日本酒を輸出するために必要な輸出酒類卸売業免許とは?手続きや輸出までの流れを解説

皆さん知ってのとおり、海外では日本酒ブームが続いています。

2022年度の日本酒輸出の売上総額を見ても、13年連続で記録更新。

海外から「sake(サケ)」としてのニーズが高まる日本酒を輸出するために必要な免許や手続きがどのようになっているのか、酒類の輸出を検討している事業者さんにとっては、気になるところではないでしょうか。

今回は、日本酒の輸出を検討している方に向けて、日本酒輸出に欠かせない手続きや流れ、日本酒輸出に必要な「輸出酒類卸売業免許」のアレコレ、日本酒輸出時のポイントや注意点、輸出先国ごとに気をつけるべきポイントなどについて解説します。

日本酒を輸出するための手続きや流れ

はじめに、日本酒を輸出するための手続きや流れを確認しましょう。日本酒を含めた酒類を海外へ輸出する場合、ほぼ同様の手続きの流れとなります。

ただし、一部、プロセスの省略や順序が変わることもあるので注意です。

ここでは、おおまかな日本酒を輸出するための手続きや流れをご紹介します。

日本酒を輸出するための手続きの流れは以下のとおりです。

【日本酒を輸出するための手続きの流れ】

  1. 酒類輸出に必要な準備
  2. 輸送依頼・通関書類作成
  3. 貨物の梱包・搬入・通関手続き・出港
  4. 現地到着・輸入申告・現地での流通

以下、順に解説します。

酒類輸出に必要な準備

日本酒などの酒類輸出に必要な準備として、まずは酒類輸出に必要な資格である「輸出酒類卸売業免許」を取得しておく必要があります。

ただし、酒類製造者が自身で製造したお酒を輸出する場合には、「輸出酒類卸売業免許」は不要です。

また、酒類の輸出を行う場合、海外のバイヤー(輸入者)と直接取引する「直接輸出」の形態にするか、貿易商社などを介して取引する「間接輸出」の形態にするかを決定します。

酒類の輸出手続きは専門的かつ煩雑なので、慣れないうちは間接輸出がおすすめです。

輸送依頼・通関書類作成

日本酒を輸出するための手続きのはじめは、フォワーダー(貨物代理店)に輸送依頼するところからはじまります。

フォワーダー(貨物代理店)は、国際物流における各種手続きや輸送手配など一括で請け負ってもらえる専門業者です。

海外に向けて貨物を輸出する際に必要な「税関に対しての通関手続き」の準備として、輸出申告書やINVOICE(仕入書)、Packing List(梱包明細書)、Shipping Instruction(船積依頼書)などの書類を作成する必要があります。

貨物の梱包・搬入・通関手続き・出港

海上・空中輸送に耐えられるように酒類(貨物)を梱包して、「保税地域」に搬入します。

酒類の梱包する際には、品質保持のため温度管理ができるリーファーコンテナなどを利用するとよいでしょう。

貨物の搬入が済んだら、税関での通関手続きを行い、輸出許可を得て、外国貨物として出港することになります。

現地到着・輸入申告・現地での流通

貨物が現地に到着すると、現地の「保税地域」に搬入され、審査・検査・税金徴収など各種手続きが行われます。

その後、現地のパートナーである通関業者が、輸入(納税)申告を行って、輸入許可を受けると、いよいよ現地での流通の流れです。

輸出酒類卸売業免許とは

「輸出酒類卸売業免許」とは、酒類を海外へ輸出するために必要な免許、酒類を輸出して海外の業者に卸売することができる免許です。

日本酒を輸出する場合、「清酒の卸売」という限定の免許になりますので、限定されたお酒以外を販売する必要が出てきたときは、その都度、条件緩和の申し出を行い、取扱いの範囲を広げる手続きを行いましょう。

税務署で出されている「酒類卸売業免許申請の手引」には、免許の区分として「輸出入酒類卸売業免許」とされ、「輸出」と「輸入」が同じ区分で記載されていますが、各々別の免許になりますので、輸出したい場合には、「輸出酒類卸売業免許」を取得する必要があります。

