酒蔵ツーリズム成功への道標~海外のお酒ツーリズムからの学びとは

ビジネスで成功するために、海外で先行している分野の成功事例からヒントを得て、日本仕様にローカライズすることは有益だとされています。

日本における酒蔵ツーリズムも、注目されてからまだ10数年程度と歴史が浅いので、海外のお酒に関するツーリズムから学べることも多いはず。

今回は、海外のお酒に関するツーリズムをご紹介するとともに、日本における酒蔵ツーリズムに活かせることがないかを探っていきましょう。

海外のお酒ツーリズムとは

海外で体験できるお酒に関するツーリズム(以下、「海外のお酒ツーリズム」)は、日本の酒蔵ツーリズムよりも歴史が古く学べることがたくさんあります。

海外のお酒ツーリズムで特に有名なのは、「ワインツーリズム」「ビールツーリズム」「ウイスキーツーリズム」などです。

各ツーリズムは、それぞれのお酒の特産の国や地域で体験することができます。

以下、各ツーリズムを簡単にご紹介しましょう。

ワインツーリズム

「ワインツーリズム」は、ぶどう畑やワイナリーを訪れて、その土地の自然や文化、歴史、暮らしに触れ、生産者と交流し、ワインや料理を楽しむ旅行スタイル。

ヨーロッパをはじめとした世界各国で盛んに行われており、おいしいワインと美しい風景を堪能できるので旅行客に人気です。

ちなみに、「ワインツーリズム」と「ワイナリーツーリズム」と世界各地で似た呼び名がありますが、微妙なニュアンスの違いがあり、「ワインツーリズム」は広範であり、「ワイナリーツーリズム」はワインの製造に焦点を当てています。

ビールツーリズム

「ビールツーリズム」は、ビール醸造所やパブを訪れ、ビールの製造過程を学び、試飲を楽しむ体験です。

特にベルギーやドイツなどのビール大国で人気があります。

ウイスキーツーリズム

「ウイスキーツーリズム」は、ウイスキー蒸留所を訪れ、ウイスキーの製造工程を学び、試飲を楽しむ体験です。

スコットランドやアイルランドなどが有名です。

ワインツーリズムとワイナリーツーリズムは、どちらもワインに関連する観光体験を指しますが、微妙な違いがあります。

ワインツーリズムはなぜ人気?

海外のお酒ツーリズムは、日本の酒蔵ツーリズムに比べて歴史も古く、特にワインツーリズムは人気があり、日本の酒蔵ツーリズムの参考になると言われています。

ではなぜワインツーリズムが人々の注目を集めるのでしょうか。ここでは、世界のワインツーリズム事例やワインツーリズムの人気の秘訣を探っていきましょう。

世界のワインツーリズム事例

世界の主なワインツーリズム事例は、以下のとおりです。

【世界のワインツーリズム事例】

国/地域特徴
カナダ/
ナイアガラ地区
  • ナイアガラ地区は、マイナス8℃以下の真冬に収穫される冷凍ぶどうを原料としたワインの生産地として有名
  • 冷凍ぶどうのワインをメインに掲げ、毎年1月に「アイスワインフェスティバル」を開催
  • 数ヶ所のワイナリーでワインのテイスティングができ、ワインに合う食事も楽しる
アメリカ/
カリフォルニア州
  • サンフランシスコから車で1時間ほどの場所にあるナパ・バレーは、アメリカで最も有名なワインの生産地で大小およそ600軒以上のワイナリーが集まる
  • カリフォルニア州のナパ・バレーでは、1976年にフランスで開催された試飲会でナパ・バレーのワインが1位に選ばれ、その名が広がる
  • ナパ・バレー・ワイントレインなどの観光列車が開業し、ワイン愛好家が訪れる観光地となる
  • カリフォルニアワインの最高峰「オーパスワン」や、高級ワイン生産の「ケンゾーエステイト」など有名なワイナリーが所在
  • ナパ・バレーでは、赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、白ワインはシャルドネが有名
  • 一年中温暖で過ごしやすい気候でいつでも楽しめるが、ブドウが実る8月下旬~10月上旬、若葉が美しい4~5月頃がベストシーズン
フランス/
ボルドー地区
ロワール地区
  • フランスのワインツーリズムは多様で、ボルドー地区では小型飛行機でぶどう畑やワイナリーを上空から観光するツアーが人気
  • ロワール地区のワイナリーでは、ワインカーブを活用してアーティストの作品を紹介するイベントも実施

