【事例でわかるマーケティング】低価格・高価格商品の付加価値のつけ方



商品の売り上げを伸ばすために必要な、マーケティング。今回は、キリンビールの2つの商品を軸に、低価格商品と高価格商品にどのような付加価値をつけてマーケティングしていくべきか、事例と共にご紹介します。

「消費者に届く言葉」を使う

まずは低価格商品の事例として、キリンビール『本麒麟』のマーケティングについて解説します。

『本麒麟』は、新ジャンル(第3のビール)商品であり、節約志向のある方や、デイリーでビール系テイストを楽しみたい方に親しまれています。

ビールの魅力をおいしさを表す定番フレーズとして、「キレ」や「コク」という言葉があります。ビール愛好家からすると、この2つはおいしさをアピールするのに有効なフレーズのように思えるでしょう。実際に、多くのビールがCMや広告で使われています。

しかし本麒麟では、どちらの言葉も使いませんでした。宣伝で使ったのは「うまい」の一言。「本当にそれで良さが伝わるのか?」と感じるかもしれませんが、本麒麟は1年で2,000万ケースを売り上げる大ヒット商品となっています。

ここからわかるのは、低価格商品に付加価値をつけるときには、変に取り繕ったり着飾ったりせず、商品の魅力をシンプルかつストレートにぶつけることが大切だということです。ビールにこだわりのある方ではなく、「今日はちょっとおいしいものが飲みたい」くらいの温度感でスーパーに足を運んだ消費者が、すぐに「これはよさそうだ」と判断するためには、わかりやすさが重要です。ビールのみならず、日本酒や焼酎などの別酒類においても「うまい」と一言だけ言い切る、というのは参考になるのではないでしょうか。

他社との差別化よりも消費者の視点を大切に

作り手の視点に立つと、長年良きライバルである蔵元さんは、純米酒を○○円で卸しているから、うちもそのくらいでやってみるか、などと、つい競合のことを念頭に置きがちです。しかしマーケティングでは、消費者の視点に立って、消費者の心に届く言葉を使う必要があります。

そんな言葉を見つけるために必要なのは、「仮説力」です。地酒にとどまらず、大手メーカーの商品や、スピリッツなどの購入シーンまでもを思い浮かべ、とにかくたくさんの人を観察し、話を聞くことで、想像力を鍛えましょう。今後の市場がどう移り変わっていくのかといった視点も重要です。自分の中に情報をため込み、自身のお酒を買う人は「50代男性」だけでなく「20代になった子供は全員独立し、土日は夫婦二人で晩酌を楽しむ専業主婦」など他にも様々なパターンがあることを想定して、消費者の「肌感」を持つ。解像度が高ければ高いほど、マーケティングを成功に導く要因となります。

マーケティング能力の高い組織を作る

マーケティングを行う上では、「商品をどう売るか」という視点は重要ですが、「これからマーケティングを成功させ続けるために、どんな組織を作るか」も大切です。一つや二つのヒットを目指すのではなく、自社のブランドを中長期的にどう成長させるかが、企業としての大きな分かれ目となります。

キリンビールには、「一つの商品をどう売るかではなく、会社に関わる人全体をいかに幸せにするか。マーケティングは、そこまで総合的な責任が伴うもの」という考え方があります。こうした考えのもと、「新しいことにチャレンジし、ブランドを育てる集団」を目指しているそうです。

これを達成するには、「変わることはいいことだ」という価値基準が必要です。自分の頭で考え本気でチャレンジできる人材を育て、個々の社員が成長することで、企業全体が発展する。こうしたサイクルをもとに、マーケティングの本質をこれからも追求しています。「それは大手メーカーだからね」とフィルタリングせずに先述の文書を読み返し、あなたの蔵に落とし込むと、取り組めそうなヒントが見つかるはずです。

おいしいのは当たり前、その裏にある背景も作りこむ

次に高価格商品の事例として、『SPRING VALLEY豊潤〈496〉』(以下、496)のマーケティングについて解説します。

2021年3月に発売された496は、本格派のクラフトビール。年間販売目標が160万ケースのところ、約半年で100万ケースを売り上げた大ヒット商品です。この商品誕生のきっかけは、約10年も前にさかのぼります。

キリンビールでは、クラフトビール事業の第1ステップとして、小規模の醸造所「スプリングバレーブルワリー」を運営。その後、第2ステップとして、社内外のクラフトビールを搭載できる専用ディスペンサー「タップ・マルシェ」を開発しました。

そして第3弾として、家庭用商品の496の販売に踏み切っています。マーケティングの観点から見ると、496のような高価格商品はこうした歴史があることが好まれる傾向にあります。「お金を出して買うなら、味だけではなくその裏にある物語や背景を知りたい」と考える方にとって、こうしたストーリーがあることは魅力的な付加価値になります。

一人ではなく会社全体を巻き込んで大きなマーケティングを実現

ブルワリーの経営やディスペンサーの開発など、会社として大きなプロジェクトを仕掛けるためには、役員や従業員にそのプロジェクトの良さを伝えることが不可欠です。キリンビールではブルワリー事業の担当者が、プレゼン資料作りに非常に注力しました。

自分自身がやりたいことと会社の経営課題が重なるところを見つけ、何をやりたいかについて紙芝居風にまとめました。実現まで200回ものプレゼンを行い、少しずつ参画者を増やしたそうです。

また、496発売の際は「家庭用でもクラフトビールが広まったら、外食での注文にもつながる」と、料飲店担当の営業部隊を味方につけました。高価格商品のマーケティングにおいては、一つの商品を売るために、このように会社全体を巻き込んでいくことが重要です。

日本酒のマーケティングはアンカーマンにお任せください

今回は、キリンビールの2商品の事例に基づいて、低価格商品と高価格商品の付加価値のつけ方やマーケティングについて解説しました。とはいえ、「キリンビールの例はわかったが、自社にどう活用できるかわからない」「商品づくりに精いっぱいで、マーケティングにまで手を回せない」という方も多くいらっしゃるでしょう。

先日もなぜマーケティングが必要か、マーケティングとはどのようにやればいいのか、マーケティングと連携させるべきブランディングとは何かなどを解説したコラムを掲載しています。

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