牧野酒造 様

創業330年、18代目蔵元の挑戦 “ひとり”の限界を「経営者視点」の社員たちと破る
左 牧野酒造株式会社 取締役 牧野顕二郎 様
牧野酒造株式会社
取締役 牧野 顕二郎 様
※2022年1月31日更新
コロナ危機、“ひとり”の限界
Q:アンカーマンを知ったきっかけを教えてください
政府の設備投資支援である「ものづくり補助金」について相談するために、和田さんの会社に問い合わせをしたのが始まりでした。
Q:当社のコンサルティングを導入するまでの経緯について教えてください。どのような課題感があったのでしょうか。
これまで会社のことは、全て私が考え、ここまでやってきました。
社内に「経営者目線の人間が何人いるか=会社の強さ」という意識はありましたが、理想には遠く及ばず、私一人で会社を引っ張る状態。それでも毎年数%ずつ前進できていたからよかったものの、コロナ禍の急激な落ち込みには到底太刀打ちできません。
コロナ禍の危機的な落ち込みに対応しようと、デジタルの活用など新しい取り組みに踏み切る必要性を感じていましたが、社員はチャレンジに受け身の姿勢で、どこか他人事のように受け止めている雰囲気に危機感を感じていました。
経営相談をしていく中で、「この難局を乗り越えるには、今ある資産をフル活用しなければ」と、後回しにしていた社員の意識改革に本気で取り組むことにしました。仕事を「自分ごと化」してもらうことで、社員の可能性を最大限に引き出し、皆で前に進めるような未来志向な環境を醸成したいと考えました。
◆浮彫りになった、経営者と社員の目線の違い
Q:トライアルを通じて気づいた問題点、正式導入の決め手を教えてください。
いざ試してみて「やばい」と思いました。社員の声に積極的に耳を傾けてきたつもりでしたが、実は「本音」をうまく拾えていなかったことに気付かされました。
どうすれば全ての社員が仕事を「自分ごと」と捉え、責任を持って働いてくれるようになるか。今までの延長線上の取り組みではなく、ノウハウを知っている人に頼み、新たなチャレンジをする以外にない。賭けるような気持ちで導入を決めました。
Q:トライアルの段階で、どのような効果を実感されましたか。
「会社をより良くするために、日頃は言いにくいような会社の悪いことも自由に発言できる場」と社員に周知し、自由参加でメンバーを募りました。すると、会社を「なんとかしたい」と思ってくれる社員たちが手を上げてくれました。
初めての試みで不安もありましたが、初日の数時間で社員と密接に意思疎通できた感覚がありました。参加メンバーの知識や経験の差、立場に拘らず、闊達で前向きな議論が展開されました。そして、問題意識や課題の共有はやがて「一緒にやろう」という連帯感をもたらし、チームに良いムードが生まれました。
参加した社員の意識が変わっていく様子が実感できましたし、何より「ひとりではない」ことに気付きました。
◆数字が生み出す“経営視点”と問題意識
Q:社員に経営視点を持ってもらう為にどのような取り組みがありましたか。
以前は目標を数値化したり、営業担当以外に日々の売上状況を公表することはありませんでした。特に理由はありませんが、「まあまあ良い調子」とか「今のところ去年より10%くらい悪い」とか、曖昧にしていた経緯がありました。
しかしこれをオープンにし、メンバー全員で年間目標を立てました。すると「自分が数字を作るんだ!」という意識が浸透し、今では経営視点からも仕事を捉えてくれるようになりました。
敢えて明確な数字で伝えることで、社員がゴールを意識するようになりました。そしてゴールへの距離感が数字によって可視化されることで、手間のかかる取り組みやチャレンジに対する社員の士気が高まったように思います。
◆足りないピースは、チームで補う
Q:1年間のチャレンジで、どのような成果が生まれましたか。
伝統があっても「新しいことをしなければ続かない」と考えていますので、これまでも新しいことに挑戦はしていました。しかし私一人で進めるには限界があり、結果がついてこない状態が続きました。何か一つの要素が足りないと感じていました。
