産業廃棄物となる酒粕を再利用する方法とは?廃棄量が多いほど活用の幅が広がる

「酒粕?袋につめて、農家さんにプレゼントしてるけどなぁ…」

「酒粕屋さんに処理してもらっているよ!」

「粕取り焼酎は造っているけど、それ以外に利用できるの?」

蔵元さんから、このようなお声を耳にします。

「それって、早い話、捨てているということですか?」

「そうだよ!だって、うちは酒造りが本業だし…」

ええ!それ、もったいないですよね!

日本の伝統的な食材である酒粕は、粕取り焼酎や食品としてだけでなく、美容や健康にも良いとされ、大注目の原料なんです。

これまで、酒粕を「酒カス」として産業廃棄物として処理してきたものが、再利用できるとしたら?しかも、廃棄量が多いほど活用の幅が広がり、酒蔵さんの売上がアップするとしたらどうでしょう?

今回は、産業廃棄物となる酒粕を再利用する方法についてくわしくご紹介しましょう。

酒粕とは

日本酒などの製造工程で生成される副産物である酒粕。醪(もろみ)を圧搾した後に残る白い固形物が「酒粕」です。

ここでは、「酒粕とは」について、酒粕の栄養素や効能、生酒粕と乾燥粕の違いなどを解説します。

【酒粕とは】

  • 酒粕の栄養素や効能
  • 生酒粕と乾燥粕の違い

酒粕の栄養素や効能

酒粕には、米、麹、酵母由来の炭水化物やたんぱく質、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれており、栄養価が高く、味噌や漬物、甘酒などさまざまな食品の原料として利用されています。

また、酒粕は、食品の原料以外にも、健康や美肌効果があるとされているため、美容や健康のための飲料や化粧品などにも再利用されるのです。

さらに、酒粕には食物繊維や乳酸菌も含まれており、腸内環境の改善にも役立つとされています。

生酒粕と乾燥粕の違い

生の酒粕を「生酒粕」、乾燥させた酒粕を「乾燥粕」と呼びます。ちなみに、板状にはがした酒粕が「板粕」、ばらばらにはがした酒粕が「ばら粕」、ペースト状に練った酒粕が「練り粕」、ばら粕・板粕を足で踏み、空気を出して熟成させた酒粕が「踏込み粕(押し粕)」です。

「生酒粕」は、日本酒を搾った直後の酒粕の状態であり、湿っていて柔らかく、風味が豊かです。生酒粕は、そのまま食べることもでき、料理の材料としても利用されます。

他方、生酒粕を乾燥させた「乾燥粕」は、乾燥させることで長期間保存ができ、パウダーにするなどの加工も可能です。

酒粕の廃棄量と処理の現状

酒粕は、さまざま活用方法があるにもかかわらず、なぜ廃棄されてしまうのでしょうか。

ここでは、酒粕の廃棄量と処理の現状について解説します。

【酒粕の廃棄量と処理の現状】

  • 酒粕の年間生成量と廃棄率
  • 酒粕が廃棄される理由

酒粕の年間生成量と廃棄率

国税庁令和5年4月公表の「清酒の製造状況等について(令和3酒造年度分)」によれば、酒粕の年間生成量は約32,000トンとのことです。

また、酒粕の廃棄率を示した具体的な資料は見当たりませんが、酒類業中央団体連絡協議会2011年(平成23年)「食品廃棄物等の発生抑制目標値の策定に対する酒類製造業の意見等」によれば、「酒粕(精米時の糠を含む)の食品廃棄物等の発生量全体の再生利用等率は90%以上を維持している」との見解が公表されています。

この見解を参考にすれば、酒粕の廃棄率は10%以下ということになるでしょう。

また、酒蔵のSNSなどの投稿を見ても、猛暑で米が硬く溶けにくく、例年より酒粕が多く発生してしまって困っているという現状もあるようです。

酒粕が廃棄される理由

本業が酒造業である酒蔵では、酒粕にはあまり重きを置いていないため、費用をかけてでも廃棄処分することが多いようです。

生酒粕は、水分が多いため、保存しにくいからです。

酒粕が廃棄される背景には、近年、家庭で奈良漬けをつくる文化が衰退していることなどにより需要が減少していることや、吟醸酒に代表される高品質な日本酒の製造が進む中で、酒粕の量も必然的に増加していることなども影響しています。

