醸造家とはどんな仕事?魅力やなり方、仕事内容をくわしく解説

酒類業界に関心のある方なら、「醸造家(じょうぞうか)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
「『醸造家』って聞いたことがあるけれど、お酒を造る『杜氏(とうじ=酒造現場で全工程を取り仕切る最高責任者)』や『蔵人(くらびと=酒造りの職人)』とどう違うの?」などと疑問に感じる人も。
「醸造家」とは、発酵技術を活用して酒類や発酵食品を製造する専門職のこと。
特に、日本酒やワイン、ビール、醤油、味噌などの製造に携わる人を指します。
酒類業界を志すのであれば、「醸造家」について押さえておくことも大切です。
今回は、酒類業界への就業を志す人に向けて、醸造家とは何か、魅力やなり方、仕事内容などをくわしく解説しましょう。
【この記事でわかること】
- 醸造家とは、発酵技術を活用して酒類や発酵食品を製造する専門職のこと
- 醸造家の仕事は、ワイン、ビール、日本酒など酒類の製造のほか、醤油や味噌といった身近な発酵食品を造るなど幅広い
- 醸造家になるには、学校で専門知識を学び現場で経験を積むのが近道
- 1. 醸造家とは?
- 1.1. 発酵の力で新しいおいしさや価値を生み出すプロ
- 1.2. お酒や醤油・味噌など身近な発酵食品を造る
- 2. 醸造家の仕事
- 2.1. ワインならブドウ栽培から瓶詰めまですべてに関わる
- 2.2. ビールなら原料や造り方でさまざまな個性を引き出す
- 2.3. 日本酒なら伝統の技を使い米から丁寧にお酒を造る
- 2.4. 醤油や味噌なら微生物の働きでじっくりおいしさを育てる
- 3. 醸造家になるには
- 3.1. 学校で専門知識を学び現場で経験を積むのが近道
- 3.2. 科学の知識と鋭い五感、探求心と体力も大事
- 3.3. 必須の資格は少ないが酒造技能士は強みになる
- 4. 醸造家に関するよくある質問
- 4.1. 文系でも醸造家になれる?
- 4.2. お酒に強くなくても、醸造の仕事はできる?
- 4.3. 醸造の仕事は体力的にきつい?女性も活躍できる?
- 4.4. 醸造家として経験を積んだら、どんな道に進める?
- 5. 【まとめ】醸造家とは発酵の力で食と文化を豊かにする仕事
醸造家とは?

「醸造家」という言葉は、発酵を介した食品や飲料の製造に携わる人、またはその職種、さらには地域資源を活用した新たな発酵食品を開発する人材など、広範囲な意味で使われます。
ここでは、醸造家とは何かについて解説しましょう。
【醸造家とは】
- 発酵の力で新しいおいしさや価値を生み出すプロ
- お酒や醤油・味噌など身近な発酵食品を造る
発酵の力で新しいおいしさや価値を生み出すプロ
「醸造家」には、いくつかの言葉の意味が含まれますが、1つには、「発酵の力で新しいおいしさや価値を生み出すプロ」という意味合いを持ちます。
酵母や微生物の働きを活用し、酒類や発酵食品を製造する専門職であり、原料や製法を工夫し、独自の味や香りを持つ製品を作ることができる人のことです。
伝統的な技術と最新の科学を組み合わせ、品質の高い発酵食品を生み出します。
さらに、発酵技術を活用した新しい食品開発や環境負荷の低減にも取り組むことで、社会に新たな価値も提供できるのが「醸造家」です。
発酵の力を最大限に生かし、独創的な製品を生み出す醸造家の仕事は、科学と職人技の融合によって成り立っています。
お酒や醤油・味噌など身近な発酵食品を造る
「醸造家」とは、お酒や醤油・味噌など身近な発酵食品を製造する人という意味でも使われます。
たとえば、酒蔵で実際に酒を造る職人のことを「蔵人」、蔵人に指示を出し、酒造現場で全工程を取り仕切る最高責任者のことを「杜氏」というのに対して、「醸造家」は、酒造りの技術や研究を深める専門家として、より広い意味で使われるのです。
日本酒、ワイン、ビールのほか、醤油や味噌、酢などの身近な食品も、醸造家の技術によって生み出されています。
