酒類製造業とは?始めるために必要な免許や許可を取るための手続きを解説

「Japanese Sake」として、最近日本酒が海外でも大ブーム!

「お酒大好き!自分でもお酒を造ってみたい!」

こんなことを考える若い人や外国人の方、増えているようですよ。

「酒類製造業を始めたいけれど、何から手をつければいいんだろう?」

酒類製造業を検討している人にとっては、気になるところでしょう。

今回は、酒類製造業に関して、始めるために必要な手続きや流れ、成功させるためのポイントや注意点を解説します。

酒類製造業とは

「酒類製造業」とは、厚生労働省では酒類(アルコール分1度以上の飲料)を製造する営業」と定義されており、日本酒やビール、ワイン、ウイスキーなどのお酒を製造し販売する仕事のことです。

この章では、概要となる下記事項について解説します。

【種類製造業の概要】

  • 酒類製造業ってどんな業界?
  • 酒類製造業の種類
  • 酒類製造業の市場動向
  • 酒類製造業を始めるために必要な準備

それぞれについて見ていきましょう。

酒類製造業ってどんな業界?

国税庁令和5年「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」によれば、酒類製造業全体では、約4%の大企業と約96%の中小企業および個人事業者で構成されています。

中小企業および個人事業者の比率が高いことから、国内市場の縮小傾向や後継者不足などに影響され、廃業やM&Aを選択する事業者も多く、他業界からの新規参入事業者もいるものの、新規免許が取得しづらいなどの参入障壁があるため、数はそれほど多くはないといったことなどが特徴的です。

他方、国税庁令和5年6月「酒のしおり」によれば、各酒類の課税数量の推移を見ると、ビールが大きく減少し、代わりに新ジャンル飲料の発泡酒やチューハイなどのリキュールの消費が伸び、首位が入れ替わる形となっています。

酒類製造業界は、老舗企業が多いのも特徴的であり、昔ながらの製造手法や経営手法を大切にしてはいるものの、消費者ニーズや社会の情勢変化に合わせて、生き残るために、温故知新の考え方で、経営戦略を柔軟に変革している企業が多いのも特徴です。

酒類製造業の種類

酒類製造業の種類としては、製造している酒類の品目で事業者が区分されます。

酒類は、「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4種類です。

酒類の品目は酒税法で、以下のとおり規定されています。

【酒類の品目】

発泡性酒類ビール
発泡酒
醸造酒類清酒
果実酒
その他の醸造酒(どぶろく、蜂蜜酒など)
蒸留酒類連続式蒸留焼酎
単式蒸留焼酎
ウイスキー
ブランデー
原料用アルコール
スピリッツ
混成酒類合成清酒
甘味果実酒
リキュール
粉末酒
雑酒
その他酒母
もろみ
こうじ

なお、酒類製造業者の中には、複数の品目を製造している業者もいます。

酒類製造業の市場動向

国税庁令和5年6月「酒のしおり」によれば、酒類製造業における国内市場の動向は、全体として縮小傾向です。少子高齢化や人口減少等の人口動態の変化、消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化や嗜好の多様化等が原因であると言われています。

酒類課税数量の推移を見れば、平成11年度のピーク時に比べると、令和3年度では、約8割です。各酒類の課税数量の構成比率は、近年大きな変化を見せています。

他方、日本産酒類の輸出については、日本酒やウイスキーの海外での人気も後押しして、年々増加傾向です。令和4年の輸出金額は、1,392億円(対前年比21.4%増)となり、堅調です。主要輸出国は、中国、アメリカ、台湾などとなっています。

酒類製造業を始めるために必要な準備

酒類製造業を始めるために必要な準備としては、以下のようなことが考えられます。

【酒類製造業を始めるために必要な準備】 

  • 事業リソース(ヒト・モノ・カネ)の確保
  • ヒト:蔵元・杜氏・蔵人などの酒造りを担う人材
  • モノ:醸造場、醸造設備機器
  • カネ:事業資金
  • 酒類製造業に必要な免許・許可の取得
  • のれん(原料仕入先・問屋などの取引先・販路や酒造りのノウハウなど)の準備