酒粕の流通を専門で扱う酒粕屋さんに処理費用を支払い処理してもらったり、自身で農家さんなどにプレゼントしている酒蔵さんもあるようです。蔵に取りに来てもらえるなら、無料で持って行ってくださいとの酒蔵さんのSNS投稿もよく目にします。

それでも、袋代などのコストは酒蔵持ちなので、廃棄コストがかかってしまうことには変わりありませんが。

自分たちで酒粕をリサイクルするにしても、費用も手間もかかるので、酒粕を、酒造りの絞りカス=酒カスとして、処理する以外に手を打っていない酒蔵さんがほとんどです。

酒粕の廃棄にかかる費用

本来なら、酒粕を有効活用して、売りモノにでもしたいところですが、もろみを絞って出てくる酒粕には、不純物も入っているため、除去作業などの手間を考えると二の足を踏んでしまう気持ちもわかりますよね。

それでも、酒粕の処理費用をなんとかしたいと思っている蔵元さんは多いようで、捨てるよりは、販売するなどして、廃棄コストをマイナスからせめてプラマイゼロまで持っていけないかと頭を捻っているというお声をよく聞きます。

酒粕の廃棄にかかる費用に関しては廃棄業者ごとに異なるので相場等の詳細は不明ですが、中には年間40トンの酒粕の廃棄費用に100万円以上もかかるという事例も。

廃棄費用がかかることから、酒粕を食品の材料や飼料・堆肥として引き取り業者に引き取ってもらう酒蔵もあります。

エシカル・スピリッツ株式会社の独自調査によれば、酒粕の引取価格はキロあたり0円~70円、中央値は30円とのこと。

ただし、酒粕を引き取ってもらう場合も、物流コストの負担は酒蔵が行います。

産業廃棄物の酒粕を商品として再利用するための活用例

酒粕を費用をかけて廃棄せず、さまざまなアイデアを駆使して、売上につなげている酒蔵さんも多いようです。中には、酒粕の廃棄コストをゼロにする以上に、収益の柱として、酒造業以外に、酒粕事業として多角経営を行っている酒蔵さんも。

酒粕の再利用には、商品として再利用するケースと飼料や肥料へと再利用するケースがあります。

ここでは、産業廃棄物の酒粕を商品として再利用するための活用例について解説しましょう。

【産業廃棄物の酒粕を商品として再利用するための活用例】

  • 酒粕を使った加工品
  • 酒粕を使ったスイーツ
  • 酒粕をエシカル商品に

酒粕を使った加工品

酒粕を使った加工品の活用事例としてすぐに思い浮かんで、既に取り組んでいる酒蔵さんも多いのが、なんと言っても、「粕取り焼酎(酒粕焼酎)」でしょう。

実は、酒蔵さんが独自で、酒粕を活用している事例を見ていくと、粕取り焼酎以外にも、酒粕を乾燥させて、粉末やペーストに加工するなどして、料理の原料や調味料にする有効活用方法で成功している酒蔵さんも見受けられます。

「板粕」「ばら粕」の販売、それぞれの蔵の酒粕のオリジナル加工品として「粕汁」「奈良漬け・野沢菜漬けなどの酒粕を使った粕漬物」「酒粕を練り込んだスイーツ」「酒粕のせんべいなどの菓子類」などなど。

また、酒粕を、食品関連だけでなく、「健康」「美容」「飼料」「肥料」などの分野にも活用している事例も。「酒粕の石けん」をネットで直販している酒蔵さんもあります。

酒蔵さん独自で商品化しているケースもあれば、他業種の事業者とコラボして、商品化する事例なども珍しくありません。

酒粕を使ったスイーツ

酒粕を使った活用事例として、酒粕を使ったスイーツ(酒粕スイーツ)も数多く見受けられます。

酒粕スイーツは、「乾燥粕」をパウダーにして、原料に混ぜ込むので、コクがあり、深みのある味わいや芳醇な香りが特徴。

ケーキやクッキー、おまんじゅうなどバリエーションのある洋菓子、和菓子が作れるのも、酒粕スイーツの特徴です。

酒粕をエシカル商品に

酒粕をエシカル商品として再利用する事例もあります。

酒粕を捨てないで何かに有効活用できないかという「エシカル商品(人や社会、環境を意識して作られた商品)」の概念から開発されたエシカル・ジンなどに取り組んでいる酒蔵さんも。

