【保存版】2021年日本酒蔵・焼酎蔵がものづくり補助金活用で導入した設備TOP3!

※2022年3月16日更新

「○○という設備、いいって聞くけど本当かな?」
「ラベラーってどのタイプが人気なんだろう?」

よその蔵はどういう設備を導入したのか、やはり気になるところですよね。
仲の良い地域の蔵元さんであれば、世間話がてらにちょっと聞いてみるといったことができても、離れたエリアでの事例というのは、なかなか耳に入ってこないものです。

しかも、「単なる導入事例」でなく、このコロナ禍において、アフターコロナ後も成長を続けたいと、前向きで積極的な設備投資をしている、勢いのある蔵元さんからのこの設備を入れてよかった、という成功事例が聞きたいというのが、本音ではないでしょうか?

そこで、

よその蔵はどのような需要のもと、その設備に焦点を当てたのか?
実際に補助金活用で酒蔵に導入されている設備は何か?
直近2年においてアンカーマンでサポートした、もの補助申請における採択者は、どの設備で採択されたのか?

などなど、日々全国の蔵元さんとミーティングをしているアンカーマンだからこそ集まる、解像度の高い情報を、一挙公開いたします!

2020年1月~2021年12月の2年間において、アンカーマンにて申請サポートしたものづくり補助金の酒造業での採択件数は34件です。
※実際に採択・導入されたリアルな統計とすべく、酒造業以外・他補助金採択・不採択は除き、ものづくり補助金のみを集計

34件の採択のなかには、定期的に補助金を活用し、賢く設備投資をされているリピーター様のデータも入っています!

2019年以前も含めると、ものづくり補助金だけでも2~3回採択されていたり、2020年に採択、また2022年で申請・採択発表待ちの方や、他補助金も含めると4件以上の複数採択を勝ち取っているリピーターさんなどなど、スペシャリストのデータも網羅されています。

そんな方々が、2020年~2021年において、導入された醸造機械は計88基にも上ります。
※同設備で複数申請の数は含まず。例えば1社でタンクを5基導入でもカウントは1基。

1回の採択において、1社あたり平均2.6基の設備を申請されています。単体でなく、一度に複数の設備を導入しているケースがほとんどです。
それはなぜか。

補助金の玄人は、先々を見据えて設備投資を考え、今回は仕込み工程をテコ入れしよう、次は詰め工程、などと計画を立て、設備投資が現実的になってきた段階で、アンカーマンに声をかけてくださいます。

「○○機入れたいんだけど、なんかいい補助金ある?」

もちろん、資金繰りも踏まえたうえで順番に対応、申請を決めた補助金を有効活用するポイントも、きちんと踏まえて実施されています。

そのポイントとは、補助上限額が満額入金になるように、補助率から計算して申請することです。

例えば、

・補助上限額:1,000万円
・補助率:2/3

の補助金額であれば、出来うる限り、補助対象経費を1,500万円以上で申請するということです。

理由としては、100万円の補助金を10回採択されるのと、1,000万円の補助金を1回採択されるのとでは、手元に入金される補助金額は変わりませんが、100万円を10回採択された場合の手続きの方が、はるかに手間も、時間もかかり、事務負担が膨れ上がってしまうからです。

特に、提出書類が多く、急いだほうが補助金入金の早まる交付申請や実績報告の手続きが複数重なってしまうときは、経理担当者の作業負荷がかなり大きく、通常業務に支障が出てしまう恐れもあります。

時折、補助金ビギナーからは、

「いろいろ巨大でボロボロ。何から手を付けていいのやら...」

といった声が聞こえてきます。
その場合は、この先1~2年で、確実に入れ替えをしなければならない設備を挙げてみてください。

「このチラー、毎年修理呼んでるなぁ...いつ動かなくなるか...」
「サビてきた10,000ℓのホーロータンク。穴があきそう、定期メンテではもう対応しきれない...」
「僕より年上の洗米機。今年の造りもお疲れ様でした」

そういった「限界」の見えてきている設備はありませんか?

来冬の仕込み中に動かなくなったら困る、古いけれども重要な設備
故障が増え、2~3年くらいのうちには入れ替えが必要になりそうな機械装置
数年のうちに入れられたら便利になるだろうと思っているシステム

それらを加え、補助金の上限額を有効利用することをおすすめします。
賢い蔵元さんたちも、そのような考えのもと、複数設備にて申請をし、結果、平均導入数が2.6基となっているわけです。

では、そんな賢い蔵元さんがものづくり補助金を活用、導入件数の多い機械設備TOP3をご紹介します!!

