【酒類事業者必見】もう人手不足は怖くない!造り手・売り手の確保術
「やりたいことは見えているのに、担い手が…」
こんな、やるせない思いを抱えている酒類事業者のなんと多いことか…
やっと、社会全体が未曾有のコロナショックから回復し、新たなスタートラインに立てているにも関わらず、人手不足で次のステップに向かえないといった状況を打破するために、人手不足問題に頭を抱えている酒類事業者の皆さまに向けて、今回は「造り手・売り手の確保術」についてご紹介しましょう。
きっとあなたの事業のヒントになるかもしれません。
- 1. 中小企業の人手不足の状況
- 1.1. 人手不足の状況と対策
- 1.2. 多様な人材の就業状況
- 2. なぜ人手不足が起こるの?
- 2.1. 人手不足の原因①社会全体の労働力不足
- 2.2. 人手不足の原因②3K(きつい・汚い・危険)のイメージ
- 2.3. 人手不足の原因③人材育成の失敗
- 3. 人手不足は放置していても大丈夫?
- 3.1. 人手不足が人手不足を招く負のスパイラル
- 3.2. チャレンジができなくなる
- 3.3. 破綻のリスクが高まる
- 4. どうしたら造り手・売り手を確保できる?
- 4.1. 確保術①採用枠の再検討
- 4.1.1. シニア世代の再雇用
- 4.1.2. 女性雇用の促進
- 4.1.3. 外国人の積極採用
- 4.1.4. インターンシップ
- 4.1.5. 転職サイト・転職エージェントの活用
- 4.2. 確保術②リブランディング
- 4.3. 確保術③労働環境の見直し
- 4.4. 確保術④業務プロセスの改善・既存人材の育成
- 4.5. 確保術⑤外部リソースの活用
- 5. まとめ
中小企業の人手不足の状況
全国の中小企業の人手不足の状況はどのようになっているのでしょうか。
日本商工会議所から、全国の中小企業を対象として実施された令和5年9月28日公表の「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」の集計結果の内容をもとに、中小企業の人手不足の状況について解説します。
なお、日本商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」の集計結果はこちらから確認できます。
人手不足の状況と対策
「人手不足」と回答した中小企業が全体の7割近く(68.0%)いることがわかり、2015年の調査開始以降、最大の数値となりました。
また人材確保に向けた取り組みとして、多くの企業が「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」(72.5%)や「ワークライフバランスの推進」(38.1%)を実施しているようです。
多様な人材の就業状況
今回の集計結果から、人手不足の課題解決策として本来推進すべき多様な人材の就業状況ついてもわかっています。
「女性のキャリアアップ支援」に関して、「必要性を感じている」と回答した企業が、8割強(84.3%)に達するものの、そのうち6割弱が「十分取り組めていない」と回答しています。
また、外国人材の受入れを「拡大すべき(業種・地域を限って拡大すべきを含む)」と回答した企業は約7割(67.8%)であるものの、「日本語による円滑なコミュニケーションが困難」と課題を抱えている企業も6割を超え(65.5%)ています。
このように、人手不足感はあるものの、まだまだ多様な人材を十分に活用するまでには至っていないことが伺われるようです。
なぜ人手不足が起こるの?
なぜ人手不足が起こっているのか、課題解決のために人手不足の原因も探求しておきたいところです。
人手不足の原因①社会全体の労働力不足
人手不足の状況を引き起こす原因として、社会全体の労働力不足が考えられます。
少子化を背景とした若年世代の働き手不足により、他の業種も含めて小さいパイを取り合っているような状況です。
また、酒造りの労働力として期待していた、農作業ができない冬場の出稼ぎに来ていた農業従事者の減少も影響しているでしょう。
農業テクノロジーが進歩し、冬場も農作業ができるようになり、農業への大手資本の参入による農業の余剰人員の減少や、インターネットの普及による副業形態の多様化などから、酒造りの労働力としての出稼ぎ者が確保できなくなっている現状があります。
人手不足の原因②3K(きつい・汚い・危険)のイメージ
働き方改革やワークライフバランスが重視される現代では、若者たちは、労働条件を入念にチェックし、3K(きつい・汚い・危険)の職場は敬遠されます。
酒類事業に関しては、「早朝から寒い職場で勤務」「重い荷物を運ぶ」「醸造法や酒税法など特殊な知識が必要」「休みも少なく給料も安い」「若い同僚も少ない」「非近代的で業務効率化が図られていない」など3K(きつい・汚い・危険)のイメージが持たれているようです
人手不足の原因③人材育成の失敗
一度就業しても、離職者が多く定着率が悪ければ、人材不足を招いてしまいます。
離職者を出してしまう要因として、教育研修や従業員のフォローアップなど人材育成に失敗しているケースが挙げられるでしょう。
教育研修の体制が整っていない、指導する人材が不足しているなどの原因が職場に内在していることが考えられます。
人手不足は放置していても大丈夫?
