【醸のバトン】酒蔵のM&Aって何?蔵にまつわるそれぞれの事情

※2023年2月22日更新

酒蔵には老舗が多く、100年以上の歴史がある蔵も珍しくありません。
脈々と「醸のバトン」が受け継がれてきたのです。
しかし、近年、「醸のバトン」が途切れることも多々見受けられます。

「酒蔵の廃業」です。

蔵元さんとしては、なんとか廃業を回避したいと思うでしょう。

そんなとき、1つの有効な手段として、「酒蔵のM&A」があります。
「酒蔵のM&A」というキーワードを聞いたことはあっても、詳しく理解している蔵元さんは少ないのではないでしょうか。

今回は、酒蔵のM&Aに関して、蔵にまつわるそれぞれの事情を深掘りしていきましょう。

酒蔵のM&Aとは

「M&A」とはMergers(合併) とAcquisitions(買収)の略で、「企業の合併・買収」という意味です。
さまざまな理由から、企業や事業を手放して第三者に売ったり、買ったりすることを言います。

ここでは、酒蔵を売ったり買ったりする「酒蔵のM&A」とはどんなものか見ていきましょう。

酒蔵のM&Aってどんなもの?

「酒蔵のM&A」とは、簡単に言えば、酒蔵を売ったり、買ったりすることです。

「酒蔵の事業の売買」と言い換えてもいいでしょう。

専門的に言えば、M&Aをする手法はさまざまで、会社法による合併や会社分割、株式譲渡・事業譲渡による買収などがあり、資本提携や業務提携を含むこともあります。

「酒蔵のM&A」は、酒蔵の事業承継の1つの形態ですが、特徴的なのは原則として第三者とのやり取りになるということです。

酒蔵の事業承継は、代々家業を子や孫などの親族に受け継がせる「親族内承継」や社内の従業員に引き継ぐ「従業員承継」など『社内承継』が一般的です。

しかし、「酒蔵のM&A」は、事業承継する相手が社外の第三者ということで「社外承継(第三者承継)」という特徴があります。

酒蔵がM&Aで売却するのはどんなとき?

酒蔵がM&Aで第三者に売却するのは、最終的には酒蔵の廃業を避けるためになされることが多いのではないでしょうか。

もちろん、早期の段階では、酒蔵の事業承継の選択肢として、親族内承継や従業員承継など「社内承継」の道を模索するはずです。
しかし、社内承継が後継者問題などで難しくなると、残された選択肢は、社外承継となる第三者承継「酒蔵のM&A」か「酒蔵の廃業」しかありません。

これまで代々受け継がれてきた「ブランド」「取引先」「信用」「醸造技術などのノウハウ」「従業員の生活」「醸造設備」などを失ってしまう「廃業」を回避するために、「酒蔵のM&A」を選択するケースが多いでしょう。

なぜ酒蔵をM&Aして購入するの?

酒蔵のM&Aで酒蔵を購入する側にもそれなりの事情はあります。

1つは、酒造業免許の取得が目的であるケース。

現在、酒造りをしたくても、原則として、地酒の酒造免許の新規取得は認められていません。
酒造免許は工場に紐づいているため、新規に酒造りをしようと思えば、酒造の許認可や人材、設備を含めた酒蔵ごと購入するのが現実的なのです。

このケースでは、酒造免許のない酒屋が、酒造業に参入するため酒蔵を買収したり、異業種や海外企業からの新規参入を図ったりなどもこういったケースに含まれます。

また、別の購入理由は、本業とのシナジー効果を期待する異業種企業の買収事例です。

たとえば食品事業など酒造業とシナジーのある異業種企業が、酒蔵をM&Aで買収して、オリジナルブランドを作ったり、スケールメリットを求めて経営の多角化を図ったり、地域と密着して信用を築いている酒蔵を買収することで、日本に進出しやすくなるという目的で海外企業が買収したりといったケースなども見受けられます。

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酒蔵のM&Aにおけるポイント

酒蔵のM&Aを成功させるには、さまざまなポイントを押さえておく必要があります。

ここでは、「酒蔵のM&Aの流れ」「酒蔵のM&Aのメリット・デメリット」「酒蔵のM&Aの成功はM&A実行後が重要」などのポイントについて詳しく解説していきましょう。

