70年ぶり酒造免許の新規参入が緩和?何が変わり、今後の焦点はどこか

※2025年9月4日更新

”長年、閉ざされてきた酒造免許の新規参入の扉”が、ついに開き始めるかもしれません。

2025年5月、実に70年ぶりに、日本政府は「国内市場向けの日本酒製造免許」について、一部新規発行を認める検討に入ったのです。

「地域の伝統を守りながらも、次世代の担い手を育てたい」といった想いを抱える現場の声に、制度がようやく応え始めたのかもしれません。

今回は、70年ぶりの酒造免許の新規発行の規制緩和の検討が開始された背景と具体的な変化をひも解きながら、若手や未経験者、異業種といった新興勢力の酒造業界への新規参入支援、制度設計で今後注目されるポイントなどを多角的に探ります。

【この記事でわかること】

  • 2025年5月に70年ぶりに国内向け酒造免許の新規参入が一部解禁の検討に入ったことの背景や概要
  • 規制緩和検討開始の理由は、海外での日本酒ブームと国内市場の変化など
  • これまでの新規参入の方法は、M&A、輸出用清酒製造免許、別の免許で製造の3つ
  • 一部解禁の検討に入ったものの、具体的な条件やスケジュールは未発表であり、今後の公式情報などに注視すべき

70年ぶりに国内向けの新規参入が一部解禁へ

ここでは、70年ぶりに国内向けの新規参入が一部解禁の検討に入ったことについて、背景や概要などを解説します。

【70年ぶりに国内向け新規参入が一部解禁の検討に入ったことの背景や概要】

  • 2025年5月に政府が方針変更の検討を開始
  • 約70年続いた需給調整要件の見直し
  • あくまで「一部」解禁である点

2025年5月に政府が方針変更の検討を開始

2025年5月、日本政府は約70年ぶりに国内向けの日本酒製造免許の新規発行を一部解禁する方針を変更することの検討を開始しました。

これまで酒税法に基づく「需給調整要件」により、国内市場向けの新規免許発行は原則認められていませんでしたが、今回の制度の見直しの検討開始により、今後、酒造業への国内向けの新規参入を一部解禁するかもしれないという可能性が出てきた形となります。

今回の方針転換の検討開始は、酒造業界の構造に大きな影響を与える歴史的な一歩となるかもしれません。

約70年続いた需給調整要件の見直し

約70年続いた「需給調整要件」の見直しは、日本酒業界にとって歴史的な転換点です。

これは、酒税法に基づく制度で、新規の酒類製造免許を原則として認めないという厳しい規制でした。

特に日本酒に関しては、国内市場の縮小を背景に、1953年以降「需給が過剰である」とされ、新規参入が事実上封じられてきました。

しかし今回の制度の見直しにより、新規の酒類製造免許の発行が一部認められ、新規参入が一部解禁される可能性が出てきたのです。

今回の見直しの概要(2025年5月政府方針変更の検討)は、以下のとおりとなっています。

概要解説
国内向け製造免許の新規発行を一部容認を検討中地域資源活用型や観光連携型など、特定条件下での新規参入を認める方向か?
需給調整要件の撤廃ではなく「緩和」の検討中既存酒蔵との競合を避けるため、数量や販売方法に制限を設ける可能性あり
特区制度や試験免許制度の導入も検討中地方創生や文化継承を目的とした限定的な枠組み 

あくまで「一部」解禁である点

政府が2025年5月に示した方針変更の検討は、全面的な自由化ではなく、限定的な条件下での新規参入を認める可能性というものであり、あくまで「一部解禁」である点が今回の制度変更の検討開始の重要なポイントです。

「一部解禁」の意味するところとして、解禁の可能性があるのは以下のようなケースに限られる見込みであると考えられています。

解禁事例内容 
地域資源活用型地元の農産物や古民家などを活用した酒造り
観光・体験型インバウンドや地域観光と連携した事業モデル 
特区制度の活用自治体が申請する「日本酒特区」に限って免許発行 
SDGs・文化継承型伝統技術の保存や持続可能性を重視した事業

