酒蔵が日本酒をブランディングする方法とは?アイデンティティを確立する方法も解説
「あの蔵の日本酒をなんとしてでも飲んでみたい!」
消費者を熱烈なファンにするためには、「ブランディングが必要」と言われています。
ブランディングとは、事業者が自社の商品やサービスをブランド(消費者が時間や対価を払ってでも手に入れたいと思う独自の価値)化するために行うコミュニケーション活動のこと。
今回は、酒蔵の日本酒ブランディングについて、ブランディングを行う目的、日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法、価値を創る方法、コミュニケーションの方法、成功事例などを解説します。
ブランディングについてくわしく知りたい方はこちら「「おいしいお酒」をもっと世の中に知ってもらうために! ~ブランディングとマーケティングの違いとは?~」をご覧ください。
- 1. 酒蔵が日本酒のブランディングを行う目的
- 1.1. ブランディングによる市場活性化と競争力の向上
- 1.2. ブランド構築による顧客ロイヤリティの向上
- 1.3. ブランディングによる日本酒のプレミアム化と付加価値の向上
- 2. 酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法
- 2.1. ブランドの個性を考える
- 2.2. コアバリューを定義する
- 2.3. ビジョンを設定する
- 3. 酒蔵が日本酒ブランドの価値を創る方法
- 3.1. 開発秘話など日本酒を中心としたストーリーを構築する
- 3.2. 酒蔵や人など日本酒の背景にあるストーリーを構築する
- 3.3. 味わいと品質を追求する
- 3.4. パッケージデザインとネーミングを変える
- 3.5. ブランドアーキテクチャーを行う
- 4. 酒蔵の日本酒ブランドコミュニケーションの方法
- 4.1. デジタルマーケティングを活用する
- 4.2. SNSでファンコミュニティを作る
- 4.3. 酒蔵見学や試飲会を行う
- 4.4. イベントやフェアへの出展
- 4.5. 百貨店やギフト市場を開拓する
- 5. 日本酒のブランディングに成功した酒蔵の事例
- 5.1. 日本酒×NFTアート
- 5.2. 老舗酒蔵×3×333
- 5.3. 場所にとらわれず自分たちの信じるブランドを売る
- 6. 日本酒のブランディングまとめ
酒蔵が日本酒のブランディングを行う目的
酒蔵は、なぜ日本酒のブランディングを行う必要があるのでしょうか。
ここでは、酒蔵が日本酒のブランディングを行う目的について解説します。
【酒蔵が日本酒のブランディングを行う目的】
- ブランディングによる市場活性化と競争力の向上
- ブランド構築による顧客ロイヤリティの向上
- ブランディングによる日本酒のプレミアム化と付加価値の向上
ブランディングによる市場活性化と競争力の向上
国内で減少傾向にあると言われている日本酒市場。ブランディングを行うことで、新たな消費者ニーズを喚起することができ、日本酒市場の活性化を図ることが可能です。
酒蔵が日本酒のブランディングを行う目的の1つに、日本酒市場の活性化を図ることが挙げられます。
また、ブランディングを行えば、他の酒類との差別化が図れるので、競合他社との競争力を高めるといった目的もあることを押さえておきましょう。
ブランド構築による顧客ロイヤリティの向上
ブランディングにより、商品の魅力やストーリーを伝え、消費者に印象づけることが可能です。酒蔵の歴史や伝統、製法、地域性などをブランド化することで、消費者の認知度を高めます。
ブランドへの認知度がアップし、愛着や信頼を得ることで、顧客ロイヤリティも向上し、顧客基盤の安定性と収益の持続税を得ることが可能です。
ブランディングによる日本酒のプレミアム化と付加価値の向上
ブランディングにより、日本酒を「プレミアム」な存在として位置づけ、付加価値を高めます。
また、高品質な日本酒をラグジュアリーブランドとして認知させ、価格を上げることという目的も考えられるでしょう。
酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法
「ブランドアイデンティティ」とは、ブランドを作り上げる企業側が、消費者にどうイメージしてほしいかを明確化することです。
受け手である消費者側のブランドに対する認識である「ブランドイメージ」とは異なります。
酒蔵は、どのようにしたら、日本酒ブランドのアイデンティティを確立できるのでしょうか。
ここでは、酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法をいくつかご紹介します。
【酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法】
- ブランドの個性を考える
- コアバリューを定義する
- ビジョンを設定する
ブランドの個性を考える
酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立するためには、ブランドの個性を考えることが重要です。
ブランドについて現状分析を行い、ブランドが持つ個性を際立たせることで、消費者が感情移入し愛着を抱いてくれる度合いが高まり、顧客ロイヤリティーも向上し、売れ行きもよくなります。
コアバリューを定義する
酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立するには、ブランドのコアバリュー(中核的な価値)を定義することも大切になってきます。
コアバリューを定義するためには、以下の5つの要素(「属性」「機能的価値」「情緒的価値」「理想顧客像」「パーソナリティ」)に分解して考えてみることも必要です。
ビジョンを設定する
酒蔵が日本酒ブランドのアイデンティティを確立するため、ブランドに関して、こうなってほしいというビジョンを設定することも大切です。
ブランドアイデンティティは、創出する事業者側(酒蔵)の意図するものでなければなりません。ブランドアイデンティティを確立するためにも、日本酒ブランドのビジョンを設定しましょう。
「ブランドビジョン」とは、そのブランドが保有する「らしさ」のことであり、オリジナリティーを定義するものです。ブランドの未来像と言ってもいいでしょう。
酒蔵が日本酒ブランドの価値を創る方法
酒蔵が日本酒ブランドの価値を創るには、どのようにアプローチしていけばいいのでしょうか。
ここでは、酒蔵が日本酒ブランドの価値を創る方法について解説します。
【酒蔵が日本酒ブランドの価値を創る方法】
- 開発秘話など日本酒を中心としたストーリーを構築する
- 酒蔵や人など日本酒の背景にあるストーリーを構築する
- 味わいと品質を追求する
- パッケージデザインとネーミングを変える
- ブランドアーキテクチャーを行う
開発秘話など日本酒を中心としたストーリーを構築する
日本酒ブランドの価値を創っていくためには、日本酒に関するストーリーを構築することが重要です。
ブランドを作っていく際には、銘柄名だけでなく、おいしさや造り手の思い、合わせる料理や酒器、開発秘話など、日本酒ならではの価値をアピールしましょう。
酒蔵や人など日本酒の背景にあるストーリーを構築する
ブランド作りにおいて、酒蔵や人など日本酒の背景にあるストーリーを構築することも忘れてはいけません。
どんな人たちが日本酒造りに関わっているのかを見せることによって、消費者が日本酒ブランドに感情移入する度合いが高まるからです。
味わいと品質を追求する
味わいと品質を追求することも、日本酒ブランドの価値を創る上では非常に重要です。
「自分たちの造りたいお酒はどのようなものか」「もっとおいしいお酒、高品質のお酒を造りたい」といったこだわりを追求してこそ、競合からの追随を許さない日本酒ブランドを作り上げるでしょう。
パッケージデザインとネーミングを変える
日本酒ブランドの価値を創る上で、パッケージデザインとネーミングを変えるといったことも選択肢の1つ。
消費者にお酒の魅力を感じてもらうには、中身の質の良さはもちろんのこと、ネーミングやデザインも大切だからです。
酒質はあまり変わっていないのに、パッケージデザインやネーミングを変えて、リブランディングに成功した事例は数多くあります。
ブランドアーキテクチャーを行う
ブランドアーキテクチャとは、企業が保有する複数のブランドの関係性を体系的に設計し、管理するための戦略的フレームワークです。
目的は、各ブランドの役割を明確にし、ブランド間のシナジーを最大化することで、企業全体のブランド価値を向上させること。
たとえば、メインのブランドを中心に、すべての商品ブランドを統一的に管理したり、1つのブランドを横展開したり、各ブランドでターゲットを変えたりといった戦略ごとにさまざまなブランドアーキテクチャを行うことで、酒蔵が日本酒ブランドの価値を創ることが可能です。
酒蔵の日本酒ブランドコミュニケーションの方法
消費者にブランドの価値を伝える重要な戦略である「ブランドコミュニケーション」。
ここでは、酒蔵の日本酒ブランドコミュニケーションの方法について解説します。
【酒蔵の日本酒ブランドコミュニケーションの方法】
- デジタルマーケティングを活用する
- SNSでファンコミュニティを作る
- 酒蔵見学や試飲会を行う
- イベントやフェアへの出展
- 百貨店やギフト市場を開拓する
デジタルマーケティングを活用する
デジタルマーケティングは、インターネットやIT技術を活用したオムニチャネル(店舗やECサイト、SNSなど、オンライン/オフライン問わず、あらゆるメディアを活用して顧客と接点を作り、購入の経路を意識させずに販売促進につなげる戦略)のマーケティング手法。
デジタルマーケティングを活用して、消費者に日本酒の魅力を伝えれば、リアルタイムでの分析が可能なので、消費者ニーズや行動が把握しやすくなり、正確なリード情報も収集できます。
