杜氏になるには?資格がなくても蔵人としての経験があればなれる
酒蔵の酒造りの責任者である「杜氏(とうじ)」という職業。
酒造業の現場のトップという職種なので、酒造の世界を目指す者にとっては、憧れの職業と言ってもいいでしょう。
杜氏になるためには、何か特殊な資格が必要なのでしょうか。
酒造業界に興味があり、杜氏を目指したい人にとっては気になるところです。
今回は、酒蔵の「杜氏」という仕事に関して、杜氏とはどのような仕事か、杜氏になるためにはどうしたらいいのか、必要な資格やスキル、ポイントは何かについて解説しましょう。
杜氏についてくわしく知りたい方は「酒蔵で働く杜氏とは?酒造りの責任者として蔵人を指揮する仕事内容を解説」もご参考にしてください。
杜氏とは
「杜氏」とは、酒蔵において、酒造現場の最高責任者、現場監督といった地位、職種のこと。
蔵人らを指揮して、蔵元(酒蔵の経営者)が求める日本酒の味わいを実現すべく、酒造りの現場を仕切る仕事です。
特殊な醸造技術を駆使して、複雑なプロセスのもとに行われる日本酒造り。
酒蔵の人たちだけでは日本酒造りができなかったため、かつては、冬期の出稼ぎをする農民を中心に、全国各地で「杜氏集団」を組織して、酒蔵から酒造りを請け負うスタイルが一般的でした。
近年、「杜氏」は、酒蔵の従業員として働くのが一般的となり、1つの酒蔵に、1人の蔵元と1人の杜氏がいるケースが多い中、蔵元と兼務する「蔵元杜氏」も珍しくありません。
杜氏になるには?
杜氏になるには、どのようなキャリアを積めばいいのでしょうか。
ここでは、杜氏になるにはどうすればいいのかということについて解説します。
【杜氏になるには?】
- まずは蔵人として経験を積む
- 酒造りの基礎知識を専門学校や研修会で学ぶ
まずは蔵人として経験を積む
杜氏の仕事は、蔵内管理からはじまり、原材料の扱い、繊細な温度管理など酒造りに関するすべての工程管理にまで及びます。
長年酒づくりに携わり培ってきた経験や技術に基づいて、蔵人に適切な指示を出し、酒造現場の指揮を執る重要な役割。
酒造に関する知識や経験だけでなく、蔵内でのあらゆることに目を配る繊細さと、蔵人を率いるための十分な実務経験とリーダーシップが求められます。
杜氏になるためには、まずは蔵人として経験を積むことが必要です。
酒造りの基礎知識を専門学校や研修会で学ぶ
杜氏の一番大切な役割は、蔵元の求める味わいの日本酒を造ること。
そのためには、醸造に関する確かな知識や技術が必要です。
杜氏になるためには、酒造りの基礎知識に関して、専門の学校や研修会で学ぶことからスタートするとよいでしょう。
醸造に関する確かな基礎知識があってこそ、蔵元の求める味わいに近づけるために、応用ができるからです。
大学の醸造科やバイオ系の専門学校などで、醸造の基礎知識を学んでから就職したり、就職後に酒造組合などが主催する講習会や研修会などで知識を深めたりする人もたくさんいます。
酒造りの基礎知識を学べる専門学校や研修会は、インターネットで検索するなどして探しましょう。
わからないことがあれば、アンカーマンまでお気軽にご連絡ください。
杜氏になるために資格は必要?
杜氏になるためには、何か特別な資格が必要なのでしょうか。杜氏を目指している人には気になるところでしょう。
ここでは、杜氏になるために資格は必要かということについて解説します。
【杜氏になるために資格は必要?】
- 資格は必須ではないが取得すると有利
- 酒造技能士が杜氏を目指す人におすすめの資格
資格は必須ではないが取得すると有利
杜氏になるためには、特別な資格は必要ありません。
しかし、醸造に関する資格を取得しておくことは、酒造業に就業して、杜氏を目指すためには有利に働きます。
醸造に関する資格を取得すれば、発言に説得力を加えられたり、学習する過程で得られる確かな知識を醸造業務に生かしたりすることが可能です。
酒造技能士が杜氏を目指す人におすすめの資格
杜氏になるためにおすすめの資格の1つに、「酒造技能士」があります。
「酒造技能士」は、日本酒造りの専門知識・技能を認定する唯一の国家資格です。
酒造業界でキャリアを積みたい人にとって、取得しておいて損はない資格でしょう。
酒造技能士についてくわしく知りたい方は「酒造技能士とは?資格を取得するための試験内容や向いている人の特徴、活用方法を解説」をご覧ください。
杜氏になるために必要なスキル
杜氏になるためには、特別な資格は必要ありませんが、必要なスキルがあることを押さえておきましょう。
ここでは、杜氏になるために必要なスキルについて解説します。
【杜氏になるために必要なスキル】
- 五感を使った酒造りの技術
- 発酵過程を管理するための知識
- 蔵人をまとめるリーダーシップ
- 効率的な作業計画を立てる能力
五感を使った酒造りの技術
杜氏になるために必要なスキルとして、まずは、確かな「酒造りの技術」は不可欠です。