≪第1位≫充填機...合計9基

ダントツの1位は・・・9基導入、充填機でした!
内容としては、

・フレキシブル充填機
・スパウトキャッパー付充填機
・半自動カートン成形充填機
・ウエイト式充填機
・充填機ラインフィラー
・簡易充填機
・全自動充填機
・ラインフィラー

などなど様々、大きさ・用途・金額も多岐にわたり、これが主流、といった人気の型番が導入されているというよりも、個々の蔵の課題感や、今後の事業展開において、設備の選定をされているのでしょう。

背景には、ここ数年の流れである特定名称酒や高級酒の需要の高まり、それに伴い、蔵元サイドでの"酒質向上意識"の向上と、少量多品種化。それらをコロナ禍が加速させたことが挙げられます。

飲食店への休業・時短営業要請に伴い、一升瓶の需要が激減、スーパーやECサイトでの購入が増加したことによって、四合瓶をメインとした小瓶やパック酒の需要が伸び、一升瓶にしか対応していない既存の充填機では、出荷遅れや機会ロスが発生しがちだというご事情をよく伺います。
国内外含め、スピード感を持った詰め工程への対策としての導入が主な目的のようです。

また、新規商品や、新規商流へのテスト販売に伴い、新たな容器で販売を開始するに際し、お試しで簡易的なものを導入し、売上が見込めるようになった際にはもっと本格的なものを導入しようなど、計画的な導入を考えているといった声や、少量多品種への対応に伴い、あえて手詰めに近い簡易的な充填機を導入するケースもあり、目的に沿った充填工程のためには、必ずしも高額な設備導入を実施しているわけではないようです。

かといって、充填ラインの導入需要が減っているとも言い難く、工場新設と同時に充填ラインの新設や、リキュールや甘酒などの別の種類とラインをわけるために別で設置した、といった事例もあります。

いずれにしても、今後、ますます流動的な時代になっていくことが見込まれるため、あらゆる種類の瓶や量の充填に対応できるような、フレキシブルな設備を導入するという意向は、どの蔵元さんにも共通しています。

≪第2位≫加熱殺菌装置&タンク...合計8基

加熱殺菌装置にも、個々の蔵の個性が顕れた結果となりました。

①プレートヒーター(プレートヒータークーラー含む):5基
②瓶燗器:2基
③パストライザー:1基

導入の経緯は、大きく2パターンです。

・瞬間火入&冷却によって、酒質を損なわずに火入れをしたい
・酸素にできるだけ触れさせず、微発泡感を味わえるお酒を造りたい

といった理想の品質を追求する需要と、

・従来の瓶燗火入れは重労働であるため、作業負担を軽減したい

といった作業効率目的で機械化を図る需要です。

検討ポイントは下記3つが関係しています。

・費用対効果
・設置スペース
・貯蔵方法

①プレートヒーター(プレートヒータークーラー含む)
今も、これからも、タンク貯蔵を継続する蔵元さんは、必然的にプレートヒーター系の導入になろうかと思いますが、瓶貯蔵であっても、下記②大型の瓶燗器を導入するスペースが取れない。
体力勝負の瓶燗火入れでなく、火入れ後に瓶詰めし、省力化・迅速化したいので、工程を変更した。
といった背景があるようです。
下記③のパストライザーはもともと瓶燗火入れの蔵元さんより「欲しい!」という熱い想いはよく聞こえてくるものの、高価であるがために導入を見送り、プレート式の導入にまとまった、という悩ましい声も聞こえます。

②瓶燗器
やはり瓶燗火入れがうちの蔵には最適、という蔵元さんは、大型のタイプに入れ替えをされています。
コの字型のもの、水槽のような四角いタイプなど。
既存の瓶燗火入れにくらべ、ケースを人力で持ち上げて移動する作業負荷を軽減できることも、瓶燗器を導入するメリットのひとつでしょう。

③パストライザー
導入を希望されるケースは多いものの、初期投資が高額であることから、「欲しい! けど高い!」の葛藤を乗り越えた蔵元さんが導入への一歩を踏み出しています。

同率2位のタンクですが、3基以上の複数台をまとめて導入する事例も多く、導入台数としては実質1位と言えるでしょう。

サイズや、開放型・密閉型・自動温度調節機能の有無など、詳細スペックは多岐に渡りますが、メンテナンスが大変だと皆さんが口を揃える大容量ホーロータンクからの入れ替えが多く、また、弊社でサポートした直近2年には、10,000ℓを超えた大型タンクの導入事例はなく、小容量化が進んでいることは明らかです。