ワインツーリズムの人気の秘訣とは

「ワインツーリズム」は、ワイン産地として有名なフランスやアメリカ、オーストラリアなどで1980年代頃から親しまれていて、ワイン愛好家でなくても気軽に楽しめることから人気があると言われています。

人気の秘訣は、ワイナリーを訪れて、ワインの製造プロセスを学び、試飲を楽しむ体験だけといった画一的なスタイルだけではなく、さまざまなスタイルのワインツーリズムが定着しており、ワイナリー周辺のレストランやホテル、旅行会社、行政機関などが協力し、ワインツーリズム事業に力を入れているからでしょう。

ナパ・バレーのワインツーリズムの戦略とは

ワインツーリズムでもっとも成功しているビジネスモデルはナパ・バレーと言われています。

ここでは、ナパ・バレーの仕掛けや、ナパ・バレーの成功の秘訣とはなど、ナパ・バレーのワインツーリズムの戦略について深掘りしていきましょう。

ナパ・バレーの仕掛け

ナパ・バレーのワインツーリズムには、次のような仕掛けがあります。

【ナパ・バレーのワインツーリズムの仕掛け】

  • 試飲は有料(約20ドル)、ワインを購入すると返金
  • ワイナリーでのワインの販売価格は一番高い小売価格と同等
  • 事前予約制
  • 交通規制あり

ワイナリーで買うワインを最高値にしているメカニズムは、流通を意識して、小売業者との競合を避けるため、「事前予約制」としているのも、購入意思のある顧客を選定するため、「交通規制」も近隣住民と共存するためなどの理由からです。

歴史を重ねる中で、考え抜かれたナパ・バレーのさまざまな仕掛けは、日本の酒蔵ツーリズムに参考となる部分が多々あります。

特に、現地でフレッシュなワインを味わえること、サンフランシスコから1時間ほどで行ける好立地に加え、新しくきれいで質の高いホテルやレストランがあること、気球で空から見学できるツアーオプションが多数あることなど、集客力を意識した仕掛けが豊富です。

ナパ・バレーの成功の秘訣とは

ナパ・バレーのワインツーリズムの成功の秘訣は、現地のビジネスマンの先見の明にプラスして、伝統を引き継ぎ今なお発展させている賢い「仕掛人達」の存在、さらに、ワイナリーの成功を、ホテル、イベント、レストランといったツーリズム全体の盛況に結びつけている点です。

ナパ・バレーが、西海岸ではディズニーランドに次いで世界中から多くの観光客を集められる理由は、ワイン・トレインに代表される美食とワインツーリズムを組み合わせた独特のエンターテインメントを提供しているから。

ナパ・バレーのワインツーリズムの背景には、明確なマーケティング戦略があるのです。

小規模でも良い農作物を育てる地元農家と美しいブドウ畑の景観の保護からスタートし、特産品のブドウから作られるワインの世界展開、農産物を目玉にしたツーリズムの確立へと段階を経て進めていきました。

ターゲットを世界中の富裕層顧客に絞り込み、富裕層が好む観光資源を存分にPR。

ゆったりと過ごせる平日昼のプラン、「ワイン+美食」に「ヘルシーな食生活・ライフスタイルを提唱したスポーツ・アクティビティ」や、「アート・カルチャー」などをミックスしたワインツーリズムを超える新たな「美食ツーリズム(ガストロノミーツーリズム)」などです。

ツーリズムの運転資金に関しても、観光組合を設立し、地元観光業者から利益の一部を徴収するなど、マネジメント部分もしっかりと行っています。

まとめ

ここまで、海外のお酒に関するツーリズムからの学びを考察するべく、先行する海外のお酒ツーリズムの成功事例をご紹介させていただきました。

海外のお酒ツーリズムに共通している点は、長い歴史の中でトライ&エラーを重ね、地域ごとのリソースを活かしながら、製造場だけでなく、地域全体の活性化を目指して発展してきたといったことでしょう。

集客に関しては顧客目線を優先して、それでもしっかりと利益を確保するといった点など、日本における酒蔵ツーリズムが参考とすべき点が多々あります。

アンカーマンでは、海外のお酒ツーリズムの事例紹介をはじめとした「酒蔵ーリズムに関する成功への道標」を今後も多数ご紹介させていただく予定です。

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