フロンティア補助金とは?採択事例も交えて徹底解説
※2023年5月12日更新
フロンティア補助金をご存知ですか?
フロンティア補助金(正式名称「令和5年度予算新市場開拓支援事業費補助金」)は、酒類事業者が直面する国内需要の減少、酒類事業従事者の高齢化といった構造的課題や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への解決に向けて、国内外の新市場を開拓するなどの意欲的な取組を支援する国の制度です。
令和5年度予算で、令和5年1月16日(月)より開始された公募では、400万円または500万円を上限(下限は50万円)に、補助対象経費の2分の1または3分の2が補助されます。
フロンティア補助金は、国税庁が主管する「酒類業の構造的課題への対応」を目的とした酒類業構造転換支援施策です。国内向け施策と輸出促進施策とがあり、酒類事業者にとっては利用しやすい補助金となっています。
本記事では、フロンティア補助金の基本について、採択事例も交えて解説します。
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- 1. 1.フロンティア補助金の目的
- 2. 2.フロンティア補助金の概要
- 3. 3.補助対象事業
- 3.1. (1)商品の差別化による新たなニーズ獲得事業
- 3.2. (2)販売手法の多様化による新たなニーズ獲得事業
- 3.3. (3)ICT技術の活用による製造・流通の高度化・効率化事業
- 3.4. (4)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への対応のための事業
- 4. 4.補助対象経費
- 5. 5.採択事例
- 5.1. 採択事例①「新品種米を用いた定番シリーズの新商品開発」
- 5.2. 採択事例②「搾りたて×伝統製法「生酛造り」によるペアリング商品の開発」
- 5.3. 採択事例③「地元産新品種米による伝統製法生酛の低アルコール日本酒の開発」
- 5.4. 採択事例④「肉料理や洋食とのペアリングに特化した熟成酒の開発」
- 5.5. 採択事例⑤「小ロット商品の需要に応じる商品改良と増産・販売体制の構築推進事業」
- 5.6. 採択事例⑥「洋食とのペアリングのための『白麹×伝統製法で醸す生酒』の開発」
- 5.7. 採択事例⑦「家飲み需要を狙った『フレッシュな生酒の供給体制の構築』」
- 5.8. 採択事例⑧「多彩な試飲×記念ボトルにより顧客体験を提供する販売形態の確立」
- 5.9. 採択事例⑨「日本唯一の伝統技術・焼酎製法を用いたスピリッツ新商品の開発」
- 6. 6.まとめ
1.フロンティア補助金の目的
フロンティア補助金を実施している国税庁によると、フロンティア補助金の目的は、以下のとおりです。
「本事業は、酒類事業者が直面する国内需要の減少、酒類事業従事者の高齢化といった構造的課題や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への解決に向けて、国内外の新市場を開拓するなどの意欲的な取組を支援することにより、酒類業のポストロナに向けた経営改革・構造転換を促すことを目的としています。」
つまり、酒類事業者の新市場開拓、経営改革、構造転換を促すための補助金なのです。
酒類事業者の新市場開拓、経営改革、構造転換を促すための補助金としては、経済産業省・中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構などが主管する事業再構築補助金と類似したような制度となっています。
※参照:国税庁「酒類業の振興に関する主な募集情報」
2.フロンティア補助金の概要
令和5年度予算公募の受付期間は、令和5年1月16日(月)から令和5年4月28日(金)です。今回の公募では、第一次締切:令和5年2月28日(火)、最終締切:令和5年4月28日(金)の2回、締め切りが設定されています。
【令和5年度予算公募内容】
(受付期間) 令和5年1月16日(月) ~ 令和5年4月28日(金)
(締切) 第一次締切:令和5年2月28日(火) 最終締切:令和5年4月28日(金)
(採択者決定) 第一次締切:令和5年4月上旬 最終締切:令和5年6月頃
(事業開始) 第一次締切:令和5年4月下旬頃 最終締切:令和5年7月頃
(事業期限) 第一次締切:令和6年2月29日(木) 最終締切:令和6年2月29日(木)
