在庫管理ってこんなに重要だったんだ!!目からウロコの「在庫管理」改善術とは

「在庫管理って必要だとは思うけど…」

「余剰在庫はあるけど、欠品するよりはいいかなと思って…」

在庫管理の課題、ついつい後回しにしていませんか?

お酒は、商品の追跡調査を目的とした「製造年月」が記載されるだけで、食品と違って消費期限や品質保持期限の表示はされません。

そのせいか、保管スペースがあれば、余剰在庫もついつい見過ごされがち…。

こんな酒蔵さん、結構多いんです。

その理由は、在庫管理がコスト削減だけの話だと思われているから…

「在庫管理で利益アップが期待できる!」と聞いたらどうでしょうか?

「え?!在庫管理を工夫するだけで、利益アップできるの?」となるはず!

今回は、あなたの蔵の経営改善に直結する『目からウロコの「在庫管理」改善術』をご紹介しましょう。

在庫管理ってなに?

【在庫管理とは】在庫の数・状態を把握・管理すること
【在庫管理の目的とは】①必要なときに必要な分だ顧客に商品を提供できるようにすること
②在庫のムダをなくすことにより利益を最大化すること

在庫管理とは

在庫とは、事業者が販売する目的で一時的に倉庫に保管している商品(棚卸資産)のこと。

在庫管理とは、必要な商品(お酒)を必要な時に必要な分だけ提供できるように、在庫(商品としてのお酒)の数や状態を把握して管理することです。

酒蔵ごとにお酒の数や状態を適正な水準に保って管理しておくことが望ましいとされています。

在庫管理の目的とは

在庫管理の目的は、2つ。

1つは、必要なときに必要な分だけお客様に商品を提供できるようにすること。

常に欠品がない状態にしておくことです。

もう1つは、できる限り余剰在庫(在庫のムダ)をなくして、利益を最大化することです。

この2つの目的は、一見相反しているように見えますが、酒蔵ごとに異なる「在庫の適正化」を図り、蔵の経営の健全化を目指すことにつながります。

在庫管理を工夫するとこんなメリットが!

【在庫管理の主なメリット】・管理コスト削減(人件費・残業代・光熱費・減価償却費など)
・生産性アップ
・キャッシュフロー改善
【在庫管理のその他のメリット】・余剰在庫の削減
・適正在庫の確保
・スペースの確保
・欠品・廃棄ロスの削減
・品質の安定
・スムーズな需要予測による仕入ミスの防止
・従業員のモチベーションアップ

メリット1:管理コスト削減

在庫は、保管しておくだけで直接経費・間接経費などさまざまなコストがかかっています。

この在庫管理コストには、過剰在庫によるコストと過少在庫によるコストの2種類があります。

過剰在庫のコストは、原材料費、倉庫の維持費用、品質保持の維持費用、廃棄するときの費用、人件費、光熱費、減価償却費など、過少在庫のコストは、欠品や納期遅れなどによるトラブル処理費用などです。

在庫の適正化が図れていない蔵では、コストが膨れ上がってしまう不都合が…

在庫管理を工夫することで、管理コストの削減が図れます。

メリット2:生産性アップ

在庫管理を工夫することで、在庫管理業務の効率化を図ることができ、生産性をアップさせることが期待できます。

生産性の向上により、人件費も削減され、利益率もアップし、業務効率化で余裕が出た労働力を他のコア業務に集中することも可能です。

メリット3:キャッシュフロー改善

在庫管理を工夫することで、管理コストの削減や、在庫の適正化による在庫回転率の向上などにより、利益率がアップします。

利益が増えることによって、蔵のキャッシュフローの改善が期待できます。

メリット4:その他のメリット

在庫管理の工夫により、余剰在庫が削減され、在庫の適正化が進み、適正在庫を確保できることで、欠品や廃棄などもなくなります。

その他にも、余剰在庫の削減によるムダな保管スペースの削減、スムーズな需要予測による仕入ミスの防止、出荷する商品の品質の安定による顧客満足度のアップ、蔵の評判が上がることによる従業員のモチベーションアップといったメリットも期待していいでしょう。