酒蔵のM&Aの流れを理解しておこう

酒蔵のM&Aの流れは、以下のとおりです。

【酒蔵のM&Aの流れ】

  1. 酒蔵の事業承継の形態の決定⇒「酒蔵をM&Aで売りたい」「酒蔵をM&Aで買いたい」
  2. M&Aのパートナーを選んで相談して相手を探す:酒蔵のM&Aの場合、酒造業に詳しいパートナーを選ぶことが重要
  3. 相手とのマッチング:売り手と買い手
  4. 条件交渉・契約=M&A覚書や基本合意書締結
  5. デューデリジェンス(相手企業の各種調査):専門家に依頼
  6. 最終条件交渉・正式契約(M&A契約書)
  7. クロージング(M&A実行=決済・引渡し)

酒蔵のM&Aのメリット・デメリットを把握しよう

酒蔵のM&Aのメリット・デメリットも把握しておきましょう。

酒蔵のM&Aの売り手・買い手のそれぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。

【酒蔵のM&Aのメリット・デメリット】

売り手

【メリット】

  • 廃業を回避して蔵やブランドを残せる
  • 対価(創業者利益)が得られる
  • 従業員の生活を守れる
  • 肩の荷を降ろせる
  • 担保や個人保証が外せる

【デメリット】

  • 蔵が第三者の手にわたってしまう
  • 買い手が見つからない、または、条件が折り合わない場合には、「廃業」となる

買い手

【メリット】

  • 酒造業免許を取得できる
  • 醸造設備や人材を引き継げる
  • 蔵のブランドやのれんを引き継げる
  • 酒造業に新規参入できる
  • 自身の本業とのシナジー効果が期待できる

【デメリット】

  • 従業員や取引先などから反発される可能性がある
  • 思ったとおりの利益や効果が見込めない場合がある
  • 簿外債務や偶発債務のリスクがある

酒蔵のM&Aの成功はM&A実行後が重要

酒蔵のM&Aは、売り手にしても、買い手にしても成功するか否かはM&A実行後が重要となってきます。

まず、酒蔵のM&Aの売り手に関しては、M&A実行後に第三者に蔵を引き渡したとしても、思ったとおりに従業員の生活を守ってくれるかどうかはわかりません。
M&A実行後、経営がうまくいかず、従業員が解雇されたり、酒蔵の廃業に陥ったりするケースも珍しくないからです。

また、酒蔵のM&Aの買い手に関しては、M&A実行後に従業員との折り合いが悪くなり、思っていたように酒蔵の経営ができないというケースもあります。

こんなときは、PMI(Post Merger Integration)=経営統合の取組みに注力すべきです。

具体的には、M&A実行後の事業再生に際して、経営管理体制や人事・財務、組織や各種規程、従業員の意識や企業風土の見直しなどのソフト面とIT・業務システム、醸造設備の見直しなどのハード面に気を配りましょう。

財務面では、補助金の活用などもおすすめです。

酒蔵のM&Aを成功させるためには、売り手、買い手どちらの立場でも、M&A実行後のことも熟慮して、M&A実行計画を立てるとよいでしょう。

まとめ

酒蔵のM&Aに関して、ご理解いただけたでしょうか。

蔵の後継者問題で悩み、M&Aによる売却を考えている人、酒造業への新規参入を目指してM&Aによる蔵の購入を考えている人、皆さんそれぞれのご事情があることでしょう。

それぞれの事情から、酒蔵のM&Aを実行しようとしている人にとっては、パートナー選びも重要です。

酒蔵のM&Aは特殊です。酒造業に詳しくないパートナーを選んでしまうと、説明ばかりに時間がかかり、意図している相手とのマッチングも難しくなってしまうでしょう。

アンカーマンなら、酒造業に特化しており、180蔵以上のサポート実績から、酒造業の経営に詳しく、酒蔵のM&Aに関するご相談にも対応できます。

  • 酒蔵のM&Aに関する売りたい・買いたいのご相談
  • 事業再生にかかる設備導入等のご相談
  • 酒蔵のM&Aに関連した補助金のご提案
  • 用品店のパートナー紹介

などなど…

アンカーマンは、あなたの蔵の縁の下の力持ちとなり、「醸のバトン」を引き継ぐお手伝いをいたします。

酒蔵のM&Aのご相談なら、お気軽に酒造業特化のアンカーマンにご連絡ください。

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