酒蔵の後継者問題を考えよう!後継者育成を早めに行うことのすすめ

※2022年6月30日更新

酒蔵の経営において、後継者問題とは避けては通れない課題ではないでしょうか。

あなたの蔵では、事業承継の準備はできていますか?
大切な経営を守り続けていくために、できることはやっておきたいものですね。

今回は酒蔵において、後継者問題をどのように考え、課題解決していけばよいのかということについて考えていきましょう。

後継者問題を抱えている酒蔵は多い!

「実はうちの蔵、後継者を含めた次世代の担い手に不安があるんだよなぁ…」

こんなお悩みを抱えている蔵元さん、意外と多いんです。
でも、安心してください。そのお悩みや不安を抱えているのは、あなただけではありません。

後継者に会社の経営を引き継ぐことを「事業承継」といいますが、後継者不足だったり、後継者の育成がうまくいかなかったりと事業承継に悩んでいる日本企業は約7割との調査もあるんです。中小事業者ほど、後継者問題が多いと言われています。

酒蔵は、昔ながらの中小事業者が多い業種であり、後継者問題を抱えている事業者が多いという点では他の業種と同様です。特に、酒蔵の場合、子々孫々、何代にもわたり、経営を承継するケースも多く、次の世代に経営を引き継いでいくために必死でのれんを守っている蔵元さんも多いことでしょう。

経営の引き継ぎ手である後継者だけでなく、杜氏や蔵人などを含めた次世代の造り手、広義の酒文化の担い手などの人材不足問題を抱えている酒蔵が多いという状況を踏まえた上で、酒蔵の経営を継続させていくために、早めに対策を考えていきましょう。

近年、日本酒業界を取り巻く環境は、国内市場、グローバル(海外)市場とも、ICT(情報通信技術)の急速な進化や流通革命などにより、新たな市場や販路の拡大が期待できるチャンスの多い環境だと思います。

酒蔵における事業承継は、蔵ごとにさまざまな事情があり、簡単でないことは重々承知しておりますが、あなたのお酒を次世代に残していくためにも、次世代の経営を意識した後継者の選定・育成も重要ではないでしょうか。

日本酒専門コンサルタントのアンカーマンも一緒に酒蔵の後継者問題に取り組んでいきます。

酒蔵の後継者問題の実例

後継者問題を抱えている酒蔵は多いということをおわかりいただけたところで、実際に皆さんどんなことでお悩みなのか、イメージをつけていただくために、実際の現場の声をお届けしましょう。

ここでは、実際にアンカーマンにあったご相談の事例をいくつかご紹介させていただきます。

【ケース1】設備だけ引き継ぐ買い手は希少

実際、このような相談は多いです。代々、苦労して蔵を守り続けてきたからこそ、蔵への愛着はよくわかります。しかし、残念ながら、設備だけを購入してくれる酒蔵のM&Aの買い手は希少だと思っておいたほうがよいでしょう。

【ケース2】親子間で事業承継の意向が一致しない

このやりとりを見て、「あっ、自分のところと同じだ…」と思った方は、多いのではないでしょうか。
世代によって価値観は変わるもの…どの時代、どの業界でも、家業を継ぐことの難しさはあるようです。

【ケース3】事業売却が繰り返される酒蔵の末路

このような事例は多くはないのでしょうが、実際にご相談されたことがあります。
「事業は人なり!」と言った松下幸之助さんの言葉を借りるまでもなく、事業承継がうまくいかないとこのような残念な結果になってしまうのです。

なぜ後継者問題が起こるのか?

ここで、「なぜ後継者問題が起こるのか?」ということを考えてみましょう。後継者問題には、大きく分けて次の2つのパターンがあるんです。

  1. 経営を引き継ぐべき「後継者がいない(後継者不足)」パターン
  2. 後継者がいるにもかかわらず、「後継者の育成ができていない」「引き継ぐべき事業のハウツーが明確になっていない」などの理由で事業承継がうまく進んでいないパターン