発酵の過程では微生物の働きを細かく管理し、原料の選定から熟成まで、科学的な知識と職人技を融合させることが求められ、醸造家は、こうした発酵の力を最大限に生かし、よりおいしく、健康に良い食品を生み出す役割を担っているのです。
醸造家の仕事

醸造家は、ワイナリーや酒造メーカー、食品メーカーなど、幅広い業界で活躍できる職業ですが、具体的にはどのような仕事をするのでしょうか。
ここでは、醸造家の仕事について解説します。
【醸造家の仕事】
- ワインならブドウ栽培から瓶詰めまですべてに関わる
- ビールなら原料や造り方でさまざまな個性を引き出す
- 日本酒なら伝統の技を使い米から丁寧にお酒を造る
- 醤油や味噌なら微生物の働きでじっくりおいしさを育てる
ワインならブドウ栽培から瓶詰めまですべてに関わる
「ワイン醸造家」は、ブドウ栽培から瓶詰めまでの全工程に関わる専門家のことです。
ワインづくりは単なる製造ではなく、農業と科学、職人技が融合した奥深い仕事。
ワイン醸造家の仕事の流れは、以下のとおりです。
仕事 | 内容 |
ブドウ栽培 | 品種選定、剪定、病害対策などを行い、理想的なブドウを育てる |
収穫 | ブドウの成熟度を見極め、最適なタイミングで収穫する |
醸造 | 破砕・圧搾を経て発酵を管理し、ワインの風味を決定する |
熟成 | 樽やステンレスタンクで熟成させ、味わいを深める |
瓶詰め・出荷 | 最終調整を行い、ワインを瓶詰めして市場へ送り出す |
ワイン醸造家は、気候や土壌の影響を受けながら、毎年異なる条件の中で最高のワインを生み出すために試行錯誤を重ねます。
ビールなら原料や造り方でさまざまな個性を引き出す
「ビール醸造家」は、原料の選定や製造方法を工夫することで、さまざまな個性を持つビールを生み出します。
麦芽、ホップ、酵母、水という基本の原料を組み合わせるだけでなく、温度管理や発酵のタイミングを調整することで、味や香りに大きな違いが生まれるのです。
【具体例まとめ】
- ホップの種類や投入タイミングを変えることで、フルーティーな香りや強い苦味を引き出すことができる
- 発酵温度を調整することで、エールビールのような芳醇な味わいを持たせたり、ラガービールのようなすっきりとした飲み口に仕上げたりすることが可能
- クラフトビールの世界では、コーヒーやフルーツ、スパイスなどを加えることで、ユニークなフレーバーを持つビールを開発することもある
醸造家は、こうした技術を駆使しながら、消費者の好みに合わせた新しいビールを創り出す役割を担っています。
日本酒なら伝統の技を使い米から丁寧にお酒を造る
杜氏や蔵人などの「日本酒の醸造家」は、伝統的な技術を駆使し、米から丁寧に酒を造る職人です。
酒造りの工程は細やかで、原料の選定から発酵、熟成、瓶詰めまで、すべての段階にこだわりが詰まっています。
日本酒醸造の主な工程は、精米からはじまり、洗米・浸漬(しんせき)・蒸し、麹(こうじ)造り、酒母(しゅぼ)造り、もろみ発酵、搾り(しぼり)・濾過(ろか)、火入れ・熟成、瓶詰め・出荷です。
日本酒造りは、麹菌や酵母の働きを生かしながら、職人の経験と技術によって完成されます。
伝統を守りつつ、新しい酒造りにも挑戦する醸造家の仕事は、奥深く魅力的です。
醤油や味噌なら微生物の働きでじっくりおいしさを育てる
「醤油や味噌の醸造家」は、微生物の力を活用し、時間をかけてじっくりと旨味を育てる職人です。
醤油蔵・味噌蔵で働く人のことを、「蔵人」や「醤油職人・味噌職人」などと呼びます。
発酵の過程では、麹菌・乳酸菌・酵母菌がバトンリレーのように働き、大豆や小麦のタンパク質を分解しながら、深いコクと香りを生み出すのです。
醤油・味噌の発酵プロセスは、以下のとおり。
仕事 | 内容 |
麹造り | 蒸した大豆や小麦に麹菌を加え、酵素を生成させる |
乳酸菌の働き | 有機酸を作り出し、発酵環境を整える |
酵母菌の発酵 | アルコールを生成し、香りや味の複雑さを生み出す |