杜氏は、酒蔵の銘柄を造る際、自身の培ってきた醸造技術をベースにして、蔵元が求める味わいの日本酒を醸すことを追求しなければなりません。
五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)をフルに使った酒造りの技術が備わっていてこそ、蔵元が求める味わいを追求することが可能になるでしょう。
発酵過程を管理するための知識
杜氏という仕事は、醸造工程すべてを管理しなければなりません。
醸造工程の中でも、発酵過程の管理は、日本酒の味わいを左右するもっとも重要な工程です。
「糖化」と「アルコール発酵」を同時に行う「並行複発酵」により完成する日本酒では、麹や酵母といった微生物のはたらきをどのような温度下でどのように取り扱うかによって、味わいが大きく変わります。
発酵過程を管理するための知識は、杜氏にとって欠かせないスキルであることを押さえておきましょう。
蔵人をまとめるリーダーシップ
杜氏は、酒造現場の最高責任者であり、醸造作業を担当する蔵人たちのリーダーです。
蔵人たちも醸造のプロとして、各人の担当作業があり、それぞれの考え方も持っているでしょう。
蔵人各々に、すばらしい醸造技術があっても、酒造りのチームとしてまとまっていなければ、蔵元の求める味わいの日本酒が造れないばかりか、醸造現場もバラバラで、質の高い仕事ができない労働環境になってしまうことが予想されます。
酒造りのチームとしてまとまりを作るには、蔵人をまとめるリーダーシップが現場監督である杜氏に求められるのです。
効率的な作業計画を立てる能力
杜氏には、効率的な作業計画を立てる能力も必要とされます。
日本酒造りはさまざまな複雑な工程が必要とされ、一定の期間で効率よく作業をこなしていくことが必要です。
安定した酒質を維持していくためには、業務を効率化して生産性アップを図ることは必須であり、再現性の高い醸造方法を決定し、効率的な醸造計画を立案して実行することが、現場監督としての杜氏に求められるスキルの1つであることは間違いありません。
杜氏になるためのポイント
特殊な資格など必要のない杜氏ですが、杜氏になるためには、いくつか押さえておくべきポイントがあるので注意が必要です。
ここでは、杜氏になるためのポイントについて解説します。
【杜氏になるためのポイント】
- 日本酒への深い愛情を持つ
- 味と香りを感じ取る力を養う
- 先輩杜氏から積極的に技術やノウハウを学ぶ
日本酒への深い愛情を持つ
杜氏になるためには、醸造に関する知識や技術があるだけではだめです。
日本酒への深い愛情を持っていることが、杜氏になるための資質の1つでしょう。
日本酒に対する深い愛情がなければ、よりおいしい日本酒を追求していくモチベーションが湧かないからです。
蔵元の求める酒質を追い求め、研究に研究を重ねて、日本酒の味わいを極めていくためには、日本酒への深い愛情こそが原動力となるでしょう。
24時間、常に日本酒のことを考えていられるほどの深い愛情が必要なのです。
味と香りを感じ取る力を養う
杜氏になるためのポイントの1つとして、味と香りを感じ取る力を養うといったことも欠かせないでしょう。
再現性の高い酒質を追求する際、五感をフル活用して味と香りを感じ取る力が必要不可欠です。
日頃から、テイスティング能力を磨いて、味と香りを感じ取る力を養いましょう。
先輩杜氏から積極的に技術やノウハウを学ぶ
杜氏は、醸造現場の最高責任者であり、すべての酒造工程を管理しなければなりません。
そのためには、知識、技術、ノウハウ、経験などが必要です。
できれば、周りの先輩杜氏などから積極的に技術やノウハウを学ぶ努力をしましょう。
酒類総合研究所の酒類醸造講習や、日本醸造協会が主催する各種醸造技術セミナー、各地の酒造研究会などの例会や講習会など、先輩杜氏から技術やノウハウを学べる機会に積極的に参加することも、杜氏になるためのポイントの1つです。
まとめ
ここまで、酒造業界に興味があり、杜氏を目指したい人にとって気になる「杜氏」という仕事に関して、仕事内容や必要な資格やスキル、ポイントなどをご紹介させていただきました。
結論から言ってしまえば、杜氏になるためには、「資格がなくても蔵人としての経験があればなれる」ということです。
ただし、資格が必要なくても、必要不可欠なスキルやポイントがあるので、今回の記事を参考にして、地道にキャリアを積んでいくことが大切となります。
アンカーマンは、酒造業に特化したコンサルティングファームとして、数多くの酒蔵に各種サポートを提供しています。
さらに、杜氏を目指す人、次世代の杜氏候補を採用したい酒蔵などのサポートなどのサービスメニューもご用意していますので、ご興味ある方はお気軽にアンカーマンまでご連絡ください。
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