「輸出酒類卸売業免許」を取得するための要件は、「酒類卸売業免許」全般の要件として規定されており、さらに新規販売場の免許申請の要件としては、「人的要件」「場所的要件」「経営基礎要件」のすべてを満たさなければなりません。

「人的要件」としては、過去に法律違反や税金の滞納がないこと、「場所的要件」としては、正当理由なしで不適当な場所に販売場の設置がないこと、特に、「輸出酒類卸売業免許」を取得する上では、受注行為等の事務手続きを行える事務所が必要とされています。

「経営基礎要件」とは、財務基盤がしっかりしていること、申請者に適正に酒類の卸売業を経営するに足りる十分な知識・能力があること(ただし、酒類販売の経験は不問)です。

財務的要件としては、税金の滞納がなく、法人であれば、直近3期で損失額が資本金等の20%以内、直近決算で債務超過でないなどが要求されます。

他方、酒販店など、既に「酒類小売業免許」を保有している事業者が、酒類の輸出をするときに受ける「輸出酒類卸売業免許」への条件緩和の要件は下記の通りです。

【「輸出酒類卸売業免許」への条件緩和の要件(※)】

  1. 酒類販売業免許の取消要件に該当していないこと
  2. 年平均販売見込数量(卸売基準数量)が、全酒類卸売業免許に係る申出については 100㎘以上、ビール卸売業免許に係る申出については 50㎘以上であること
  3. 需給調整要件を満たしていることなど

※すべての要件を満たす必要があります。

輸出酒類卸売業免許の申請から取得までの流れ

日本酒などの酒類を輸出するには、「輸出酒類卸売業免許」の取得が必要ですが、酒類事業者がどのような手続きを踏めば免許を取得できるのか気になるところでしょう。

ここでは酒造業者・酒販店・酒販会社などの事業者ごとに、「輸出酒類卸売業免許」取得の手続きについて解説します。

全ての事業者を通して、免許の申請から取得までの大まかな流れに関しては、以下のとおりです。

【免許の申請から取得までの大まかな流れ】

  1. 免許可能件数の公告(毎年9月1日)
  2. 申請書等の提出=免許の申請
  3. 抽選・審査順位の決定(10月中)
  4. 審査時提出分の書類の提出
  5. 審査
  6. 免許付与等の通知
  7. 登録免許税の納付=免許の取得⇒酒類の販売開始が可能

毎年9月1日に公告(国税庁ホームページにも掲載)される各卸売販売地域(都道府県)ごとの免許可能件数を確認した上で、申請書等を作成し、所轄税務署に提出しましょう。

抽選対象申請期間(9月1日〜9月30日)に申請した場合には、10月中に実施される公開抽選によって審査順位が決定され、審査開始通知が送付されますので、2週間以内に審査時提出分の書類を提出して審査を受けます。

標準処理期間は、審査開始後2ヶ月以内で、税務署への来署や現地確認を求められる場合もあることを押さえておきましょう。

審査結果は書面で通知され、審査に合格すると、登録免許税(新規9万円、条件緩和6万円)を納付して免許取得という流れです。

酒造業者の場合

酒蔵さんなど酒造メーカーが、自社で製造したお酒を輸出する場合には、「輸出酒類卸売業免許」は必要ありません。

仮に、酒造メーカーが、経営の多角化を図り、自社の製造したお酒ではなく、他社から仕入れるなど(OEM含む)して、輸出しようとする場合には、「輸出酒類卸売業免許」が必要となってくるので注意しましょう。

なお、「日本酒」の輸出拡大に向けた取組等を後押しする観点から、「輸出用清酒製造免許制度」(※)が新設され、令和3年4月以降、申請できるようになっています。

※参照:国税庁「輸出用清酒製造免許の取得をご検討の方へ

「輸出用清酒製造免許制度」とは、輸出用に限って清酒の最低製造数量基準60㎘を適用しないことにより、高付加価値商品を少量製造できる製造場を新設でき、海外向け商品の生産を国内生産に誘導・回帰させ、適切な品質管理ができる環境を構築して、「日本酒」のブランド価値の確保・向上を図れる制度です。

