酒蔵を新設するために必要な免許とコストとは?活用できる補助金も解説

「酒蔵を新設したい!」

近時、好きなお酒に興味を持ち、自分で醸造してみたい、酒蔵を経営してみたい、海外向けに販売してみたいなどと思い立ち、酒蔵をはじめたいと思う人がいます。

他方、伝統産業である酒造業に新規参入することはできるのか……

免許は?コストは?補助金は活用できる?

酒蔵の新設に関する疑問や不安を解消したい人は、正確な情報を収集したいと思っているのではないでしょうか。

今回は、酒蔵の新設に関して、必要な免許やコスト、活用できる補助金などを解説します。

酒蔵の新設は可能なのか

「酒蔵の新設は可能か?」

答えは「Yes」!酒蔵の新設は可能です。

ただし、酒蔵の新設の形態や酒蔵に必要な免許の問題などが関係してくるので注意しましょう。

酒蔵の新設にはいくつかの形態があります。

主な酒蔵の新設の形態は以下のとおりです。

  • 1から酒蔵を新設するパターン
  • M&Aなどで既存の酒蔵を引き継ぐパターン
  • 酒蔵を移転するパターン

酒蔵の新設に必要な免許とは

酒蔵を新設するために必要な免許とは、酒造法で定められている「酒類製造免許(酒造免許)」です。

酒類を製造しようとする者は、酒類の品目別かつ製造場ごとに所轄税務署長の免許を受ける必要があると規定されています(酒税法第7条)。

「酒類製造免許(酒造免許)」を受けるためには、製造場で品目ごとに最低製造数量基準以上であること、かつ、酒造法第10条各号に規定する拒否要件(免許の審査を行う税務署長が「免許を与えないことができる」要件)に該当しないことが必要です。

※参照:国税庁「お酒に関するQ&A(よくある質問)/【酒類製造免許関係】」

酒蔵の新設に必要な免許が取れない理由と背景

日本酒の酒蔵を1から新設しようと思えば、本来、清酒の酒類製造免許を新たに取得しなければなりません。

清酒の酒類製造免許を新たに取得するには、要件をすべて満たす必要があります。

「清酒の酒類製造免許(酒造免許)」を取得する要件のうち、拒否要件の1つである<需給調整要件(酒造法第10条第11号)>に関連する取扱いでは、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため、一定の場合(※)のみ酒類の製造免許を付与する」とされています。

※「一定の場合」とは、以下のようなケースです。

  • 既に酒造免許を受けている清酒製造者が企業合理化を図るため新たに製造場を設置するケース
  • 既に酒造免許を受けている清酒製造者が組織の再編(合併・会社分割等)により新たに製造場を設置するケース
  • 既に酒造免許を受けている清酒製造者が瓶詰め用の蔵置場でスパークリング日本酒を製造しようとするケース
  • 輸出のための清酒の製造場を設置するケース

ここで、1つの疑問が…「現在、なぜ需給調整がされているのでしょうか?」

それは…

国内の日本酒需要が低迷している中、新規参入を認めて日本酒の供給過多になり、過当競争で既存の酒蔵が淘汰されてしまえば、国税収入の重要な地位を占める酒税を確保できなくなってしまう…

既存の酒蔵を保護して、市場を安定させ、安定した酒税確保を図る観点から、「需給調整」を行う必要があり、原則として、一定の場合を除いて、酒造免許の新規取得は認められていないのです。

輸出向けに限り新規免許の発行が可能

原則として、酒蔵の新設に必要な「清酒の酒類製造免許(酒造免許)」の新規取得が認められておらず、酒造業への新規参入は困難な状況です。

しかし、国際的な日本酒人気を背景として、政府が輸出拡大を後押ししていることから、酒税法の一部が改正され(令和2年度税制改正)、令和3年4月より、輸出向け商品に限り日本酒を国内で製造できる新規免許の発行が可能となりました(輸出用清酒製造免許制度)。

これは、日本酒の輸出堅調に伴う酒税の増加が見込めること、かつ、日本酒製造場の国内での新設を認めても、輸出向けに限定しておけば、既に酒造免許を受けている清酒製造者である国内酒蔵への影響を最小限に抑えられることの2つの要因が背景にあります。

酒蔵を新設するための手法

酒蔵を新設するために必要な「清酒の酒類製造免許(酒造免許)」の新規取得が認められておらず、酒造業への新規参入が困難な状況にある中、それでも酒造業に新規参入している事業者がいます。

はたして、現状の法制下で、酒造業へ新規参入するためには、どんな手法を選択すればよいのか考察していきましょう。

輸出用限定酒蔵

輸出用商品に限定した酒蔵の新設には「清酒の酒類製造免許(酒造免許)」の新規取得が認められているので、酒造業への新規参入が可能です。

「輸出用清酒製造免許制度」では、清酒の最低製造数量基準(60㎘)も適用されないので、高付加価値商品を少量から製造できる製造場を新たに設置することができます。

たとえば、「輸出用清酒製造免許制度」を利用すれば、どぶろくの製造者が輸出用の清酒を製造したり、海外で清酒を製造・現地販売していた事業者が清酒の本場の日本で製造・輸出したり、委託醸造で清酒を製造・輸出していた事業者が自社製品の輸出に切り替えたりできるのです。

