醸造酒と蒸留酒の違いとは?製造方法や特徴を徹底解説
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酒造業界で働こうと思っている人にとって、基礎知識として、お酒のタイプによる違いを理解しておくことは重要です。
世界の伝統的なお酒は、「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3つのタイプに分類されると言われています。
日本酒は、ワインと同様に、醸造酒です。
今回は、「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」について、基本的な違いや、代表的なお酒、製造方法や特徴についてくわしく解説します。
- 1. 醸造酒と蒸留酒の基本的な違い
- 1.1. 醸造酒は発酵、蒸留酒は加熱処理が特徴
- 1.2. 発酵で造られる醸造酒は原料の風味が強い
- 1.3. 蒸留工程で不純物を除去して作る蒸留酒
- 1.4. 混成酒は醸造酒や蒸留酒に副原料を加えたもの
- 2. 醸造酒から造られる代表的なお酒
- 2.1. 米のデンプンから並行複発酵で造る日本酒
- 2.2. 麦芽の単行複発酵で造られるビール
- 2.3. ブドウの単発酵で造られるワイン
- 3. 蒸留酒の種類と特徴的な味わい
- 3.1. 蒸留には「単式」「連続式」という2つの種類がある
- 3.2. 単式蒸留で造る本格焼酎は原料の味が残る
- 3.3. 連続式蒸留の焼酎は透明でクセが少ない
- 3.4. 穀物を原料として樽熟成するウイスキー
- 4. 醸造酒と蒸留酒のアルコール度数を比較
- 4.1. 醸造酒は発酵の限界で20度以下が一般的
- 4.2. 蒸留酒は水より低い沸点で高濃度が可能
- 4.3. 度数の違いで醸造酒は原酒、蒸留酒は割って飲む
- 5. 醸造酒と蒸留酒のまとめ
醸造酒と蒸留酒の基本的な違い
醸造酒と蒸留酒には、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、醸造酒と蒸留酒の基本的な違いや混成酒についても解説します。
【醸造酒と蒸留酒の基本的な違い】
- 醸造酒は発酵、蒸留酒は加熱処理が特徴
- 発酵で作られる醸造酒は原料の風味が強い
- 蒸留工程で不純物を除去して作る蒸留酒
- 混成酒は醸造酒や蒸留酒に副原料を加えたもの
醸造酒は発酵、蒸留酒は加熱処理が特徴
「醸造酒」とは、原料に含まれる糖分を酵母の働きでアルコールに変える発酵プロセスを経て作られるお酒。
ビールやワイン、日本酒が代表例で、発酵による自然な風味や香りが特徴です。
一方、「蒸留酒」は、発酵させた液体をさらに加熱し、アルコール成分を分離して濃縮することで造られます。
ウイスキー、ウォッカ、焼酎などがこれに当たり、アルコール度数が高く、風味も独特です。
発酵で造られる醸造酒は原料の風味が強い
発酵で造られる「醸造酒」は、原料の風味がしっかりと残るのが特徴です。
たとえば、ビールやワイン、日本酒などの醸造酒は、使用される麦芽、ブドウ、米などの素材の味わいが豊かに感じられます。
醸造酒は、その土地の風土や気候、原材料の質が直接反映されるという独特の個性を持っており、原料の風味を楽しむことができる点で魅力的です。
蒸留工程で不純物を除去して作る蒸留酒
「蒸留酒」は、発酵工程で生成された液体を加熱し、蒸留することで不純物を除去して造られます。
このプロセスでは、アルコールの沸点を利用して、アルコール成分を蒸気として分離し、再度液体に凝縮させることで高純度のアルコールを得るため、風味がより洗練されクリアになり、アルコール度数も高くなるというのが蒸留酒の特徴です。
ウイスキー、ウォッカ、焼酎などの蒸留酒は、この蒸留工程により、不純物や不要な成分が取り除かれ、特有の味わいや香りが引き出されます。
また、蒸留の回数や方法、使用する蒸留器の種類によって、最終的な製品の風味や特性が大きく変わることもあるので押さえておきましょう。
混成酒は醸造酒や蒸留酒に副原料を加えたもの
「混成酒」は、醸造酒や蒸留酒に副原料を加えることで造られるお酒です。
この副原料には、果実、ハーブ、スパイス、香料などが含まれ、これらを加えることで独特の風味や香りを持つお酒が生まれます。
混成酒の具体例は、リキュールやフルーツ酒などです。
リキュールは、蒸留酒に果物やハーブ、砂糖を加えて造られ、バラエティ豊かな味わいが楽しめるのに対して、フルーツ酒は、醸造酒や蒸留酒に果実を漬け込んで造られ、果物の自然な甘みや風味が特徴となっています。
混成酒は、その多様性と独自性から、さまざまなシチュエーションや嗜好に合わせて楽しむことができるお酒です。
醸造酒から造られる代表的なお酒
醸造酒から造られるお酒には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、醸造酒から造られる代表的なお酒について解説します。