酒販店・酒販会社の場合

酒販会社など、既に「酒類卸売業免許」を保有している酒類卸業者さんは、輸出しようとしている酒類が免許を受けている酒類の範囲内であれば、改めて「輸出酒類卸売業免許」を取得する必要はありません。免許を受けている酒類以外のお酒を輸出しようとする場合にだけ、「輸出酒類卸売業免許」の条件緩和の申出を申請する必要があります。

他方、酒屋さんなど、既に「酒類小売業免許」を保有している酒販店さんは、自社で取り扱っているお酒を輸出しようとする場合には、別途「輸出酒類卸売業免許」の条件緩和の申出が必要です。

輸出酒類卸売業免許を取得するための申請書作成のポイント

ここでは、「輸出酒類卸売業免許」を取得するための申請書作成のポイントについて解説していきます。

今回、既に何らかの酒類免許を保有している酒類事業者さんを対象としておりますので、輸出酒類卸売業免許を取得するための申請書に関しては、ほぼ「輸出酒類卸売業免許の条件緩和(解除)申出書」を作成することになるでしょう。

「輸出酒類卸売業免許の条件緩和(解除)申出書」は、申出書と4枚の次葉でセットになっており、すべてを提出する必要があります。

下記の書類ごとに作成のポイントをご紹介しましょう。

【輸出酒類卸売業免許の条件緩和(解除)申出書の詳細】

  • 申出書
  • 次葉2「建物等の配置図」
  • 次葉3「事業の概要」
  • 次葉4「収支の見込み」
  • 次葉5「所要資金の額及び調達方法」

申出書

「輸出酒類卸売業免許の条件緩和(解除)申出書」に、申出者、販売場の所在地・名称、酒販売管理者などの記載事項や申請する免許の内容等を記載しましょう。

販売業免許等の種類の欄には、条件緩和した場合における免許の種類を記載しますが、「輸出酒類卸売業免許の条件緩和(解除)申出書」としては、「輸出酒類卸売業免許」と記載します。

現在付けられている免許の期限または条件を記載し、申出の要旨の欄に、たとえば、「一般酒類小売業免許を受けていますが、自己が輸出する酒類の卸売ができるよう条件緩和を申し出ます」などと記載しましょう。

さらに、申出の理由の欄には、今回の酒類の輸出を行いたい理由、たとえば、「今まで、地元の飲食店や一般消費者を中心に酒類の小売を行ってきましたが、この度、日本の酒類が海外で需要が高まっている状況を背景として、自己が輸出する酒類の卸売を行うことにより、業績のさらなる発展を図ることとしました」などと記載します。

次葉2「建物等の配置図」

建物の構造を示す図面としての「建物等の配置図」には、倉庫部分・店舗部分・事務所部分の区別や、標識の掲示、酒類の陳列場所・入口・机・パソコン・複合機等のレイアウトなどを明示します。