人手不足が常態化すると、どんな職場になってしまうでしょうか。
ここでは人手不足の放置が職場に与える影響について考察していきましょう。
人手不足が人手不足を招く負のスパイラル
人手不足が常態化している職場では、生産性が下がり、利益率も下がってしまいます。
利益率の低下は、企業価値の低下や競争力の低下につながり、企業から将来性や安定性、魅力といったものを奪うでしょう。
求職者から見て、このような職場に就職したいと思うでしょうか。求人の不人気を招き、さらなる人手不足に拍車がかかってしまうことは明白です。
人手不足を放置してしまえば、更なる人手不足を招く負のスパイラルが生じてしまいます。
チャレンジができなくなる
「酒蔵ツーリズム、EC販売の強化、新規販路の開拓、海外展開…やりたいことはたくさんあるのに、担い手が…」
人手不足が常態化する職場では、経営者や従業員のモチベーションが下がり、やがてチャレンジすることも諦めてしまうでしょう。
利益率が下がり、設備投資もできず、新商品開発や商品の増産体制も図れない…現状維持すら厳しくなり、生産量も縮小傾向に…人手不足はあらゆる負のスパイラルを引き起こします。
破綻のリスクが高まる
人手不足が慢性化すると、マンパワーのリソースを均等に配分することが難しくなるので、従業員1人に対して担当する業務が増えてしまうといった傾向にあります。
仕事が属人化するだけでなく、従業員の休職や退職などちょっとしたことで業務がストップしてしまう破綻のリスクが高まることが考えられるでしょう。
また、従業員各人に対する業務の負担が大きいと、「3K」のマイナスイメージの悪化による人材獲得に悪影響が出るなどのリスクも考えられます。
人手不足の放置は、人手不足なのに人材獲得がままならないなど負のスパイラルを招き、人手不足から抜け出すことができなくなるリスクが高まるばかりです。
どうしたら造り手・売り手を確保できる?
どうしたら造り手・売り手を確保できるのか、ここでは「造り手・売り手の確保術」についてご紹介します。
確保術①採用枠の再検討
これまで、ハローワークの求人や知人の紹介などに頼っていた採用方法や既定路線の採用枠を再検討してみるのはいかがでしょうか。
これまで見逃していた人材に目を向けてみるのも、解決策の1つです。
シニア世代の再雇用
今、世間では、一度一線から退いた「シニア世代の再雇用」が注目されています。シニア世代は実務経験も豊富な即戦力です。
酒類事業の場合、シニア世代も現役の方が多いとは思いますが、定年等による退職者の中から、指導者や技術承継担当者として、シニア世代を再雇用したり、たとえ業界未経験でも、シニア世代を新規雇用したりするケースも検討の余地ありではないでしょうか。
女性雇用の促進
「女性雇用の促進」も人手不足の解消に注目されている解決策の1つです。
結婚や出産などライフイベントのため一線を退いた女性が、再び社会復帰するケースも増えています。
近年、女性の蔵元や杜氏も増えてこられた印象ですが、まだまだ女性の進出が少ない酒類業界。
もちろん女性の求職者が増える職場として、職場環境の改善等が必要かもしれませんが、人手不足の解決策の1つとして、「女性雇用の促進」を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
外国人の積極採用
「シニア」「女性」のキーワードのほか、「外国人」も重要なキーワードです。
「外国人の積極採用」という選択肢も考えられるでしょう。
今、「JAPANESE SAKE」は世界で注目されるお酒の1つ。日本酒の文化を学びたいと考えている外国人も多いようです。
酒類業界を体験したいという「外国人」も増えています。
もちろん、外国人を採用する際には、言語や文化の違いがネックになるケースもありますが、自動翻訳機の導入など受入体制の整備をすればクリアできるでしょう。
重要な労働力の1つの選択肢として、「外国人の積極採用」を検討してみてはいかがでしょうか。
インターンシップ
学生が社会に出る前に仕事の場を体験してみる「インターンシップ」を、酒類事業の職場に導入するのも、若手人材の確保には有効な手段の1つです。
2023年の夏休みから制度が変更され、学生情報を採用選考活動に活かすための特定要件(就業体験、実施期間等)を満たしたタイプのみを「インターンシップ」と呼ぶことになりました。
具体的には、大学生の学部3年・4年ないしは修士1年・ 2年、博士課程や修士課程の学生などを対象にして、長期の就業体験が必要となります。
