【知ってお得】補助金の税金|圧縮記帳で補助金の効果を高めよう!

※2023年2月17日更新

酒蔵を経営していく上で、設備投資は欠かせないもの。
古くなった醸造設備の入れ替えには大きな資金が必要です。自己資金で賄うだけでなく、補助金を有効活用することはとても賢い選択でしょう。

しかし、せっかく補助金を獲得できたとしても、税金のことを考えておかないと、十分に補助金の効果を得られないこともあります。

今回は、補助金の税金のことについて解説します。
特に、補助金の効果を最大限に高めるための「圧縮記帳」を中心にご紹介していきましょう。

補助金には税金がかかる!

補助金は申請すれば誰でももらえるわけではありません。
大変な手間と時間をかけて採択を受けてはじめて補助金を受け取ることができるのです。

皆さん、補助金申請の情報は、必死で集めるものですが、補助金を受け取った後の税金のことまで把握している方は少ないのかもしれません。
ここでは、補助金にかかる税金や、計算方法、税金に関係する減価償却のことを解説します。

補助金にかかる税金とは

補助金は「益金」として扱われ、税金がかかります。
補助金を受け取る事業主が法人であれば「法人税」、個人事業主であれば「所得税」の課税対象となるのです。ちなみに、消費税の課税対象にはなりません

なお、補助金がいつ「益金」として計上されるかについては、原則として「交付決定通知が到達したとき」を含む事業年度としつつも、各補助金の規定によって変わってくるとされています。
仮に、交付決定の時点と補助金入金の時点にタイムラグがあり、会計年度をまたぐとしても、借方を未収入金の勘定科目として仕訳を行い、補助金入金のタイミングで未収入金の消し込みの会計処理を行いましょう。

減価償却ってなに?

補助金の税金を理解する上では、「減価償却」という経費(損金)処理のルールを理解しておかなければなりません。

一般的に、事業のために使った費用は、使った時点で経費(損金)として処理されます。しかし、時間の経過と使用によって価値が減少する固定資産(「減価償却資産」という)を取得した場合(設備投資した資産など一定の固定資産)は、一時の費用で処理できないというルールがあるのです。
この場合には、資産を使用する期間(「耐用年数」という)で按分して経費化しなければなりません

これを「減価償却」といいます。
減価償却は、資産を購入した当初だけお金の支出がありますが、耐用年数の期間中、次年度以降は「お金の支出は伴わない経費」として扱われるのです。

減価償却費の計算方法には、「定額法(毎年定額を経費計上)」と「定率法(年々経費計上額が減少する)」の2種類の方法があります。
耐用年数は、資産ごとに細かく決まっていて、清酒製造設備であれば12年、酵母・種菌・こうじ等製造設備であれば9年などです。


※参照:「国税庁/耐用年数の適用等に関する取扱通達の付表」

補助金の税金の計算

補助金の税金の計算に関しては、一般的に以下のような計算式で算出します。

法人税

課税所得(益金-損金)×法人税率

所得税

課税所得(収入-必要経費-所得控除)×所得税率-控除額

たとえば、A酒造株式会社が600万円のものづくり補助金を受け取り、1,200万円の清酒製造設備を導入したケースで、初年度の税金の計算は、以下のようになります(補助金関連以外の益金・損金は除外)。

1. 益金:国庫補助金収入600万円
2.損金:減価償却費=1,200万円÷12(年)=100万円
3.法人税の課税所得:益金(上記1)-損金(上記2)=600万円-100万円=500万円
4.法人税の計算:課税所得(上記3)×法人税率
5.あれ?補助金もらっただけなのに…税金がかかってる!

圧縮記帳で補助金の効果が高まるって本当?

補助金の税金の計算方法を見てみると、「せっかく補助金を受け取ったのに、補助金を計上した年度に利益が出てしまい、税金を支払わなければならないのではないか?」と思ってしまいますよね?

お酒造りをするために、清酒製造設備を購入しようとして、補助金を申請したのに、税金を支払うのであれば、予定した設備を購入しづらくなり、補助金の効果が薄れてしまいます。
実は、この不都合を解消でき、補助金の効果を高める方法が、「圧縮記帳」です。ここでは、補助金の活用とセットで押さえておくべき「圧縮記帳」について解説していきます。

圧縮記帳ってなに?

