【保存版】2021~2023年日本酒蔵・焼酎蔵がものづくり補助金活用で導入した設備TOP3!

※2024年6月3日更新

「○○という設備、いいって聞くけど本当かな?」
「分析機器を入れたいが、どこのメーカーが良いんだろう?」

よその蔵はどういう設備を導入したのか、やはり気になるところですよね。
仲の良い地域の蔵元さんであれば、世間話がてらにちょっと聞いてみるといったことができても、離れたエリアでの事例というのは、なかなか耳に入ってこないものです。

しかも、「単なる導入事例」でなく、ウィズコロナ・ポストコロナ時代に突入する中で、大きな変化に合わせた積極的な設備投資をしている勢いのある蔵元さんからのこの設備を入れてよかった、という成功事例が聞きたいというのが、本音ではないでしょうか?

そこで、

よその蔵はどのような需要のもと、その設備に焦点を当てたのか?
実際に補助金活用で酒蔵に導入されている設備は何か?
直近3年においてアンカーマンでサポートした、もの補助申請における採択者は、どの設備で採択されたのか?

などなど、日々全国の蔵元さんとミーティングをしているアンカーマンだからこそ集まる、解像度の高い情報を、一挙公開いたします!

2021年1月~2023年12月の3年間において、アンカーマンにて申請サポートしたものづくり補助金の酒類製造業での採択件数は42件です。
※実際に採択・導入されたリアルな統計とすべく、酒類製造業以外・他補助金採択・不採択は除き、ものづくり補助金のみを集計

42件の採択のなかには、定期的に補助金を活用し、賢く設備投資をされているリピーター様のデータも入っています!

これらには、ものづくり補助金だけでも2~3回採択されていたり、2022年2023年で連続採択されたり、他補助金も含めると4件以上の複数採択を勝ち取っているリピーターさんなどなど、補助金申請のスペシャリストのデータも網羅されています。

そんな方々が、2021年~2023年において、導入された醸造機械は計99基にも上ります。
※同設備で複数申請の数は含まず。例えば1社でタンクを5基導入でもカウントは1基。

1回の採択において、1社あたり平均2.5基の設備を申請されています。単体でなく、一度に複数の設備を導入しているケースがほとんどです。
それはなぜか。

補助金の玄人は、先々を見据えて設備投資を考え、今回は仕込み工程をテコ入れしよう、次は詰め工程、などと計画を立て、設備投資が現実的になってきた段階で、アンカーマンに声をかけてくださいます。

「○○機入れたいんだけど、なんかいい補助金ある?」

もちろん、資金繰りも踏まえたうえで順番に対応、申請を決めた補助金を有効活用するポイントも、きちんと踏まえて実施されています。

そのポイントとは、補助上限額が満額入金になるように、補助率から計算して申請することです。

例えば、

・補助上限額:1,000万円
・補助率:2/3

の補助金額であれば、出来うる限り、補助対象経費を1,500万円以上で申請するということです。

理由としては、100万円の補助金を10回採択されるのと、1,000万円の補助金を1回採択されるのとでは手元に入金される補助金額は変わりませんが、100万円を10回採択された場合の手続きの方が、はるかに手間も時間もかかり、事務負担が膨れ上がってしまうからです。

特に提出書類が多く、急いだほうが補助金入金の早まる交付申請や実績報告の手続きが複数重なってしまうときは、経理担当者の作業負荷がかなり大きく、通常業務に支障が出てしまう恐れもあります。

時折、補助金ビギナーからは、

「いろいろ巨大でボロボロ。何から手を付けていいのやら…」

といった声が聞こえてきます。
その場合は、この先1~2年で、確実に入れ替えをしなければならない設備を挙げてみてください。

「この洗瓶機、毎年修理呼んでるなぁ…メンテナンス代もかかるし、いつ動かなくなるか…」
「サビてきた10,000Lのホーロータンク。穴があきそう、定期メンテではもう対応しきれない…」
「僕より年上の洗米機。今年の造りもお疲れ様でした」

そういった「限界」の見えてきている設備はありませんか?