(公募申請書提出先) 各国税局(沖縄県は沖縄国税事務所)
(補助率) 補助対象経費の2分の1または3分の2 ※従業員規模により補助率が異なる
(補助金額) 400万円以内または500万円以内(下限:50万円)
(補助事業期間) 交付決定日から令和6年2月29日(木)まで(同日までに支払いが完了していること)
(補助対象者)酒税法の規定により酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許を受けている者
または酒類事業者を少なくとも1名以上を含むグループ
3.補助対象事業
フロンティア補助金の補助対象事業には、以下の4つの事業があります。
【補助対象事業】
- 商品の差別化による新たなニーズ獲得事業
- 販売手法の多様化による新たなニーズ獲得事業
- ICT技術の活用による製造・流通の高度化・効率化事業
- 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への対応のための事業
以下、順に解説します。
(1)商品の差別化による新たなニーズ獲得事業
マーケットインの考えを踏まえ、消費者のニーズを掘り起こすとともに、既存商品と差別化された酒類を開発することを目的とした事業
【対象事例】
- 食品とのペアリングに特化した商品や、地方産品の特性を生かした商品
- 地元・活用した休耕田の収穫物を原材料とした商品
- 個人に対するオーダーメイド商品の開発体制の構築
- 新たな原材料等を使用し、これまでにない特性を持たせた高付加価値商品の開発
- 「伝統的酒造り」を差別化のポイントとした高付加価値商品の開発
(2)販売手法の多様化による新たなニーズ獲得事業
販売の場面における新たな訴求力の創出を通じ、消費者の多様なニーズに応えるサービスを提供することを目的とした事業
【対象事例】
- 商品情報の充実による販売促進(QRコード等を活用した取扱商品のブランドストーリーの提供や消費者が求める情報を記載した裏ラベルの活用等)
- テイスティング等の顧客体験を重視した販売形態の確立
- データ分析等を用いた、顧客の嗜好に合致した商品の販売手法の導入
(3)ICT技術の活用による製造・流通の高度化・効率化事業
これまで専門家の経験等に依拠していた作業にICT技術を活用することによって専門家の技能とICT技術との相乗効果を創出する等、製造・流通の高度化・効率化を図る事業
【対象事例】
- 製造:AI技術等を活用した品質管理システムの導入
- 流通:RFIDやAIカメラ等を活用した管理システムの導入
(4)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への対応のための事業
【対象事例】
- 特定の飲食店に取引が限定されている事業者が新たな販路を開拓するための取組
- 家飲み需要の伸長への対応
- 共同配送等による物流効率化等を通じた経費の削減
4.補助対象経費
フロンティア補助金の補助対象経費としては、以下の5つの経費が認められています。
【補助対象経費】
- 事業費
- 謝金
- 旅費
- 広報費
- 委託費
このうち、事業費の内容は、以下のとおりです。
【事業費の内容】
- ①機械装置・システム構築費
- ②施設整備費
- ③借損料
- ④設計・デザイン費
- ⑤原材料等費
- ⑥マーケティング調査費
- ⑦通信運搬費
- ⑧会議費
- ⑨産業財産権等取得等費
- ⑩雑役務費
なお、謝金、旅費、広報費、委託費には、それぞれ以下のとおり補助金額の上限と補助対象経費の上限が定められています。ただし、これらの事業費にはこれらの上限が定められていません。
【補助金額上限】
補助対象経費 | 補助金額上限 | 補助対象経費の上限 | 補助対象経費の上限 |
補助対象経費 | 補助金額上限 | 小規模事業者 | その他の事業者 |
謝金 | 100万円 | 150万円 | 200万円 |
旅費 | 50万円 | 75万円 | 100万円 |
広報費 | 100万円 | 150万円 | 200万円 |
委託費 | 250万円 | 375万円 | 500万円 |
他の補助金との違いとしては、「 施設整備費(事業遂行に必要な新たな施設や設備等の購入、建設、改良又は据付に支払われる経費)」に関して、建屋の新築・改修や麹室の新築・移設などといった建物費や工事費も対象となる点です。
この点、酒類事業者として、大いに活用できる補助金となっています。
5.採択事例