なお、販売場とは別の場所に倉庫がある場合は、免許取得後に倉庫の設置に関する「酒類蔵置所の設置の届」の提出なども必要になってきますので、要注意です。

次葉3「事業の概要」

販売設備状況書として「事業の概要」がわかる書面を作成します。

敷地や建物全体、店舗・事務所・倉庫・駐車場等の広さ、車両や什器備品等の詳細、従業員の勤務形態や人数などを記載しましょう。

次葉4「収支の見込み」

収支の見込みや事業の概要がわかる書面を作成します。

酒類の予定仕入先・販売先、収支見積、販売見込数量や算出根拠、定休日や営業時間など、事業計画、規模にあった収支見込みを作成しましょう。

収支見積では、現状行っている事業部分(たとえば小売業など)と今回申し出る事業部分(輸出卸業)などを分けて記載します。

次葉5「所要資金の額及び調達方法」

所要資金の額及び調達方法がわかる書面を作成します。

所要資金の算出根拠として、自己資金の場合は資金捻出の根拠説明書、融資の場合は融資証明書などを、それぞれ提出しましょう。

輸出酒類卸売業免許の申請に必要な書類

ここでは、「輸出酒類卸売業免許」を取得するために、どんな書類が必要なのかについて解説していきます。

「輸出酒類卸売業免許」を取得するための必要書類については、抽選対象申請期間内に申出等する場合には、申出時提出分の書類のみの提出でよいのですが、公開抽選後、審査開始通知書を受けた際には、審査時提出分の書類の提出が必要になりますので注意しましょう。

輸出酒類卸売業免許の申請に必要な書類は、以下のとおりです。

【輸出酒類卸売業免許の申請に必要な書類・申出時に必要な書類の場合】

  1. 酒類販売業免許の条件緩和(解除)申出書
  2. 申出書次葉2「建物等の配置図」
  3. 酒類販売業免許の条件緩和申出書チェック表1

【輸出酒類卸売業免許の申請に必要な書類・審査時に必要な書類の場合】

  1. 申出書次葉3「事業の概要」
  2. 申出書次葉4「収支の見込み」
  3. 申出書次葉5「所要資金の額及び調達方法」
  4. 酒類販売業免許の条件緩和申出書チェック表2
  5. 酒類販売業免許の免許要件誓約書

これらの書類以外にも、税務署長が審査段階で必要と認めた書類については、別途提出を求められる場合があることを念頭に置いておきましょう。

以下、各書類について順に解説します。

酒類販売業免許の条件緩和(解除)申出書

酒類販売業免許の条件緩和(解除)申出書は、「申出者」「販売場の所在地及び名称」「販売管理者」「販売業免許の種類」「免許の期限・条件」「申出の要旨・理由」を記載する本体と申出書の付属ページ(次葉)とで構成されています。

どの時期にどの書類を提出するかは決まっており、申出時に必要なのは、申請書と次葉2「建物等の配置図」、審査時に必要なのは、次葉3「事業の概要」、次葉4「収支の見込み」、次葉5「「所要資金の額及び調達方法」です。

酒類販売業免許の条件緩和申出書チェック表

「酒類販売業免許の条件緩和申出書チェック表」とは、必要な添付書類が添付されているかを確認し、チェックするための書類です。

チェック表には、2つの様式があり、チェック表1は申出時の必要書類、チェック表2は、審査時の必要書類となっています。

酒類販売業免許の免許要件誓約書

「酒類販売業免許の免許要件誓約書」は、申出者が免許要件について、誓約項目どおりであること、誓約内容に偽りがあった場合には、拒否処分や取消処分を受ける可能性があることを承知する旨を誓約するための書類です。

誓約書は、申出者、申出者の法定代理人、申出法人の役員および申出販売場の支配人について、それぞれ提出が必要であり、申出者の法定代理人分または法人の役員分等については、代表者が代表して誓約することができます。

日本酒を輸出するときのポイント

日本酒を輸出する際、いくつかのポイントを押さえることによって、円滑に輸出することが可能です。

ここでは、日本酒を輸出するときの下記のポイントについて解説します。

【日本酒を輸出するときのポイント】

  • 品質を維持したまま輸送できるポイント
  • 販路を見つけるポイント
  • 酒税の免除
  • 酒類輸出に活用できる補助金

品質を維持したまま輸送できるポイント

「せっかくの質のいい日本酒、いい状態で輸送したい」

酒類事業者さんは皆さんこう考えるのではないでしょうか。

特に、火入れをせず新鮮な味わいが特徴の「生酒」などは、温度管理が必要で、品質管理が難しいお酒。

「生酒」などをはじめとした温度管理に注意を要する日本酒の輸送時の品質維持に気をつけたいなら、保冷コンテナ(リーファーコンテナ)を使用し、現地側CFS(保冷倉庫)や現地代理店とスムーズに情報連携して、一貫したコールドチェーンで輸送することで品質保持が可能な輸送サービスを行ってもらえる提携業者を探すことです。