まずは、事業リソースの確保が最優先でしょう。事業リソースとは、お酒を造る人材、お酒を造る場所や設備、お酒を造るのに必要な資金等です。

それ以外にも、酒造業を営む上で必要になってくる免許や許可の取得、酒造りのノウハウや販路といった「のれん」などの準備も必要になってきます。

酒類製造業を始めるために必要な手続きや流れ

酒類製造業を始めるために必要な手続きとして、酒税法で定められている「酒類製造業の免許」の取得と、食品衛生法に基づく「酒類製造業許可」の取得が必要です。

ここでは、酒類製造業を始めるために必要な手続きや流れについて解説します。

【酒類製造業を始めるための手続きや流れ】

  • 酒類製造免許
  • 製造許可の申請方法
  • 取得までの流れ

以下、順に解説します。

酒類製造免許

酒類製造者は、製造する酒類の品目ごと、製造場ごとに酒税法で定められている酒類製造業の免許を取得しなければなりません。

したがって、一度免許を受けた後に、違う品目の酒類を製造しようとする場合には、改めて製造しようとする品目の免許を取得する必要があります。

酒税法の酒類製造免許は、製造場を管轄する税務署への申請が必要です。酒類製造免許を申請するには、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、製造技術・設備要件などさまざまな要件を具備する必要があります。

販売目的ではなく、自己消費のための酒類の製造であっても、酒類製造免許は必要です。ただし例外的に、酒類製造者が、酒類を製造するための酒母やもろみを製造する場合には、酒類製造免許は必要ありません。

酒類製造免許を取得するに際し、注意すべきことは、酒類の品目ごとに1年あたりの最低製造見込数量(法定製造数量)が決まっており、免許取得後1年間に製造しようとする製造見込数量がこの数値に達しない場合には、免許を受けることができないということです。

実際に、製造数量が法定製造数量を3年間下回ると免許取り消しとなってしまいますので注意しましょう。

製造許可の申請方法

酒類製造者は、酒税法で定められている酒類製造業の免許とは別に、食品衛生法に基づく「酒類製造業許可」も必要になります。

「酒類製造業許可」は、製造場所の所在地を管轄する保健所への申請手続きが必要です。

「酒類製造業許可」申請後、製造施設・製造設備等に関して、都道府県知事が定めた基準に適合するか否かの審査を受け、基準に適合すると認められた場合に製造許可を受けられます。

なお、申請する前には、管轄する保健所で事前相談を行い、施設基準に合致しているかなどの事前確認を行うようにしましょう。

さらに、「酒類製造業許可」を取得するためには、施設ごとの食品衛生責任者の設置や貯水槽使用水(タンクの水)や井戸水等を使用する場合には水質検査も必要になります。

「酒類製造業許可」の申請は、施設完成予定日の10日ぐらい前には、営業許可申請書・営業届およびその他の必要書類ならびに申請手数料を添えて申請しましょう。

取得までの流れ

酒税法の「酒類製造業の免許」、食品衛生法の「酒類製造業許可」の取得までの流れは、概ね以下のとおりです。

【免許・許可取得までの流れ】

  • 要件の確認
  • 必要書類の収集
  • 申請(管轄税務署・管轄保健所)※許可の場合申請手数料も必要
  • 審査・現地調査・確認検査
  • 免許の場合:通知書交付(申請から4ヶ月程度)・登録免許税の納付/許可の場合:営業許可書の交付(施設基準適合確認後、数日)
  • 営業開始
  • 管轄税務署への酒類の販売数量等の報告手続き(毎年4月30日まで)

