酒屋が儲かる方法とは?店舗販売や店舗以外で利益を上げる方法、ポイントを解説
酒類小売業免許を持って、酒造メーカーや酒卸業者からお酒を仕入れ、一般消費者や飲食店などにお酒を販売する「酒屋(酒販店)」。
「酒屋は儲かるのか?」
酒屋を経営している人にとっての現事業の維持・立て直しに必要な原点というだけでなく、これから酒屋をはじめようと思っている人にとっては気になるところ。
今回は、「酒屋は儲かるのか」といテーマを深掘りし、個人の酒屋経営の現況や酒屋の一般的な利益率、酒屋が店舗販売または店舗販売以外で利益を上げる方法や酒屋が利益を上げるためのポイントなどについて解説します。
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酒屋は儲かるのか
「酒屋は儲かるのか」について考えていく際に、まずは業界全体の状況やビジネスモデルなどを把握していく必要があるでしょう。
早速、個人の酒屋経営が厳しい背景や酒屋の一般的な利益率についてご紹介します。
この章では下記について取り扱います。
- 個人の酒屋経営が厳しい背景
- 酒屋の一般的な利益率
個人の酒屋経営が厳しい背景
規制緩和・消費者の購買行動変化・組織小売業(チェーン店)の発展などを背景として、「街の酒屋さん」としての個人の酒屋経営は、これまで厳しい変化を強いられてきました。
かつては、酒類小売業免許付与の基準の厳格化によって、新規参入を抑制し、既存の酒類小売業者を国として保護していましたが、免許付与に関する規制緩和がなされ、競争激化に巻き込まれた既存酒類小売業者を保護しようという趣旨で2003年に限時法として、「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法(以下「緊急措置法」という)」が制定されました。
しかし、さらなる酒類販売の規制緩和によって、緊急措置法が廃止され、新規参入を抑制できる緊急調整地域指定が失効し、全国的に酒類の小売販売は事実上の「自由化」がなされるようになると、酒類を取り扱う量販店、コンビニやスーパーなどの組織小売業(チェーン店)が続々と新規参入してきて、熾烈な販売競争が避けられなかったのです。
少し前の長期デフレ懸念による消費者側の低価格志向、消費者の酒離れやニーズの多様化、近年の国際情勢による原材料・石油価格高騰に伴う物価の高騰などによる消費者の購買行動変化などとともに、酒屋自身の事業主の高齢化や後継者問題なども相まって、個人の酒屋経営を取り巻く環境は厳しい状況にあるといえるでしょう。
酒屋の一般的な利益率
酒屋の利益率(粗利率)は、販売額(売上高)から仕入れ(仕入れ原価)を控除して算出されますが、20〜30%が一般的だといわれています。
たとえば、1,500円の四号瓶を1本販売して、300〜450円の利益が出る計算です。
さらに、営業利益を出すには、粗利から人件費、家賃、光熱費、通信費(販売管理システム利用料など)、クレジットカード決済手数料などの販管費等を捻出しなければなりません。
営業利益が出てはじめて儲かったと言えるのです。
毎月、人件費50万円、家賃20万円、その他の販管費で10万円とした場合には、営業利益を出すには月額80万円以上、1,500円の四号瓶を利益率20%のケースでは2,667本以上、利益率30%のケースでは1,778本以上売り上げなければならない計算になります。
酒屋が店舗販売で利益を上げる方法
儲かる酒屋とするには、どのような施策を講じればよいのか気になるところではないでしょうか。
それでは、酒屋が店舗販売で利益を上げる方法についてご紹介していきましょう。
この章では下記について説明します。
- お客さまへの提案
- POPの活用
- 差別化された売り場づくり
- 角打ち
- 商品構成の見直し
お客さまへの提案
酒屋本来の価値を十分に発揮できる「酒の専門店」として、商品に関する情報を蓄え、お客さまへ提案することは、酒屋が店舗販売で利益を上げる方法の1つです。
お客さまへの提案方法には、相談コーナーの設置によるおすすめのお酒やギフトの提案、お酒のこだわりのエピソードを記したPOPやオススメのペアリング料理の写真の活用などさまざまな方法があるでしょう。
酒屋が競合するチェーン店などと差別化を図るためには、お客さまのニーズに合ったお酒に関する情報に基づいてタイムリーな提案をすることが効果的です。
「お客さまへの提案」についてくわしく知りたい方はこちら!⇒「酒屋が大手小売りチェーン店に対抗する方法とは?売り場づくりのポイントも解説」
POPの活用
お客さまに売り場で商品を手に取ってもらう上で、視認性のあるPOPの活用はとても効果的です。
酒屋に来店するお客さまは、「今の旬のお酒はなんだろう?」「今日の料理に合うお酒は?」「大切な人へのプレゼントにはどのお酒がいい?」などニーズに合わせたお酒を探しています。
陳列棚を見ていて、ただ商品が陳列されているよりは、「このお酒は○○な料理と合いますよ!」とか「このお酒のこだわりポイントは○○です!」など、ストーリー性のあるPOPを目にすれば、つい、「これ欲しい!!」となるはず。
