【蔵元必見】酒蔵の多角経営はアリ?別のお酒を新しい事業の柱にするのってどうなの?
※2023年2月3日更新
酒類業界の状況として、酒類全体の国内出荷数量は1999年度(平成11年度)をピークとして減少しているものの、一部の酒類は消費数量を伸ばしているものもあります。
一例がワインです。
国税庁の資料によれば、日本国内のワイン消費数量の推移は、2019年のデータを見てみると、10年前の約1.5倍に拡大しています。
お酒と料理のペアリングが浸透している中で、食中酒としてワインが日常に定着している昨今、国内ワイン市場の活況を背景に、国内ワイナリー数は、年々増加傾向です。
ブルワリーも増えています。
2010年前後には180程度でしたが、2019年には400を超え、2倍以上に。
このような事業環境を背景に、日本酒の酒蔵の中にも、多角経営を図り、ジンやウイスキーの蒸留所、やワイナリー、ブルワリーなど日本酒とは別の酒類の蔵を立ち上げる酒蔵も出てきています。
「酒蔵の多角経営って、ぶちゃっけどうなの?」
「別の酒類の酒蔵を新しい事業の柱にできるのか?」
などなど、蔵元さんの中には興味を持たれる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「酒蔵が多角経営するのはアリなのか?」について、深掘りしていきましょう。
多角経営とは
メリットの多い多角経営を実践している企業や事業者が多いことから、まずは「多角経営とはいかなるものか」ということを押さえておきましょう。
ここでは、多角経営の定義や形態、メリット・デメリットなどを解説します。
多角経営ってなに?
多角経営とは、1つの企業や事業者が、数種の業種を同時に経営する戦略であり、事業主としての成長や安定した経営、事業リスクの分散などを目的としています。
主たる事業(既存の商品や市場)だけに依存せず、事業の柱を増やして、新たな商品やサービスを既存または新たな市場でのシェア拡大を目指していくことが、経営の多角化です。
多角化の形態
多角化の形態は、「水平型」「垂直型」「集中型」「コングロマリット型」などに分類されます。
それぞれの概要は以下のとおりです。
【経営多角化の形態】
名称 | 市場 | 資源・ノウハウ | 効果 |
水平型 | 既存 | 既存 | ・コストを抑えられる ・既存商品・サービスとのシナジー効果 |
垂直型 | 既存 | 新 | ・既存サービスの上流・下流に事業拡大 ・既存事業の強化も図れる |
集中型 | 新 | 既存 | ・新市場での販売力を上げるため営業力が必要 |
コングロマリット型 | 新 | 新 | ・まったく新しい市場で新たな商品・サービス展開を図るため、もっともリスクがある |
多角経営のメリット・デメリット
多角経営のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
【多角経営のメリット・デメリット】
メリット | ・既存の商品やサービスで既存の市場におけるシェア拡大を目指すよりも収益性が高い ・事業リスクが分散されるので、経営基盤を安定させられる ・経営資源を有効に活用できる ・従業員のモチベーションアップが期待できる |
デメリット | ・多角化に伴うコスト増が見込まれる ・ブランドイメージが曖昧になるリスクがある ・新規事業に失敗して損失を被るリスクがある |
酒蔵の多角経営とは
酒蔵が多角経営を行う上で知っておきたいことを整理していきましょう。
ここでは、酒蔵が多角経営を行う意味や具体例などをご紹介します。
酒蔵が多角経営を行う意味
酒蔵が事業戦略として、経営の多角化を図る意味はさまざまです。
置かれた状況は蔵ごとに千差万別。
それでも、酒蔵が経営の多角化戦略をとることの意味は、蔵の将来まで見据えて、事業リスクを分散して、経営の安定化を図ることにあるでしょう。
副次的な効果として、事業の柱を何本も持つことにより、それぞれがシナジー効果を生み出し、ブランドイメージが良くなり、信用が向上するなども期待できます。
重要なのは、経営を多角化した後のブランドイメージまで想像して、経営多角化を盛り込んだ中期経営計画を策定することです。
酒蔵の多角経営にはどんなものがあるの?
酒蔵の多角形には、以下のような種類や具体例があります。
種類 | 具体例 |
水平型 | ・別の酒類の蔵を立ち上げる ・酒蔵ツーリズム |
垂直型 | ・お酒の製造だけでなく直販(ネット販売含む)を行う ・原材料(お米など)を製造・販売する |
集中型 | ・お酒の成分を含む化粧品などを製造・販売する |
コングロマリット型 | ・酒関連以外の事業を行う |
以下、主なものを順に見ていきましょう。
別の酒類の蔵を立ち上げる
経営の多角化としては、ワイナリーやブルワリーなど、日本酒以外の酒類(ワイン・ビール・ウイスキー・ジン・シードル等々)を立ち上げることも選択肢の1つです。
水平型多角経営に分類され、既存の市場で、既存の資源・ノウハウにプラスαして、蔵を立ち上げるところもあります。(瓶詰場として使っている場所を、製造ができるようにする、など)
立ち上げ資金に事業再構築補助金などを活用することもできるでしょう。
酒類以外の商品を売る
日本酒の製造・販売以外にも、お米などの製造・販売をする多角経営形態や、日本酒の成分を含んだ化粧品などを製造・販売する多角経営形態などもあります。
ただし、日本酒製造とは、似て非なるものであることを十分に理解して、慎重に取り組む必要があるでしょう。
酒蔵ツーリズム
酒蔵ツーリズムは、酒蔵が行う多角経営としては、比較的リスクが少なく、手を出しやすいかもしれません。
既存の経営資源を活用でき、酒造りを観光客にオープンにする事業だからです。
ただし、集客に関しては、自身のHPで案内するほか、旅行代理店と提携したり、PR戦略を考えたり、思いのほか簡単ではないことは押さえておきましょう。
酒関連以外の事業を行う
酒蔵がお酒関連以外の事業を行うパターンもあるでしょう。
蔵元さんの中には、酒蔵以外に、医者としてクリニックを経営しているところもあります。
不動産事業を別会社として所有している蔵元さんも多いと思いますが、建物の老朽化に伴い、入居率の低下が見られる物件については、今後のことも考えておく必要があるでしょう。
中堅規模の酒蔵や大手酒造メーカーでは、一般的に、酒関連事業以外にも不動産、食品、運送、エネルギー、商社、保険、小売などの事業を行っているようです。
【まとめ】酒蔵の多角経営はあり?なし?
ここまで、「酒蔵の多角経営はあり?…それとも…なし?」について、考察してきました。
最近、事業再構築補助金で、別の酒類(ワイン・ビール・ウイスキー・ジン・シードル等々)の蔵を立ち上げる事例も多いようです。
確かに、新しい事業の柱をつくったほうが、健全経営になります!
蔵の状況は、千差万別で、一概に「あり」「なし」と簡単には言えませんが、事業リスク分散という意味では、酒蔵経営の多角化を検討してもいいのかもしれませんね。
どちらにしても、事業の柱を作るには資金やノウハウが必要です。
新規事業を行う上で、補助金による資金調達・ブランディング・販路などについてもアンカーマンはサポートしています!
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