つまり、誰でも自由に酒蔵を立ち上げられるわけではなく、目的・地域・事業形態に応じた審査と制限が設けられる可能性があるということになります。

なぜ今、新規参入の規制が緩和されようとしているのか

約70年続いてきた制度を見直し、新規参入規制が緩和されようとしている理由はどこにあるのでしょうか。

ここでは、なぜ今、新規参入の規制が緩和されようとしているのかということについて解説します。

【新規参入の規制が緩和される理由】

  • 海外での日本酒ブームという追い風
  • 国内市場の縮小と後継者不足
  • 輸出用免許や特区申請での実績

海外での日本酒ブームという追い風

新規参入規制が緩和されようとしている理由の1つとして、海外での日本酒ブームという追い風があったことが挙げられます。

近年、SAKEは世界的に高い評価を受け、特にアメリカやフランス、シンガポールなどで高級酒としての地位を確立

日本酒は和食文化の広がりとともに、食中酒としての魅力が再認識され、ミシュラン星付きレストランでも採用されるなど、国際的なブランド価値が高まっています。

2024年には「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、文化的な注目度も上昇

こうした海外需要の拡大は、国内の制度にも影響を与え、輸出専用免許の創設や新規参入の議論を後押ししました。

政府はこの追い風を活かし、国内でも新たな酒造事業者を育成することで、輸出拡大と地域経済の活性化を両立させる狙いを持っています。

国内市場の縮小と後継者不足

新規参入規制の緩和の検討開始には、国内市場の縮小と後継者不足なども影響しています。

日本酒の国内消費量は1973年のピーク時から約4分の1にまで減少し、若年層の酒離れやライフスタイルの変化により市場は縮小傾向にあり、加えて、全国の酒蔵の約3割が後継者不在とされ、技術継承や地域文化の維持が困難になっている状況下で、従来の「需給調整要件」による新規参入制限は、制度的な意味を失いつつありました。

政府はこの構造的課題に対応するため、地域資源を活用した新規酒造事業や若手・異業種の参入を促進する方向へと舵を切るかもしれません。

新規参入の緩和の検討開始は、伝統産業の再生と地域の持続可能性を支える政策的な転換でもあります。

輸出用免許や特区申請での実績

新規参入規制が緩和されようとしている理由として、輸出用免許や特区申請での実績なども考えられます。

2021年に創設された「輸出専用清酒製造免許」は、国内販売を行わない条件で新規参入を認める制度として注目されました。

これにより、若手や異業種による酒造スタートアップが誕生し、海外市場向けの高付加価値商品が次々と生まれたのです。

また、地方自治体による「日本酒特区」構想では、地域資源を活用した体験型酒造りや観光連携型の事業が実績を積み、制度設計のモデルケースとなっています。

これらの取り組みは、既存の需給調整規制の枠組みを揺るがす信頼と成果を生み出し、2025年の国内向け免許の一部解禁につながる制度的な土台となりました。

今後は、これらの実績を踏まえた持続可能な制度設計が求められるでしょう。

これまで行われてきた新規参入の3つの方法

日本では長らく新規の酒造免許が発行されない状況が続いてきましたが、それでも日本酒業界に参入したい事業者たちは、既存制度の枠内での参入方法を模索してきました。

ここでは、これまで行われてきた新規参入の3つの方法について解説します。

【これまで行われてきた新規参入の3つの方法】

  • 既存酒蔵の免許を引き継ぐM&A
  • 輸出に特化した輸出用清酒製造免許
  • 別の免許で造るクラフトサケという動き

既存酒蔵の免許を引き継ぐM&A

既存制度の枠内での代表的な3つの参入方法の1つが、「既存酒蔵の免許を引き継ぐM&A」という手法です。

これは、新規免許が発行されないため、既存酒蔵を買収し、免許ごと事業を承継する方法であり、「事業承継型」と呼ばれています。

酒税法上、免許は法人に紐づくため、法人ごと買収することで免許を維持できることと、後継者不在の酒蔵が多く、M&Aによる事業承継が活発化しているという背景により、新規発行が困難な中、唯一の合法的な国内参入手段として、これまで数多く採用された手法です。

輸出に特化した輸出用清酒製造免許

輸出用清酒製造免許は、2021年(令和3年)に創設された制度であり、戦後初めて新規参入が認められた画期的な制度です。

制度の概要は以下のとおりとなります。

対象輸出専用の清酒製造を行う事業者
特徴・国内販売は一切不可
・清酒の最低製造数量基準(年間60kℓ)を適用しない
・少量・高付加価値商品の製造が可能

これは、国内市場の縮小や海外でのSAKE人気の高まりを背景に、政府が日本酒の輸出拡大を後押しするために導入したものです。

輸出用清酒製造免許は、規制緩和の第一歩として、制度的な風穴を開けた意義を有し、海外展開を視野に入れたスタートアップが参入可能になったり、地方での小規模酒蔵設立が可能になり、地域活性化にも寄与したりしました。