免許・許可とも、事前相談や要件の確認後、必要書類を収集して、管轄庁に申請します。

その後、審査を受け、審査の中で現地調査や確認検査も行われ、審査にパスすると免許や許可の付与といった手続きの流れです。

営業開始後、管轄税務署への報告手続き等もあるので注意しましょう。

酒類製造業を成功させるためのポイント

酒類製造業を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

たとえば、資金調達方法、立地・機械・設備の選定、人材採用やブランド構築、グローバル戦略などです。

ここでは、酒類製造業を成功させるための下記のポイントについて解説します。

【酒類製造業を成功させるためのポイント】

  • 資金調達方法
  • 立地の選定
  • 機械や設備の選定
  • 人材採用
  • ブランド構築
  • グローバル戦略

それぞれについて見ていきましょう。

資金調達方法

酒類製造業に必要な製造場の確保や機械・設備の導入、人材の雇い入れなどを行うためには事業資金が必要です。

酒類製造業を成功させるためには、事業にかかる資金をどのように調達するかが大切なポイントになってきます。

自己資金で賄うのか、金融機関から融資を受けるのか、補助金を活用するのか、いくつかの選択肢の中から、自社の資金計画を立て、資金調達方法を決めなければなりません。

自己資金で賄う場合には、安定した経営のためには自己資本比率をどの程度まで確保しておくのか考慮する必要があり、金融機関から融資を受ける場合には、返済計画などを立てる必要があります。

その点、補助金の活用に関しては、返済の必要がありませんので、酒類製造業を成功させるためには、有益な資金調達方法の1つです。積極的に活用しましょう。

なお、自社に適した補助金を活用したいなら、酒造業に特化した補助金サポートが受けられるコンサルタント会社に依頼することをおすすめします。

立地の選定

酒類製造業を成功させるためには、どこでお酒造りをするのか、製造場の立地の選定も重要なポイントの1つです。

立地の選定を行う際には、おいしいお酒が作れる酒米や水といった原料が調達できる地域や、競合がどの程度あるのか、流通は大丈夫か、取引先は確保できるかなどの要素も考える必要があるでしょう。

機械や設備の選定

酒造りに必要な機械や設備の選定も、酒類製造業を成功させるために考えなければならないポイントの1つです。

予算の範囲内で、どんな機械や設備があればいいのか、どこのメーカーの機械や設備がいいのか、自社が造りたいお酒にはどんな機能があればいいのか、どこにこだわりを持てばいいのかなどをじっくりと考慮して決めることが必要となります。

また、補助金を活用する場合などは、導入したい機械や設備に関して、複数社から見積もりを取ることも大切です。

機械や設備を導入する際には、自社で直接メーカーと取引するよりも、自社に適したメーカーを探してくれたり、メーカーとの間に入って各種交渉や調整をしてくれたりする外部の会社に依頼することも検討しましょう。

人材採用

お酒造りは、造り手なくして成功しません。造り手とは、酒造メーカー自体を指すこともありますが、お酒造りの担い手である杜氏や蔵人を指すこともあります。

造り手となる人材を採用して確保することも、酒類製造業を成功させるためのポイントの1つです。

優秀な人材を確保することも大切ですが、もっとも大切なのは、自社に適した人材の確保になります。

どんな人材を採用したいのかを明確にして、地元の学校や知人に紹介してもらったり、ハローワークに登録してもらったりするほか、SNSの活用や転職サイト・エージェントの活用などにより求人活動を行いましょう。

ブランド構築

酒類製造業を成功させるためには、「ブランディング(ブランド構築)」もポイントです。

どんなにいいお酒を造っても、消費者に選ばれなければ意味がありません。「あのメーカーのお酒が飲みたい」と消費者に選ばれてこそ、酒造メーカーとして成功するのです。

消費者に選ばれるためには、ブランディングが必要になります。ブランディングを行うためには、どんなブランドにするのか、どうやって消費者に訴求するのか、SNSの活用、ブランド戦略の策定、依頼するパートナーの選定など自社に合った方法を選びましょう。

グローバル戦略

酒類製造業を成功させるためには、国内での販売だけでなく、海外展開を含めた「グローバル戦略」も念頭に置いておく必要があります。

日本酒やウイスキーなど海外からの評価の高い日本産酒類は、輸出も堅調であるため、越境ECサイトによる海外のお客さまへの直接販売や、現地パートナーとの提携による海外への輸出など、売上アップのために海外展開する戦略を検討しましょう。

国税庁やジェトロの情報にキャッチアップしたり、海外展開に強い酒造業に特化したコンサルティング会社と組んだり、海外展開向けの補助金を活用したり、どうやって海外展開するのか考えておくことが重要です。

