農水省HACCP補助金とは?工場新設など大掛かりな投資に活用できる制度をわかりやすく解説

補助金は、融資と違って返済する必要がないので、お酒造りに欠かせない重要な設備などの更新・導入をしようとする際にとても助かる制度です。

「でも、大掛かりな設備投資の場合には、補助金では賄えきれないからなぁ…」と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんね。

そんな方のためにご紹介したい補助金があります。

その名も、「農水省HACCP補助金」(正式名称は「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」)です。

「農水省HACCP補助金」は、なんと最大5億円まで高額な補助金額の交付が受けられる大掛かりな設備投資には持ってこいの補助金なんです!

ものづくり補助金をはじめとした一般的な補助金では対象とされない「建屋」についても補助されることもメリットの一つです。

今回は、「農水省HACCP補助金」とはどのような補助金なのかについて、補助金の概要や採択事例などをご紹介します。

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農水省HACCP補助金とは

「農水省HACCP補助金」とは、農林水産省管轄の補助金です。

酒蔵が利用する補助金といえば、経済産業省管轄の「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」がよく知られているだけに、農林水産省管轄の補助金というと、「え?!農水省管轄の補助金もあるんだ?」と思われるかもしれません。

補助金はさまざまな運営主体で実施されていますが、農林水産省管轄のこの補助金は、農林水産物・食品の輸出に取り組む食品事業者等に対して、輸出向けHACCP等対応施設の新設、改修及び機器の導入等の支援を行う事業の一環として行う制度となっています。

農水省HACCP補助金の概要

「農水省HACCP補助金」の制度概要について解説していきましょう。

制度概要をまとめると、以下のとおりとなります。

なお、本補助金を利用する場合には、必ず事前に実施要綱を確認しましょう。

【農水省HACCP補助金の制度概要】

正式名称食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
支援の内容農林水産物・食品の輸出拡大に向けた施設・機器の整備を支援

※「輸出拡大に向けた」とは…
⚫︎HACCP等の認定・認証の取得による輸出先国の規制等への対応
⚫︎家庭食向けなどの輸出先国ニーズへの対応
補助対象者輸出計画のある食品製造・流通・中間加工などの事業者
補助対象事業⚫︎施設の新設・増築・改修・修繕
⚫︎機器の導入

※施設・設備の条件
「HACCP等の認定取得」「輸出先国が求めるISO・FSSC・JFS-C等の認定取得」「輸出先国のニーズ対応」などを満たすための製品製造のための施設・設備
補助対象経費⚫︎施設・設備・機器の導入・改修等費用
⚫︎施設整備と一体となって効果を高めるための必要経費(コンサル費等含む)
補助上限額・下限額⚫︎令和3年度補正事業:250万円~5億円
⚫︎令和4年度当初事業:500万円~3億円
補助率⚫︎家庭食向けなどの輸出先国ニーズへの対応:10分の3
⚫︎輸出向けHACCP等の認定・認証の取得による輸出先国の規制等への対応:2分の1
手続き事前相談の上、「事業実施計画」と「輸出事業計画」その他必要書類の提出が必要
窓口各都道府県

※令和4年7月25日より「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(令和3年度補正予算)第4回募集が開始されています。

HACCPってなに?

「HACCP」というワードが出てきますが、どんな意味かご存じですか?

HACCP(ハサップ)とは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、食品等事業者による衛生管理手法のこと。

「危害分析重要管理点」「危害要因分析必須管理点」などと訳され、食品製造の工程上、危害を起こす要因(食中毒菌や異物など)を分析・把握して、危害要因を除去・低減させるため、効率よく管理できる部分(重要な工程)を管理することにより安全性を確保する管理手法です。

従来では、「抜取検査」による衛生管理手法が採用されていましたが、問題のある製品の出荷を未然に防止できたり、原因の追求が効率的に行えたりすることから、HACCPが採用されるようになり、国際的な基準も定められています。

「HACCP(ハサップ)に対応する」とは、HACCP等の認定を取得するということです。

「HACCP(ハサップ)」は国際的な衛生管理手法であるため、海外輸出展開する際に、取引する対象国のバイヤーなどから、HACCP等の認定を取得することが取引条件であると要求されることがあります。