酒蔵で見受けられる在庫管理の課題

【在庫管理のよくある課題】
在庫の過不足の発生
在庫管理の煩雑さ
在庫とデータが合わない
在庫管理できる人が限られている

在庫の過不足の発生

在庫管理においては、「在庫の適正化」を図ることが重要ですが、在庫の適正化が図られていないと過剰在庫や過少在庫といった在庫の過不足が発生してしまいます。

どちらの場合でも、ムダなコストの発生や欠品による注文への対応不能などのデメリットが懸念されるでしょう。

在庫の現状把握や適正値などが把握できていないことが原因と考えられます。

在庫管理の煩雑さ

酒蔵独特の在庫管理の課題として、在庫管理が煩雑で作業負荷が高いことが挙げられます。

出荷前の酒瓶は重く、在庫管理の本数把握のために整列させること自体、重労働です。

さらに、酒税法の手続きで課せられた日本酒の製成数量と移出数量の把握のため、倉庫内の日本酒在庫数と出荷数の把握を頻繁に行わなければならないことも作業負荷を大きくしています。

在庫とデータが合わない

在庫管理が適切な方法ができていないことによる課題の1つに、在庫(倉庫にある実在庫)とデータ(帳簿上の理論在庫)の数値が合わないといったことがあります。

原因としては、在庫数量の数え間違いや入力ミスなどさまざまな人的ミスが考えられるでしょう。

在庫とデータが合わないと、在庫の現状把握ができず、在庫の適正化が図れません

在庫管理できる人が限られている

在庫管理業務がマニュアル化されていなかったり、人手不足で一部の担当者しか在庫を取り扱うことができない作業ルーティンだったりすると、在庫管理が属人化してしまい、担当者がいないと他の人は在庫管理についてわからないといった不都合が生じてしまいます。

何かあったときには対応できなくなってしまうので、在庫管理業務がブラックボックス化しないためにも対策が必要となるでしょう。

在庫管理の手法とは

【在庫管理の準備】「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」と「整頓の3定(定位・定品・定量)」
【在庫管理の手法】・ロケーション管理
・ABC分析
・入出庫管理
・在庫管理システム

在庫管理の準備:5Sと3定

在庫の現在の状態を把握して、在庫の適正化を図るための在庫管理の事前準備として、必要になってくるのが5Sです。

5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(躾)」のこと。

在庫管理で最大限の成果を上げるためには、在庫の現在の状態を正確に把握することが必要です。

そのためには、在庫が整理整頓され、きれいな状態で保管されていることが前提となります。

また、誰でもどこに何があるのかがわかりやすく、すぐに取り出せるように整頓するために、3定と呼ばれる「定位(決まった置き場所)・定品(決まった商品)・定量(決まった数量)」のルールが必要です。

在庫管理手法①ロケーション管理

ロケーション管理とは、倉庫内のロケーション(位置・場所)と商品を関連付けて行う在庫管理手法です。

棚の1段ごとや線で区切った平置きの区画ごとなどでロケーションを割り振り、商品の所在を管理します。

在庫管理手法②ABC分析

ABC分析(重点分析)とは、商品ごとに在庫管理の優先順位をつけて、ABCのランクに分けて在庫管理する手法です。

重要な在庫を重点的に管理することを目的としています。

在庫管理手法③入出庫管理

入出庫管理とは、商品の倉庫への入出庫を管理することです。

「いつ・どの商品が・いくつ」出入りしたのかを記録して倉庫内の在庫を把握することが目的です。

データの管理手法としては、目視・手書き・入力・ハンディターミナルによるバーコード/QRコード読み取り・RFID・在庫管理システムなどさまざまな方法があります。

在庫管理手法④在庫管理システム

在庫管理システムとは、在庫の商品情報や入出荷データを管理するシステムです。

エクセル、ハンディターミナルによるバーコード/QRコード読み取り、RFID、クラウド型、AI・IoT機器などさまざまな在庫管理システムがあります。

酒蔵向け在庫管理改善術

【酒蔵向け在庫管理改善術】

  • 在庫数の状況を確認しよう
  • 適正在庫数を定めよう
  • 在庫数を適正に近づけよう
  • 在庫管理システムを活用しよう

在庫数の状況を確認しよう

「在庫の適正化」を図っていく上では、まず大前提として、倉庫に保管している現状の在庫数を把握する必要があります。

5Sや3定を駆使して在庫管理の準備をして、酒蔵の在庫管理においては、ロケーション管理が有効となるでしょう。

在庫数をリアルタイムで把握するために、入出庫管理においては、在庫管理システムなどの導入も検討しましょう。

適正在庫数を定めよう

在庫数の状況を確認できたら、適正在庫数を定めましょう。

適正在庫数は、勘や経験に頼るだけでなく、過去の販売実績、入出庫管理データ、月次年次の需要動向などを総合的に勘案して算出します。

適正在庫数をどのように考えるかは蔵によって変わってくると思いますが、いくつか具体的事例をご紹介しましょう。

1つめは、「安全在庫」と「サイクル在庫」を組み合わせて算出する方法です。

【適正在庫数の算出方法①】
・「安全在庫」+「サイクル在庫」

「安全在庫※」とは、需要やリードタイムに変動があっても欠品にならない最低限の在庫量であり、「サイクル在庫」とは、最初の発注から次の発注までの期間に消費する半分の在庫量のことです。

