【補助金基礎講座】補助金の怖い話

※2021年11月24日更新

企業の新たなチャレンジには資金が必要です。補助金は、そんな企業の思いをサポートするための制度です。しかし、補助金の失敗談が多いのもまた事実。

今回は、初心者の方が陥りがちな失敗について解説します。

1.補助金は基本的に後払い

補助金でよくあるパターンが「経費の2/3を填補します」というものです。

例えば、新たに設備を導入して 1,500万円の経費がかかったとすると、最大で1,000万円の経費が補助されます。実際には補助率に加えて補助額の上限もあるため、補助額の上限が500万円の場合、最大補助額は500万円となります。

ここで気を付けたいのが、実際に補助金が採択され、支払いが行われるまでは、がんばって急いだ場合でも申請の計画・準備開始から半年以上かかることがほとんどという点です。

補助金は基本的に後払いなので(※一部の補助金では、遡及措置などの例外はありますが...)補助金が入金されるまで、資金ショートに耐えうる資金計画が必要です。

2.採択後もさまざまな申請・報告が必要

「家に帰るまでが遠足です」と言われるように、「補助金を請求し、全ての報告が終わるまでが補助事業」です。

採択発表当日は、「採択された!やった!」と思うでしょう。しかし、採択された後の方が、意外とやることが多いのです。

・証拠写真撮影

時系列の整合性が取れた経理書類の準備

実績報告書作成

・事務局からの度重なるダメ出し... 

(重箱の隅をつつくような、チェックの厳しい事務局の方に担当していただく場合、正直、私たちアンカーマンも、時々めげそうになることがあります…。)

補助金は原則として返済不要なので、交付後の使い方について事務局によるチェックが行われます。しかも、複数回の報告が必要な補助金がほとんどです。

補助金採択後に必要な申請・報告には次のようなものがあります。

・交付申請(公募申請と兼ねている場合も)

・遂行状況報告(中間報告)

・補助事業終了後の実績報告(場合によっては立入検査あり)

・補助事業終了1年ごとの事業化状況報告

高額の補助金の場合、事業化状況報告は採択後3~5年間、毎年必要です。また、公募要項には明記されていない、フォローアップ調査や、事業者アンケートの提出を求められることも多く、そのたびに決算書を取り出し、数値を入力して報告する必要があります。

事務局からの再三の提出依頼に応じない場合、採択取り消しや、補助金返還、不正受給とみなされた場合には事業者名の公表などのペナルティが発生する可能性があるため、公募申請時に登録したメールアドレスは、常にチェックをしておくことを心がけましょう。

今までは事業化状況報告を実施していなかった「小規模事業者持続化補助金」も、令和2年度第3次補正予算の<低感染リスク型ビジネス枠>より、事業化状況報告が実施されることになりました。より、補助事業に対して責任が伴うことになります。

公募申請時には、事業のスケジュールを入念に確認し、責任を持って報告ができる社内体制を予め整えておきましょう。

3.補助金によって用語の定義が変わる

補助金の実施主体者は国や地方自治体などさまざまです。そのため、補助金によって必要な書類や用語の定義が変わることがあるので注意しましょう。

特に分かりにくいのが用語の定義です。

例えば、「人件費」と「給与支給総額」。人件費と給与支給総額は一見似たような響きですが、算出方法が異なります。さらに、「どの項目が給与支給総額に含まれるのか」というのも補助金によって変わります

「ものづくり補助金」と「小規模事業者持続化補助金≪低感染リスク型ビジネス枠≫」を例に挙げてみましょう。

ものづくり補助金には「賃上げ要件」と呼ばれるものがあり、従業員の給料や賃金を引き上げることが補助金申請の必須要件です。具体的には次のとおりです(2020年度の場合)。

・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上

・事業者全体の付加価値額※を年率平均3%以上増加

※付加価値額=営業利益 + 人件費 + 減価償却費

また、補助金の申請時点で、上記の内容について従業員への表明が完了している必要があります。

一方、2021年11月25日現在、小規模事業者持続化補助金≪低感染リスク型ビジネス枠≫にも「賃金引上げプラン」という制度があります。賃金引上げを意欲的に実施する小規模事業者を対象に創設されたもので、賃金引上げプランで申請した事業者は優先的に採択を受けることができます。ただし、採択後に以下の①②、いずれかに当てはまる場合は補助金返還のペナルティ対象となるので注意が必要です。

①補助事業終了1年後に「事業効果および賃金引上げ等状況報告」及び賃金引上げに係る賃金台帳等の証拠書類の提出がない場合。

②補助事業終了から1年後において、「給与支給総額増加」または「事業場内最低賃金引上げ」が実施できていない場合。

(引用:令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>)

さて、ここまで説明した「賃上げ要件」と「賃金引上げプラン」には、いずれも「給与支給総額」が関わってきますが、実は、ものづくり補助金と小規模事業者持続化補助金の2つの補助金で、「どこまでを給与支給総額」に含めるかが異なるのです。

・ものづくり補助金の場合

※4 給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬(引用:ものづくり補助事業公式ホームページ よくある質問)

・小規模事業者持続化補助金の場合

申請時点での直近1年間、もしくは申請時点で直近1期(1年間)における「給与支給総額」(役員報酬等は除外)が比較対象となりますので、創業から1年未満のため直近1年間の給与支給実績が存在しない場合や、直近1年間に給与支払い対象者がいない場合等は、比較対象がないことから、「賃金引上げ枠」の申請はできません。(引用:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金 公式ホームページ)

よく見てみると、「ものづくり補助金」の場合は役員報酬が給与支給総額に含まれるのに対して、「小規模事業者持続化補助金の場合」の場合は「役員報酬等は除外」、つまり、給与支給総額に含まれないことが分かります。

役員報酬が含まれるか含まれないかで、給与支給総額は大きく変わってきます。「賃上げ」や「給与支給総額」など、一度は耳にしたことがある用語であっても、補助金によって定義が変わることはよくあるため、公募要項を入念にチェックしましょう。

いかがでしたか?

補助金の申請はとにかく複雑です。何年か前に採択された補助金であっても、公募必須要件が以前と変更になっている場合も多々あり、たいていの変更は要件が厳しくなる方向です。制度概要の把握、必須要件か加点要件かの確認で要項を読み込むだけでもかなり時間がかかるので、早めのスタートを切ることが大切です。

私たちアンカーマンは、酒造業特化の経営コンサルタントとして、補助金申請サポートを行っています。公募申請前の要件確認から、事業計画書の作成、加点資料取得のサポート、採択後の実績報告・事業報告まで一貫してサポートさせていただきます。

酒造業特化なので専門用語もそのまま通じますし、補助金の採択率も80%を超えています

初めての補助金申請、不安ですよね。

補助金に関する疑問・質問がありましたら、私たちが丁寧に回答させていただきます。下記問い合わせフォームよりお気軽にお送りください。