日本酒の輸出量や海外での需要とは?国別の輸出量と必要な免許制度を解説

世界で注目されている日本食とのペアリングの影響で、日本酒の海外での評価がうなぎ登りだという評判を最近よく耳にします。

それが証拠に、日本酒の輸出量は近年右肩上がりで、過去最高を更新し続けているようです。

では、主にどのような国に日本酒が多く輸出されているのか、日本酒を輸出するためにはどのようなことをすればいいのかなど、酒類事業に関与する事業者としては知りたくなるところではないでしょうか。

今回は、日本酒の輸出について、日本酒の輸出量や海外での需要、必要な免許や方法、国別輸出量ランキングや活用できる補助金などをご紹介します。

日本酒の輸出量や海外での需要

ここでは、日本酒の輸出量や海外での需要について解説します。

日本酒の輸出の売上総額や輸出市場

近年の日本酒輸出の売上総額の推移は、以下のとおりです。

【近年の日本酒輸出の売上総額の推移】

単位:百万円

2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年
11,50714,01115,58118,67922,23223,41224,14140,17847,489
※参照:国税庁「最近の日本産酒類の輸出動向について

2022年度の日本酒輸出総額は、474.89億円(対前年比+18.2%)、13年連続で前年を上回り、輸出量も35,895㎘と過去最高を更新して、拡大傾向が続いています。

特に直近2年での輸出拡大は目覚ましく、輸出額は2020年の241億円から約2倍に伸長しました。

海外では、アメリカや、中国、台湾、韓国、香港、シンガポールなど、欧米やアジアを中心に日本酒に関するニーズが高く、日本酒の輸出市場は堅調です。

高価格帯でプレミアムな日本酒輸出のトレンド

国税庁「令和5年6月酒のしおり/最近の清酒の輸出動向について」によれば、近年の日本酒輸出単価(1リットルあたりの金額)の推移は、以下のとおりです。

【近年の日本酒輸出単価の推移】

単位:円/ℓ

2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年
7057717897958639391,1091,2531,323
※国税庁「酒のしおり(令和5年6月)

日本酒輸出単価は、ここ数年右肩上がりに上昇し、10年ほど前の約2倍以上となっており、高価格帯でプレミアムな日本酒が輸出のトレンドとなっています。

日本酒輸出市場の今後の見通し

コロナも落ち着き、経済活動が再開され、各地域の日本食レストランも再開し、以前から高まりを見せていた日本酒ニーズの増大といった背景もあります。

酒類事業者の努力もあり、技術的には、日本酒の冷蔵輸送の管理も普及したことで、日本酒の品質が保持された状態で流通が可能になったことや、日本食レストラン以外でも日本酒を高級酒として扱う市場が形成されつつあることなどから、日本酒の輸出市場に関しては今後も堅調が予想されます。

財務省貿易統計の最新の統計データによれば、日本酒の輸出額は、2023年1月ー10月期で33,974百万円であり、前年同期の39,534百万円に比べれば、14.1%減となっています。

しかし、前年同期比減少の要因も、主要国の景気低迷などであり、入国規制緩和によるインバウンドニーズの急回復などにより、免税売上がコロナ前を上回るなど、日本酒市場全体では、輸出市場の動向も含め、堅調の状況は維持したままです。

日本酒を輸出するために必要な免許

日本酒を輸出するためにはどのような免許が必要なのでしょうか。

ここでは、日本酒を輸出するために必要な免許について解説します。

日本酒輸出のためには輸出酒類卸売業免許が必要

日本酒を輸出するためには、酒類を輸出して海外の業者に卸売することができる「輸出酒類卸売業免許」を取得する必要があります。

「輸出酒類卸売業免許」は、「清酒の卸売」など自己が輸出する酒類を限定した免許になりますので、「清酒に加えて他の酒類」など限定されたお酒以外を販売する必要が出てきたときは、その都度、条件緩和の申し出を行い、取扱いの範囲を広げる手続きが必要です。

「輸出酒類卸売業免許」を取得するには、所管の税務署に免許申請をして、必要な要件を具備しているかどうかの審査を受け、合格して所定の登録免許税(新規9万円、条件緩和6万円)を納付するなどの手続きを経る必要があります。

輸出酒類卸売業免許がいらないケース

日本酒を輸出するためには、原則として「輸出酒類卸売業免許」が必要ですが、例外的に以下の場合には「輸出酒類卸売業免許」がなくても日本酒の輸出が可能です。

【輸出酒類卸売業免許が不要の場合】

  • 酒蔵さんなど酒造メーカーが、自社で製造したお酒を輸出するケース
  • 酒販会社など「酒類卸売業免許」を持った酒類卸業者が免許を受けている酒類を輸出するケース