これら2つの在庫量を、市場の状態や経験則で予測することが必要となってきます。

※安全在庫の計算方法
安全係数(1.65)×使用量の標準偏差(過去の出荷量の平均)×√(発注リードタイム+発注間隔)

他にも需要数で適正在庫を算出する方法もあります。

【適正在庫数の算出方法②】
・一定期間の需要数+安全在庫数

たとえば、1週間の需要数が30、安全在庫が10の場合、適正在庫は40となります。

過去の販売実績などから需要数を算出することが必要です。

他方、以下の「在庫回転率」と「在庫回転期間」などの指標を使用する方法もあります。

【適正在庫数の算出方法③】
・在庫回転率=年間売上高÷平均在庫高→1年間に何回在庫が入れ替わったか
・在庫回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高→倉庫内の資産がすべて入れ替わるまでに必要な年数

たとえば、ある酒蔵で、平均在庫高が2,000万円で、年間売上高が6,000万円の場合、在庫は年間で3回入れ替わったことになります。この酒蔵の棚卸資産が6,000万円だった場合には、在庫が入れ替わるまでに1年を要したことになります。

在庫回転率の数値が大きく、在庫回転期間の数値が小さいほど適正な在庫量と考えられます。

さらに、適正在庫金額を算出するための指標として、「交差比率」というものもご紹介しましょう。

交差比率=在庫回転率×粗利益率→商品が効率的に販売できているか

先ほどの酒蔵で、在庫回転率が3、粗利益率30%とすると、交差比率は90です。交差比率が高いほうが効率がよい商品と考えられます。

以上から、交差比率÷粗利益率で目標の在庫回転率を算出して、目標売上÷在庫回転率から適正在庫金額を算出することが可能です。

【適正在庫金額の算出方法】
・交差比率÷粗利益率で目標の在庫回転率を算出した後、
・目標売上÷在庫回転率から適正在庫金額を算出する

なお、適正在庫数や適正在庫金額については、在庫管理システムなどを利用すれば簡単に算出することができます。

在庫数を適正に近づけよう

適正在庫数を定めたら、現状の在庫数を適正に近づけるようにしていきましょう。

在庫数を適正に近づけるためには、現在の在庫数から適正在庫数にするための適切な計画を立て、計画の実行、チェック、見直しのPDCAサイクルを繰り返すことが大切です。

在庫管理システムを活用しよう

酒蔵の在庫管理の課題を解決するために、在庫管理システムの活用を検討しましょう。

在庫管理システムを活用することのメリットは、在庫管理業務の効率化、ヒューマンエラーの削減、属人化からの脱却、在庫状況のリアルタイムでの可視化、在庫の適正化などです。

これからの酒蔵の在庫管理は、IoT(クラウドなどインターネット化)機器を積極的に導入して、DX(デジタルによる業務効率化)を実現して、業務効率化を図っていくことが課題解決のコツでしょう。

さらに、在庫管理において、デジタルとアナログをうまく組み合わせた在庫管理手法を実践していくこともポイントとなってきます。

まとめ

ここまで、在庫管理の基本から在庫管理の改善術まで、在庫管理のアレコレをご紹介させていただきました。

「へぇ~、在庫管理って正直モチベーションが上がらなかったけど、重要なんだ!」

「在庫管理を工夫して利益がアップするなら、うちの蔵でもすぐに手がけたい!」

今回の記事で少しでもあなたの蔵の経営改善のヒントになればうれしい限りです。

酒蔵の経営支援に特化したアンカーマンなら、酒蔵の在庫管理の課題解決に的確な解決策をご提案できます。

在庫管理の改善にご興味、ご不明点などあれば、アンカーマンまでお気軽にご連絡ください。

アンカーマンでは、酒蔵さんの経営改善に役立つセミナーをご用意しております。「経営セミナー」にご興味ある方は、日程は個別&柔軟に調整いたしますので、「経営セミナー参加希望」とご記載いただき、「送信する」を押してください!!

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