酒蔵三役とは?頭・麹師・酛屋の仕事内容と重要な役割を解説

多くの世界で「三役」と呼ばれる役職が存在します。
たとえば、相撲の世界で「三役」といえば、最高位である横綱の下に位置する大関・関脇・小結のこと。
酒蔵にも、「三役」があることをご存じでしょうか。
酒造りの重要な工程を示す「一麹、二酛、三造り」という言葉とも関連して、各工程の責任者である「三役」。
酒造業界でキャリアを積みたいと思っている人にとっては、酒蔵の「三役」がどのようなものかを把握しておくことはとても重要です。
今回は、酒蔵三役と呼ばれる「頭(かしら)」「麹師(こうじし)」「酛屋(もとや)」の仕事内容や役割について解説します。
- 1. 酒蔵の三役とは
- 1.1. 頭・麹師・酛屋がそれぞれの工程を担当する
- 1.2. 杜氏の指示で品質管理を行う
- 2. 酒蔵三役の頭の仕事
- 2.1. 蔵人たちの作業を指示する
- 2.2. 製造工程の進み具合を管理する
- 2.3. 道具や材料の準備を確認する
- 3. 酒蔵三役の麹師の仕事
- 3.1. 麹室で米麹を丁寧に造る
- 3.2. 温度と湿度を細かく調整する
- 4. 酒蔵三役の酛屋の仕事
- 4.1. 酒母造りの工程を受け持つ
- 4.2. 発酵の具合を見極める
- 4.3. 温度変化を細かく記録する
- 5. 酒蔵三役についてよくある質問
- 5.1. 酒蔵三役になるには何が必要ですか?
- 5.2. 酒蔵三役と杜氏は何が違いますか?
- 5.3. 酒蔵三役には女性でもなれますか?
- 6. 酒蔵三役のまとめ
酒蔵の三役とは
酒蔵には、現場最高責任者である「杜氏」を補佐する「三役」と呼ばれる重要な役職があります。
ここでは、酒蔵の三役とは何かについて解説しましょう。
【酒蔵の三役とは】
- 頭・麹師・酛屋がそれぞれの工程を担当する
- 杜氏の指示で品質管理を行う
頭・麹師・酛屋がそれぞれの工程を担当する
酒蔵の日本酒造りの現場では、「三役」と呼ばれる重要な役職があります。
「三役」は、「頭」「麹師」「酛屋」のことで、杜氏の補佐役として、酒造りの各工程を担当するのが主な役割です。
「一麹、二酛、三造り」とは、以下の酒造りの重要工程のこと。
【一麹、二酛、三造り】
- 「麹」を造る
- 醪の土台となる「酛」を仕込む
- 「醪(造り)」を仕込む
つまり、良質な酒を造るには、良質な麹と良質な土台(酛)がなければ、良質な造りができないという意味です。
「三役」の具体的な役割は、以下のとおりとなります。
【「三役」の具体的な役割】
- 「頭」:醪(もろみ)の管理を担当し、杜氏の指示を現場に伝える役割
- 「麹師」(または「代師(だいし)」):麹造りの責任者であり、麹室の管理が主な役割
- 「酛屋」(または「もと廻り」):酒母(しゅぼ)造りの責任者であり、酛(もと)立ての仕事を担当
ちなみに、「三役」の下には、洗米や蒸米を担当する「釜屋(かまや)」や、醪(もろみ)を搾る「船頭(せんどう)」など、各工程を担う専門家が揃っています。
杜氏の指示で品質管理を行う

酒蔵の「三役」は、日本酒の醸造工程で重要な役割を担う専門職であり、主に杜氏の指示のもと、品質管理を行います。
酒蔵の品質管理は、日本酒の製造において非常に重要な役割を果たし、特に、「三役」が担当するのは、製造工程の管理です。
高品質な日本酒ができるかどうかは、麹造りや酒母造りといった各製造工程で、温度や時間を正確に管理し、適切なタイミングで作業を行えるかどうかにかかっています。
これらの役割は、酒の品質を保つために非常に重要です。
酒造りは高度な技術と経験が必要とされる作業であり、「三役」の役割はその品質を支える柱となっています。
酒蔵三役の頭の仕事
酒蔵「三役」の中でも、「頭」という仕事はどのような役割をこなすのでしょうか。
ここでは、酒蔵三役の頭の仕事について解説します。
【酒蔵三役の頭の仕事】
- 蔵人たちの作業を指示する
- 製造工程の進み具合を管理する
- 道具や材料の準備を確認する
蔵人たちの作業を指示する
「頭」は、三役の中でも、特に重要な役職で、杜氏の右腕として、杜氏が思い描いた酒造りができるように、蔵人たちに杜氏の作業指示を伝える役割を担います。
「杜氏」が、現場の最高責任者として、酒造りに関する全工程を監督・指揮する役割であるといっても、蔵人一人一人に対して、細かく指示することはできません。