まず、経営を引き継ぐべき「後継者がいない(後継者不足)」パターンに関して考えてみましょう。

日本では、古来より経営者の子どもや孫、親族などが「家業を継ぐ」伝統がありました。従来の日本であれば、後継者がいないという問題は起こらなかったはず。しかし、少子高齢化や労働に対する価値観の変化などさまざまな理由で、家業を引き継ぐ伝統が薄れ、経営者が高齢化して後継者が見つからないという状況があらゆる業界で見受けられるようになりました。

その点、酒蔵の場合には、古くから経営(家業)を子どもや孫、親族に引き継ぐという伝統があり、その伝統が今でも守られています。もちろん、少子化時代の影響で、引き継ぐべき子どもや孫、親族がいないというレアケースもあるでしょう。その場合でも、社内の有望な従業員などに承継するケースもあるようです。つまり、酒蔵の事業承継の場合、後継者不足よりも、「事業承継がうまく進まない」という問題を考えるべきでしょう。

事業承継がうまく進まない原因として、もっとも多く見受けられるのが、先代社長やカリスマ経営者の「経営理念」「ハウツー」「ノウハウ」といった引き継ぐべき「経営の根幹」となるものが「見える化されていない=明確になっていない」というケース。

事業承継の本質は、この経営の根幹である「ハウツー(理念)」の承継です。
事業承継対象がはっきりしていないと、表面上の経営手段・形式にとらわれ、事業承継がうまく進まなくなってしまいます。

この「経営の根幹」とは、事業(経営)主体の存在意義・事業目的であり、事業目的遂行のために必要なビジネスモデルの認識であり、ビジネスモデルを具現化する「ハウツー」「ノウハウ」「経営理念」などと表されるものです。

一般的に、創業社長やカリスマ経営者など天才肌と言われる経営トップほど、経営の根幹であるハウツー(理念)を体系化して見える化することが苦手のようです。そのような事業体では、経営の意思決定がトップに集中し、周囲の幹部達はイエスマンとなり、経営判断の経験を積めない…そして、トップの加齢による衰退とともに、承継すべきハウツー(理念)が見える化できないまま、「後継者が育成できない」「事業承継がうまく進まない」などの状況に陥ってしまうのです。

このように、酒蔵の後継者問題は、後継者がいるにもかかわらず、「後継者の育成ができていない」「引き継ぐべき事業のハウツーが明確になっていない」などの原因で起こることが多いことがわかります。

後継者がいないとどうなるの?

後継者問題を引き起こす原因を理解したところで、次は後継者がいないとどうなってしまうのかということを見ていきましょう。

後継者不足で経営を引き継ぐ者がいない場合には、経営を第三者に引き継ぐか、事業を閉じるしかありません。経営を第三者に引き継ぐケースでは、事業譲渡・株式譲渡・合併などM&Aで会社や事業を売却せざるをえなくなります。また、事業を閉じるケースは、休業・廃業、解散、倒産などです。

後継者問題でM&Aを選択した酒蔵の事例は、2014年の「今錦」で知られる長野の「米澤酒造」の事例、同じく2014年の「国重」「綾菊」などのメーカーで香川の「綾菊酒造」の事例、2017年の日本酒「千歳盛」で知られる秋田の「かづの銘酒」の事例などがあります。

M&Aのケースも広義で見れば、事業承継ということになりますが、後継者に経営(家業)を引き継ぐ事業承継とは、本来的には異なります。それでも、従業員の働き口をなんとか確保するという点ではいいのかもしれませんが、代々引き継いできた家業を手放す結果となってしまうことは残念なことですよね。

このような残念な結果を招かないためにも、後継者問題に関して、早めに対策しておくことをおすすめします。

後継者育成は早めに準備するのがおすすめ!

事業承継の準備は、時間がかかるもの。「後継者の選定」「後継者の育成」「経営資源の引継ぎ」など手続きも煩雑で、多大な手間と時間を要します。事業承継の準備は、数年のスパンで考えるのが得策でしょう。

特に、後継者の育成には時間がかかります。事業をうまく次の世代に引き継ぐためには、後継者育成の準備を早めにしておくことをおすすめします。

後継者の育成・教育には、本来現場での経験が重要です。トップの近くで、「ハウツー(理念)」を体験し、組織の中での役割の目的を考え、自分の強みを活かした独自の方法で同じ目的を果たす経験を積み上げることが効果的でしょう。