最近では、小口であっても、海上混載便を利用して、物量に応じた最適なコストで輸送が可能な輸送サービスを提供してくれる業者もあります。

日本側の受託倉庫、現地側の倉庫も冷蔵・冷凍倉庫を利用して、輸送中も保冷コンテナ(リーファーコンテナ)を使用することで、生酒のように温度管理が重要なデリケートな商品でも、品質を保持したまま輸送して、輸出先でもおいしいお酒の流通が可能になるのです。

販路を見つけるポイント

酒類事業者が海外展開を図りたいなら、販路の確保は重要です。

新たな海外での販路を確保するためには、日本国内で海外バイヤーが集まる展示会や商談会などに参加するとよいでしょう。

海外バイヤーは、今まさに世界中の消費者から注目されている日本酒をはじめとした日本産酒類の取引相手を探しています。

展示会や商談会などで、試飲をしてもらい、契約交渉したり、対象国で流通させるための商品改良のヒントをもらったりするためには、展示会や商談会が絶好の機会です。積極的に参加することをおすすめします。

酒税の免除

酒造メーカーが、輸出目的で酒類を製造場から移出する場合には、所定の手続きにより、酒税を免除されます。

輸出免税を利用したい場合には、所轄税務署に対して、要件を満たした「酒税納税申告書」を提出することが必要です。

要件とは、「期間内に申告すること」「輸出酒類の税率適用区分・数量を記載した明細書を添付すること」などです。

※参照:国税庁「酒類の輸出免税等の手続きについて

酒類輸出に活用できる補助金

日本酒をはじめとした酒類を海外展開したい場合には。補助金を活用できるケースもあるので押さえておきましょう!

海外展開に活用できる補助金には、「ものづくり補助金・グローバル市場開拓枠」「フロンティア補助金」などがあります。

海外展開に活用できる補助金について、くわしくお知りになりたい方はアンカーマンまでお気軽にご連絡ください。

こちらのコラムもご参考に!⇒「酒造業・酒屋向けの注目補助金・厳選6種はこれだ!!

日本酒を輸出するときの注意点

日本酒を輸出するときには、いくつか気をつけなければならないこともあります。

輸出時の注意点を知らずに輸出してしまうと、後々、大きなトラブルになってしまうからです。

ここでは、日本酒を輸出するときの下記の注意点についてご紹介します。

【日本酒を輸出するときの注意点】

  • 危険物扱いになるお酒に注意
  • 酒類輸出時に特別な証明書が必要な場合がある

危険物扱いになるお酒に注意

お酒によっては、国際輸送法上の「危険物扱い」になり、輸送料が割高になったり、提出書類が増えたり、危険物の輸送を取り扱ってくれない輸送業者もいたりするケースがありますので注意が必要です。

【危険物扱いになるお酒の事例】

事例危険物扱いの判断
①アルコール度数が24%超かつ容量250㎖超の容器で輸送する場合
②アルコール度数が70%超○(引火性液体)

アルコール度数が24%を超え、かつ容量が250㎖を超える容器で輸送する場合や、アルコール度数が70%を超える場合には、「危険物扱い」になってしまいます。

たとえば、アルコール度数40%のウィスキーを1本700㎖/の容器で輸送する場合、このままでは上記表の①の事例に該当し、危険物扱いとなってしまいますが、250㎖以下の容器に入れれば危険物扱いとはなりません。

お酒を輸出する際には、自身が取り扱うお酒が「危険物扱い」になるか否かを事前に確認しておきましょう。

酒類輸出時に特別な証明書が必要な場合がある

酒類輸出時に特別な証明書が必要なケースもあるので注意しましょう。

東日本大震災の影響で、輸出相手国によっては、日本からの輸入貨物に対して制限をかけているケースもあります。

韓国・中国・ロシアへの輸出酒類に関して、国税局による相手国が求める証明書を発行していますので、当該対象国に酒類を輸出する予定のある事業者の方は、事前に確認することをおすすめします。