インターンシップを実践することにより、若くて優秀な人材の確保が可能になるかもしれません。ぜひ検討してみてください。
転職サイト・転職エージェントの活用
転職サイトや転職エージェントなどを活用することにより、幅広い年齢層から優秀な人材を確保することも可能になります。
転職サイトや転職エージェントの種類は多く、人材確保に一定の費用はかかってしまいますが、人手不足を解消するためには必要なコストです。
業界に特化した転職サイトや転職エージェントもありますので、比較検討して活用を検討してみましょう。
確保術②リブランディング
優秀な人材を確保するためには、蔵や店のリブランディングも必要です。
SNSやメディアなどを活用して、自身の蔵や店を積極的にPRすることにより、イメージアップ戦略を図りましょう。
3Kのイメージ払拭はもとより、自身の蔵や店で働くメリットを強く前面に打ち出すことで、採用強化につながります。
確保術③労働環境の見直し
人手不足解消のためには、労働条件や職場環境など労働環境の見直しが必要です。
「給与・職務内容・福利厚生など労働条件」「業務量」「職場環境」などの見直しを行いましょう。
労働条件に関しては、「職務内容と条件面が働く人にマッチしているか」「昇給制度や人事評価制度が明確で公平か」「各種手当など本当に必要で自社特有の魅力的な福利厚生は何か」などがポイントです。
業務量に関しては、人的リソースと業務量を比べて業務過多に陥っていないかがポイント。
適正な人的リソースと業務量のバランスチェックを常時行えるように、生産性と業務効率を可視化して、蔵内共有を図りましょう。
職場環境の見直しは、「人間関係の良好さ」「働きやすさ」など、働く人にとって魅力的な環境職場かどうかです。
「あいさつの奨励」「整理整頓の遂行」「悪口禁止」など蔵内改善ルールの徹底、変形労働時間制の採用による休日の確保や長時間労働削減などの工夫が必要かもしれません。
確保術④業務プロセスの改善・既存人材の育成
業務プロセスの改善や既存人材の育成も人手不足解消策の1つです。
現状の業務プロセスを見直し、改善することで、業務の効率化・自動化により、従来よりも少ない人数で仕事を回せるようにすれば、人手不足の解消、従業員の負担軽減、生産性向上などが期待できます。
また、ベテラン従業員のノウハウのマニュアル化、人材育成体制の整備なども必要です。
業務をマニュアル化することで、既存人材も業務内容を体系的・効率的に学びやすく、誰もが決まった手順や方法で作業ができるようになり、業務品質も統一され、属人化の解消にもつながり、経営の安定化が期待できます。
確保術⑤外部リソースの活用
アウトソーシング(外注)など外部リソースの活用も選択肢の1つです。
たとえば、「杜氏集団(杜氏制度)」の活用などにより、人手不足を解消できるだけでなく、人件費の削減や業務効率化などが期待できます。
従来の「短期労働型杜氏」に加えて、「社員型杜氏(杜氏を正社員として雇用)」「蔵元杜氏(オーナー型杜氏、蔵元兼杜氏)」と3つのスタイルに多様化しています。
また、コア業務(酒造りや酒販事業)以外の業務をアウトソーシングするという選択肢も。
たとえば、会計業務を税理士に依頼すると同様に、補助金の申請業務を申請代行業者に依頼したり、採用活動を専門会社に相談したりすることで人手不足を解消することが可能です。
まとめ
ここまで、「造り手・売り手の確保術」をご紹介させていただきました。
今回の記事でご紹介したように、造り手・売り手を確保するためには、さまざまな工夫が必要です。
ただただ、ハローワークで求人を出したり、地元の高校や知人に声をかけるだけでは限界があります。
今まで目を向けなかった部分に、目を向けるところからはじめてみませんか。
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なお、以下のアンカーマンのアーカイブコラムもご参照ください。
酒蔵の後継者問題解決方法をくわしく知りたい方はご覧ください。「酒蔵の後継者問題を考えよう!後継者育成を早めに行うことのすすめ」
酒蔵の人材育成についてくわしく知りたい方はご覧ください。「仕事を任せることで、人は育つ!上手な「権限委譲」とは!?」
酒蔵の人出不足解消方法についてくわしく知りたい方はご覧ください。「酒造りの担い手を探せ!酒蔵の人手不足を解消する方法とは?」
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