熟成 | 長期間の熟成を経て、旨味が深まり、独特の風味が完成する |
特に木桶仕込みの醤油や味噌は、蔵に住み着いた微生物が独自の味わいを生み出し、地域ごとの個性が際立ちます。
醸造家になるには

醸造家を志望している人にとって、どのようにしたら醸造家になれるのかということは、最大の関心事ではないでしょうか。
ここでは、醸造家になるにはどうしたらいいのかについて解説します。
【醸造家になるには】
- 学校で専門知識を学び現場で経験を積むのが近道
- 科学の知識と鋭い五感、探求心と体力も大事
- 必須の資格は少ないが酒造技能士は強みになる
学校で専門知識を学び現場で経験を積むのが近道
醸造家になるためには、専門知識を学びながら現場での経験を積むことが重要です。
大学や専門学校で発酵学や醸造学を学び、酒造メーカーや食品メーカー、ワイナリー、ブルワリーなどで実践的な経験を積むのが一般的な道でしょう。
以下は、醸造家になるためのステップの一例です。ご参考にしてください。
ステップ | 概要 |
1.専門知識の習得 | 生物学や化学を学び、発酵の仕組みを理解する |
2.実践経験を積む | 酒造メーカーや食品メーカーでインターンシップや研修を受ける |
3.就職・独立 | 醸造所で働きながら技術を磨き、将来的に独自のブランドを立ち上げることも可能 |
専門学校によっては、醸造学を学びながら実践的なスキルを身につけられる学校もあります。
また、ワインやビールを専門にする場合は、海外の醸造学校で学ぶ選択肢もあるでしょう。
醸造家としての道を歩むには、理論と実践の両方をバランスよく学ぶことが成功の鍵です。
科学の知識と鋭い五感、探求心と体力も大事
醸造家になるには、科学的な知識だけでなく、鋭い五感や探求心、そして体力も重要です。
発酵の過程では微生物の働きを細かく管理する必要があり、わずかな変化を見極める観察力が求められます。
また、味や香りの違いを感じ取るための鋭い味覚や嗅覚も欠かせません。
さらに、醸造の現場では長時間の作業や重い原料の運搬があるため、体力も必要です。
特に酒造りでは、仕込みの時期に徹夜に近い作業が続くこともあります。
粘り強く試行錯誤を繰り返しながら、理想の味を追求する探求心も大切です。
醸造家を目指すなら、科学の知識と鋭い五感、探求心と体力が必要であることを理解し、これらの能力を身につける努力を欠かさないようにしましょう。
必須の資格は少ないが酒造技能士は強みになる
醸造家になるために必須の資格は少ないですが、酒造技能士の資格を取得すると、専門的な知識や技術を証明できるため、酒造業界でのキャリアにおいて強みになります。
「酒造技能士」とは、日本酒の製造に関する技能を認定する国家資格です。
資格を取得することで、酒造りの技術や知識を持っていることを証明でき、酒造メーカーや酒蔵での評価が高まります。
酒造技能士資格の概要は、以下のとおりです。
資格取得の条件 | 「2級」:2年以上の実務経験が必要 「1級」:7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の経験が必要 |
試験内容 | 「学科試験」:清酒製造法、微生物・酵素、化学一般、安全衛生など。 「実技試験」: 精米歩合の判定、麹の品質評価、もろみの分析、利き酒など |
酒造技能士の資格は、酒造りの現場で働く蔵人や杜氏を目指す人にとって有利な資格です。
特に1級の資格取得者は酒蔵で歓迎されるため、酒造業界でのキャリアアップを考えているなら、取得を目指す価値があります。
醸造家に関するよくある質問

醸造家を志望している人は、どのようなことに疑問を持つのでしょうか。
ここでは、醸造家に関するよくある質問について解説します。
【醸造家に関するよくある質問】
- 文系でも醸造家になれる?
- お酒に強くなくても、醸造の仕事はできる?
- 醸造の仕事は体力的にきつい?女性も活躍できる?
- 醸造家として経験を積んだら、どんな道に進める?