今回の取り組みを通じて、コミュニケーションが活性化され、課題を共有しながら1つのチームとして動けるようになりました。
結果、デジタルを活用した新しいことにも挑戦できました。膨大な労力がかかるため、二の足を踏んでいたクラウドファンディングにも着手し、おかげさまで目標額の3倍超を達成。創業330年の記念酒の販売も実現し、お客様には良いものをお届けできたと自負しています。
このほか、新商品開発や営業先の新規開拓、関東信越国税局酒類鑑評会での2年連続最優秀賞受賞など、1年間でたくさんの嬉しい成果が得られました。
◆社員発信の新商品で、新市場を切り拓く
Q:社員発信の新商品開発エピソードをお聞かせください。
売上をどう伸ばすかという課題に向き合う中、「新たな日本酒の可能性」という切り口で新しい商品企画を考えることになりました。
そこで生まれたのが「SAKE DI PASTA(サケディパスタ)」です。
地元名物である「パスタ」専用日本酒として、社員が提案してくれたものです。その話題性から、地元メディアにも多数取り上げられてPRにもなりました。100%社員発信で商品化したのは初めてですし、酒造として地域に根ざした活動ができ大変嬉しく思います。
「SAKE DI PASTA」の開発後は、販売案について社員から様々なアイディアが生まれました。社員一人ひとりがバッターボックスに立って、課題に取り組む姿勢が根付いたのです。
◆初挑戦の新規開拓で、売上回復
Q:新たに取り組まれた、新規顧客の開拓についても教えてください。
業界的な特徴からか「良い商品を作ればお声がかかる」という思いが根底にあり、営業活動にはこれまで受け身でした。しかし今回、酒販店さんの新規開拓に着手したことが奏功して、売上を1割盛り返すことに成功。コロナ禍で業界の平均売上が前年比2割以上も減収している中でしたので、確かな手応えを感じました。また同時に、挑戦することで「成長の機会は拡がる」、「うちのお酒を欲しがってくれるお客さんは全国にたくさんいるんだ」という、発見と喜びがありました。
◆“自分ひとり”じゃない。“信頼関係”で組織が変わる
Q:牧野専務にとって、コンサルティング導入による最もうれしい変化とは何ですか。
社員が自分で考えて行動してくれるようになり、私の負担が非常に軽くなったことです。以前は全部一人で仕事を抱え込みすぎてしまっていましたが、今では社員に相談できますし、主体性が高く、風通しの良い組織体制ができたのではと考えています。
おかげさまでストレスが減った分、仕事の生産性も大幅に向上。新たなアイディアにも取り組める。この循環が連続受賞にも繋がったと考えています。
Q:社員が「自主的」に動きチャレンジしてくれる。何がその起点になっていると感じますか。
信頼関係だと思います。これまでは経営者と社員、それぞれの立場で気を遣うからこそ、言いにくいこともあったはずです。経営支援を通じて、社員とのコミュニケーションが、「当たり障りのない」から「胸襟を開いて主張する」ものへと進化しました。
「差し障りのある会話」にこそ組織の金脈があるのかもしれません。
◆「自分に責任100%」で、日本酒の可能性創造へ挑み続ける
Q:改めて、和田よる経営支援は、御社にとってどんな存在でしょうか。
新しい挑戦へのストレスはありましたが、刺激的でかつ、良い変化をもたらすものでした。外部からの客観的な視点とコーチングで、自社の現在地も把握できます。
また社員は以前よりも仕事に面白みを感じてくれていますし、一人ひとりの視座も高まり、頼りがいのあるチームができたことは大きな収穫です。
Q:御社の今後のビジョンを教えてください。
創業330年というのは、同じことをしていては続きません。
攻めのチャレンジで、時代の変化に合わせて進化を続けたいです。
アンカーマンさんとの一年は、良い土壌をつくり次に繋げるものでした。
来期以降の更なる成長が楽しみです。
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