そんな時には、「頭」が中間管理職として、杜氏と蔵人との間に入り、杜氏の作業指示を伝えることで、円滑に酒造りの工程が進行し、杜氏が造りたいお酒が造れるのです。
杜氏の作業指示を正確に蔵人に伝え、杜氏が思い描く酒造りを実行に移すための縁の下の力持ち的な役割が、「頭」の役割といっても過言ではありません。
製造工程の進み具合を管理する
「頭」は、酒造りが最高の形で進められるように、製造工程の進み具合を管理するといった役割を担います。
具体的には、以下のような仕事が「頭」の仕事です。
- 人員とスケジュール調整
- 設備の維持管理
- 資材の準備・調達
- 蔵人の教育・育成
- 衛生管理
- 資金(予算)の管理
- 醪の管理
「頭」は、蔵人として、醗酵室の責任者として醪の管理や品質マネジメントなども担当しながら、蔵人の体調面から若手の生活態度まで幅広く気にかけるといった酒蔵の番頭的な役割をこなしています。
道具や材料の準備を確認する
「頭」は、酒造りの工程が順調に進むように調整や段取りを行うのも役割の1つです。
酒造りの工程における道具や材料の準備がきちんとできているかを確認することも、「頭」の役割となります。
「頭」は、ほかの三役とも連携を取りながら、酒造りというプロジェクトの管理担当の補佐役として、醸造機器設備の維持管理から資材の調達まで裏方的な仕事もこなさなければなりません。
杜氏の女房役としての「頭」の存在があってこそ、杜氏の思い通りの酒造りが行えるのです。
酒蔵三役の麹師の仕事
酒蔵三役の「麹師」という仕事は、どのような役割を担うのでしょうか。
ここでは、酒蔵三役の麹師の仕事について解説します。
【酒蔵三役の麹師の仕事】
- 麹室で米麹を丁寧に造る
- 温度と湿度を細かく調整する
麹室で米麹を丁寧に造る
「麹師」の主な仕事は、酒の品質に大きく影響を与える「麹」の製造と管理です。
麹室で、蒸した米に麹菌を繁殖させ、米麹を丁寧に造る「製麹(せいぎく)」と呼ばれる作業を責任者として担当するのが、「麹師」の役割となります。
製麹の具体的な工程は、以下のとおりです。
【製麹の具体的な工程】
- 蒸した米に麹菌を撒く
- 適温を保った麹室で培養する
- 麹の状貌や香り等を基準に製麹の完了を判断する
- 室外の低温の場所で冷却し、麹菌の繁殖を止める
「麹師」は、麹を発酵の進行状況に応じて適切なタイミングで混ぜたり広げたりして麹の手入れを行い、麹の品質を均一に保ち、担当の蔵人に適切な指示を出し、麹の成長状態や香り、味を定期的に確認し、品質の高い麹ができているかをチェックします。
また、麹の品質管理と同時に、麹室や道具の清掃・消毒を徹底し、雑菌の混入を防ぐための衛生管理も「麹師」の役割の1つです。
温度と湿度を細かく調整する
「麹師」は、麹室で麹を育成し、麹の発酵が均一に進むように管理します。
そのためには、麹室の温度と湿度を細かく調整し、適切な温度と湿度を保つことが重要です。
「麹師」は、麹菌が均等に成長するように細心の注意を払い、麹造りの過程や結果を詳細に記録し、トラブルが発生した場合の対処に役立てなければなりません。
酒蔵三役の酛屋の仕事
酒蔵三役の「酛屋」とは、どのような仕事を行うのでしょうか。
ここでは、酒蔵三役の酛屋の仕事について解説します。
【酒蔵三役の酛屋の仕事】
- 酒母造りの工程を受け持つ
- 発酵の具合を見極める
- 温度変化を細かく記録する
酒母造りの工程を受け持つ
「酛屋」は、酒母室と呼ばれる場所で、お酒のもととなる液体である「酒母(酛)」造りの工程を受け持ちます。
「酛屋」の具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
【「酛屋」の具体的な仕事内容】
- 「蒸し米の準備」:酒母造りには、良質な蒸し米が必要であり、蒸し米の品質を確認し、適切な量を準備する
- 「水と麹の調整」:蒸し米に適切な量の水と麹を混ぜ、麹は米を糖化させ、酵母がアルコールを生成できる状態にする
- 「酵母の投入」:麹と蒸し米の混合物に酵母を加え、酵母の選定と適切な投入を行い、発酵がスムーズに進むように管理する
- 「温度管理」:酒母の発酵は温度に非常に敏感なため、温度を厳密に管理し、発酵が適切に進むように監視する
- 「発酵の進行管理」:発酵の進行状況を常に確認し、必要に応じて調整を行う
- 「品質検査」:発酵が終わった酒母の品質を確認し、次の工程に進む準備を行う
- 「記録管理」:酒母造りの過程や結果を詳細に記録し、トラブルが発生した場合に迅速に対応できるよう準備する