先代社長やカリスマ経営者など天才肌の経営トップのコピーを作ることは簡単ではありませんが、違う強みを活かした2代目を育成することは可能です。たとえば、ユニクロの柳井氏やヤマト運輸の小倉氏、星野リゾートの星野氏といった現在成功している経営トップたちも、実は家業を継いで、自分たちの代で飛躍させたんです。

さらに、後継者独自の強みとスタイルを理解してもらうためには、客観的な第三者のアドバイスも必要でしょう。トップの意向が強く残っている組織では、後継者が自身のスタイルを打ち出し、トライして何が強みかを把握することが困難な場合が多いからです。

うまくいく事業承継とは!

事業承継は難しいもの。円滑に事業承継をすすめていくためには、どのようにしたらよいのでしょうか。ここでは、事業承継をうまく進めていくためのコツについてお話ししていきましょう。

事業承継をうまく進めていくためには、まず代々承継されてきた、あるいは先代社長やカリスマ経営者達トップの「ハウツー(理念)を見える化」することです。この「見える化」をする作業は、自分たちではできないケースもあります。その場合には、専門コンサルタントなどの第三者の手を借りて行うことも選択肢の1つでしょう。

「ハウツー(理念)の見える化」を第三者が行う場合には、「ハウツー(理念)の棚卸し」からスタート。経営トップから信念や事業の進め方など、じっくりヒアリングすることからはじめましょう。天才肌の経営トップは、一般的にハウツー(理念)を体系化して自身の言葉で語ることは苦手なので、専門コンサルタントなど第三者が、トップからランダムに聞き出したハウツー(理念)の整理を担当するのです。外部の客観的な目線を入れることでハウツー(理念)の見える化が可能になるんです。

しかし、これだけでは、次の世代でも生き残れる組織を作っていくには十分ではありません。見える化されたハウツー(理念)を、今の時代や社会など経営環境に適合させる工夫が必要。最新のマーケティング手法を取り入れるなどさまざまな工夫で、ハウツー(理念)のアップデートを図りましょう。そのためには、「後継者を教育すること」「後継者と新たなチームに寄り添い、成功体験を積み上げさせる第三者を置くこと」なども大切なピースとなります。

ハウツー(理念)を承継して、後継者が時代や社会に事業をマッチさせるために、「変えていいもの・いけないもの(不易流行)」を判断できるようにすることが後継者育成の目的です。引き継がれていく事業主体が、次世代でも存在価値を保てるようにすることが後継者の役割でしょう。そのために、専門コンサルタントなどの第三者の客観的支援も大いに活用しましょう。

まとめ

今回は、酒蔵の後継者問題について、どうしたらうまく事業承継できるのかという課題を解決するために、実例も含めたさまざまなトピックスをご紹介しました。

後継者問題を解決するためには、これまで培ってきた蔵元さんごとの独自のハウツー(理念)を見える化して後継者に引き継いでいくこと、さらに後継者が先代のハウツー(理念)をベースに時代や社会のニーズに対応した経営を行えるように後継者を育てていくことが必要です。

それでも、後継者問題は、蔵元さんごとにさまざまなご事情があるでしょう。そこには、業界を取り巻く環境や酒蔵の個別の経営事情を理解し、寄り添ってくれる第三者も必要です。
アンカーマンは、これまで蔵元さんの縁の下の力持ちとして、さまざまなご相談に対応させていただきました。そんなアンカーマンだからこそできる事業承継サポートがあります。

「後継者育成を早めに準備したいけど、何からはじめればいいの?」
「後継者問題、前から気になっていたけど、誰に相談していいかわからなくて…」
「自分の代まではなんとかのれんを守ってきたけど、息子や孫の代まで大丈夫かなぁ…」

後継者問題にお悩みの蔵元さんは、アンカーマンまでお気軽にご相談ください。

下記のお問い合わせフォームより「事業承継について相談したい」とご記載の上、

「送信する」を押してください。

とはいえ、

「いきなり社長交代、とかではないけど、私もそろそろ還暦だなぁ」
「息子は何を考えているのやら」

など、漠然とした課題感や、将来への不安をお持ちのあなたには、

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・事業承継とM&Aってどう違うの?~事業承継の種類
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