来冬の仕込み中に動かなくなったら困る、古いけれども重要な設備
故障が増え、2~3年くらいのうちには入れ替えが必要になりそうな機械装置
数年のうちに入れられたら便利になるだろうと思っているシステム

それらを加え、補助金の上限額を有効利用することをおすすめします。
賢い蔵元さんたちも、そのような考えのもと、複数設備にて申請をし、結果、平均導入数が2.5基となっているわけです。

では、そんな賢い蔵元さんが近年ものづくり補助金を活用して導入した設備の中から、件数の多かった機械設備TOP3をご紹介します!!

※2020年は参考データとし、2021-2023年のみを集計

≪第1位≫タンク&冷蔵庫 合計12基

同率1位は・・・12基導入、タンクと冷蔵庫でした!
3年間を通して常に需要が高く、合計数でもダントツトップとなっています。
タンクと冷蔵庫は併せて導入する酒蔵が多いことも、導入数が多くなる理由ではないでしょうか。

タンクの内訳としては「サーマルタンク」が一番多くを占めているのですが、コロナ禍の自粛ムードでお酒の生産量(消費量)が減ったことで、これまでの大容量だった仕込みを小仕込みに移行する蔵も多く見受けられました。
※今回の集計では同設備の複数申請も1基としてカウントしていますが、多いところでは一気に10基以上の小型タンクを導入した蔵元さんもいらっしゃいました。「導入台数」という点では1位と言えるでしょう。

酒蔵の規模によって導入するタンクのサイズや数は様々ですが、背景にはここ数年の流れである特定名称酒や高級酒の需要増加、蔵元サイドでの"酒質向上"への意識の高まりと少量多品種化への移行、それらをコロナ禍が加速させたことが挙げられます。タンクの自動温度制御ができるようになったり、仕込みの容量を小さくしたりすることで、そういった市場の需要に応えているのではないでしょうか。

タンクの温度管理や制御が可能になれば、そもそも都度品温を測る必要はなくなります。温度を下げるために氷を入れたりするなどの手作業を減らすこともできます。もちろん正しく測れているかどうかの判断は必要ですが、かなりの負担減になることは間違いありません。
少し前まで日本酒の醸造といえば寒い時期の風物詩でしたが、今では通年で酒造りをする「四季醸造」の蔵も増えています。1年を通してフレッシュで美味しいお酒を提供し、なおかつ変化の激しい現代の需要にも対応していくため、今後も「四季醸造」の酒蔵の増加は加速するでしょう。

サイズや開放型・密閉型・自動温度調節機能の有無など詳細スペックは色々あれど、アンカーマンでサポートを行っているここ数年間は10,000Lを超えた大型タンクの導入事例はなく、小容量化が進んでいることは明らかです。

10,000L未満のなかでは、蔵により300L~9,000Lと容量は様々。
蔵の移転・新設といった理由で全て新しい設備にする場合は大容量のタイプの導入も必要でしょう。新規事業としてクラウドファンディングなどによる試験醸造を含めた新商品開発や、オーダーメード系の小容量・個別対応の造りを始める蔵も多く、そういった場合は、300L~3,000Lなど、小さめのタンクを導入しているようです。

具体的な容量などは下記。

  • ステンレスタンク 7,000L
  • ステンレスタンク 5,000L
  • ステンレス丸型密閉タンク 3,000L /5,500L ・自動温度調節機能付タンク開放400L
  • 自動温度制御機能付タンク開放3,000L
  • 自動温度制御機能付タンク開放2,500L
  • 自動温度調節機能付タンク密閉9,000L
  • 自動温度調節機能付タンク密閉3,000L
  • 自動温度調節機能付タンク密閉4,000L /6,000L
  • 丸型密閉ジャケットタンク 4,000L
  • 自動温度制御機能付発酵タンク300L

