伝えることが大切です。

酒屋が生き残るためには業務効率化やデータの活用が重要

酒屋が生き残るためには、業務効率化を行い、積極的にデータを活用することが重要であると言われています。

ここでは、酒屋が生き残るための業務効率化やデータの活用について解説していきましょう。

【酒屋が生き残るためには業務効率化やデータの活用が重要】

  • ITシステムの導入で在庫管理や売上分析を効率化する
  • データに基づくマーケティングで顧客ニーズを押さえる
  • バックオフィス業務の省力化で接客に注力する

ITシステムの導入で在庫管理や売上分析を効率化する

酒屋の業務効率化施策の1つとして、ITシステムの導入により、在庫管理や売上分析を効率化することが考えられます。

たとえば、酒販業務に特化した販売管理システムを活用すれば、在庫管理、仕入管理、売上管理などの基本的な業務を効率化することが可能です。

また、ハンディターミナルやタブレットを活用することで、経験の少ないスタッフでも間違いなく入出庫が可能となり、効率的なピッキングや出先での伝票出力が可能になります。

データに基づくマーケティングで顧客ニーズを押さえる

ITシステムの導入により、データに基づくマーケティングで顧客ニーズを押さえることも可能です。

たとえば、販売管理システムから得られるデータを分析することで、商品別、顧客別の売上推移などを把握し、これらの情報に基づいて「お客さまはどんなお酒が欲しいのか」など販売戦略を立てることもできます。

バックオフィス業務の省力化で接客に注力する

酒屋に、ITシステムを導入すれば、バックオフィス業務の省力化により、本業である接客に注力することも可能になります。

たとえば、酒販業務に特化した販売管理システムの導入により、在庫管理、仕入管理、売上管理などの基本的な業務の省力化や、酒税関連帳票の出力機能や空容器管理機能などを活用して、酒類販売業務のバックオフィス業務を省力化することが可能です。

また、システムの更新と維持も容易にできるので、消費税の軽減税率の対応など、法令の変更にも対応可能となり、万が一スタッフがキャッチアップしていなくてもなくても、大きな心配はありません。

酒屋が生き残るためには新たな顧客層の開拓と販路拡大が重要

酒屋が生き残るためには、新たな顧客層の開拓と販路拡大が重要であると言われています。

しかし、新規顧客開拓や販路拡大は簡単なことではありません。

ここでは、酒屋が生き残るために必要な新規顧客開拓と販路拡大について解説します。

【酒屋が生き残るためには新たな顧客層の開拓と販路拡大が重要】

  • SNSなどを活用した情報発信で若年層に訴求する
  • ネット通販への参入でリーチを広げる
  • 飲食店などへの販売を強化する

SNSなどを活用した情報発信で若年層に訴求する

酒屋の新たな顧客層の開拓の1つの施策として、SNSなどを活用した情報発信で若年層に訴求していくことが考えられます。

Z世代など若年層のほとんどが、生活をして行く上で必要な情報をSNSなどから取得していることから、酒屋の新たな顧客層として若年層をターゲットにするのであれば、SNSなどを活用した情報発信が効果的です。

たとえば、YouTubeで人気の日本酒を紹介する動画を配信したり、X(旧ツイッター)で売れ筋日本酒ランキングをつぶやいたり、Instagramライブで「シチュエーション別贈り物にはこのお酒」などの情報を配信したりする酒屋さんも見受けられます。

SNSの活用についてくわしく知りたい方は「蔵のSNS成果出てますか?失敗から学ぶSNS活用術とは」をご覧ください。

ネット通販への参入でリーチを広げる

インターネットが社会的に普及している現代では、酒屋の販売手法の1つとして、ネット通販への参入はアリです。

ネット通販への参入でリーチを広げることで、酒屋としての販路拡大につながるでしょう。

酒屋のネット通販には、自社のECサイトを構築しEC販売するケースと、大手通販サイトを活用するケースがありますので、自社にあった方法を選ぶことをおすすめします。

自社ECサイトを構築すれば、県外だけでなく、海外のお客さまにまで販路を拡大することが期待できるでしょう。

酒屋のネット通販についてくわしく知りたい方は「ネットショップで酒屋を開業するまでの流れとは?通信販売酒類小売業免許もあわせて解説」をご覧ください。

飲食店などへの販売を強化する

酒屋の販路拡大戦略として、店頭での個人のお客さまへ販売する「B to C」に加えて、飲食店などへ販売する「B to B」を強化する選択肢も考えられます。

飲食店などへの販売を強化する場合には、酒質の管理や価格設定など、顧客である飲食店側のニーズに対応していく必要があります。

飲食店などへ販売する「B to B」に関しては、個人のお客さまへ販売する「B to C」以上に、オリジナリティのある付加価値で差別化することができるので、工夫次第で大きく売上を伸ばすことも可能です。

酒屋の販路拡大についてくわしく知りたい方は「酒蔵も酒屋も】販路拡大どうしてますか?販路拡大の方法やポイントを解説」をご覧ください。

酒屋が生き残るためのまとめ

ここまで、酒屋が生き残るためにはどうしたらいいのか、顧客や地域コミュニティ、酒蔵との理想的な関係性、業務効率化やデータの活用、新たな顧客層の開拓と販路拡大などについてさまざまな方策をご紹介させていただきました。

酒屋の経営環境は厳しいものですが、全国どの地域でも生き残るために、オリジナリティのある付加価値を前面に出し、さまざまな工夫を施している酒屋が増えてきています。

いずれにしても、自社の地域やお店に適したマーケティング戦略を基軸にした上で、酒屋の経営をしていくことが必須です。

アンカーマンでは、酒蔵だけでなく、酒屋向けにも、お店の将来を見据えた事業計画に基づき、オーダーメイドのマーケティング戦略の策定をサポートするサービスをご用意しています。

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