酒類製造業で注意すべきポイント

酒類製造業を行う上では、生産リスク管理、品質管理、安全対策、法令遵守など注意すべき下記のポイントがあります。

【酒類製造業を行う上でのポイント】

  • 生産リスク管理
  • 品質管理
  • 安全対策
  • 法令遵守

以下、順に解説していきましょう。

生産リスク管理

酒類製造業を行う者は、酒類も飲料であることから、生産過程での異物混入や腐食等により人の健康に悪影響を及ぼすリスクを管理しなければなりません。

令和3年6月1日より、すべての食品事業者にHACCP(国際的にも認められている高度な衛生管理手法)に沿った衛生管理が義務付けられたことから、酒類製造業者もHACCPによる管理を行う必要があります。

衛生管理以外にも、酒類製造業の生産リスクとして、社会情勢の変化や原材料の価格変動、自然災害やパンデミックなどがありますが、生産リスク管理として、発生の予測可能性、万が一が起きても、市場への安定供給できるように、危機管理マニュアルなどを準備しておくことが必要です。

品質管理

酒類製造業にとって、商品の品質管理は何よりも注意すべきポイントです。

品質管理を怠ると、苦労して築いた信用を一瞬にして失うことになりかねません。厳格な品質管理を行うためには、品質管理に必要な設備・機械・システムを導入するなど対策を講じておくことも必要です。

たとえば、麹や醪などの温度管理(測定・記録)、適切なデータの管理、作業の効率化などを図ることも必要になってくるかもしれません。

また、品質管理には、品質管理マニュアルなどを作成し、原料の安全性を確認したり、製造各工程での品質検査・分析を行ったりすることも大切です。

安全対策

酒類製造業を行う上で注意すべきことの1つに、杜氏や蔵人など酒造りの現場で働く労働者の安全を確保する「安全対策」があります。

酒造りの現場では、ときには高所での作業で落下の危険性があったり、フォークリフトやトラックなどお酒の運搬時の事故の危険性があったり、貯蔵庫や貯蔵タンクなどでの作業中、転落や爆発、有毒ガスの吸引などの事故の危険性があったりすることがあるので、危険防止のためのしかるべき対策が必要です。

酒類製造業における死亡災害事例などを資料にして従業員に配布して、危険防止マニュアルの作成・研修を行い、朝礼で事前確認で周知徹底する、危険な作業時にはヘルメットの着用、防護服、ガスマスクや命綱の利用の義務づけなど、安全対策を怠らないようにしましょう。

法令遵守

酒類製造業を行う者は、各種法令を遵守する必要があります。

たとえば、毎年度の製造場の所在地の所轄税務署長への申告や、製造設備等を新設・異動した場合の申告、製造方法の新規・変更・終了の申告、製造休止の申告などです。

遵守する法令は、酒造に関する酒税法、酒類業組合法のほか、酒類容器等のリサイクルの推進のための資源有効利用促進法、公正な取引確保のための独占禁止法や国税庁の「基準」及び「指針」、20歳未満の者の飲酒防止のための「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」などとなります。

まとめ

ここまで、酒類製造業に関して、始めるために必要な手続きや流れ、成功させるためのポイントや注意点をご紹介させていただきました。

酒類製造業を始めて成功させるためには、必要な準備を怠らず、成功させるためのポイントや注意点をしっかりと押さえておく必要があります。

また、自身ですべて行うよりは、酒造業界に精通した豊富な経験とノウハウ、実績を持つ信頼できるパートナーと連携することが大切です。

パートナー候補者は数が多いので、パートナー選びは慎重に行いましょう。

アンカーマンでは、これまで酒類製造業や酒類販売事業に特化した各種サポートを行ってきました。支援実績は200社以上にもなります。

事業に必要な資金をまかなう補助金に関する申請代行サポートや、売上をアップさせる「売れる仕組みづくり」を策定するマーケティングサポート、新規顧客獲得やリピーターを増やすためにブランドを再構築するリブランディングサポートなどなど。

酒類製造業は、事業内容も特殊で、お酒造りに関する専門用語なども多く、その蔵やお店に合った的確なコンサルティングが難しい中で、アンカーマンは、酒類事業に特化しているため、業界に精通し、豊富な経験やノウハウを持った専門コンサルタントが、丁寧にサポートします。

酒類製造業を始めたいと思っている方は、ぜひお気軽にアンカーマンまでご連絡ください。

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