また、酒粕を活用した酒粕エシカル化粧品などの活用事例もあります。

産業廃棄物の酒粕を飼料や肥料に再利用するための活用例

酒粕を廃棄せずに活用する事例として、飼料や肥料に再利用するなど酒粕の農畜産業での活用事例が数多く見受けられます。

ここでは、産業廃棄物の酒粕を飼料や肥料に再利用するための活用例について解説しましょう。

【産業廃棄物の酒粕を飼料や肥料に再利用するための活用例】

  • 酒粕の家畜の飼料としての活用例
  • 酒粕の肥料としての活用例

酒粕の家畜の飼料としての活用例

酒粕の再利用事例として、酒粕を家畜の飼料として活用する事例も多いようです。

酒粕を飼料として再利用するには、酒粕を粉砕後、乾燥させ粉末化し、酒粕から水分を取り除き保存性を高めることが必要となります。

乾燥粕にすることにより、家畜も栄養価が高い酒粕原料のエサで食いつきもいいようで、各地で作られるブランド豚「ほろよいとん」などが代表例です。

酒粕の肥料としての活用例

栄養価が高い酒粕を、有機栽培用肥料として活用する事例も見受けられます。

酒粕を肥料として活用することで、作物が丈夫で大きくなるとか。


その他にも、「米ぬか×酒粕」で発酵させた循環型肥料などもあり、酒粕の農業利用にも大きな注目が集まっています。

酒粕を再利用するための補助金を活用した設備導入

酒粕を再利用するためには、保存期間を長くするため乾燥させたり、パウダーなど加工しやすくするために粉砕したりする必要があります。

酒粕を有効活用するためには、自身で加工などを行うか、他の事業者とコラボするかどちらかでしょう。

自身で酒粕の加工などを行う場合には、酒粕を再利用するための乾燥機や破砕機といった一定の設備導入が必要になります。

実際に、大型設備を導入して、酒粕事業に成功している酒蔵さんの酒粕は、乾燥して粉末化させた酒粕が1年以上保存できるそうです。

酒粕の有効活用のために、設備導入が必要になった場合には、導入費用をどうするかということは頭を悩ませる部分だと思います。

設備導入にはそれなりの費用が必要となりますが、補助金を活用することで、費用の一部を賄うことが可能です。

補助金は、融資などと異なり返済が不要な制度であるため、酒類事業者にとっては活用しやすい制度です。積極的に活用を検討することをおすすめします。

酒粕の有効活用のための設備導入に活用できる酒造業向けの補助金はいくつかあります。

たとえば、「ものづくり補助金」であれば、大型設備の導入も可能です。

酒粕の有効活用には、衛生面も関係してくることを忘れてはいけません。酒粕の生成過程で、ゴミなどの異物混入のリスクがあるからです。

たとえば、精米時点で、醸造設備から剥がれ落ちた木片等の混入などを防ぐためには、

より厳格なHACCPに準拠した衛生基準を取り入れることも選択肢の1つでしょう。

HACCPの衛生基準を取り入れるための設備導入も必要になるケースもありますが、その場合には、「HACCP補助金」の活用も可能です。

HACCPに準拠した衛生基準に関する詳細は、HACCPを導入するために活用できる補助金とは?制度や補助金の詳細をわかりやすく解説を参考にしてください!

産業廃棄物として処理される酒粕を再利用する方法まとめ

ここまで、産業廃棄物として処理される酒粕を再利用する方法についてご紹介させていただきました。

酒造りを続けていくためには、酒粕の処理をどうするかということは、ついて回ります。

酒粕の有効活用事例を参考にして、あなたの蔵でも酒粕の処理費用を削減していきましょう。さらに、工夫すれば、売上アップも期待できます。

今回のコラムでご紹介した以外にも、酒粕の有効活用事例はまだまだたくさんあります。

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