M&Aによる企業買収

酒造業への新規参入の1つの選択肢として、「M&A」が考えられます。酒造免許を保有している企業をM&Aによって買収して、酒蔵を引き継ぐことです。

酒造免許は、酒蔵自体に紐づいているので、M&Aによって酒蔵ごと買収できれば、酒蔵の新設が叶います。

委託醸造

酒造業への新規参入のその他の選択肢としては、酒造免許を保有している酒蔵に「委託醸造」してもらうことが考えられます。

酒造免許を保有している既存の酒蔵と提携して、自社専用の日本酒醸造を委託(OEM)することが可能です。

「委託醸造」による酒造業への新規参入も1つの酒蔵の新設形態となります。

製造場の移転

取引先や顧客の変動、後継者不足問題や原料の調達先の変更、製造方法の変更などさまざまな理由で製造場を移転するケースも考えられます。

たとえば、経営者の刷新を機に、今まで酒造りしてきた地を離れ、新たな地に清酒製造場を移転(「清酒製造場移転許可」が必要)して、心機一転、酒蔵の経営に取り組むことも酒蔵の新設の1つの形態でしょう。

清酒以外の品目での免許取得

清酒の醸造とは少し離れますが、「その他の醸造酒」「雑酒」「リキュール」など「清酒以外」の製造免許を取得するという方法も検討の余地ありです。

酒税法上、「清酒」には、「原料が米・米麹・水など」「発酵後に漉す工程」「アルコール分22度未満」などの要件があります。これらの要件のうち、1つでも定義から外れれば、「清酒の製造免許」は要らなくなります。

たとえば、植物原料の「ボタニカル酒」は「その他の醸造酒」、発酵過程の最後でしぼらない「どぶろく」は「雑酒」、アルコール添加によりアルコール分を22度以上の酒精強化を経た酒(長期熟成酒など)は「リキュール」の分類になるからです。

酒蔵を新設するために必要なコスト

酒蔵を新設するために必要なコストはどれくらいでしょうか。

まず、酒蔵の新設の形態によってコストは変わってくるでしょう。

たとえば、M&Aで酒蔵を買収するケースでは、最低限買収にかかるコスト(M&A費用)があれば、酒蔵は引き継げます。あとは、M&Aによる買収後の醸造機材を入れ替えるかどうかで必要なコストが変わってくるでしょう。

酒蔵新設時に必要な醸造機材に関しては、年間数千ℓ醸造する醸造場では、1,500万円程度、最小限の設備でいいなら500〜600万円程度。この数値をベースに、年間醸造量が多くなれば機械の規模や数も増えるので、金額はアップします。

その他にも、建屋を建てるのか借りるのかなど不動産に関わるコストや杜氏や蔵人といった人的コスト、広告宣伝費等のマーケティング関連コストなども必要なコストとして試算しておきましょう。

新設する酒蔵での経営戦略

酒蔵の新設を考える場合には、新設する酒蔵での経営戦略も練っておく必要があるでしょう。

たとえば、M&Aによる買収後、酒蔵の再生を図るケースでは、経営戦略を含めた中期経営計画を盛り込んだ再生計画案を立てることが重要です。

再生計画案を立てる際には、醸造機材や従業員を引き継ぐ場合のモチベーションアップ戦略や機材の更新の算段、資金計画やマーケティング戦略、リブランディングなどあらゆる項目について見直し、PDCAサイクルを回していくようにしましょう。

酒蔵の新設で活用できる補助金

酒蔵の新設に際して、どうしても資金が必要になってきます。酒蔵の新設に関する資金の調達方法に関しては、自己資金や銀行等からの借入金で賄う方法などがあります。

酒蔵の新設に関する資金調達方法としては、返済不要な補助金がおすすめです。酒蔵の新設に活用できる補助金には、以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • フロンティア補助金
  • ブランド化・酒蔵ツーリズム補助金
  • 事業承継・引継ぎ補助金
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※2022年9月29日更新 補助⾦は国や地⽅公共団体が事業者をサポートするために出していただけるお⾦です。 融資ではなく、返済不要です。 酒造業者の皆様が活⽤できる補助⾦…

酒蔵を新設する以外に経営に携わる方法

酒蔵を新設する以外に酒蔵の経営に携わる方法についても考察してみましょう。

酒蔵を新設する以外に酒蔵の経営に携わる方法としては、以下のようなパターンが考えられます。

  • 既存の酒蔵に入社して経営陣に参画する
  • 親族内承継等事業承継で経営に携わる
  • M&Aで企業買収して酒蔵を引き継ぐ
  • 既存の酒蔵と事業提携や資本提携を行い経営に参画する

酒蔵を1から新設しないパターンでも、酒蔵の経営に携わることは可能です。その場合でも、酒蔵の経営に携わるために必要な免許や資金のこともチェックしておきましょう。

まとめ

ここまで、酒蔵の新設に関して、必要な免許やコスト、活用できる補助金などをご紹介させていただきました。

酒蔵を新設するためには、キャッチアップしなければならないことが意外と多くあることをご理解いただけたのではないでしょうか。

「酒蔵を新設するには何からはじめればよいのか?」

「酒蔵の新設について誰かに相談したい!」

など、ご要望やご質問があれば、お気軽にアンカーマンまでご連絡ください。

アンカーマンでは、酒蔵の新設をしたいという人に向けて、酒蔵の新設に活用できる補助金サポートを行っています。これまで160蔵以上にサポートしてきた実績に基づき、数ある補助金の中からあなたに適した補助金をご提案!

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