素材としては一部SS材が使用されているものもありますが、ほぼSUS製です。
熱に強く、少々手荒く扱っても傷みが少ない頑丈なステンレスは、洗浄まで含めた日々のお手入れの際にもメリットが大きいようです。

過去に弊社でサポートさせていただいた蔵元さんにおいては木桶の導入事例や、一部、熟成のためにワイン用の樽を導入したケースもありますが、一般的に仕込み・貯蔵用のタンクはステンレスタンクに入れ替えるのが主流になってきているといえるでしょう。

そして前述した通り、せっかくフレッシュなお酒が造れるようになれば、そのフレッシュさを少しでも長くキープしたいと思うのは当然の発想です。最近日本酒の輸出が増えている中で、日本国内でしか飲む機会がなかった「生酒」が世界中で求められるようになってきました。そういった繊細なお酒をなるべくそのままの状態で海外へ輸出できるよう、酒質の変化を抑えることも重要になってきています。
そのためタンク同様酒蔵の規模による違いはあっても、「更に品質を上げたい」「良いものを良い状態でお客様に届けたい」という目標/目的意識のもとで、費用がかかりがちな冷蔵庫への設備投資を決意する蔵も増えてきました。

「製品貯蔵用」や「槽場(圧搾室)」としての使用と用途は様々ですが、その多くはマイナス5度やマイナス10度といった温度まで冷やせる冷蔵庫であり、ここにも“酒質向上”や“品質の低下抑止”を求める蔵元さんの気持ちが見えてきます。

冷蔵庫があれば、コロナ禍のような不測の事態にも品質を保ちながら柔軟に対応できるようになります。どんどん暑くなる日本の夏、ぜひ、冷蔵庫の導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

≪第2位≫洗瓶機/リンサー 合計9基

内容は以下の通り。

  • リンサー  …2基
  • 洗壜機   …3基
  • JBL型ジェット洗壜機
  • NRW-4SE型ボトルリンサー
  • NJW-6XS型洗瓶機
  • 角形ボトルリンサー

数年前は特定のメーカーから特定のスペックの洗瓶機が導入される傾向でしたが、ここ3年間では多岐にわたる様々なタイプが導入されるようになりました。

洗瓶機導入の背景には以下のような問題点があるようです。

  • 今の機械だと一升瓶しか洗浄できない
  • 四合瓶をはじめ、様々な容量を洗浄するためのアタッチメント交換に手間がかかりすぎる
  • 分解掃除が専門業者にしかできない(=分解する際は、業者の手配が必要)
  • 水圧が弱くて洗い残しが発生してしまい、二回洗浄などの手間がかかる
  • 冷水で洗うため瓶の水はけ/水きれが悪く、乾燥に2~3日を要する
  • 排水導線が整っておらずカビが生えやすい
  • 洗浄のスピードが遅く出荷スピードにも影響を及ぼしている

そのため求める形の洗瓶機を導入することにより、「人件費削減(省人化)」「衛生面向上(排水処理、綺麗に洗える)」「スピードアップ(洗瓶が速い、すぐ乾く)」「省エネ化」「省コスト化(洗剤の自動投入)」といった様々なメリットが得られるのです。

また、「老朽化」がきっかけではありながらも、「若者に支持されるようなおしゃれなボトルデザインを実現したい、そのためには、一升瓶しか洗えない洗瓶機では対応できない」と、同等品への入替えではなく、先々のことを見据えた導入もあります。

上記の問題点に加え、蔵元さんにとっては「瓶不足」も頭の痛い、大きな課題です。
大手メーカーの工場閉鎖もあり、一升瓶の生産本数がコロナ明けの需要に追いついておらず、瓶が足りない。

しかし、瓶不足の解消が何年後になるかそもそもわかりませんし、需要に生産数が追いついたとき、「市場に出回る一升瓶の数」は、コロナ前に比べさらに減少するのではないかという恐れはぬぐい切れません。
たとえ瓶不足が回復したとしても、日本酒自体の消費者・消費量が減っている昨今、新たなニーズに対する商品の主軸として一升瓶を以前のように展開していくのは難しいのではないでしょうか。