土台がしっかりしていなければ建物が倒れてしまうのと同じで、酛がしっかりしていないと、その後の醪の発酵がうまくできず良質な日本酒を造ることができません。
そのような意味合いで、「酛屋」の役割は日本酒造りにおいて非常に重要だということがわかります。
発酵の具合を見極める
「酛屋」の仕事内容で特に重要なのは、発酵の具合を見極めることです。
酒母造りの工程で、酵母の投入後、発酵の進行管理を行う中で、混ぜる作業や温度調整をしながら、発酵の進行状況を常に確認し、必要に応じて調整を行います。
発酵具合を見極めるためには、酒母の香りや味、アルコール度数などをチェックすることが必要です。
発酵が完了したら、酒母の品質をチェックし、次の工程に進む準備を行います。
温度変化を細かく記録する
「酛屋」は、温度変化を細かく記録するといった作業も欠かせません。
酒母造りの過程や結果を詳細に記録しておくことで、トラブルが発生した場合に迅速に対応できるように準備しておく必要があるからです。
酛屋の技術と経験は、酒母の品質に直結します。酛屋の努力と細心の管理によって、良質な日本酒が生まれるのです。
酒蔵三役についてよくある質問

酒蔵三役に関して理解するためには、「よくある質問」もチェックしておかなければなりません。
ここでは、酒蔵三役に関する「よくある質問」について解説します。
【酒蔵三役についてよくある質問】
- 酒蔵三役になるには何が必要ですか?
- 酒蔵三役と杜氏は何が違いますか?
- 酒蔵三役には女性でもなれますか?
酒蔵三役になるには何が必要ですか?
酒蔵の三役になるために必要だと思われることは、以下のとおりです。
【酒蔵の三役になるために費用なもの】
- 酒造りに関する深い知識と技術
- 実際の酒造りの現場での実務経験
- 衛生管理能力
- 他のスタッフと協力し、指示を的確に伝え、全体の流れを管理する能力
- 体力と忍耐力
- 他の職人やスタッフとの円滑なコミュニケーション能力、特に、杜氏の指示を正確に伝える能力
- 常に新しい技術や情報を学び続ける姿勢や意欲
これらの要素を身に付けることで、酒蔵の三役として活躍することができ、情熱を持って努力すれば、自身が本当においしいと思えるお酒を造ることができるでしょう。
酒蔵三役と杜氏は何が違いますか?
杜氏は、酒造り全体の責任者であり、製造の全工程を統括し、最終的な品質に責任を持ちます。
また、酒造りの各工程で指示を出し、作業の進行を管理するのが主な仕事です。
他方、三役は、杜氏の補佐役として、他の職人たちに適切な指示を与え、酒造りがスムーズに進むように縁の下の力持ち的な役割を担います。
また、杜氏が全体の品質管理を行い、酒のでき具合をチェックするのに対して、三役は、実務者として、各自が担当する工程の進行を管理し、品質を保つために必要な作業を行います。
要するに、杜氏は酒造りの総責任者として全体を統括し、三役はその指示のもとで各工程の専門分野を担当し、現場の作業を行う役割を果たします。
それぞれの役割が相互に補完し合うことで、高品質な日本酒が生産されるのです。
酒蔵三役には女性でもなれますか?
近年では、酒造りの現場において女性の進出が増えており、多くの女性が杜氏や三役として活躍しています。
酒造りはかつて男性が主流の職業とされていましたが、技術や情熱を持った女性たちが次々と参入し、その才能を発揮しているのが現状です。
実際に、日本各地で女性杜氏や女性三役の活躍が報じられており、その高い技術と繊細な感性が評価されています。
また、女性ならではの視点や細やかな気配りが、酒造りの現場で非常に重要な役割を果たすこともあります。
体力的な面での課題もありますが、適切なチームワークと努力によって克服できるでしょう。
酒蔵三役のまとめ
ここまで、酒蔵三役と呼ばれる「頭」「麹師」「酛屋」の仕事内容や役割についてご紹介させていただきました。
日本酒造りの現場では、最高責任者である「杜氏」の補佐役として、酒造りの各工程を担当する「三役」と呼ばれる重要な役職があります。
酒造りのキャリア最高位の「杜氏」を目指す上で、「三役」の仕事内容と役割を把握しておくことは非常に重要です。
酒造りのキャリアをより良いものにするためには、自身に適した酒蔵を見つけ出し、スタートラインに立つことが重要となってくるでしょう。
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