ただし、HACCP等の認定を取得するためには、必要な機器の導入や施設の整備等が必要となることがあり、高額な費用が必要になることがあります。

自己資金で賄うことはなかなかハードルが高いため、補助金や優遇措置のある融資制度などを活用をすることをおすすめします。

農水省HACCP補助金のメリット・デメリット

「農水省HACCP補助金」には、以下のようなメリット・デメリットがあるので押さえておきましょう。

【メリット】

  • 設備投資やHACCP対応のための建物修繕に使える(最大5億円)
  • 従業員の賃上げを行わなくても補助金を受けられる

「農水省HACCP補助金」のメリットは、なんと言っても、高額な補助金を受けられることが期待でき、工場の新設や機械設備一式の調達に活用できることです。

また、従業員の賃上げなどが申請条件に含まれていないことも大きなメリットといえるでしょう。

経済産業省所管の補助金ですと賃上げ要件があるケースが多いのに対して、農林水産省管轄の補助金なので、「賃上げ」が要求されていません。

工場新設などを検討されるような蔵元さんは、従業員も多くいらっしゃるケースがほとんどであり、賃上げには二の足を踏みがちです。そのような事業者さんであっても申請が可能なのです。

【デメリット】

  • 公募開始が不定期かつ準備期間が短い→気づいたら応募期間が終わっていることも…
  • HACCP対応が必要である

他方、気をつけなければならないのは、都道府県によって、応募期間に違いがあるので、気づいたら応募期間が終了していて応募できなくなることや、HACCP対応をしなければならないことです。

そのため、「農水省HACCP補助金」を活用しようと思っているなら、できる準備は早めにしておかないとチャンスを逃してしまうことになります。

せっかく、使い勝手が良く、高額な補助金をゲットできる農水省補助金のチャンスを活かしたいなら、早めの準備がおすすめです。

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農水省HACCP補助金の採択事例

農水省HACCP補助金申請に関して、過去の採択事例を見ることで、事業実施計画や輸出事業計画の作成要領や自身の補助金申請に参考になる気づきを得たり、コツを掴んだりすることが可能です。

ここでは、過去のアンカーマンの農水省主体の補助金に関するサポート実績として、5つの採択事例をご紹介させていただきます。

農水省HACCP補助金申請に必要な事業実施計画書のストーリーの作り方やHACCP対策の具体例などを参考にしていただければ幸いです。

採択事例①中国高級酒市場への販路拡大

農水省HACCP補助金の採択事例の1つめは、以下のとおりです。「中国高級酒市場に向けた販路拡大」に関する採択事例は、事業実施計画に、海外展開していく対象国、具体的なアクション、中期スパンでの入念な事業計画や効果などを盛り込み、一連のストーリーを持たせたことが功を奏した事例です。

「中国高級酒市場に向けた販路拡大」に関する採択事例は、事業実施計画に、海外展開していく対象国、具体的なアクション、中期スパンでの入念な事業計画や効果などを盛り込み、一連のストーリーを持たせたことが功を奏した事例です。

交付申請額3,075万円
事業実施計画の概要コロナ前には、日本酒を海外12カ国に輸出していたが、コロナの影響により、海外への輸出が総じて難しくなっている中、中国に関しては、家飲み需要が拡大傾向にあり、高級酒の注文が増加傾向にある。
今後、中国をターゲットとして、中国高級酒市場に向けた販路拡大を図るため、施設等整備事業として、電動濾過水機・ドラム式冷却機の導入を計画している。

採択事例②生酒の海外輸出

農水省HACCP補助金の採択事例の2つめは、以下のとおりです。

「生酒の海外輸出」に関する採択事例は、事業実施計画に、対象国や具体的なアクションはもちろんのこと、現状抱えている課題を解決するための施設等整備事業である点をわかりやすく強調したことが効果的だった事例です。

交付申請額5,741万9,000円
事業実施計画の概要コロナ前には、日本酒やリキュールをアメリカを中心に海外輸出していたが、コロナの影響により、海外への輸出が難しくなっている中、中国・香港に関しては輸出が回復基調にあり、特に中国では家飲み需要やリベンジ消費によるニーズ拡大傾向、フレッシュ感のある生酒を家でも飲みたいとのニーズも増加している。
今後、中国・香港をターゲットとして、ニーズへの対応により販路拡大を図るため、加熱殺菌工程・瓶詰め工程の機器整備や醸造工場のHACCP対応などを実現させる施設等整備事業として、多管式貫流ボイラー・自動温度制御タンク・ウエイト式充填機・清酒等醸造施設の電気設備などの導入を計画している。
HACCP対策①瓶詰め場全体をグリーンブース化して、異物混入リスクを排除する。
②各種機器の導入に伴う清酒等醸造施設の耐塩害仕様のキュービクルなどの電気設備の整備や、防虫シートシャッターなどの醸造工場の防虫・防鼠対策等を実施して、衛生管理を徹底する。