【醸造酒から造られる代表的なお酒】
- 米のデンプンから並行複発酵で造る日本酒
- 麦芽の単行複発酵で造られるビール
- ブドウの単発酵で造られるワイン
米のデンプンから並行複発酵で造る日本酒
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日本酒は、米のデンプンから「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」という独特な発酵方法で造られます。
並行複発酵とは、米のデンプンを糖に変える「糖化」と、その糖をアルコールに変える「発酵」が同時に行われる工程のことです。
具体的には、米と麹(こうじ)を使ってデンプンを糖に変え、その糖を酵母が発酵させてアルコールを生成します。
このプロセスにより、日本酒は独特の風味と香りを持ち、豊かな味わいを楽しむことができるのです。
ちなみに、並行複発酵は、他の醸造酒では見られない特徴であり、日本酒の品質と個性に大きく寄与しています。
酒造業界でのキャリアを目指す方にとって、このプロセスを深く理解することは非常に重要です。
麦芽の単行複発酵で造られるビール
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ビールは、麦芽を使って「単行複発酵(たんこうふくはっこう)」というプロセスで造られるお酒です。
この方法では、糖化と発酵のプロセスが連続して行われ、具体的には、麦芽を水に浸して糖化し、その後酵母を加えて発酵させることで、アルコールと炭酸ガスが生成されます。
単行複発酵の特徴は、麦芽のデンプンが糖に分解され、さらにその糖が酵母によってアルコールに変わるという一連の流れが1つの工程として行われる点であり、このプロセスによって、ビール特有の芳醇な風味と香りが生まれるのです。
ビール造りの技術は古くから続く伝統であり、地域や醸造所によって異なる風味やスタイルのビールが生産されています。
ビールの豊かな風味を楽しむには、この単行複発酵という製造プロセスが欠かせません。
ブドウの単発酵で造られるワイン
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ワインはブドウを原料とし、「単発酵(たんはっこう)」のプロセスで造られます。
単発酵とは、ブドウの糖分が酵母によってアルコールに変わる一連の発酵工程です。
具体的には、ブドウを収穫して圧搾し、得られた果汁に酵母を加えることで、アルコール発酵が始まり、この過程でブドウの糖分がアルコールと二酸化炭素に変わり、ワイン特有の風味と香りが生まれます。
ワインの風味は、使用するブドウの品種や育成環境、発酵の温度や期間などに大きく影響されるため、同じ品種のブドウを使っても、地域やワイナリーによって異なる味わいのワインが造られるのです。
蒸留酒の種類と特徴的な味わい
蒸留酒にはどのような種類があり、どのような味わいが特徴的なのでしょうか。
ここでは、蒸留酒の種類と特徴的な味わいについて解説します。
【蒸留酒の種類と特徴的な味わい】
- 蒸留には「単式」「連続式」という2つの種類がある
- 単式蒸留で造る本格焼酎は原料の味が残る
- 連続式蒸留の焼酎は透明でクセが少ない
- 穀物を原料として樽熟成するウイスキー
蒸留には「単式」「連続式」という2つの種類がある
蒸留は、蒸留回数によって以下の2種類に分類されます。
蒸留の種類 | 蒸留回数 | 代表的なお酒 |
単式蒸留 | 1回 | 本格焼酎、ウイスキー |
連続式蒸留 | 複数回 | ウォッカやジンなど高純度のアルコール酒 |
蒸留酒は、蒸留回数によって味わいに違いが出るので、製造するお酒によって「単式蒸留」「連続式蒸留」と蒸留工程を変えるのです。
単式蒸留で造る本格焼酎は原料の味が残る
「単式蒸留」で造る本格焼酎は、蒸留工程が1回であるため、原料の味や風味がしっかりと残るのが特徴です。
この方法では、発酵した液体を単一の蒸留器で蒸留し、アルコールを抽出します。
これにより、原料である芋、麦、米などの特徴的な風味が焼酎に反映され、豊かな味わいを楽しむことができるのです。
単式蒸留によって造られる本格焼酎は、多様な原料から個性豊かな製品が生まれるため、飲み手にも造り手にも大きな魅力があります。
このように、単式蒸留は原料の個性を最大限に生かす製法であり、本格焼酎の豊かな味わいを支えていることから、一般的に小規模な生産に適しており、職人的な手法が重視されると考えていいでしょう。
連続式蒸留の焼酎は透明でクセが少ない
連続式蒸留によって造られる焼酎は、発酵した液体を連続的に蒸留することで不純物が取り除かれ、高純度のアルコールが得られ、原料の風味は薄まるため、透明でクセの少ない味わいが特徴です。
連続式蒸留の焼酎は、飲みやすさが向上するため、カクテルのベースとしてもよく使われるなど、さまざまな飲み物に応用されることが多いお酒としても知られています。