「圧縮記帳」とは、補助金の国策的な位置づけを考慮して、補助金の効果が薄れることを防止するため、法人税法上の特例措置として、補助金の交付を受けたときの課税負担の一時的な軽減を狙った会計処理手法です。

補助金を受け取った法人が、「圧縮記帳」を行うと、課税所得となる利益を将来に繰り延べることができ、補助金を受け取った初年度の大幅な課税を避けることができます。
圧縮記帳制度を利用することで、法人税が将来に繰り延べられるので、税金額の支払総額に変わりはありませんが、補助金を受け取った年度の税額負担が軽減され、補助金の効果が高まるのです。

圧縮記帳を利用するには、以下の要件が必要となります。

圧縮記帳の利用要件

  • 圧縮限度額の範囲内で「帳簿価額を損金経理により減額する方法(直接減額方式)」「損金経理により積立損を使い積立金として積み立てる方法」「決算で剰余金の処分により積み立てる方法(積立金方式)」のうちいずれかの経理方法によること
  • 確定申告書に圧縮記帳経理額の損金算入明細を添付すること
  • 清算中の法人でないこと

なお、「圧縮記帳」は、法人税法の会計処理であり、個人事業主は使えないので要注意です。

圧縮記帳の仕組みや計算方式

圧縮記帳の仕組みは、たとえば、の場合、補助金と同額の「固定資産圧縮損」を計上し、固定資産の購入金額(簿価)から減額することから、差引計算により、補助金による所得が発生していないことになります。代わりに、固定資産の購入金額(簿価)は圧縮損の分だけ減額されているので、減価償却できる金額が減り、圧縮記帳部分は、減価償却期間を通して税金を支払うことになるのです。

要するに、「国庫補助金に税金がかかるのはどうなの?」ということで、同額の費用(損金)をむりやり発生させてしまおうというのが「直接減額方式」
ただ、「直接減額方式」では、税金を繰り延べるために、帳簿を歪め固定資産の購入金額(簿価)を減額しえいるというデメリットがあるので、これを解決するために「積立金方式」があるのです。

「積立金方式」では、固定資産の購入金額(簿価)は減額せず、圧縮記帳する金額(補助金額)を剰余金の処分(利益を減らすこと)によって積み立てておき、会計上の利益は増加しますが、税務上は圧縮積立金が損金算入されるため、補助金の収入と相殺することで、課税されません。
この方法では、毎期の減価償却計算とともに、積立金の取崩処理も必要です。

圧縮記帳を活用すると、具体的に補助金の税金がどうなるかをシミュレーションしてみましょう。
ここでは、直接減額方式と積立金方式を例にとって解説します。

<事例>
A酒造株式会社が600万円のものづくり補助金を受け取り、1,200万円の清酒製造設備を導入して圧縮記帳を活用するケース

直接減額方式のケース(固定資産取得時)

A酒造株式会社は、以下のとおり、税金負担はありません。
(国庫補助金受贈益600万円-設備圧縮損600万円)×法人税率=0


借方
貸方摘要
国庫補助金の交付預金600万円国庫補助金受贈益600万円補助金取得
清酒製造設備取得時清酒製造設備1,200万円預金1,200万円補助金取得
取得時設備圧縮損600万円清酒製造設備600万円圧縮損の計上
毎期末減価償却費※50万円清酒製造設備50万円償却費の計上

※減価償却費:(1,200万円-600万円)÷12年=50万円

積立金方式のケース(固定資産取得時)

A酒造株式会社は、以下のとおり課税所得0につき、税金負担はありません。
(国庫補助金受贈益600万円-税務上の設備圧縮積立金認定損600万円)=課税所得は0


借方
貸方摘要
国庫補助金の交付預金600万円国庫補助金受贈益600万円補助金取得
清酒製造設備取得時清酒製造設備1,200万円預金1,200万円補助金取得
取得時期末繰越利益剰余金600万円圧縮積立金600万円積立金の計上
毎期末減価償却費※100万円清酒製造設備100万円償却費の計上
圧縮積立金50万円圧縮記帳積立金取崩益50万円積立金取り崩し

※減価償却費:1,200万円÷12年=100万円

圧縮記帳が適用される補助金

圧縮記帳はすべての補助金等に適用されるわけではありません。
各補助金サイトの公募要領などで、圧縮記帳が適用できるかどうか記載のあるものもありますので、チェックしておきましょう。なお、酒蔵向け注目補助金の中で、圧縮記帳が適用される補助金は、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「事業再構築補助金」などです。

なお、「事業再構築補助金」に関しては、技術導入費や専門家経費等の固定資産の取得以外に充当する経費は、圧縮記帳の適用は認められません。

まとめ

ここまで、補助金の効果を最大限に高めるための「圧縮記帳」を中心に、補助金の税金についてご紹介させていただきました。

少々専門用語があり、難しいと思います。すべて覚えたり、解説ができるようになる必要まではないでしょう。要は、補助金の効果を高めるために「圧縮記帳」という制度があるんだということを押さえておけば、大丈夫です。

当然ながら、実際の法人税の申告に関しては、担当税理士さんがおやりになることなので、蔵元さんとしては、「補助金を勝ち取れたのはいいけれど、税金はどうなるんだろう?」という心配がないように、今回の記事を参考にしていただければと思います。

アンカーマンでは、酒造業に特化した補助金サポートをご用意していますので、補助金に関してご不明点やご要望等あれば、お気軽にご連絡ください。

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