お客さまのニーズに合ったPOPを活用することで、店舗販売の利益アップが期待できます。
「POPの活用」についてくわしく知りたい方はこちら!⇒「【酒販店必見】売場作りで重要なポイントとは?売上アップのための商品陳列やコツを解説」
差別化された売り場づくり
「お酒なんて、どこで買っても同じだよ」とお客さまに思わせてしまっては、店舗販売での利益アップは期待できません。
ライバル店と差別化された売り場づくりをすることが利益アップの方法の1つです。
差別化された売り場づくりに正解はありません。どんな売り場にしたいかは、経営者の考え方で変わります。
差別化された売り場づくりのアプローチとして、「商品単価を上げる」のか「販売数を増やす」のか、増やすのは「目的買い」か「衝動買い」か、「新規顧客獲得」か「リピーター客の増加」か、「倉庫型(アイテム別構成)」か「インショップ型(大型施設内の店舗、セレクトショップ等)」かなどが考えられるでしょう。
「売り場づくり」についてくわしく知りたい方はこちら!⇒「【お酒売り場改革】成果を出すお酒の売り場づくりを他業種から学ぶ!」
角打ち
酒屋が店舗販売で利益アップを図るには、普通に商品を販売する以外にも、「酒屋飲み」で利益を得るという方法もあります。
酒屋の「呑める」スペースでお酒を楽しむ「角打ち」「立ち飲み」のメリットは、お客さまの「今飲みたい」というニーズに応えられることです。
「量り売り」や「ボトルキープ」などを活用することで、リピーター客の増加にもつながるでしょう。
「角打ち」についてくわしく知りたい方はこちら!⇒「補助金で「酒屋飲み」はじめませんか?」
商品構成の見直し
酒屋が店舗販売で利益を上げるために、お客さまへの接し方や売り場づくり以外のアプローチとして、商品構成を見直してみるという方法もあります。
商品構成を見直す上で重要なことは、「お店のコンセプト」を「消費者ニーズ」を前提として構築し、コンセプトに合った商品ラインナップにするということです。
大手チェーン店のように、薄利多売を前提とした有名銘柄や売れ筋商品の大量陳列手法とは一線を画して、地域に密着した「酒の専門店」として、「お客さまの欲しい」に応える商品ラインナップで差別化を図っていくことも必要でしょう。
「うちの店のお客さまの欲しいはなんなのか」を的確に把握した上で、利益率も考慮して、商品構成を考えることが重要です。
酒屋が店舗販売以外で利益を上げる方法
商売の鉄則として、キャッシュポイント(収益機会)を増やすことが重要であると言われます。
ここでは、酒屋におけるキャッシュポイントを増やすことのアプローチとして、店舗販売以外で利益を上げる下記の方法や事例を考えていきましょう。
- ECサイトでの販売
- イベントの企画
- サブスク×配達
- 酒屋のおもしろアイデア成功事例
それぞれについて説明します。
ECサイトでの販売
ECサイトでの販売(ネット販売)は、対面で行う店舗販売とは異なり、県外または海外の顧客層にも販路を拡大でき、キャッシュポイントを増やし、酒屋の利益アップが期待できます。
酒屋のEC販売を強化するには、ネット消費者に魅力的なECサイトを構築して、情報発信することが必要です。
SNSの活用なども効果的でしょう。お酒に関する知識が豊富な酒屋こそオリジナリティー溢れる情報発信をして、EC販売に注力すれば、利益アップにもつながることでしょう。
イベントの企画
キャッシュポイントを増やすという観点から、イベントの企画ということも選択肢の1つでしょう。
お酒に関するイベントを企画することで、お店のファンを増やし、イベントでのキャッシュポイントを増やすことにもつながります。
たとえば、酒蔵さんを呼んで「製造者からお酒の魅力を聞いちゃおう!」というイベントや、「お酒のおいしい飲み方勉強会」「飲み比べイベント」「どのお酒とどの料理の組み合わせが優勝?ペアリングイベント」「オリジナルの日本酒造り・ラベル造り体験会」などなど。
自社でイベントを企画・開催したり、他社が主催するイベントに参加したりして、「あの酒屋さん、よくイベントで見るな」と認知してもらいファンを増やす効果も期待できるでしょう。
サブスク×配達
最近、世の中ではサブスク(月額定額制など定期購買サービス)が流行っています。
サブスクと酒屋さんの機動力を活かした「サブスク×配達」サービスで成功している酒屋さんの事例をご紹介しましょう。
ある酒屋さんでは、毎月三合瓶の日本酒3本を店主が選び、自宅に届けるというサービスを始めたところ、大好評でマスコミから取材がくることも。
もちろん、瓶の容量を変えたり、セットの本数を変えたり、お酒の種類などセットの内容を変えたり、夏酒セットなどテーマでお酒のチョイスのしかたを変えたりと自身のお店オリジナルのサービスを工夫することもできます。
お酒とおつまみ・料理などのペアリングセットなどとしてもウケるかもしれませんね。
Uber Eatsなど宅配全盛の時代なので、昔ながらの酒屋の宅配サービスも喜ばれているようです。