別の免許で造るクラフトサケという動き

また、第2の選択肢として、別の免許でクラフトサケを造るという動きも忘れてはなりません。

クラフトサケとは、米を主原料としながら、果物・ハーブ・スパイスなどの副原料を加え、従来の清酒とは異なる製法で造られる自由度の高い醸造酒であり、酒税法上は「清酒」ではなく「その他の醸造酒」に分類されるため、清酒製造免許は不要として、その他の醸造酒製造免許(最低製造量:年間6kℓ)で製造可能です。

クラフトサケは、制度の制約を逆手に取った“創造的な参入モデル”で、2025年の規制緩和にも影響を与えた酒税法の定義を巧みに活用した制度内イノベーションであり、近年注目を集めています。

新規参入緩和の検討開始で今後焦点となるポイント

新規参入が緩和されようとしている今、今後どのような点に注意していけばいいのでしょうか。

ここでは、新規参入緩和の検討開始で今後焦点となるポイントについて解説します。

【新規参入緩和の検討開始で今後焦点となるポイント】

  • 具体的な条件やスケジュールは未発表
  • 品質をどう担保するかのルール作り
  • 今後発表される国税庁の公式情報

具体的な条件やスケジュールは未発表

新規参入の規制緩和の検討が2025年5月に開始されたとはいえ、具体的な条件やスケジュールは現時点で未発表であり、今後の制度設計が焦点となっています。

これは、制度の持続可能性や既存酒蔵との共存を図るために、慎重な検討が求められているからです。

今後の制度設計における具体的な条件やスケジュールに関して、注意を払っておく必要があるでしょう。

品質をどう担保するかのルール作り

新規参入の緩和の検討開始に伴い、今後の焦点となるのは「品質担保のルール作り」です。

従来の酒造業は長年の技術と経験に支えられており、品質の安定性が業界全体の信頼を築いてきました。

新規事業者が増えることで、製造技術や衛生管理、原材料の選定などにばらつきが生じる懸念があるため、一定の品質基準を設ける必要があります。

具体的には、酒税法や食品衛生法に基づく製造工程の管理指針、官能評価や成分分析による品質検証、さらには業界団体による自主認証制度の導入などが検討されています。

また、輸出を前提とする場合は、国際規格(例:HACCP)への適合も求められる可能性があるでしょう。

品質を担保するルールは、消費者保護とブランド価値の維持に直結するため、制度設計と現場運用の両面から慎重に整備されることが重要です。

今後発表される国税庁の公式情報

新規参入緩和に関する具体的な免許取得条件や申請スケジュールは、まだ正式には発表されていません。

今後の制度設計に関する通達やパンフレットが出される可能性が高いため、国税庁の新着情報ページを定期的に確認することが重要です。

【まとめ】酒造免許の新規参入緩和の検討開始で今わかっていること

ここまで、70年ぶりに国内向けの新規参入が一部解禁になるかもしれないということについて、背景や概要、緩和の検討が開始された理由、これまでの新規参入の方法、今後の注目ポイントなどを解説してきました。

本記事のポイントは、以下のとおりです。

【本記事のポイント】

  • 2025年5月、70年ぶりに日本酒製造の新規免許発行を、国内向けにも一部解禁する制度変更の検討が開始された
  • 一部解禁の検討開始の背景には、海外での日本酒ブームや国内市場の変化などがある
  • これまでは、M&A、輸出用清酒製造免許、別の免許で製造の3つの方法により新規参入が図られてきた
  • 酒造免許の新規参入に関しては、現時点で、具体的な条件やスケジュールは未発表であり、「品質をどう担保するか」というルール作りなど、制度設計に関する今後の公式情報に注視すべき

酒造免許の新規参入緩和は、政府が国内向けにも一部解禁する検討を開始したことで大きな転換点を迎えています。

背景にはSAKEの海外人気や地方創生の機運があり、今後は需給調整規制の見直しや特区制度の導入などが検討されていくでしょう。

一方で、既存酒蔵の反発や新規参入者の事業継続リスクも指摘されており、持続可能な制度設計と地域連携が鍵となります。

制度発表前の今こそ、現場視点からの提言や準備が重要です。

アンカーマンでは、国税庁の最新情報を日々チェックしていますので、新たな情報が出たら教えて欲しいという方は、アンカーマンまでご連絡ください。

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