連続式蒸留の製法は、安定した品質の製品を大量に供給できるというメリットを有することから、一般的には大量生産に適しているということも押さえておきましょう。
穀物を原料として樽熟成するウイスキー
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ウイスキーは、主に大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を原料として造られており、蒸留後に樽で熟成されるといった特徴があります。
製造プロセスは以下のとおりです。
【ウイスキーの製造プロセス】
- 原料の準備~穀物を粉砕し、糖化のために水と混ぜる
- 糖化~穀物のデンプンを酵素の作用で糖に変える
- 発酵~糖化された液体に酵母を加えて発酵させ、アルコールを生成する
- 蒸留~発酵した液体を蒸留し、高濃度のアルコールを抽出し、不純物を取り除く
- 樽熟成~蒸留したアルコールをオーク樽に入れて熟成させ、樽の木材から風味や色が移り、ウイスキー特有の豊かな味わいが生まれる
- ブレンドと瓶詰め~熟成後、異なるバッチやタイプのウイスキーをブレンドして一貫した風味を持つ製品に仕上げ、瓶詰めする
樽熟成により、ウイスキーは時間とともに深みのある香りと味わいを得て、多様で複雑な風味を生み出します。
醸造酒と蒸留酒のアルコール度数を比較
酒造業に就業することを考えているのであれば、醸造酒と蒸留酒のアルコール度数の違いについても把握しておく必要があります。
ここでは、醸造酒と蒸留酒のアルコール度数について比較してみましょう。
【醸造酒と蒸留酒のアルコール度数を比較】
- 醸造酒は発酵の限界で20度以下が一般的
- 蒸留酒は水より低い沸点で高濃度が可能
- 度数の違いで醸造酒は原酒、蒸留酒は割って飲む
醸造酒は発酵の限界で20度以下が一般的
醸造酒は発酵プロセスの限界により、アルコール度数は通常20度以下に制限されます。
これは酵母の働きによるもので、酵母が生成するアルコール濃度が高くなると、酵母自体の活動が抑制されるためです。
したがって、ビール、ワイン、日本酒などの醸造酒は、一般的にアルコール度数が低めで、豊かな風味や香りを楽しむことができます。
市販されている主な醸造酒のアルコール度数は、以下のとおりです。
お酒の名称 | アルコール度数 |
ビール | 約4~5度 |
ワイン | 約13~15度 |
日本酒 | 約15度 |
蒸留酒は水より低い沸点で高濃度が可能
蒸留酒は、発酵した液体を加熱し、アルコールを蒸発させることで造られます。
アルコールの沸点は約78.5℃と水の100℃より低いため、この差を利用してアルコールを分離し、高濃度のアルコールを得ることが可能です。
蒸留プロセスでは、発酵液を蒸留器に入れ、加熱してアルコールを気化させ、気化したアルコールは冷却されて再び液体になり、高濃度のアルコールが得られます。
この製法により、不純物が取り除かれ、純度の高いアルコールが得られるため、独特の風味と高いアルコール度数を持つ蒸留酒が生まれます。
市販されている主な蒸留酒のアルコール度数は、以下のとおりです。
お酒の名称 | アルコール度数 |
焼酎、泡盛 | 約20度~35度 |
ウイスキー、ウォッカ、ジン | 約40度~ |
度数の違いで醸造酒は原酒、蒸留酒は割って飲む
アルコール度数の違いによって、醸造酒と蒸留酒の飲み方も変わってきます。
醸造酒は、発酵によって自然に生成されるため、アルコール度数が比較的低く、20度以下が一般的です。
醸造酒は、原酒の状態で楽しむことが多く、ビール、ワイン、日本酒などがその代表例ですが、日本酒の場合は加水してアルコール度数を調整することもあります。
他方、蒸留酒は、蒸留工程で高濃度のアルコールを得るため、アルコール度数が高く、40度以上になることもあるため、割って飲むことが多いお酒です。
ウイスキーやウォッカ、ジンなどはそのままストレートで飲むこともありますが、一般的には水やソーダ、ジュースなどで割って飲むことにより、味わいがマイルドになり、飲みやすくなります。
このように、度数の違いによって飲み方も異なるため、シーンや好みに合わせて楽しむことができるのです。
醸造酒と蒸留酒のまとめ
ここまで、「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」について、基本的な違いや、代表的なお酒、製造方法や特徴についてご紹介させていただきました。
醸造酒は発酵、蒸留酒は加熱処理といった製法の違いや、特徴的な味わいの違いといった基本的な知識を身につけておくことは、酒造業に就業する上でとても大切です。
酒造業への就業に興味がある方は、今回の記事を参考にして、お酒のタイプによる違いを整理しておきましょう。
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