文系でも醸造家になれる?
文系出身者でも、醸造家になることは可能です。
一般的に、醸造家には、生物学や化学の知識が求められますが、文系出身でも発酵学や醸造学を学び、現場で経験を積むことで活躍が期待できます。
【文系出身者が醸造家として活躍できる具体例】
- ワインや日本酒の醸造家には、マーケティングや経営の視点を持つ人も多く、文系の強みを生かせる場面もある
- 大学や専門学校で醸造に関する知識を学びながら、酒造メーカーやワイナリーでインターンシップを経験することで、実践的なスキルを身につけることができる
- クラフトビール業界では、独自のアイデアを生かした商品開発が求められるため、文系の発想力が役立つこともある
文系だからといって醸造家への道が閉ざされるわけではなく、情熱と学びの姿勢があれば十分に目指せる職業です。
お酒に強くなくても、醸造の仕事はできる?
お酒に強くなくても、醸造の仕事はできます。
醸造家の仕事は、発酵の管理や品質の向上、原料の選定などが中心であり、必ずしも飲酒を伴うわけではないからです。
特に、日本酒やワインの醸造では、微生物の働きを生かして理想の味を生み出すことが重要であり、味覚や嗅覚を活用する場面はありますが、飲酒の必要性はありません。
実際に酒造業界では、お酒が苦手な人や飲めない人も活躍しており、利き酒の際には少量を口に含んで香りや味を確認するだけで済むこともあります。
また、醸造の仕事には研究や品質管理、マーケティングなどの分野もあるため、飲酒ができなくても十分に貢献できる場面が多いです。
醸造家を目指す場合は、発酵学や醸造学を学び、現場での経験を積むことが重要です。
醸造の仕事は体力的にきつい?女性も活躍できる?
醸造の仕事は体力を使う場面が多いですが、近年は設備の進化や職場環境の改善により、女性も活躍しやすくなっています。
たとえば、酒造りでは重い原料を運ぶ作業や長時間の立ち仕事があるため、体力が求められますが、最新の設備を導入することで負担を軽減し、男女ともに働きやすい環境を整えている酒蔵も増加中です。
また、女性杜氏や女性蔵人の活躍も増えており、繊細な味覚や感性を生かした酒造りが注目されています。
特に、日本酒業界では女性ならではの視点を生かした商品開発が進んでおり、女性杜氏が新しいスタイルの日本酒を生み出すケースも。
さらに、企業によっては女性が働きやすい環境を整えるための取り組みを進めており、設備の改善や柔軟な勤務体制の導入が進んでいます。
体力的な負担はあるものの、工夫次第で女性も十分に活躍できる仕事です。
醸造家として経験を積んだら、どんな道に進める?
醸造家として経験を積むと、さまざまなキャリアの選択肢が広がります。
【具体例まとめ】
- 酒造メーカーや食品メーカーでの技術責任者として活躍する
- ワイナリーやブルワリーで独自のブランドを立ち上げる
- 発酵技術を生かして新しい食品開発に携わる
- 研究機関や大学で発酵学や醸造学の専門家として教育・研究に携わる
- 日本酒業界では杜氏として酒蔵を率いる道もあり、伝統技術を継承しながら新しい酒造りに挑戦することができる
- 未経験から酒蔵で働く場合でも、研修制度を活用しながらキャリアを積み重ねることで、製造責任者や経営者としての道を目指すことができる
このように、醸造家として経験を積むことにより、将来進む道が増えるので、どのような職場で経験を積むかが大切になってくるでしょう。
【まとめ】醸造家とは発酵の力で食と文化を豊かにする仕事
ここまで、醸造家とは何か、魅力やなり方、仕事内容などを解説してきました。
【本記事のポイント】
- 醸造家とは、発酵技術を活用して酒類や発酵食品を製造する専門職のこと
- 醸造家の仕事は、ワイン、ビール、日本酒など酒類の製造のほか、醤油や味噌といった身近な発酵食品を造るなど幅広い
- 醸造家になるには、学校で専門知識を学び現場で経験を積むのが近道
- 文系でも、お酒に強くなくても、女性でも醸造家として活躍できる
醸造家になりたいと思っている人にとって、魅力やなり方、仕事内容などを把握することがとても重要となります。
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