ここでは、フロンティア補助金の採択事例をご紹介します。
採択事例①「新品種米を用いた定番シリーズの新商品開発」
(交付申請額)500万円
(事業概要)
市場の需要変化を取り込むべく、2020年に別拠点に直売所を開店。清酒市場のプレミアム化とコロナ禍の影響による巣ごもり需要の拡大を機に、地酒ブランドシリーズの新商品開発を行う。
(新規性・革新性)
原料米には酒造好適米の品質に匹敵する新品種米を用いた新商品を開発。同品種は2022年までに酒造好適米として品種登録予定。さらに搾りたてのフレッシュさを残しつつ、常温流通が可能な商品の製造高度化によって他社との差別化を図り経営革新を実施する。
(主な経費)
機械装置・システム構築費:プレートヒーター急冷却装置(696万5千円)
SFC-8型王冠供給機(308万円)
設計・デザイン費:新商品ラベルデザイン費(77万円)
原材料等費:原料米(45万3千円)
採択事例②「搾りたて×伝統製法「生酛造り」によるペアリング商品の開発」
(交付申請額)500万円
(事業概要)
清酒市場のプレミアム化とコロナ禍の影響によって生じた巣ごもり需要を機に、しぼりたて×伝統製法「生酛造り」による、肉料理やバターを使った洋食とよく合う、高い競争力を持った日本酒を開発する。女性や若年層といった新たな需要を取り込み、他の酒類事業者のモデルとなる。
(新規性・革新性)
フレッシュローテーションの実現により、発酵中に生じた炭酸ガスを含んだ新感覚の日本酒を供給。従来からの強みである低アルコール原酒造りといった高度醸造技術の融合と、食中酒として最適な原料米「春陽」「亀の尾」の使用によって差別化と売り上げ拡大を図る。
(主な経費)
機械装置・システム構築費:自動温度制御タンク密閉3000型(1180万円)
採択事例③「地元産新品種米による伝統製法生酛の低アルコール日本酒の開発」
(交付申請額)230万4千円
(事業概要)
昨今の日本酒市場の需要変化、特に家飲み需要・巣ごもり需要の拡大を機に、それらの需要に応じる商品として地元産新品種米2種類を原材料に、長年培った高い醸造技術を活かし、日本酒業界では希少性の高い「地元流生酛造り×低アルコール」と「地元流生酛造り×ハーブ」日本酒2点の新商品を開発する。
(新規性・革新性)
設備投資により日本酒業界では希少性の高い「地元流生酛造り×低アルコール」と「地元流生酛造り×ハーブ」日本酒2点の新商品を開発する。また、原料となる酒米に地元産新品種米を用いる。また、製造設備の新規導入による品質向上と、製造量の小ロット化による3期醸造への転換とフレッシュローテーション体制を実現する。
(主な経費)
機械装置・システム構築費:電気式釜(138万8千円)
醸造用及び酒母用ステンレスタンク(322万円)
採択事例④「肉料理や洋食とのペアリングに特化した熟成酒の開発」
(交付申請金額)500万円
(事業概要)
清酒市場ではプレミアム化が進んでいること、またコロナ禍で巣ごもり需要が拡大したことを機に、肉料理や洋食とのペアリングに特化した熟成酒の新商品開発。肉料理や洋食にマッチする新しい商品を生み出すことで、市場に合わせたプレミアム志向の商品を提供し、低アルコール酒を求める顧客ニーズも満たす。
(新規性・革新性)
設備投資により特許システムを搭載した低温熟成冷蔵庫を導入し、0℃~5℃の低温かつ温度ブレの少ない熟成環境を整備。当社の強みである酸味を活かした醸造技術を活用し、熟成による深いコクや旨味を創出する。これにより、女性や若年層といった新たな需要を開拓できる。
(主な経費)
低温熟成冷蔵庫(1,000万円)
採択事例⑤「小ロット商品の需要に応じる商品改良と増産・販売体制の構築推進事業」
(交付申請金額)350万円
(事業概要)
近年のプレミアム商品の人気や家飲み需要の拡大を受け、既存商品のリサイズ及びリデザイン、QCR (品質管理の信頼度)向上、販路拡大に対する安定供給・増産化を果たす補助事業を実施する。これまでは一升瓶形状の商品が多かったが、新たにリンサーを導入することで約5倍の量の小型ボトル洗浄ができるようになり、安定的な量産が可能となる。
(新規性・革新性)
市場分析及び弊社実施のアンケート調査によると、清酒に対して試しやすい小サイズへのニーズが高まっている。小型ボトルで提供する商品の開発は、こうした需要を満たす。また、商品開発の幅を広げることで当社ブランドの認知度向上や、雇用拡大による地域社会への貢献につながる。
(主な経費)
リンサー700万円