ただし、酒販店が自社で取り扱っている日本酒を輸出するケースや、酒造メーカーが他社から仕入れた(OEM含む)酒類を輸出するケースでは、原則どおり「輸出酒類卸売業免許」が必要となるので注意しましょう。

日本酒を輸出する方法

飛行機と貨物船

ここでは、日本酒を輸出する方法について、各国共通のポイントと国ごとに違いがあるポイントなどをご紹介します。

各国共通のポイント

日本酒の輸出を行う際には、輸出相手国の現地のビジネスパートナーを探す必要があります。

現地のビジネスパートナーと相談し、日本酒の輸出に関する諸条件が決まったら、「フォワーダー」と呼ばれる国際輸送を扱う貨物利用運送事業者(貨物代理店)に委託をすれば、輸出手続きがスムーズに進行するでしょう。

輸出手続きの流れは、品質保持可能な梱包を行い、保税地域に搬入、輸出通関手続き、出港、現地到着、輸入申告、現地にて流通といった流れになります。

日本酒の輸出に関して、酒造メーカーが自社商品を輸出するケースや、酒造メーカーから直接仕入れて輸出するケースなどは、一定条件を満たし、税務署に申告すれば酒税が免税されることを押さえておきましょう。

また、①アルコール度数24%超で250ℓ超、②アルコール度数70%超の酒類の輸出に関しては、引火性液体として国際輸送法上の「危険物扱い」となり、輸送料が割高または手続きが煩雑などのリスクがあることも要注意です。

※各国への日本酒の輸出に関してくわしく知りたい方はこちら→国税庁「日本酒輸出ハンドブック

※日本酒の海外輸出を成功させるポイントをくわしく知りたい方はこちら→「日本酒の海外輸出を成功させるポイントとは?必要な準備や注意点を解説

アメリカ

アメリカへの日本酒輸出で注意することは、以下のような特殊なアルコール流通規定です。

【アメリカの特殊なアルコール流通規定】

  • 「3ティアシステム」~輸入業者・製造者・各州の卸売業者・小売業者は別法人で各州に提携卸売業者を持つこと、流通は製造者→卸売業者→小売業者であること
  • 州を超えての酒類の消費者への直接送付はできない
  • 州ごとの複雑なカテゴリーの酒類販売免許(ライセンス)が必要
  • 州によって、コントロールステート(州が酒類卸売・小売を独占)とオープンステート(免許が自由化)があること

流通規定の他にも、利益の上乗せの計算方法の違いなど、日米での商習慣の違いに注意する必要があります。

また、連邦アルコール管理法により、日本酒の中身はビールと同じ規制を受け、ラベルはワインと同じ規制を受ける2面性があること、食品医薬品化粧品法による安全確保の規制や、農薬・抗生物質・食品添加物に関する規制、バイオテロ法などによる食品関連施設の事前登録や商品ラベルの事前登録などについても要注意です。

さらに、アメリカで日本酒を流通させるための税金として、輸入関税、連邦酒税、州酒税、市・郡酒税、売上税などがあることも把握しておきましょう。

中国

中国への日本酒輸出で注意すべきポイントは、以下のような規制を把握しておくことです。

【中国での日本酒流通に関する規制】

  • 主に「食品安全法」「中華人民共和国貨物輸出入管理条例」「輸入酒類国内市場管理弁法」「輸出入食品安全管理弁法」などによる規制
  • ラベルは中国語で強制国家標準に準拠した内容であることが必要
  • 東日本大震災に関する東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書が必要

また、中国で日本酒を流通させるための税金として、輸入関税、消費税、増値税などがあることも把握しておきましょう。

韓国

韓国への日本酒輸出で注意すべきポイントは、以下のような規制を把握しておくことです。

【韓国での日本酒流通に関する規制】

  • 酒類関連業務の免許が細分化され、各業務の専業が義務付け
  • 韓国内での日本酒の配送に特殊な免許が必要(酒類運搬許可を受けた車両)
  • 酒類の宅配便や郵便での配送が禁止
  • 酒類の決済には酒類専用カードでの決済が義務付け
  • 流通は製造者・輸入業者→卸売業者→小売業者であること
  • ラベルは韓国語で主商標ラベル、補助商標ラベル必要事項を記載
  • 東日本大震災に関する東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書が必要