※参照:国税庁「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書の発行について

日本酒の輸出相手国別の注意点

酒類を輸出する相手国によって、注意しなければならないことが変わることはご存じでしょうか。

ここでは、日本酒の輸出相手国別の注意点について解説します。

ちなみに、財務省貿易統計によれば、日本酒の国別輸出金額・数量順位上位5ヶ国は以下のとおりです。

【日本酒の国別輸出金額・数量順位上位5ヶ国】

順位輸出金額輸出数量
1位中国アメリカ
2位アメリカ中国
3位香港韓国
4位韓国台湾
5位シンガポール香港

以下、主要国ごとに解説します。

なお、国税庁では輸出相手国別の注意点などを記載した「日本酒輸出ハンドブック」を公表していますので参考にするとよいでしょう。

アメリカ

アメリカに向けて日本酒を輸出する場合、FSMA(米国食品安全強化法)への準拠を求められ、製造施設のFDA(食品医薬品局)への施設登録および2年ごとの更新や輸出の報告が必要となります。

アメリカ向けの酒類に関しては、商品名・度数・内容量・着色料名・原産国名・輸入者名・住所などをラベルに記載したり、誤解を招くような表記を避ける配慮をしたりするなどの必要があるでしょう。

また、お酒に関する税金やコストに関しても要注意。

アメリカで、日本酒を輸入・販売する際に課税される税は、大きく分けて「連邦税」「関税」「州税・自治体税」の3種類に分類されます。このうち、輸出のハードルとして注意しなければならない課税は、「連邦税」と「州税・自治体税」です。

「連邦税」に含まれる「連邦酒税」は、醸造用アルコールの添加有無により税額が大きく異なります。税法上、醸造時にアルコールを添加しない純米酒(純米吟醸・純米大吟醸)は、【ビール】カテゴリに区分され、税率が低いのに対し、アルコールを添加する日本酒の場合、【蒸留酒】区分となり、税率が高くなってしまいます。

アメリカで販売される多くの日本酒が純米酒なのは、酒税率が低く抑えられ、販売に有利だからです。

さらに、「州税・自治体税」は、州や自治体ごとに税率が異なるので、輸出地域によって、酒税が高くなることがあります。

税金以外にも港湾維持料など、輸入するエリア独自の徴収もあるので注意が必要。そのため、税金を含めた最終的なコストを事前に試算しておくことをおすすめします。

アメリカでは日本酒に関する大型イベントや日本食レストラン数なども多く、バリエーションも豊富で、販路を開拓するための流通ルートも、日系・アジア系の食品取扱い卸業者や、現地のアルコール取扱い卸業者に長年の実績があり、輸入の受け皿は備わっているのが現状です。

消費者への供給として、日本食レストランが最も大きく、小売としては、日系・アジア系スーパーにも、多くの銘柄が陳列されています(ただし、現地の人が利用する地元のスーパーには、限られた種類の銘柄しか陳列されていないのが現状です)。

特に、最大の和食レストラン件数を誇り、日本酒消費量もアメリカ随一のカリフォルニア州をはじめとした西海岸での和食文化の浸透はほかの州に比べてかなり進んでいます。

最近では、オンラインショップでの日本酒の供給が目覚しいです。

アメリカにおける日本酒市場を支える先陣のプレイヤーも数多く存在し、アメリカにおける日本酒の位置づけは、元来「日本食レストランで日本食と一緒に味わうもの」でした。

最近では、「エキゾティックなアルコール」として、家庭内やパーティで楽しんだり、日本食以外のレストランでも提供されたりして、現地での存在感が高まっています。

ただし、現地では、日本酒にはさまざまなタイプがあることは、まだあまり認知されていません。現地での日本酒のPRにあたっては、最初は吟醸酒に興味を持ってもらい、次に純米酒など異なるタイプを紹介するなど、認知を広めやすい組み合わせで、日本酒の奥深さを理解してもらうことが大切でしょう。