酒屋のおもしろアイデア成功事例
ほかにも全国で成功している酒屋さんの事例から、店舗販売以外で利益を上げる方法のヒントにすることが可能です。
「1日店長」「1日スナックママ」「1日酒屋で撮影・取材」などの酒屋の場所を提供したり、「おすすめの季節酒」「今、日本酒好きが飲むべきお酒はこれ!!」などのYouTube番組を配信したりして、利益アップにつなげている酒屋さんもいます。
アイデア次第でさまざまな店舗販売以外での利益アップの方法があるものです。ぜひ、あなたの店でもトライ&エラーでチャレンジしてみてください。
酒屋が利益を上げるためのポイント
酒屋が利益を上げるためには、どのようなことに注意すべきでしょうか。また、どのようにすれば利益を上げられるのでしょうか。
酒屋が利益を上げるためのポイントとしては、下記が挙げられます。
- 唎酒師などの資格取得
- 強みの理解
- 店舗販売以外の販路を強化する
- サービスに関する工夫と努力
それぞれについて見ていきましょう。
唎酒師などの資格取得
酒屋が利益を上げるためのポイントの1つとして、唎酒師などお酒に関する資格を取得するということが考えられます。
酒販事業者にとって、お客さまにおすすめのお酒を提案する場合の説得力アップなど営業に直結するのがお酒に関する資格取得です。
お酒に関する資格としては、「唎酒師」のほか、「日本酒検定」「酒匠」「日本酒ナビゲーター」など、さまざまな種類の資格があります。
資格取得に向けて勉強するだけでも、お酒に関する情報がインプットされ、自身の店の営業に役立ちますので、酒屋の利益アップを前提としたお酒に関する資格取得をおすすめします。
強みの理解
「うちの店の強みはなんなのか?」
「うちのお客さまは、どうしてうちの店でお酒を購入してくれるのだろう?」
自身の店の強みを理解することは、利益を上げるためのポイントの1つです。
自身の店の強みを理解するためには、「SWOT分析」という手法があります。自身の店の事業を取り巻く環境(外部環境)とお店の中の問題(内部環境)を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析する手法です。
たとえば、以下のような分析表を作って自身の店を分析しましょう。
【SWOT分析表】
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | <強み>店や商品の長所 | <弱み>店や商品の短所 |
外部環境(社会・市場) | <機会>プラスに働く要素 | <脅威>マイナスに働く要素 |
店舗販売以外の販路を強化する
酒屋が利益を上げるためには、「キャッシュポイントを増やすこと」以外に、店舗販売以外の販路を強化して、「売る相手を増やすこと」も必要です。
たとえば、EC販売を強化すれば、店舗販売の対象顧客以外にもお得意様を増やすことも可能です。県外を含めた全国各地、海外の日本酒愛好家など売る相手を増やすことができます。
売る相手を増やせれば、限られた地域でライバル店とパイの取り合いをしなくてもよくなるばかりでなく、提案の仕方もバリエーションが増やせるでしょう。
また、お酒に関するイベントなどに積極的に参加して、お店のファンを増やすことも可能です。販路を拡大することもでき、利益アップも期待できます。
サービスに関する工夫と努力
酒屋が利益を上げるためには、サービスに関する工夫と努力も必要になってきます。
たとえば、「日本酒の定期お届けサービス」を成功させた酒屋さんは、次のようなことを工夫したそうです。
- お酒の説明・飲み方・おすすめの理由などの豆知識メモを同封
- セット価格でお得感を出す
- 初回割引で囲い込み戦略
- 誕生月のメッセージカードと日本酒1本プレゼントなどで継続率アップ
- サービス中止の申し出には、「来月分を無料、再度検討を!」など継続の工夫
- サービスの売込みは、来店客への営業やホームページでの販売、店長の日本酒ブログで紹介、マスコミでの取材など。
お酒販売業者の方におすすめの記事はこちら⇒「卸・小売・輸出・商社など、お酒販売業者の方へ」
まとめ
ここまで、酒屋が店舗販売または店舗販売以外で利益を上げる方法や酒屋が利益を上げるためのポイントなどについてご紹介させていただきました。
酒屋が利益を上げる方法としては、店舗販売では、お客さまへの提案や売り場づくりなどを工夫するほか、角打ちや商品構成の見直しなど違ったアプローチも可能です。
また、店舗販売以外でも、EC販売強化、イベント活用、サブスク、配達サービスなどアイディア次第でライバル店と差別化を図り、利益を上げる方法があります。
酒屋が利益を上げるためのポイントを把握した上で、「酒の専門店」として健全な成長を続けている全国各地の酒屋の成功事例なども参考にしながら、自身の店の付加価値アップを図り、競争に立ち向かっていける酒屋づくりを目指しましょう。
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