さらに、得られたデジタルデータを分析・活用して、さまざまなチャネルで顧客獲得のチャンスを拡げられるでしょう。
SNSでファンコミュニティを作る
SNS上でファンコミュニティ(ブランドや商品などに関するファンの集まり)を作り、日本酒ブランドコミュニケーションを展開していくことも効果的です。
ファンによるコメント投稿や企業からの情報発信など、さまざまな双方向のやり取りが可能なので、ファン同士や酒蔵とファンとの交流ができ、率直な感想や熱心な意見が飛び交う情報源として活用できるでしょう。
酒蔵見学や試飲会を行う
対面型のブランドコミュニケーションとして、酒蔵見学や試飲会を行うといった方法もあります。
消費者に対して、直接、日本酒に関する想いやこだわり、ストーリーが伝えられるので、ブランドコミュニケーションとしては手応えを感じられる方法でしょう。
イベントやフェアへの出展
対面型のブランドコミュニケーションとして、イベントやフェアへの出展なども考えられます。
日本酒イベントや日本酒フェアは、ポストコロナになって、全国各地で開催されるようになりました。
イベントやフェアへの参加者は、日本酒ファンが多く、日本酒ブランドを伝えやすいターゲットです。
出展するための費用は、補助金などでも活用できるので検討してみましょう。
百貨店やギフト市場を開拓する
酒蔵の日本酒ブランドコミュニケーションの方法として、 百貨店やギフト市場を開拓することも考えられます。
消費者にブランドの価値を伝える場として、取引のない百貨店やギフト市場に新規販路として開拓するのもチャレンジしてみましょう。
日本酒のブランディングに成功した酒蔵の事例
日本酒をブランディングするとは具体的にどのようなことなのでしょうか。
ここでは、日本酒のブランディングに成功した酒蔵の事例をいくつかご紹介しましょう。
【日本酒のブランディングに成功した酒蔵の事例 】
- 日本酒×NFTアート
- 老舗酒蔵×3×333
- 場所にとらわれず自分たちの信じるブランドを売る
日本酒×NFTアート
2022年5月、小野酒造店(長野県)と(株)Torches(長野県)は共同で「日本酒の価値をNFTアート(非代替性トークン)で世界に届ける」というミッションのもと、純米大吟醸『飛騰ASCENDING』と『燈火ILLUMINATING』を限定発売。価格は驚愕の1,230,000円。
有名浮世絵師による本格的な描き下ろしによるパッケージと、漆加工職人の手仕事による絵付けが施されたボトルで、デザイン1点ごとにシリアルナンバーが付与され、NFTアートとして認証。
日本酒のボトルデザインに日本の伝統工芸や職人技を施し、日本酒を味わった後もブランド価値を永続的に保持して想いを込めたメッセージを世界中に届けられるようにした商品です。
老舗酒蔵×3×333
複数の老舗酒蔵が、共同で日本酒のブランディングを行った事例をご紹介します。
佐賀県の光武酒造場、天吹酒造、窓乃梅酒造の3つの蔵元は、2021年、同時に333周年を迎えるに際し、コラボ酒「蔵元創業333周年記念 日本酒セット」を発売。
3つの蔵元の想いが箱の中で1つになり、333周年を完成させることでインパクトを放っています。
場所にとらわれず自分たちの信じるブランドを売る
今や世界的な日本酒ブランドとなった「獺祭」。旭酒造(山口県)は、地元山口での売れ行きが芳しくない中、首都圏へ軸足を移し、「場所は関係ない。高付加価値でもおいしければ攻めやすい!」と市場をローカルからグローバルへ移して成功を収めました。
「自分たちの信じるブランドを売る」をコンセプトに、地方でも、首都圏でも、海外でも、良さを伝えるためのアプローチは変えるものの、品質は変えずに勝負した結果、ブランディングに成功した代表例となっています。
ブランディングの成功事例についてさらにくわしく知りたい方はこちら「炭酸水から学ぶリブランディング|商品コンセプトは顧客価値から」をご覧ください。
日本酒のブランディングまとめ
ここまで、酒蔵の日本酒ブランディングについて、ブランディングを行う目的、日本酒ブランドのアイデンティティを確立する方法、価値を創る方法、コミュニケーションの方法、成功事例などをご紹介させていただきました。
日本酒ブランディングの目的を達成するために、酒蔵はブランディング戦略を構築し、日本酒の魅力を広く伝えていくことが重要です。
アンカーマンでは、酒類業事業者向けに特化した、補助金サポート、経営サポート、マーケティングサポートのほか、リブランディングサポートもご用意しています。
「オリジナルのブランド戦略を構築したい」
「蔵や店、銘柄のファンを増やして、リピート客を増やしたい」
などなど、ブランディングに関するご相談はアンカーマンまでお気軽にご連絡ください。
リブランディングの事例を知りたい方はこちら「「2022ブランド刷新取り組み事例集」ダウンロードページ」をご覧ください。
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