中国

外国産の酒類の輸入に関して、さまざまな法律で細かく規制している中国。

たとえば、添加物に関して、化学名までくわしく記載したり、賞味期限・製造年月日の両方をラベルに明記したりなどが求められます。

中国サイドで規定されている品質基準に合致しないと輸入できなかったり、検査を受ける必要があったりするので、しっかりとした事前の確認をすることが特に必要でしょう。

中国における酒類の販売チャネルは、大きく分けて「従来型チャネル」「ECチャネル」「O2Oチャネル」の3つに分かれています。

「従来型チャネル」とは、銘酒ブランド専売店や飲食店、スーパー、酒類専門などのチェーン店などの実店舗販売のことで、現在でも主流の販売方法です。

「ECチャネル」とは、EC販売をベースに、物流コスト削減と配送効率アップを図った「オンライン×オフライン」の複合型流通モデルです。

「O2Oチャネル」とは、オンラインショップで注文を集計後、消費者の居住地周辺のオフライン実店舗に商品を発注して、消費者に届けるシステムのことで、近年、急速に需要拡大している販売方法です。

中国への酒類の輸出に関しては、中国サイドの販売実情を考慮した上でマーケティング戦略を練るとよいでしょう。

香港

香港に関しても、流通させる酒類には、製品名・アルコール度数・製造者名・包装業者名・住所・賞味期限をラベルに明示することが求められています。

香港にアルコール度数30%超の酒類を輸出するには、事前に香港税関に輸入資格(インポートライセンス)の申請・取得が必要です。

他方、お酒に関する税金に関しては、関税は不要なものの、物品税がかかるケースがあるので注意しましょう。

香港では、アルコール度数30%以下が免税となってから、アルコール飲料の消費が加速しており、男性は大吟醸、女性は梅酒や果実などを好む傾向にあります。

香港での流通経路として、卸売業者を介した流通はあまり見られず、デパートなどの小売業者が日本から酒類を輸入する場合、香港の輸入業者が酒類の発注や通関手続きや運搬などの業務を一任するケースが多いようです。

台湾

台湾向けの酒類も、ラベルに必要な記載があります。商品名・アルコール度数・製造業者名・製造年月日・賞味期限などを中国語で記載し、事前に台湾政府の財政部に輸入許可を申請・取得しておくことが求められているので注意しましょう。

酒類の輸入に関しては、二酸化硫黄・鉛・メタノールなど含有成分の最大許容量などの衛生基準をクリアしていれば、検査後に輸入許可が取得できるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

韓国

まずは、韓国へ日本酒を輸出する場合の税金や流通価格のことについて解説しましょう。

「関税」(国際関税協約により15%)のほか、 「酒税(30%)」「教育税(10%)」「付加価値税(10%)」などがかかるので、市場価格は日本で販売されているより高くなる傾向にあり、その分、輸出価格が安くなる傾向が見てとれます。

他方、韓国への酒類輸出に関する特別な規制もあります。韓国に日本酒を輸出する場合には、原産地証明書のほか、国税局発行の「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書」が必要です。

さらに、韓国食品医薬品安全処長に海外製造業所の登録をしたりしなければなりません。

ちなみに韓国では、日本の「賞味期限」という概念は通用しないので、「流通期限」「品質保持期限」などを記載する必要があります。

次に韓国内での日本酒の流通に関して、コロナ以前は、韓国で日本酒イベントが盛んに開催されていましたが、コロナの影響だけでなく、韓国が日本の輸出管理措置を不当としてWTOへ提訴するなど日韓外交関係悪化の影響もあり、近年は韓国で日本酒イベントが開催されていませんでした。

最近になって、WTOへの提訴撤回や韓国大統領の来日など日韓関係も正常化に向かっているので、今後韓国において以前のような日本酒イベントも開催される日も近いと思います。

韓国では、日本食店も多く、日本食は定着しています。反日不買(ノージャパン)運動や、コロナの影響で韓国から消えた日本酒が、近時、円安の波に乗って戻ってきているといった現状です。