採択事例③過去に別の補助金の交付を受けても申請可能

農水省HACCP補助金の採択事例の3つめは、以下のとおりです。

数年前に別の補助金の交付を受けていてもHACCP補助金の交付を受けられた事例となっています。

前回の補助金を活用して得られた対象国のニーズと、そのニーズに対応するために今回の補助金で行いたい事業をストーリー性を持って事業実施計画に盛り込んだことが功を奏した事例です。

交付申請額304万1,000円
事業実施計画の概要コロナ前には、日本酒やリキュールを北米・東南アジアを中心に海外販売していたが、コロナの影響により、海外への輸出が難しくなっている。
数年前に「JAPANブランド育成支援事業」を活用して補助金の交付を受け、地元の原材料で造った地酒の海外販路開拓の実現を目指して、対象国のアンケート調査・嗜好性分析を行った結果、輸出促進の基盤を築けた。
今後、アメリカをターゲットとして日本酒の輸出事業を展開していく中で、輸出先国のニーズ変化への対応と醸造工場の改修によるHACCP対応化を実現するため、施設等整備事業として、仕込み蔵と冷蔵庫の換気設備等のHACCP対応化修繕を計画している。
HACCP対策仕込み蔵内と冷蔵庫内の換気扇からの害虫侵入防止のために、吸気・排気フィルターの設置など製造場の密閉環境維持に関する工事を計画している。

採択事例④海外との新規取引

農水省HACCP補助金の採択事例の4つめは、以下のとおりです。

新規取引を行う条件としてのHACCP対応と生酒のニーズへの対応のため、機器の導入と施設整備を補助金で行いたいとストーリー性のある背景や動機を事業実施計画に盛り込んだことが功を奏した事例です。 

交付申請額752万円
事業実施計画の概要コロナ前には、日本酒の海外輸出に積極的に取り組んできたものの、台風の被災やコロナの影響により、経営環境が厳しくなっている。
しかし、ここへ来て、グローバルな販売網を持つ米系酒類販売会社から評価を受け、販売展開の打診があったことから海外販路開拓へと舵を切る。
今後、韓国などをターゲットとして日本酒の輸出事業を展開していく中で、「当社の商品を愛してくれるお客様のために造る」をモットーに、輸出で反転攻勢をかけるために、施設等整備事業として、設備投資(タンクの導入)と建物構造補強工事を計画している。

まとめ

「農水省HACCP補助金」について、補助金にご興味ある方のためにアレコレご紹介いたしました。

「農水省HACCP補助金」については、「そもそもHACCPってなに?」という方から、「あぁ!海外展開のための補助金ね!」という方まで、さまざまなフェーズの方がいらっしゃるかと思います。

現在の理解度はあまり関係ありません。

「もの補助は、賃上げ要件があるからもう申請するのは無理だな…」「再構築は既に採択されてしまっているし…」「他に使える補助金、ないかなぁ??」というときに、「あ!!農水省の補助金があるじゃん!!」という活用のしかた、「もの補助」や「再構築補助」以外にも、「こんな補助金があったんだね!」という程度、ご理解いただけたら十分です。

「HACCP対応」には高額な費用がかかり、自己資金ではなかなか厳しいことから、さまざまな補助制度が用意されています。

そのうちの1つが今回ご紹介した「農水省HACCP補助金」です。

ただし、「HACCP対応」といっても、それほど構えることはありません。

今回の採択事例の「HACCP対応」の具体例を参考にしていただき、「輸出対応で生産性を上げたい」「この機械があれば対象国が求めているニーズに応えられるのに…」など、酒蔵さんの想いを実現させるため、アンカーマンと一緒に、事業実施計画書の記載を工夫(アンカーマンが担当するのでご安心を!)して、補助金をゲットしましょう!

そして、あなたの蔵の設備を入れ替えて、もっともっとおいしいお酒を世界中の消費者に届けましょう!

ぜひ、アンカーマンにご相談してくださいね。

そして、「農水省HACCP補助金」は、都道府県によって、応募期間に違いがあります。

いつの間にか、応募期間が終了していることもあります。

せっかく、使い勝手が良く、高額な補助金をゲットできる農水省補助金のチャンスを活かしたいなら、早めの準備がおすすめです。

酒蔵さんにとっては大チャンスです!

「農水省HACCP補助金の準備、いつやるの?」

「今でしょ!!」

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