10,000ℓ未満のなかでは、蔵により300ℓ〜9,000ℓと容量は様々です。
蔵の移転・新設により、全て新しい設備にする場合は、大容量のタイプの導入も必要でしょうし、新規事業として、クラウドファンディングなどによる試験醸造を含めた新商品開発や、オーダーメード系の小容量・個別対応の造りを始める蔵も多く、そういった場合は、300ℓ〜3,000ℓなど、小さめのタンクを導入しているようです。

具体的な容量などは下記。

・ステンレスタンク1,000ℓ/2,000ℓ/3,000ℓ
・ステンレス開放タンク4,800ℓ
・フォーク差込落とし蓋式タンク1,050ℓ
・開放タンク1,500ℓ
・自動温度制御機能付き糖化タンク300ℓ
・自動温度調節機能付タンク開放400ℓ
・自動温度調節機能付タンク密閉9,000ℓ
・自動温度調節機能付タンク密閉4,000ℓ/6,000ℓ

素材としてはすべてSUS製です。
熱に強く、少々手荒く扱っても傷みが少ない頑丈なステンレスは、洗浄まで含めた日々のお手入れの際にもメリットが大きいようです。

過去に、弊社でサポートさせていただいた蔵元さんにおいて、木桶の導入事例もありますが、直近2年はすべてステンレス製。一部、熟成のためにワイン用の樽を導入したケースもありますが、一般的に仕込み・貯蔵用のタンクはステンレスタンクに入れ替えるのが主流といえるでしょう。

≪第3位≫洗瓶機...合計7基

内容としては、

・リンサー ...4基
・角形ボトルリンサー
・洗壜機
・JBL型ジェット洗壜機 ...各1基

であり、7基中4基が、特定のメーカー・同じ型番のリンサーでした。
取り扱い用品店も異なることから、特定のメーカー・用品店が推奨しているといったわけではなく、業界的にこのメーカー/型番のリンサーには根強い信頼があることが伺えます。

充填機は多岐にわたる様々なタイプが導入されていたのに対し、洗瓶機に求めていることはどの蔵元さんも近しいという、対照的な結果となりました。

ですが、洗瓶機の導入背景は、先述した充填機と近似しています。
一升瓶のみの対応である既存洗瓶機を、
四合瓶をはじめ、様々な容量にマルチに対応できるようにしたい。
旧型の設備や既存の手作業では、洗浄不良や水切れの悪さが発生、
リターナブル瓶の洗浄のスピードを上げることにより、出荷スピードを向上させたい。
という需要。

また、タンクや充填機と比較すると、ダイレクトに酒質に絡む要素の少ない洗瓶工程は、後回しにしがちであり、「うーん、まだ手作業でもいいかな...」といった悩ましい声、「古い洗瓶機はもうボロボロで限界。いつ壊れるか...」といった切羽詰まった声も聞こえてきました。そこまで耐え、苦渋の決断であった蔵元さんも少なくないはずです。

また、設備導入に伴い、新瓶仕様に切り替えるか、
お付き合いが深く、コストの安く済む旧瓶の使用を続けるのか、
また、旧瓶を継続するにあたっても、洗瓶機はより洗浄力の高いスペックにする必要性
といった視点も、設備選定の大きな岐路となるようです。

まとめ

①少量・多品種化がコロナ禍でますます顕著になり、酒造現場としては一升瓶→四合瓶、瓶→紙パックなどの、容器への対応が急務であると感じている。
売れ筋の変化に伴い、主力製品をスピーディーに生産・出荷するために、適切な対応ができる設備需要が高まっている。

②酒質の向上は至上命題であり、酒質を損ねない火入れ方法と常に低温を保つための貯蔵への関心が高い。
蔵内部の事情を踏まえ、自社にとって最適な設備は何かを考え、選定している。

いかがでしたでしょうか?

上記の導入経緯を伺った蔵元さんはどなたも、「補助金ありき」の設備導入ではなく、コロナ禍~後の業界変化を含めた、しっかりと蔵の現状・未来を見据え、これから数年先で必要なこと、必要な事業を見つめ、それらに対して必要なものを選定、導入されていました。

蔵の「ありたき姿」を考え、何が必要なのか?
そしてそれは、ものづくり補助金で導入できるのか?
ぜひ、考えてみてください。

次回のものづくり補助金は、5月の10次締切です。
次回公募より、新たな申請枠が設けられたり、従業員数によって補助上限額が変わるなどの制度改定が実施されています。

今回の制度改定は、次回コラムでご紹介します。乞うご期待ください!

た、今回ご紹介しきれなかったラベラーやアルコール分析器などを導入した蔵元さんの事例はこちら!

武蔵野酒造様
石鎚酒造様