採択事例⑥「洋食とのペアリングのための『白麹×伝統製法で醸す生酒』の開発」
(交付申請額)500万円
(事業概要)
清酒市場のプレミアム化とコロナ禍で生じた巣ごもり需要を背景に肉料理や洋食とのペアリングに特化したフレッシュ生酒の新商品開発を行う。
(新規性・革新性)
洗瓶工程の高度化により、品質劣化の原因である火落ち菌を除去、お酒をその場で絞る「直汲み」を実現。生酒の安定増産・供給体制を強化。爽やかな酸味を生む「白麹」と伝統の「生酛造り」により、酸味と旨みを併せ持つ生酒を開発。
デザイン豊かな瓶とラベルで、視認性を高め、洋食に合う酒質とのコラボで商品競争力を高め、女性・若年層など新たな需要を掘り起こし、販路拡大を図り、他の酒類事業者のモデルケースとなる。
(主な経費)
高性能ボトルリンサー(1,770万円)
採択事例⑦「家飲み需要を狙った『フレッシュな生酒の供給体制の構築』」
(交付申請額)400万円
(事業概要)
家飲み需要拡大により、720㎖以下小容器・多品種出荷の需要が増えたことに対応するため、搾りたてフレッシュな生酒を供給できる体制を構築する。
(新規性・革新性)
機械の導入により、瓶詰め(打栓)と箱詰めの両工程を自動化し、作業効率化で余剰が出る人員と時間を有効に使うことにより、箱詰め後の日本酒を速やかに冷蔵庫に保管するフレッシュローテーション体制を構築。生酒の品質を強化するとともに、高付加価値商品の多品種少量出荷を実現。
フレッシュな商品を武器に、既存EC事業の強化と併せて、オンライン・オフラインの販路展開を行うことにより、他の酒類事業者のモデル事業となる。
(主な経費)
キャッパー、全自動高速製函機(1,047万5千円)
採択事例⑧「多彩な試飲×記念ボトルにより顧客体験を提供する販売形態の確立」
(交付申請額)341万600円
(事業概要)
セルフ式の多彩な試飲体験と、記念写真やイラストをプリントしたオリジナルボトルの提供サービスを導入し、顧客体験を重視した新たな販売形態を確立する。
さらに、WEBサイトに新たにランディングページを構築し、新サービスをPRして、オンラインでの観光誘致とオリジナルボトルの販売促進を図る。
(新規性・革新性)
①「非接触(ウィズコロナ/ポストコロナに対応)」×「高品質な生酒」の試飲提供による高付加価値な顧客体験(酒蔵見学サービス)を通じた販売
②ラベルまで顧客の要望を反映するサービス提供(家族写真や似顔絵などをプリントした唯一無二なオリジナルボトルとして販売)
③業務のDX化により生産性向上・人的ミス・機会損失を改善
④SNSとランディングページを連携させるなどデジタル技術を駆使したサービスPR
(主な経費)
ボトルプリンター、コイン式ワイン・SAKEサーバー、WEBサイトのランディングページ構築(6,821,200円)
採択事例⑨「日本唯一の伝統技術・焼酎製法を用いたスピリッツ新商品の開発」
(交付申請額)308万6,666円
(事業概要)
焼酎製法に基づく高アルコール度数のスピリッツ新商品開発(シリーズ化)・販売
(新規性・革新性)
「伝統的酒造り」を差別化のポイントとした高付加価値商品の開発~日本で唯一の常圧2回蒸留製法とスピリッツ商品の開発・販売の新規事業を行う
(主な経費)
冷水式ブラインクーラー設備、温水高圧洗浄機、貯蔵庫出入り口のコンクリート補修(4,630,000円)
6.まとめ
以上、フロンティア補助金について、実際の採択事例を交えてお伝えしました。
上記の採択事例も弊社が実際に「受かる事業計画書」の作成をサポートさせていただいています。
フロンティア補助金の申請においては、先述した4つの補助対象事業に沿う、実現可能性の高い事業計画づくりと、補助対象経費の妥当性と整合性が採択のカギになります。
「麹室をまるごと移設したい」
「冷蔵庫を入れたい」
「生酛造りをはじめたい」
「こんなことをしたい」
「こんなこと、できるのかな?」
という、漠然とした状態でも大丈夫です。
現在のところ、令和5年度予算フロンティア補助金の新規公募受付は締切となっていますが、例年、補正予算等で年度内に複数回、新規公募がなされてきました。
新規公募が開始されたら、すぐに申請準備ができるように、常に補助金の最新情報にキャッチアップしておきましょう。
アンカーマンでは、新規公募が開始されましたら、すぐに皆さまにお伝えできるような準備をしています。
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