コロナ禍で増えた「家飲み」という文化
飲食店の冷蔵庫内のお酒の回転を上げる工夫
日本に来た外国人観光客のお土産

四合瓶や300mlを始めとする「少量化」が求められていますし、
「一升瓶が売れない」と嘆く酒屋さんもあちこちで見かけます。

そういった側面もあり、「従来の瓶と異なる容量や容器に対応可能な洗瓶機」の需要が増えたのではないでしょうか。
様々なスペックの洗瓶機/リンサーが導入されている答えも、ここにあるのではないかと思っています。
自社の向かう先やマーケティング戦略を踏まえ、導入する設備を検討選択していきましょう。

≪第3位≫分析機器 合計8基

驚くべきことに、今回導入された8件のうち、6件が同じメーカーの分析機器でした。
分析機器はそれぞれ用途やできることが異なりますが、口コミや流行のようなものもあるのかもしれません。
どこのメーカーの機器を選ぶかというのは蔵によって考え方が異なるものの、求めるメリットや得られる成果という点は共通しています。

  • 時間短縮:1つのサンプルにかかる分析時間が大幅に短くなり、なおかつ固定されるのでスケジュールが立てやすい。
  • 属人化解消:人によるブレが出にくい上に、マニュアル等でスキルの共有も可能。誤差が減るので、シビアにならざるを得ない輸出時のデータの不安も解消。
  • データ化:分析値が蓄積され、蔵人同士で見える化&共有&再現性を得ることができます。膨大な紙の資料や、人による字の癖にも悩まされなくなるかも。
  • ろ液の少量化:少ないもろみの量でも分析ができるようになるので、もろみ初期でも分析ができ、早い段階で方向修正が可能。
  • 安全性の向上:火の使用がないので、火事の原因をなくすことができます。重要文化財の蔵が火災で…という話もある中、代々受け継いできた文化を守ることも当主の大事な役割では。

いかがでしょうか?
パッと思いつくよりも多くのメリットがあったのではないでしょうか。

また、蔵にとって財産でもある「分析データ」に関わる作業は、杜氏をはじめ重要なポジションの蔵人が担っているパターンも少なく有りません。
分析機器を導入すると「誰かがずっとそばに付いている必要」もなくなるので、時間短縮・属人化解消と併せて、省人化にも直結します。杜氏の自由な時間が増えること、それは「もっと美味しいお酒を作ることができる道」へもつながることでしょう。

まとめ

①“もっと良いお酒を造りたい”という意識の高まりが顕著。
 よりフレッシュなお酒を造り、それらをよりフレッシュにしぼり、そのままの状態で保存できる環境が求められている。

②原材料の高騰や物流コスト、資材費の高騰という悩み。
 「省エネ化」「省コスト化」「省力化」という『より少ない費用と少ない人数で(または今のままの人数で)いかに美味しいお酒を仕上げていくか』という部分に焦点が当てられている。

③少量・多品種化・輸出拡大による売れ筋の変化。
 売れ筋となるレギュラー製品をスピーディーに生産・出荷するために、適切な対応ができる設備需要が高まっている。

上記の導入経緯を伺った蔵元さんはどなたも、「補助金ありき」の設備導入ではなく、コロナ禍~後の業界変化を含めた蔵の現状・未来をしっかりと見据え、これから数年先で必要なこと、必要な事業を見つめ、それらに対して必要なものを選定・導入されていました。

蔵の「なりたい姿」「未来」を考え、何が必要なのか?
そしてそれは、どのようにすれば補助金を有効活用し、導入が実現できるのか?

今、申請できる or 次回公募予定の、「ものづくり補助金」の要件確認や、スケジュールについて知りたい方は、
以下のお問い合わせフォームに「もの補助申請について」と記載のうえ「送信する」を押してください!

た、今回ご紹介しきれなかった加熱殺菌装置や充填機などを導入した蔵元さんの事例はこちら!

みいの寿様
三宅本店様