日本式居酒屋や「おまかせ」形式の高級飲食店などで、高級料理に合わせて高価な日本酒を飲む文化が定着しており、日本酒をアルコールのメニューに取り入れたり、取り扱う日本酒の種類を増やしたりする店も増えています。

韓国における日本酒の主な販路は、日本食レストラン。ソウルの人気エリアにも、日本料理店が続々と進出し、日本酒を口にする機会も増えているようです。

韓国でも先陣の日本酒市場のキープレーヤーがいるので、日本酒の受け入れ体制は整っていると言ってよいでしょう。

ただし、韓国人に対するアンケートでは、日本酒を購入して家で飲むと答えた人は約30%、日本酒をプレゼントしたことがあると回答した人は約8%だったものの、「好きなお酒は?」の問いに、「日本酒」と答えた人はわずか1.4%という結果になり、日本酒が韓国国内に日常的に親しむ酒類として浸透しているとはまだまだ言えない状況であることがわかります。

また、日本酒は主に「飲食店(90.4%)」で消費されており、自宅で飲むために購入する場合は「大型マート(72.3%)」での購入が最も多いという結果になっています。

シンガポール

シンガポールへ日本酒を輸出する場合、日本とシンガポールとは自由貿易協定(FTA)を締結しているため「関税」はかかりませんが、「物品税」「財・サービス税」などがかかります。

さらに、シンガポールに日本酒を輸出する場合の規制に関しては、シンガポール食品庁(SFA)の規制調達先プログラム(Regulated Source Program)のもと、政府管轄機関の適正な監督を受けているか、SFAが認める品質保証システムを導入しているかの対応をしておく必要があります。

製造元から工場ライセンス(日本の場合は保健所発行の営業許可)、輸出証明書、衛生証明書、HACCP認証、GMP認証などの書類を事前に輸入者側に提供していることが望まれるでしょう。

次に、シンガポールでの日本酒の浸透具合を解説します。

シンガポールでは、毎年のように開催されている「SAKE FESTIVAL SINGAPORE」など、大小入り混じって日本酒イベントが盛んに行なわれています。

日本酒は、日本市場の2~3倍の価格で流通しており、高級酒として、富裕層中心に愛好家が多く、イベントでは、日本の多くの蔵元が参加し、さまざまな地酒が試飲できる内容となって人気を博しています。

また、シンガポールは、1,200軒を超える日本食レストランが出店している、和食人気が高い国です。食費を惜しまない国民性、日本酒は高くても買う・飲むという風土のもとで、和食レストラン以外にも日本酒専門バーなど、外食時に日本酒を提供してくれるポテンシャルの高い日本酒レストランが多いのも特徴。

さらに、日本食の人気上昇に伴い、高級酒を中心に消費者の間に浸透し、市場としては成熟しています。ただし、日本酒の酒類別シェアはいまだに低く、消費量は比較的少ないのが現状です。

日本酒は日本食レストラン等において飲まれることが多く、自宅で日本酒を飲むことは少ない傾向にあります。

他方、シンガポールにおける日本酒市場のプレイヤーは数多く存在しているので、酒類の輸出に関しても受入体制の整っている国の1つです。

アンケートの結果によれば、82.6%のシンガポール人が日本酒を飲んだことがあり、52.1%が現地スーパーもしくはデパートで日本酒を購入しているという結果が出ています。

まとめ

ここまで、日本酒輸出に欠かせない手続きや流れ、日本酒輸出に必要な「輸出酒類卸売業免許」のアレコレ、日本酒輸出時のポイントや注意点、輸出先国ごとに気をつけるべきポイントなどをご紹介させていただきました。

自身が取り扱っている日本の酒類を海外に輸出することで、新たな販路開拓・事業の多角化・売上アップを図ることは、酒類事業者であれば成功させたいと思うもの。

酒類の輸出でもっとも重要なこと、それはしっかりとした準備に他なりません。

アンカーマンでは、日本の酒類の輸出を含めたマーケティングサポート、海外展開の取組に活用できる補助金に関する補助金サポートなどをご用意してます。

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