また、韓国で日本酒を流通させるための税金として、輸入関税、酒税、教育税、付加価値税などがあることも把握しておきましょう。

台湾

台湾への日本酒輸出では、以下のような注意点を把握しておくことが重要です。

【台湾での日本酒流通に関する規制】

  • 主に「タバコ酒類管理法」「輸入酒類検査法」などによる輸入手続きや輸入検査が必要
  • 日本酒の流通規制は他国に比べて厳格ではない
  • ラベルは中国語で必要事項を記載した内容であることが必要

また、台湾で日本酒を流通させるための税金として、輸入関税、タバコ酒類税、貿易促進サービス費、営業税などがあることも把握しておきましょう。

香港

香港への日本酒輸出では、以下のような注意点を把握しておくことが必要です。

【香港での日本酒流通に関する規制】

  • 流通は、輸入業者→小売業者→消費者が一般的(卸売業者介在せず)
  • 日本酒の輸入許可は不要
  • ラベルは英語・中国語で一定内容の記載が必要

また、香港では、日本酒を流通させるための税金として、輸入関税はかかりません。ただし、アルコール度数や酒類の品目によっては、物品税の対象となる場合があることに注意しておきましょう。

日本酒の国別輸出量ランキング

国旗

日本酒は、どこの国への輸出が多いのでしょうか。

ここでは、農林水産省の統計データに基づいた日本酒の国別輸出量や輸出額のランキングをご紹介します。

2022年の日本酒の国別輸出量ランキングは、以下のとおりです。

【2022年日本酒の国別輸出量ランキング(上位5カ国)】

順位国名輸出量(㎘)
1位アメリカ9,084
2位中国7,388
3位韓国4,054
4位台湾3,076
5位香港2,717

日本酒の国別輸出量と輸出額では、1本あたり単価の違いなどから、ランキングは多少異なります。

最近の5年間を見ても、順位の変動こそありますが、上位5つの国名に変化はありません。

※参照:2023年7月31日付け農林水産省公表・輸出入の動向

日本酒の国別輸出額ランキング

2022年の日本酒の国別輸出額ランキングは、以下のとおりです。

【2022年日本酒の国別輸出額ランキング(上位5カ国)】

順位国名輸出額(億円)㎘)前年比(%)構成比(%)
1位中国141.6+37.829.8
2位アメリカ109.3+14.023.0
3位香港71.2-23.515.0
4位韓国25.2+67.95.3
5位シンガポール23.3+29.14.9 

2022年の日本酒の輸出額は全体として474.9億円(前年比+18.2%)と増加しました。

特に、小売店向けやEC販売の増加等により、中国およびアメリカ向けが増加傾向にあります。

※参照:農林水産省 輸出・国際局 輸出企画課2023年6月「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」

日本酒を輸出するために活用できる補助金

日本酒を輸出するために活用できる補助金としては、国税庁の日本産酒類の輸出支援に関わる補助金があります。

2023年に公募された国税庁の日本産酒類の輸出支援に関わる補助金は、「海外展開・酒蔵ツーリズム補助金」や「フロンティア補助金」などです。

2024年以降も、補助金の具体的名称や公募要領等は公表されていませんが、令和6年度概算要求(酒類業振興関係)の概要や令和5年度補正予算(酒類業振興関係)を見る限り、「輸出向け商品の開発、商品のブランド化・高付加価値化のための取組支援」「海外販路拡大のための取組支援」「多数の事業者が共同で輸出するための取組支援」などに関わる補助金の公募が継続されると予想されます。

日本酒を輸出するために活用できる補助金を活用したいとお考えの方は、国税庁の最新の補助金募集情報に常にキャッチアップしておくことが重要です。

※国税庁の最新の補助金募集情報にキャッチアップしたい方はこちら→国税庁「酒類業の振興に関する主な募集情報」

まとめ

ここまで、日本酒の輸出について、日本酒の輸出量や海外での需要、必要な免許や方法、国別輸出量ランキングや活用できる補助金などをご紹介させていただきました。

日本酒の輸出市場が堅調であることに加え、インバウンド客の日本酒ニーズも増大の一途である現状では、酒類事業者も今後グローバルな視点を持ちつつ事業を行っていくことは、安定経営を目指していくためにも必要なことではないでしょうか。

アンカーマンでは、日本酒の海外展開を模索している酒類事業者さまに向けて、酒類の輸出やインバウンドニーズへの対応も含めたマーケティングサポート、海外展開の取組に活用できる補助金に関する補助金サポートなどをご用意してます。

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